では、復讐するか

らがまふぃん

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幕間 前編

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王太子リスラン様視点です。
リスラン様は、こんな人です。


*∽*∽*∽*∽*


ノヴァは、自身の感情で物事を判断しない人間だった。
だからこそ、公正な目で判断して欲しくて、私はノヴァを頼った。
何故ノヴァを頼る事態となったか。

学園に入って二ヶ月もすると、奇妙な女につきまとわれることとなる。
最初の接触は、風に飛ばされて枝にかかったハンカチを、騎士団長を父に持つガイアスに取らせたことだ。立場上、私と会話をするには、側近候補を通して許可を得てからになる。学園では実際の社交界ほど厳しくはないにしても、王族は当然別格。まして王太子となれば、最上級の敬意を払わなくてはならない。常識だ。

だがその女は、その常識を持ち合わせていなかった。

オプト伯爵家の娘、スウィーディー。
何やら上を見上げて困った様子。私はガイアスに、困り事があるなら手助けをするよう命じた。これまた立場上、見て見ぬふりは出来ないからだ。
ガイアスからハンカチを受け取ると、その女はあろうことか、私に駆け寄ってきた。よく知らぬ女だ。警戒したシュリとアサトが私の前に立ち、帯剣を許可されたガイアスがいつでも抜剣出来るよう構えながら、その女の背後について追いかける。
シュリとアサトに阻まれながらも、その女は私を見据えながら礼を言ってきた。

その目を、気味が悪い、と感じた。

それからも、頻繁に何かしら困っている様子の女を見かけ、私はアサトたちとその婚約者たちも含めて集めた。
場所は王城の一室。
女の狙いがわからないため、情報収集を命じた。
狙いがわかるまで、不快で仕方がないが、女を泳がせることにした。
アサトたちが私に触れぬよう注意をしても、何度言っても腕に絡みついてこようとする。私を警護する位置的に大抵シュリになるが、シュリがあの女に抱きつかれるという尊い犠牲のもと、触れられずに済んでいるが。
シュリ、そんな顔は止めなさい。情報が引き出せなくなったら困るだろう。
そんなわけで、万が一にも触れられたらと思うと恐ろしくて手袋は絶対外せないし、名前でも呼んできやがる。やたらと笑いかけてくる目が気持ち悪くてつい逸らしてしまうし、自分の出掛ける予定を、まるで私たちと一緒に出掛けるかのように話して周囲に誤解を与える、なんて、日常だ。

どこぞの国が、スパイとしてハニートラップを仕掛けて来ているのではないかと疑っているが、他国を匂わせる話もイントネーションも今の所ない。
しばらくすると女は、私の婚約者であるユフィことユセフィラから、嫌がらせを受けていると仄めかし始めやがった。ハッキリとは言わないし、ユフィやアサトたちの婚約者たちの名前を出すこともないが、どう考えてもユフィたちのことを指している。
私たちの仲を裂いて、あの女が王太子妃の座を狙い、ゆくゆくはこの国を掌握しようとしているのだとしたら。
仄めかすだけ仄めかし、自分の気のせいだ、何でもない、偶然そうなった、など、まるでユフィたちのことを庇っているかのように、発言を取り消すのだ。
不快な存在が、私の愛するユフィを貶めることに無限に殺意が湧くが、大きく息をして本当にギリギリ何とか落ち着かせる。

万に一つもあり得ないが、ユフィがあの女の言う通りの悪女だった場合も考えなくてはならないことが嫌すぎる。
それはユフィとの別れを意味するからだ。
気付けばあの女を色々な方法で殺すことばかり考えて私の思考と時間を奪われていることに、より嫌悪感が募る。そんなことを考えないよう、ユフィとの思い出や未来のことを考えて、脳内を浄化する。
情けない話だが、自分たちではどうしても、婚約者であるユセフィラに肩入れしてしまう。
俯瞰して物事を見てくれる者は側にいるが、鋭く細やかな観察眼と飽くなき探究心を持つ研究者肌であるノヴァほど、信頼出来る者はいない。
ユセフィラを信じている、などと言う言葉で思考を放棄するわけにはいかない。
と言うか、本当はユフィが悪女でも何でもいい。意外な一面だ、とサムズアップ出来る。何なら両手を広げてこの胸へ飛び込んできてもらっていい。むしろ飛び込んでくれ。
だが王太子の婚約者と言えば、未来の王妃。一国の片翼を担う者なのだ。感情論を述べるわけにはいかない。王太子妃になる者を見極めなくてはならないことが異常であったが、判断を誤れば、国そのものを揺るがしかねない事態である。そのため、最も信頼するノヴァを呼び寄せたのだ。
弟のフィスランが王太子になってくれないかなと半ば本気で思いつつ。
ノヴァは私の二つ下だが、かなり大人びているので、学生として紛れても違和感などないだろう。



*後編につづく*
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