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ミリス王国編 *愛国*
前編
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新しい話始めました。
今回は、ひとつの世界観の元、各国でひっそり育まれた?愛にスポットをあてています。
最初に世界観をお読みいただきましたら、あとはどの章からお読みいただいても差し支えありません。
どのような内容かは、章の横にサブタイトルのようについたタグでご判断ください。
こちらの話はうっすらGLっぽい箇所が出て来ます。
親愛なだけなのですが、苦手な方はこのままお戻りください。
*~*~*~*~*
大陸の南西に位置する小さな王国、ミリス。この国に、双子の姫が生まれた。双子姫は、姉をミリア、妹をミリヤといった。双子姫は成長するにつれ、美しさが際立った。特に姉、ミリアの美しさは、女神の如く。頭脳も聡明で、一を言えば十を知る。誰もが次代はミリアが盛り立ててくれると信じている。
この国は、王族には三人の護衛騎士がつく。王族専用の護衛騎士を育成する訓練所があり、めぼしい者を幼い頃からここに入れる。家名を捨て、生涯を王族に捧げるために、厳しい訓練を受ける。ある程度の教育過程で三人一組とする。ずば抜けた戦闘能力を持つ一人、戦闘能力プラス侍女・侍従能力を持つ一人、戦闘能力プラス執務補佐能力を持つ一人の三人一組。性格を精査し、組み合わせる。三人は運命共同体。
ただし、王族に召し抱えられるのはほんの一握り。全員の能力は拮抗しているため、仕える王族との相性で決まってしまう。だが、この訓練所の出身者は貴族がこぞって欲する。王族護衛が出来る人材だ。当然だろう。訓練所に入れた時点で、将来は明るい。
幼い頃から訓練所で共に過ごしてきた者たちだ。あらゆる情報を共有している。その中には、各人の戦闘スタイルや癖まで含まれる。王族護衛に選ばれた者を襲撃して、王位簒奪などを企てる貴族に仕えてしまったらとんでもない。訓練所でのことを触れ回ることは禁忌。それが出来ないよう契約魔法で縛られることになるが、企みさえしなければその能力を余すことなく発揮できるので、不都合はない。
この国は十六で成人と認められる。王族は幼い頃より訓練所の人間と関わりを持ち、最も相性の良い者を成人の儀と共に迎え入れ、護衛騎士は一生をその王族に捧げる。実際は、何度も交流を持つうちに相性はわかるので、成人の儀を迎えるよりも遙かに前に護衛騎士は決まってしまう。故に、ある程度の時期になると、交流の時間は既に決められた護衛騎士たちと、更に親交を深める時間となる。
ミリアとミリヤの護衛騎士たちは、この交流の時間が苦痛だった。
誉れある王族の護衛騎士に選ばれたというのに、なぜそんな感情を抱くのか。
原因は姉のミリアにあった。
双子であるのに、あまり似ていない双子姫。ミリヤは美しい。しかしミリアは更に美しい。比類なき美しさだ。だが姉ミリアの性格は、妹ミリヤの護衛騎士たちにとって、受け入れがたいものがあった。
優しく賢い姉を演じている。
互いの護衛騎士たちは、すぐに気付いた。双子姫に選ばれたことにより、訓練所以外でも交流を持つようになり、双子姫の日常に一緒にいることが増えたことで、見えなかった部分が見えた。
姉ミリアは、妹ミリヤが姉に何かをしているように見せるのだ。
妹が動くのを察して、それより一瞬早くミリアが動き、ぶつかるように仕向けて自分のドレスを汚させる。妹の手の動きに合わせて動き、自分の扇やイヤリングを落とさせる。持ち物を踏ませる。そしていつもミリアは優しく微笑むのだ。気にしないで、大丈夫だから、と。どれも些細なことだ。だが、度重なると、周囲の目にはどう映るか。“美しく聡明な姉と、それに嫉妬する妹”と映るだろう。しかし、周囲を欺くことが出来ても、ミリアの護衛騎士たちが気付かないはずがない。それなのに、その行いを諫めないのだ。間違ったことをしたなら、主人のその行いを諫めることも、護衛騎士の役割だ。ミリアの行動が修まらないということは、役割を放棄しているということ。主人のご機嫌取りしか出来ないのなら、護衛騎士など止めてしまえ。妹ミリヤの護衛騎士たちは、そう苦々しく思っていた。
一方、姉ミリアの護衛騎士たちもまた、ミリアの行動を止められないことを、もどかしく思っていた。そのせいで、ミリヤの護衛騎士たちからの心証が悪いことも。諫めることが出来ないと自分たちを軽蔑しているだけならまだいい。それがミリアにまで向いていることが、居たたまれなかった。
「ごめんなさいね」
ミリアの部屋でお茶の準備をしていると、ポツリとミリアが零した。護衛騎士の三人は慌ててミリアの前に跪く。
「謝らないでくださいませ!」
侍女を兼任するミリアの護衛騎士、ミーシェがブンブンと首を振った。
「我らに謝罪は不要。どうか、お心のままに」
戦闘特化のウェルが、深く頭を下げる。
「ミリヤ様の護衛騎士の無礼をお止めできない私どもの不甲斐なさこそ、謝罪いたします」
執務補佐を兼任するレインもまた、苦しそうに頭を下げる。
「もう少し。もう少しよ。成人の儀まで」
ミリアの言葉に、三人はゆっくり頷いた。
ミリヤの護衛騎士たちから見ると、姉のミリアは聡明とは言い難かった。すべて、ミリヤの真似をしているとしか思えなかった。頭のいいフリが出来るのだから、それなりには出来るのかも知れない。しかし、ミリヤは神の如き頭脳の持ち主だった。すべてを見てきたかのような言動であった。だが、それは気付けばなくなっていた。姉が女王として君臨し、自分はその補佐であると理解するが故の行動だろう。
ミリヤが姉に提案したことは、すべて姉の手柄となっていた。それが、姉の過大評価に繋がっている。それなのにミリヤは、お役に立てて良かったです、と優しく微笑むだけだ。
「なんでこんなにも違うんだ?同じ姉妹だろーが!」
ミリヤの護衛騎士、戦闘特化のログナは、訓練所に戻るといつもそう吐き捨てていた。三人にあてがわれた部屋の共同スペースにあるソファに、それぞれが腰を下ろしている。
「わがまま姫ってワケじゃないけど。腹黒姫だわ」
侍女兼任のメイは困ったように眉を寄せる。
「ただ、どうにも腑に落ちないんですよね」
執務補佐兼任のアスラは腕を組んで考える。
「うん、まあ、そうなのよね」
メイも困ったような顔をする。
「腑に落ちない?」
ログナは首を傾げる。
「中途半端なんですよ」
アスラは前屈みになって自分の膝に肘を置くと、組んだその手に顎を乗せた。
「ミリヤ様を廃嫡させたいならもっとやりようがあるでしょう。貶めるにしても生温すぎる。ミリア様自身の評判を上げたいにしても、ねぇ?」
「何もかも中途半端すぎて、結果何がしたいのかって事か?」
アスラの言葉にログナがそう返すと、アスラとメイが頷いた。
「でもミリヤ様の手柄を自分の手柄にしてんだ。充分悪意を感じる」
ログナの言葉にアスラは、まあそうなんですけど、と溜め息をついた。
このままあとひと月もしないで成人の儀を迎える。そうなると、自分たちは一生このもやもやした状態が続くのだ。
「今更かも知れませんが、一度、きちんと話し合った方が良さそうですね」
アスラはポツリと、そう零した。
成人の儀まで十日と迫った日、アスラたちはミリアの護衛騎士たちを呼び止めた。もうすぐ双子姫の所へ行く時間だ。
「少し、いいですか」
アスラの言葉に、ミーシェがキュッと唇を引き結んだ。
「すまない、今日は少し早めにミリア様に呼ばれているんだ」
ウェルの言葉に、ミーシェもレインも頷いてそのまま踵を返そうとした。
「このままだと、私たちはダメになる」
尚も続くアスラの言葉に、ウェルたちは困ったように眉を下げた。
「すみません。もう少し、もう少しだけ待ってください」
レインの言葉にログナは噛みついた。
「このままじゃ成人の儀を迎えられねぇ!オレたちの一生がかかってんだぞ!」
「ええ、ええ、わかっておりますわ。それでも敢えて申しましょう。待て、ですわ」
どこからともなく聞こえた声は、ミリアの声だった。レインは通信の魔道具でミリアと話をしているところだった。ログナの怒りの声に、ミリアは淡々と告げる。
「そうですわね、成人の儀の前日。ミリヤも連れてわたくしの部屋へ。二十時に来て下さるかしら。いえ、来なさい」
わかったわね、と、ミリアは通信を切った。ウェルたちは困ったように笑って、ログナたちから離れた。残されたログナたちは、困惑を隠せなかった。
*中編につづく*
今回は、ひとつの世界観の元、各国でひっそり育まれた?愛にスポットをあてています。
最初に世界観をお読みいただきましたら、あとはどの章からお読みいただいても差し支えありません。
どのような内容かは、章の横にサブタイトルのようについたタグでご判断ください。
こちらの話はうっすらGLっぽい箇所が出て来ます。
親愛なだけなのですが、苦手な方はこのままお戻りください。
*~*~*~*~*
大陸の南西に位置する小さな王国、ミリス。この国に、双子の姫が生まれた。双子姫は、姉をミリア、妹をミリヤといった。双子姫は成長するにつれ、美しさが際立った。特に姉、ミリアの美しさは、女神の如く。頭脳も聡明で、一を言えば十を知る。誰もが次代はミリアが盛り立ててくれると信じている。
この国は、王族には三人の護衛騎士がつく。王族専用の護衛騎士を育成する訓練所があり、めぼしい者を幼い頃からここに入れる。家名を捨て、生涯を王族に捧げるために、厳しい訓練を受ける。ある程度の教育過程で三人一組とする。ずば抜けた戦闘能力を持つ一人、戦闘能力プラス侍女・侍従能力を持つ一人、戦闘能力プラス執務補佐能力を持つ一人の三人一組。性格を精査し、組み合わせる。三人は運命共同体。
ただし、王族に召し抱えられるのはほんの一握り。全員の能力は拮抗しているため、仕える王族との相性で決まってしまう。だが、この訓練所の出身者は貴族がこぞって欲する。王族護衛が出来る人材だ。当然だろう。訓練所に入れた時点で、将来は明るい。
幼い頃から訓練所で共に過ごしてきた者たちだ。あらゆる情報を共有している。その中には、各人の戦闘スタイルや癖まで含まれる。王族護衛に選ばれた者を襲撃して、王位簒奪などを企てる貴族に仕えてしまったらとんでもない。訓練所でのことを触れ回ることは禁忌。それが出来ないよう契約魔法で縛られることになるが、企みさえしなければその能力を余すことなく発揮できるので、不都合はない。
この国は十六で成人と認められる。王族は幼い頃より訓練所の人間と関わりを持ち、最も相性の良い者を成人の儀と共に迎え入れ、護衛騎士は一生をその王族に捧げる。実際は、何度も交流を持つうちに相性はわかるので、成人の儀を迎えるよりも遙かに前に護衛騎士は決まってしまう。故に、ある程度の時期になると、交流の時間は既に決められた護衛騎士たちと、更に親交を深める時間となる。
ミリアとミリヤの護衛騎士たちは、この交流の時間が苦痛だった。
誉れある王族の護衛騎士に選ばれたというのに、なぜそんな感情を抱くのか。
原因は姉のミリアにあった。
双子であるのに、あまり似ていない双子姫。ミリヤは美しい。しかしミリアは更に美しい。比類なき美しさだ。だが姉ミリアの性格は、妹ミリヤの護衛騎士たちにとって、受け入れがたいものがあった。
優しく賢い姉を演じている。
互いの護衛騎士たちは、すぐに気付いた。双子姫に選ばれたことにより、訓練所以外でも交流を持つようになり、双子姫の日常に一緒にいることが増えたことで、見えなかった部分が見えた。
姉ミリアは、妹ミリヤが姉に何かをしているように見せるのだ。
妹が動くのを察して、それより一瞬早くミリアが動き、ぶつかるように仕向けて自分のドレスを汚させる。妹の手の動きに合わせて動き、自分の扇やイヤリングを落とさせる。持ち物を踏ませる。そしていつもミリアは優しく微笑むのだ。気にしないで、大丈夫だから、と。どれも些細なことだ。だが、度重なると、周囲の目にはどう映るか。“美しく聡明な姉と、それに嫉妬する妹”と映るだろう。しかし、周囲を欺くことが出来ても、ミリアの護衛騎士たちが気付かないはずがない。それなのに、その行いを諫めないのだ。間違ったことをしたなら、主人のその行いを諫めることも、護衛騎士の役割だ。ミリアの行動が修まらないということは、役割を放棄しているということ。主人のご機嫌取りしか出来ないのなら、護衛騎士など止めてしまえ。妹ミリヤの護衛騎士たちは、そう苦々しく思っていた。
一方、姉ミリアの護衛騎士たちもまた、ミリアの行動を止められないことを、もどかしく思っていた。そのせいで、ミリヤの護衛騎士たちからの心証が悪いことも。諫めることが出来ないと自分たちを軽蔑しているだけならまだいい。それがミリアにまで向いていることが、居たたまれなかった。
「ごめんなさいね」
ミリアの部屋でお茶の準備をしていると、ポツリとミリアが零した。護衛騎士の三人は慌ててミリアの前に跪く。
「謝らないでくださいませ!」
侍女を兼任するミリアの護衛騎士、ミーシェがブンブンと首を振った。
「我らに謝罪は不要。どうか、お心のままに」
戦闘特化のウェルが、深く頭を下げる。
「ミリヤ様の護衛騎士の無礼をお止めできない私どもの不甲斐なさこそ、謝罪いたします」
執務補佐を兼任するレインもまた、苦しそうに頭を下げる。
「もう少し。もう少しよ。成人の儀まで」
ミリアの言葉に、三人はゆっくり頷いた。
ミリヤの護衛騎士たちから見ると、姉のミリアは聡明とは言い難かった。すべて、ミリヤの真似をしているとしか思えなかった。頭のいいフリが出来るのだから、それなりには出来るのかも知れない。しかし、ミリヤは神の如き頭脳の持ち主だった。すべてを見てきたかのような言動であった。だが、それは気付けばなくなっていた。姉が女王として君臨し、自分はその補佐であると理解するが故の行動だろう。
ミリヤが姉に提案したことは、すべて姉の手柄となっていた。それが、姉の過大評価に繋がっている。それなのにミリヤは、お役に立てて良かったです、と優しく微笑むだけだ。
「なんでこんなにも違うんだ?同じ姉妹だろーが!」
ミリヤの護衛騎士、戦闘特化のログナは、訓練所に戻るといつもそう吐き捨てていた。三人にあてがわれた部屋の共同スペースにあるソファに、それぞれが腰を下ろしている。
「わがまま姫ってワケじゃないけど。腹黒姫だわ」
侍女兼任のメイは困ったように眉を寄せる。
「ただ、どうにも腑に落ちないんですよね」
執務補佐兼任のアスラは腕を組んで考える。
「うん、まあ、そうなのよね」
メイも困ったような顔をする。
「腑に落ちない?」
ログナは首を傾げる。
「中途半端なんですよ」
アスラは前屈みになって自分の膝に肘を置くと、組んだその手に顎を乗せた。
「ミリヤ様を廃嫡させたいならもっとやりようがあるでしょう。貶めるにしても生温すぎる。ミリア様自身の評判を上げたいにしても、ねぇ?」
「何もかも中途半端すぎて、結果何がしたいのかって事か?」
アスラの言葉にログナがそう返すと、アスラとメイが頷いた。
「でもミリヤ様の手柄を自分の手柄にしてんだ。充分悪意を感じる」
ログナの言葉にアスラは、まあそうなんですけど、と溜め息をついた。
このままあとひと月もしないで成人の儀を迎える。そうなると、自分たちは一生このもやもやした状態が続くのだ。
「今更かも知れませんが、一度、きちんと話し合った方が良さそうですね」
アスラはポツリと、そう零した。
成人の儀まで十日と迫った日、アスラたちはミリアの護衛騎士たちを呼び止めた。もうすぐ双子姫の所へ行く時間だ。
「少し、いいですか」
アスラの言葉に、ミーシェがキュッと唇を引き結んだ。
「すまない、今日は少し早めにミリア様に呼ばれているんだ」
ウェルの言葉に、ミーシェもレインも頷いてそのまま踵を返そうとした。
「このままだと、私たちはダメになる」
尚も続くアスラの言葉に、ウェルたちは困ったように眉を下げた。
「すみません。もう少し、もう少しだけ待ってください」
レインの言葉にログナは噛みついた。
「このままじゃ成人の儀を迎えられねぇ!オレたちの一生がかかってんだぞ!」
「ええ、ええ、わかっておりますわ。それでも敢えて申しましょう。待て、ですわ」
どこからともなく聞こえた声は、ミリアの声だった。レインは通信の魔道具でミリアと話をしているところだった。ログナの怒りの声に、ミリアは淡々と告げる。
「そうですわね、成人の儀の前日。ミリヤも連れてわたくしの部屋へ。二十時に来て下さるかしら。いえ、来なさい」
わかったわね、と、ミリアは通信を切った。ウェルたちは困ったように笑って、ログナたちから離れた。残されたログナたちは、困惑を隠せなかった。
*中編につづく*
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