美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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アーリオーリ王国編

 「ふざけないで!こんなの納得できませんわ!一度きりのチャンスなんてやっぱりおかしいですわよ!」
 案の定、アフロディーテは抗議してきた。負けた護衛隊長を激しく罵って。それに、ノアリアストは酷く不快になる。
 「あいつ、殺してもいいんじゃない」
 「楽に死なせてあげるのかしら」
 双子は不穏な言葉をボソボソ交わす。聞こえたセドニアの顔色は悪い。
 「あたくしの代わりに戦える者はまだまだいますわ!その者たちを全員倒せたら話を聞いてやらなくもなくてよ!」
 ヒートアップするアフロディーテに、ディアンは溜め息をいた。
 「アーリオーリの王女よ。どの立場でものを言っている」
 肘掛けに頬杖をつきながら、ディアンはアフロディーテに言った。冷たい声に、アフロディーテは肩を揺らす。
 「そなたの国ではどうか知らん。だがここはレイガード国。この国では誓約書は絶対。交わした誓約は何だった。忘れたか。覚えていないのか」
 「あ、あたくし」
 ディアンの圧に体が震える。
 「剣での一本勝負。勝った方に従う。辞退するならディレイガルドの子息を諦める」
 そうだ。ここは自国ではない。
 「本人では戦えないので代理戦とする。よって、チャンスは一度のみ」
 ここはレイガード。
 「この勝負について結果を含め一切の異議申し立てをしない。これを破ったらどんなことでも甘んじて受け入れる。そうだったな?」
 他国の王を、侮りすぎだ。ディアンは嗤う。愚かな王女を。愚かな国の王族アーリオーリを。
 「王女よ。王族が約束をたがえるとどうなるか。わからないはずがない」
 「う、う、うああああああ!」
 何を思ったか、アフロディーテはディアンたちに向かって突進してきた。あの巨体が勢いよく突っ込んでくる。レイガード国の護衛たちが盾を構える。何としてでも抑え込まねば。
 アーリオーリの人々は青ざめた。何ということをしているのだ。他国の王族、それも国王を害そうなど。アーリオーリ国の護衛たちがアフロディーテを押さえる。だが止まらない。護衛たちは次々と吹き飛ばされていく。女官たちも必死だ。弾き飛ばされようが踏まれようが食らいつく。奮闘と言うか、死闘虚しくアフロディーテはディアンたちに迫る。
 すると。
 「邪魔だ。退いていろ」
 エリアストが前に出た。
 「汚いモノがエルシィに近付くな」
 ズドンッ。
 およそ人を蹴ったとは思えない音が響いた。
 呻き声を上げて腹を押さえるアフロディーテの首であろう部分を掴む。
 「家畜はしっかり管理しろ」
 脱走しているぞ、とエリアストはアーリオーリの人たちの方へ、その巨体をぶん投げた。
 誰も何も言えない。
 え、何その膂力りょりょく。その細い体のどこにそんな力があるの?
 「その家畜が目覚めたら誓約不履行の誓約を交わす」
 護衛に手袋と靴を交換されながらエリアストは言った。
 家畜呼ばわりを誰も咎めない。
 「目覚めたら控えの者に声をかけよ」
 ディアンたちもそう言って立ち上がった。
 「エルシィ、何ともないか」
 「はい。何の問題もありません。旦那様こそ、どこか痛めてはおりませんか」
 エリアストの手をさすりながら、足も気にしているアリスを抱き締める。
 「ああ、大丈夫だ。エルシィに何もなくて良かった」
 「父上、どんな膂力をしているのですか」
 「お母様を守るときは眠れる力が目覚めるのかしら」
 双子の言葉にアリスは微笑んだ。
 「旦那様は昔から力持ちでしたよ」
 力持ちで済むレベルではない。だが、アリスが笑っている、それだけで双子は何もかもどうでも良くなる。
 「ノア、怪我はしませんでしたか」
 心配そうに覗き込むアリスに、ノアリアストは微笑んだ。
 「父上仕込みです。まったく問題ありません、母上。ありがとうございます」
 アリスも微笑み返す。
 「ディアも、お疲れ様でしたね」
 「何をしに来たのかまったくわかりませんでしたわ」
 アリスがダリアの頭を撫でると、ダリアは嬉しそうに笑った。


*最終話へつづく*
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