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20 おつかれさまの会
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「頼りっぱなしですまなかった、ノヴァ」
リスランはパーティーの騒動の後、学園の全員に、スウィーディーの目的を確かめるために泳がせていたことを告げた。そして、学園内を騒がせてしまったことと、今回のパーティーもこんなことになってしまったことへの謝罪として、サプライズを用意していた。
今流行の劇団による、最も人気のある演目の上演だった。
間近で観劇出来たことに、全員が震えるほど感動していた。
王城にて。
今までの労いも込めて、アサトたちとその婚約者、第二王子フィスランと主役のノヴァとで、ささやかながらの慰労会を開いていた。
「あれは、流行のメンヘラというヤツですか?」
全員がノヴァを労い、あの異常性についてフィスランが口にする。フィスランはあの場にはいなかったが、顛末は報告で聞いている。
フィスランの言葉に、リスランが少し首を傾げて答えた。
「メンタルヘラクレス、だったか?強精神の持ち主」
全員が吹き出した。
「聞いたことない言葉だが、間違いではないな」
肩を震わせながら、ノヴァが肯定する。
「メンタルヘルス、でしたね、確か。精神状態がよろしくない者を指す言葉でしたか?」
シュリが軌道修正をはかると、
「精神の健康状態のことを指す言葉だが、最近は、その状態が良くない者を揶揄しているようだな」
頷き答えるノヴァに、他の者たちも頷いている。
「そんな彼女は、私に、本当の自分を見せようとしていたと思う」
「何それ。メンヘラを?怖いんですけど」
フィスランが引き攣った顔をすると、
「いや、そうではなく。本当は色々とわかっているが、バカなフリをしているだけだと教えようとしていた気がする」
まあ、いろいろとおかしいと気付いて欲しいが、とノヴァは苦笑する。
「それは、兄上を手に入れるための協力者になってもらおうとして?」
「恐らく」
「フリも何も、常識知らずよりも質の悪いものを抱えていたではないですか」
軽くホラーだ。
アサトが眉を顰めると、同意するようにフィスランも頷く。
「あそこまでのもの抱えていたとは。兄上、よく無事でしたね」
「確かに、あれでは何がきっかけで豹変するかわからなかったな。運が良かった、で済ませてはいけないが、運が良かった」
立場上、何かあってからでは遅い。そのため、アサトたちで周りを固めてはいたが、本当にどんな手段を取ってくるかわからない人物だったのだ。教訓として活かすしかないが、アサトたちは王太子を危険な目に遭わせたとして、少なからず罰を受けなくてはならない。理不尽に思えるかもしれないが、そういうものなのだ。偶々、今回はリスランに何もなかっただけ。
「ああ、そうだな。それにしても、こちらのかけた時間を考えると、本当に呆気なく終わってしまった。もっと難航すると思ったが、あまりにもあっさりと自爆したものだ」
どこか不満そうに髪をかき上げるノヴァに、リスランは苦笑する。
「あっさりしていると感じたのは、それだけ周到に用意をしていたからだ。追い詰められてのものだ」
「あの程度で追い詰められるとは思わなかった」
「その程度だったのだ。そして、その程度の者に、我々は振り回されてしまった。もっと視野を広げねば。今後の課題だ。
父上にも、たかが一人の火の粉を払うのに時間をかけすぎだと叱責された。返す言葉もない」
スウィーディーの件は、すぐに国王と王妃であるリスランの両親に伝えていた。その上で両親は、どう解決するのかお手並み拝見、と静観していた。ノヴァを引っ張り出してきたことには驚いていたし、アサトたちやその婚約者たちにもすぐに情報共有したことは評価された。もちろん、何でも情報共有していいわけではないことはわかっているので、適切な対応であったことへの評価だ。
「アサト、シュリ、ガイアス。今回の件は、本当にすまなかった」
罰を受けなくてはならないことも含め、頭を下げるリスランを、三人は窘める。
「お止めください。今回の件は、我々の甘さがこれ程までにことを大きくしてしまった。守るべきあなた様を危険に晒したこと、深くお詫び申し上げます」
アサトが謝罪と共に頭を下げる。
「殿下、どうか我々になど頭を下げないでください。さらなる視野を手に入れるため、もっと精進して参ります。本当に申し訳ございませんでした」
「殿下、私は一から修行し直して参ります。誠に申し訳ございませんでした」
シュリにガイアスも頭を下げる。
「おまえたちにはこれからも世話になる。誰一人欠けることは許さん。いいな。私を支えてくれ」
三人の、側近候補として相応しくないという辞退を仄めかす言葉を、リスランは許さなかった。
「「「王太子殿下のお心のままに」」」
三人は泣きそうになりながら、最上級の礼を取った。
*最終話へつづく*
リスランはパーティーの騒動の後、学園の全員に、スウィーディーの目的を確かめるために泳がせていたことを告げた。そして、学園内を騒がせてしまったことと、今回のパーティーもこんなことになってしまったことへの謝罪として、サプライズを用意していた。
今流行の劇団による、最も人気のある演目の上演だった。
間近で観劇出来たことに、全員が震えるほど感動していた。
王城にて。
今までの労いも込めて、アサトたちとその婚約者、第二王子フィスランと主役のノヴァとで、ささやかながらの慰労会を開いていた。
「あれは、流行のメンヘラというヤツですか?」
全員がノヴァを労い、あの異常性についてフィスランが口にする。フィスランはあの場にはいなかったが、顛末は報告で聞いている。
フィスランの言葉に、リスランが少し首を傾げて答えた。
「メンタルヘラクレス、だったか?強精神の持ち主」
全員が吹き出した。
「聞いたことない言葉だが、間違いではないな」
肩を震わせながら、ノヴァが肯定する。
「メンタルヘルス、でしたね、確か。精神状態がよろしくない者を指す言葉でしたか?」
シュリが軌道修正をはかると、
「精神の健康状態のことを指す言葉だが、最近は、その状態が良くない者を揶揄しているようだな」
頷き答えるノヴァに、他の者たちも頷いている。
「そんな彼女は、私に、本当の自分を見せようとしていたと思う」
「何それ。メンヘラを?怖いんですけど」
フィスランが引き攣った顔をすると、
「いや、そうではなく。本当は色々とわかっているが、バカなフリをしているだけだと教えようとしていた気がする」
まあ、いろいろとおかしいと気付いて欲しいが、とノヴァは苦笑する。
「それは、兄上を手に入れるための協力者になってもらおうとして?」
「恐らく」
「フリも何も、常識知らずよりも質の悪いものを抱えていたではないですか」
軽くホラーだ。
アサトが眉を顰めると、同意するようにフィスランも頷く。
「あそこまでのもの抱えていたとは。兄上、よく無事でしたね」
「確かに、あれでは何がきっかけで豹変するかわからなかったな。運が良かった、で済ませてはいけないが、運が良かった」
立場上、何かあってからでは遅い。そのため、アサトたちで周りを固めてはいたが、本当にどんな手段を取ってくるかわからない人物だったのだ。教訓として活かすしかないが、アサトたちは王太子を危険な目に遭わせたとして、少なからず罰を受けなくてはならない。理不尽に思えるかもしれないが、そういうものなのだ。偶々、今回はリスランに何もなかっただけ。
「ああ、そうだな。それにしても、こちらのかけた時間を考えると、本当に呆気なく終わってしまった。もっと難航すると思ったが、あまりにもあっさりと自爆したものだ」
どこか不満そうに髪をかき上げるノヴァに、リスランは苦笑する。
「あっさりしていると感じたのは、それだけ周到に用意をしていたからだ。追い詰められてのものだ」
「あの程度で追い詰められるとは思わなかった」
「その程度だったのだ。そして、その程度の者に、我々は振り回されてしまった。もっと視野を広げねば。今後の課題だ。
父上にも、たかが一人の火の粉を払うのに時間をかけすぎだと叱責された。返す言葉もない」
スウィーディーの件は、すぐに国王と王妃であるリスランの両親に伝えていた。その上で両親は、どう解決するのかお手並み拝見、と静観していた。ノヴァを引っ張り出してきたことには驚いていたし、アサトたちやその婚約者たちにもすぐに情報共有したことは評価された。もちろん、何でも情報共有していいわけではないことはわかっているので、適切な対応であったことへの評価だ。
「アサト、シュリ、ガイアス。今回の件は、本当にすまなかった」
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「お止めください。今回の件は、我々の甘さがこれ程までにことを大きくしてしまった。守るべきあなた様を危険に晒したこと、深くお詫び申し上げます」
アサトが謝罪と共に頭を下げる。
「殿下、どうか我々になど頭を下げないでください。さらなる視野を手に入れるため、もっと精進して参ります。本当に申し訳ございませんでした」
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シュリにガイアスも頭を下げる。
「おまえたちにはこれからも世話になる。誰一人欠けることは許さん。いいな。私を支えてくれ」
三人の、側近候補として相応しくないという辞退を仄めかす言葉を、リスランは許さなかった。
「「「王太子殿下のお心のままに」」」
三人は泣きそうになりながら、最上級の礼を取った。
*最終話へつづく*
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