婚約破棄をしようとしたら

らがまふぃん

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そのよん

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 ロナ・マルアレアとして生きているザガラは、眼帯の人物が現れた時点で酷く焦った。ザガラは、その人物が誰なのかを知っていた。

 “魔法の国”宰相、カイン。

 魔法の腕は、国で二番目の実力者だ。魔法の国は、魔法の腕で地位が決まる実力主義。そんなカインがここに現れたと言うことは。

 魔法の国の人間は、世界が到底理解出来ない数々の魔法を使う。その一つに、肉体を離れ、魂だけで存在出来るというとてつもないものがある。これには、恐ろしいほど緻密な魔法構築と、莫大な魔力が必要となる。魔法の国でもトップクラスに難易度の高いその魔法が使えるのは、たった五人。

 魂だけとなっても、また元の体に戻るも良し、他人の体を乗っ取るのも良し。元の体に戻る場合は、魂の抜けた体が朽ちないよう時間を止める魔法を施し、さらに他のヤツに狙われないよう結界も張っておく必要がある。また、元の体がない場合は、他人の体を乗っ取る。乗っ取られた人間は、魂を追い出されてしまうため、消滅してしまう。

 今回起こったことは、後者。エティハ・グレイアンジュの魂を追い出し、その体を乗っ取ったのだ。そこに罪悪感などはない。魔法の国の人間の怖いところだ。

 体を乗っ取られても、魂が馴染むまで少し時間がかかる。魂が完全に馴染むと、乗っ取られた体は、乗っ取った魂の持ち主の元の姿に変化するのだ。望めば、乗っ取られた者の姿を維持することも可能。男子生徒は知らなかったが、その肉体の名前を知ると、よりスムーズにその体に魂を馴染ませられる。これは、男子生徒にかかわらず、世界も知らないことではあるが。故に、魔法の国の人間は、本名を名乗らない。

 憐れにも体を乗っ取られたグレイアンジュ。グレイアンジュを消滅させた、その魂を追いかけてきた者が、宰相カイン。カインが執心している者は、唯一人。

 その証拠に、ほら。

 この短時間で完全に馴染んだその姿に、誰もが驚愕した。

 覇王ジュエル。

 薄い紫の髪に、淡い金の瞳。病的な青白い肌に、血のように赤い唇。

 誰もが知っている美しすぎる覇王の姿に、全員が言葉を失っていた。
 そんな周囲を余所に、ジュエルは呆れたように口を開く。

 「こんなところでまた男漁りか。懲りんヤツだ」
 「は?」

 ジュエルがロナことザガラに向けたその言葉に、ギャレットは間の抜けた声を出した。そして続く言葉も理解が出来ない。

 「そこの隣の男。魔力を搾り取られて干涸らびていなくて良かったな」

 ギャレットに向けられた言葉は、どういうことか。

 「ロリババアと申しますか、ロリジジイとでも言うのですかね。そうだとわかって一緒にいるなら構いませんが、何が悲しくて棺桶に片足突っ込んだ女装癖のあるジジイと盛り上がっているのですかね」

 カインの言葉に、ジュエルは呆れたように返す。

 「人の趣味に口を出すな。おまえだって人のこと言えんだろう」
 「心外ですね。あなた様は本当にご自分をわかっておられない」
 「ちょっと待てぇい!」

 とんでもない発言をしたのに、日常の一コマのようにしないで欲しい。何普通に会話を続けているの。

 「ロナが、何て?」

 ギャレットは、聞き捨てならない言葉を聞いた。再度確認をすると、カインは訂正をした。

 「棺桶に片足突っ込んだ、ああ、そうですね。これは正しくありませんでした。片足ではありません。両足、下半身、首まで?ですかね、棺桶に突っ込んでいるのは」

 そこではない。

 「ろ、ロリ?ババア、ではなく、じ、じ、ジジイ?お、とこ?」

 信じられない、と言うように、ザガラを頭の天辺から足の先まで何度も見る。ザガラは誤魔化すように、えへ?と首を傾げて見せた。

 「ノオオオオオオォォォォ!!」

 ギャレットの悲しい悲鳴が、学園中に響いた。



*つづく*
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