精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

文字の大きさ
16 / 24

15.

しおりを挟む
ラーナへ、存在否定をする酷い言葉を使います。
苦手な方は、ラーナへのざまぁをする話だという認識だけ持って、読み飛ばしていただいても大丈夫です。


∴∽∴∽∴∽∴∽∴


 「リュクス様っ、わたくしは、知らなかったのですっ」
 王族が、精霊をとても大切にしていることを知っている。だからラーナは、少しでも自分の罪を軽くしなくてはと焦る。
 両親や兄のようになっては堪らない。このままでは、本当に婚約が解消されてしまう。きちんと謝ろう。誠心誠意謝れば、まだ、間に合うはずだ。
 リュクスの前に膝をつき、縋るように両手を組んで見上げるラーナに、リュクスは笑った。
 「ふふ。嫌だな、。そんな稚拙な言い訳、聡明なあなたに相応しくない」
 ラーナ嬢、と、少し他人行儀な呼び方ではあったが、名前を呼んでくれていたというのに。
 「シーナ殿がいたから、あなたと婚約を結んだまで」
 あまりの言葉に、ラーナはハクハクと口を開閉させるが、声が出ない。
 「シーナ殿と添い遂げたかったよ?」
 シーナは精霊の王の加護持ちだ。
 「けれど、年の差もあるから、かなって、ねえ」

 そう、王家は選べる立場ではない。
 選ぶのはシーナ。

 ラーナとでさえ五つ離れている。シーナとでは、八つ。リュクスとしてはまったく問題なかったが、シーナからすれば、どうだろう。

 ラーナは立場。
 シーナは立場。

 決めるのは王家ではない。シーナの意志が最優先。

 すべてはシーナの望みのまま。

 言外の言葉に、ラーナは打ちのめされる。
 シーナとの立場の違いが。格下、いや、論外と蔑んできた妹こそが。
 ガクリと床に膝をつく。

 「だから、シーナ殿の血縁であるあなたと婚約を結んだまでだよ」

 仕方がない。

 追い打ちをかけるようなその言葉は、ラーナを抉った。
 「そ、んな」
 大きく見開かれた目から、一筋、涙が零れた。

 数いる令嬢の中から、自分を選んでくれたのだと思っていた。
 出涸らしだと言われていた、三つ下の妹。
 栄えあるアビアント家の恥だと思っていたあの子。
 世間から隠して、いない者として扱ってきたあの子こそが、必要な存在だった。
 我が家にとって。
 国にとって。
 世界にとって。
 選ばれたのは、選ばれていたのは。
 最初から――。

 「あ、ああ」
 ラーナの両手が、力なく床につく。
 王家の。それは、人心の掌握に非常に優れているという意味だ。誰を伴侶にしても、制御できるということ。伴侶の性格、言動を分析し、上手に転がす。そのため、内面に問題を抱えていても、マナーさえ出来ていれば、然程問題はなかった。
 けれど、精霊を蔑ろにする者はダメだ。
 ラーナがシスティアの存在をもっと深く考えていたら、シーナのことにも気付けたかもしれない。
 加護なしと言われていたシスティア。実際は、とびっきりの加護持ち。ならば、とシーナの奇行と思われていた行動にまで、考えが及べば。そうしてシーナへの態度を改め、アビアント家にも一石を投じ、波紋を広げていたなら。過去の過ちを悔いて、シーナへ尽くすというのなら、このまま結婚をしても構わなかった。
 だが。
 「ああ、でも、所作や作法は申し分ないから、その辺りは本当に楽だった。そこは誇っていいよ」
 リュクスの言葉に、僅かな希望を託してラーナは顔を上げる。
 「あ、あ、わたくし、あなた様の、すべて、あなた様ために、これまで」
 そこまで言って、言葉が出なくなった。
 「すべて私のため?そう。なら」
 あまりにもリュクスの目が冷たかったから。
 「私から必要とされていないおまえが、生きている意味って何だろうね」
 ヒュッ、とラーナは息をのんだ。
 「ねえ、生きていて恥ずかしくないのかな?」
 ああ、これは。
 「本当におまえは、価値のない人間だね」
 これは、事ある毎に、自分がシーナに言っていた言葉。

 そして、悟る。

 ああ、手遅れ。

 冷たい双眸が見下ろしていた。
 第一王子に見初められた。それは、近く王太子になるお方の妻になるということ。自分が王太子妃に、ゆくゆくは王妃となり国母となるということ。
 それは、これまでの自分の努力が報われた証だった。
 そう、思っていたのに。
 幼い頃からの努力も、王族の一員になると決まってからの努力も。

 リュクスと目が合った。
 リュクスは笑った。

 「ご苦労」

 たった、その、たった一言で、すべてが、終わった。



*最終話へつづく*
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました

碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。 学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。 昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...