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アーリオーリ王国編
8
「ふざけないで!こんなの納得できませんわ!一度きりのチャンスなんてやっぱりおかしいですわよ!」
案の定、アフロディーテは抗議してきた。負けた護衛隊長を激しく罵って。それに、ノアリアストは酷く不快になる。
「あいつ、殺してもいいんじゃない」
「楽に死なせてあげるのかしら」
双子は不穏な言葉をボソボソ交わす。聞こえたセドニアの顔色は悪い。
「あたくしの代わりに戦える者はまだまだいますわ!その者たちを全員倒せたら話を聞いてやらなくもなくてよ!」
ヒートアップするアフロディーテに、ディアンは溜め息を吐いた。
「アーリオーリの王女よ。どの立場でものを言っている」
肘掛けに頬杖をつきながら、ディアンはアフロディーテに言った。冷たい声に、アフロディーテは肩を揺らす。
「そなたの国ではどうか知らん。だがここはレイガード国。この国では誓約書は絶対。交わした誓約は何だった。忘れたか。覚えていないのか」
「あ、あたくし」
ディアンの圧に体が震える。
「剣での一本勝負。勝った方に従う。辞退するならディレイガルドの子息を諦める」
そうだ。ここは自国ではない。
「本人では戦えないので代理戦とする。よって、チャンスは一度のみ」
ここはレイガード。
「この勝負について結果を含め一切の異議申し立てをしない。これを破ったらどんなことでも甘んじて受け入れる。そうだったな?」
他国の王を、侮りすぎだ。ディアンは嗤う。愚かな王女を。愚かな国の王族を。
「王女よ。王族が約束を違えるとどうなるか。わからないはずがない」
「う、う、うああああああ!」
何を思ったか、アフロディーテはディアンたちに向かって突進してきた。あの巨体が勢いよく突っ込んでくる。レイガード国の護衛たちが盾を構える。何としてでも抑え込まねば。
アーリオーリの人々は青ざめた。何ということをしているのだ。他国の王族、それも国王を害そうなど。アーリオーリ国の護衛たちがアフロディーテを押さえる。だが止まらない。護衛たちは次々と吹き飛ばされていく。女官たちも必死だ。弾き飛ばされようが踏まれようが食らいつく。奮闘と言うか、死闘虚しくアフロディーテはディアンたちに迫る。
すると。
「邪魔だ。退いていろ」
エリアストが前に出た。
「汚いモノがエルシィに近付くな」
ズドンッ。
およそ人を蹴ったとは思えない音が響いた。
呻き声を上げて腹を押さえるアフロディーテの首であろう部分を掴む。
「家畜はしっかり管理しろ」
脱走しているぞ、とエリアストはアーリオーリの人たちの方へ、その巨体をぶん投げた。
誰も何も言えない。
え、何その膂力。その細い体のどこにそんな力があるの?
「その家畜が目覚めたら誓約不履行の誓約を交わす」
護衛に手袋と靴を交換されながらエリアストは言った。
家畜呼ばわりを誰も咎めない。
「目覚めたら控えの者に声をかけよ」
ディアンたちもそう言って立ち上がった。
「エルシィ、何ともないか」
「はい。何の問題もありません。旦那様こそ、どこか痛めてはおりませんか」
エリアストの手をさすりながら、足も気にしているアリスを抱き締める。
「ああ、大丈夫だ。エルシィに何もなくて良かった」
「父上、どんな膂力をしているのですか」
「お母様を守るときは眠れる力が目覚めるのかしら」
双子の言葉にアリスは微笑んだ。
「旦那様は昔から力持ちでしたよ」
力持ちで済むレベルではない。だが、アリスが笑っている、それだけで双子は何もかもどうでも良くなる。
「ノア、怪我はしませんでしたか」
心配そうに覗き込むアリスに、ノアリアストは微笑んだ。
「父上仕込みです。まったく問題ありません、母上。ありがとうございます」
アリスも微笑み返す。
「ディアも、お疲れ様でしたね」
「何をしに来たのかまったくわかりませんでしたわ」
アリスがダリアの頭を撫でると、ダリアは嬉しそうに笑った。
*最終話へつづく*
案の定、アフロディーテは抗議してきた。負けた護衛隊長を激しく罵って。それに、ノアリアストは酷く不快になる。
「あいつ、殺してもいいんじゃない」
「楽に死なせてあげるのかしら」
双子は不穏な言葉をボソボソ交わす。聞こえたセドニアの顔色は悪い。
「あたくしの代わりに戦える者はまだまだいますわ!その者たちを全員倒せたら話を聞いてやらなくもなくてよ!」
ヒートアップするアフロディーテに、ディアンは溜め息を吐いた。
「アーリオーリの王女よ。どの立場でものを言っている」
肘掛けに頬杖をつきながら、ディアンはアフロディーテに言った。冷たい声に、アフロディーテは肩を揺らす。
「そなたの国ではどうか知らん。だがここはレイガード国。この国では誓約書は絶対。交わした誓約は何だった。忘れたか。覚えていないのか」
「あ、あたくし」
ディアンの圧に体が震える。
「剣での一本勝負。勝った方に従う。辞退するならディレイガルドの子息を諦める」
そうだ。ここは自国ではない。
「本人では戦えないので代理戦とする。よって、チャンスは一度のみ」
ここはレイガード。
「この勝負について結果を含め一切の異議申し立てをしない。これを破ったらどんなことでも甘んじて受け入れる。そうだったな?」
他国の王を、侮りすぎだ。ディアンは嗤う。愚かな王女を。愚かな国の王族を。
「王女よ。王族が約束を違えるとどうなるか。わからないはずがない」
「う、う、うああああああ!」
何を思ったか、アフロディーテはディアンたちに向かって突進してきた。あの巨体が勢いよく突っ込んでくる。レイガード国の護衛たちが盾を構える。何としてでも抑え込まねば。
アーリオーリの人々は青ざめた。何ということをしているのだ。他国の王族、それも国王を害そうなど。アーリオーリ国の護衛たちがアフロディーテを押さえる。だが止まらない。護衛たちは次々と吹き飛ばされていく。女官たちも必死だ。弾き飛ばされようが踏まれようが食らいつく。奮闘と言うか、死闘虚しくアフロディーテはディアンたちに迫る。
すると。
「邪魔だ。退いていろ」
エリアストが前に出た。
「汚いモノがエルシィに近付くな」
ズドンッ。
およそ人を蹴ったとは思えない音が響いた。
呻き声を上げて腹を押さえるアフロディーテの首であろう部分を掴む。
「家畜はしっかり管理しろ」
脱走しているぞ、とエリアストはアーリオーリの人たちの方へ、その巨体をぶん投げた。
誰も何も言えない。
え、何その膂力。その細い体のどこにそんな力があるの?
「その家畜が目覚めたら誓約不履行の誓約を交わす」
護衛に手袋と靴を交換されながらエリアストは言った。
家畜呼ばわりを誰も咎めない。
「目覚めたら控えの者に声をかけよ」
ディアンたちもそう言って立ち上がった。
「エルシィ、何ともないか」
「はい。何の問題もありません。旦那様こそ、どこか痛めてはおりませんか」
エリアストの手をさすりながら、足も気にしているアリスを抱き締める。
「ああ、大丈夫だ。エルシィに何もなくて良かった」
「父上、どんな膂力をしているのですか」
「お母様を守るときは眠れる力が目覚めるのかしら」
双子の言葉にアリスは微笑んだ。
「旦那様は昔から力持ちでしたよ」
力持ちで済むレベルではない。だが、アリスが笑っている、それだけで双子は何もかもどうでも良くなる。
「ノア、怪我はしませんでしたか」
心配そうに覗き込むアリスに、ノアリアストは微笑んだ。
「父上仕込みです。まったく問題ありません、母上。ありがとうございます」
アリスも微笑み返す。
「ディアも、お疲れ様でしたね」
「何をしに来たのかまったくわかりませんでしたわ」
アリスがダリアの頭を撫でると、ダリアは嬉しそうに笑った。
*最終話へつづく*
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