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13.噂
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あと二年。
国王ジュラヴァルタは落ち着かなかった。子どもたちが示し合わせたように十八で命を落としている。四人もいたのに、残っているのは末の息子ただ一人。その息子が、あと二年もしないで十八になる。ジュラキュリオンは王の器などではない。ジュラヴァリオやジュラキュレムが生きていたら、決して王位になど就ける人間ではなかった。だが、もう選択肢はない。曲がりなりにも自分の子だ。どんなに愚かでも、王位を継いでもらわなければならない。
「クソッ。なんでこんなことにっ」
ジュラヴァルタは、苛立ち紛れに机の書類を薙ぎ払う。
相次ぐ王族の不幸に、国民は不信感を抱いている。何かの呪いでも受けているのではないか、と。そんな王族で大丈夫か、と。そこへさらに、ジュラキュリオンの愚かな行動が重なり、貴族たちからの嘲笑の対象となっている。王家への敬意は空のもの。頭を下げつつ舌を出している。そんな王太子に、まともな側近が付くはずもない。優秀な者は理由をつけて辞退していく。ありえない。王太子の側近だ。これ以上ない栄誉ある地位。それを蹴られるのだ。
そして最近市井で流れる噂。
国王は国民を奸計により処刑する。
「何だというのだっ。一体何なんだっ」
机を何度も殴りつける。
「バカにしおって!私を誰だと思っているんだ!貴様らのような輩は私に傅いていればいいものを!それを!貶めるとは!ふざけおって!」
他の束ねられた書類も、苛立ち紛れに薙ぐ。そこで扉の外から内側の護衛に声がかかる。
「シェラハドール伯から急ぎの書類とのことだ」
内にいた護衛がそれを国王に伝える。
「チッ。入れ!」
シェラハドール伯が中に入ると、机の周りの惨事に軽く目を開く。挨拶を済ませて書類を渡すと、散らばる書類を無言で片付ける。
「よい、シェラハドール!放っておけ!」
シェラハドール伯は無視して黙々と拾う。ジュラヴァルタはひとつ息を吐くと、椅子に腰を下ろした。
「シェラハドール、息子は見つかったか」
子どものことを考えていたからだろう。同じく子どものことで苦労しているだろう、と労う意味でジュラヴァルタはそう言った。何故、行方不明になったかは知らないままに。
シェラハドール伯はほんの僅か、指が震えた。
「あれは、もう、死んだものと思っております」
「そうか」
シェラハドール伯は片付け終わると、一礼して退室した。握られた手のひらに爪が食い込み、血が滲んでいることは誰にも気付かれなかった。
シェラハドール伯が出て行くと、少し落ち着きを取り戻したジュラヴァルタは、ケースに入れて飾られたカンパニュラを見た。
「大丈夫。伯母上がわかってくださっている」
そのまま進めばいい、と認めるように、毎年届く花。もう、十七本になる。
ふと、ジュラヴァルタは不安になった。
「十、七」
あと一本で、十八になる。
子どもたちが示し合わせたように亡くなった歳。
「いや、まさか、な」
考えすぎだ。ジュラヴァルタは首を振る。だが、それが頭から消えることはなかった。
*つづく*
国王ジュラヴァルタは落ち着かなかった。子どもたちが示し合わせたように十八で命を落としている。四人もいたのに、残っているのは末の息子ただ一人。その息子が、あと二年もしないで十八になる。ジュラキュリオンは王の器などではない。ジュラヴァリオやジュラキュレムが生きていたら、決して王位になど就ける人間ではなかった。だが、もう選択肢はない。曲がりなりにも自分の子だ。どんなに愚かでも、王位を継いでもらわなければならない。
「クソッ。なんでこんなことにっ」
ジュラヴァルタは、苛立ち紛れに机の書類を薙ぎ払う。
相次ぐ王族の不幸に、国民は不信感を抱いている。何かの呪いでも受けているのではないか、と。そんな王族で大丈夫か、と。そこへさらに、ジュラキュリオンの愚かな行動が重なり、貴族たちからの嘲笑の対象となっている。王家への敬意は空のもの。頭を下げつつ舌を出している。そんな王太子に、まともな側近が付くはずもない。優秀な者は理由をつけて辞退していく。ありえない。王太子の側近だ。これ以上ない栄誉ある地位。それを蹴られるのだ。
そして最近市井で流れる噂。
国王は国民を奸計により処刑する。
「何だというのだっ。一体何なんだっ」
机を何度も殴りつける。
「バカにしおって!私を誰だと思っているんだ!貴様らのような輩は私に傅いていればいいものを!それを!貶めるとは!ふざけおって!」
他の束ねられた書類も、苛立ち紛れに薙ぐ。そこで扉の外から内側の護衛に声がかかる。
「シェラハドール伯から急ぎの書類とのことだ」
内にいた護衛がそれを国王に伝える。
「チッ。入れ!」
シェラハドール伯が中に入ると、机の周りの惨事に軽く目を開く。挨拶を済ませて書類を渡すと、散らばる書類を無言で片付ける。
「よい、シェラハドール!放っておけ!」
シェラハドール伯は無視して黙々と拾う。ジュラヴァルタはひとつ息を吐くと、椅子に腰を下ろした。
「シェラハドール、息子は見つかったか」
子どものことを考えていたからだろう。同じく子どものことで苦労しているだろう、と労う意味でジュラヴァルタはそう言った。何故、行方不明になったかは知らないままに。
シェラハドール伯はほんの僅か、指が震えた。
「あれは、もう、死んだものと思っております」
「そうか」
シェラハドール伯は片付け終わると、一礼して退室した。握られた手のひらに爪が食い込み、血が滲んでいることは誰にも気付かれなかった。
シェラハドール伯が出て行くと、少し落ち着きを取り戻したジュラヴァルタは、ケースに入れて飾られたカンパニュラを見た。
「大丈夫。伯母上がわかってくださっている」
そのまま進めばいい、と認めるように、毎年届く花。もう、十七本になる。
ふと、ジュラヴァルタは不安になった。
「十、七」
あと一本で、十八になる。
子どもたちが示し合わせたように亡くなった歳。
「いや、まさか、な」
考えすぎだ。ジュラヴァルタは首を振る。だが、それが頭から消えることはなかった。
*つづく*
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