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ラーナへ、存在否定をする酷い言葉を使います。
苦手な方は、ラーナへのざまぁをする話だという認識だけ持って、読み飛ばしていただいても大丈夫です。
∴∽∴∽∴∽∴∽∴
「リュクス様っ、わたくしは、知らなかったのですっ」
王族が、精霊をとても大切にしていることを知っている。だからラーナは、少しでも自分の罪を軽くしなくてはと焦る。
両親や兄のようになっては堪らない。このままでは、本当に婚約が解消されてしまう。きちんと謝ろう。誠心誠意謝れば、まだ、間に合うはずだ。
リュクスの前に膝をつき、縋るように両手を組んで見上げるラーナに、リュクスは笑った。
「ふふ。嫌だな、アビアント嬢。そんな稚拙な言い訳、聡明なあなたに相応しくない」
ラーナ嬢、と、少し他人行儀な呼び方ではあったが、名前を呼んでくれていたというのに。
「シーナ殿がいたから、あなたと婚約を結んだまで」
あまりの言葉に、ラーナはハクハクと口を開閉させるが、声が出ない。
「もちろんシーナ殿と添い遂げたかったよ?」
シーナは精霊の王の加護持ちだ。
「けれど、年の差もあるから、選んでいただけないかなって、ねえ」
そう、王家は選べる立場ではない。
選ぶのはシーナ。
ラーナとでさえ五つ離れている。シーナとでは、八つ。リュクスとしてはまったく問題なかったが、シーナからすれば、どうだろう。
ラーナは選んでもらう立場。
シーナは選ぶ立場。
決めるのは王家ではない。シーナの意志が最優先。
すべてはシーナの望みのまま。
言外の言葉に、ラーナは打ちのめされる。
シーナとの立場の違いが。格下、いや、論外と蔑んできた妹こそが。
ガクリと床に膝をつく。
「だから仕方がない、シーナ殿の血縁であるあなたと婚約を結んだまでだよ」
仕方がない。
追い打ちをかけるようなその言葉は、ラーナを抉った。
「そ、んな」
大きく見開かれた目から、一筋、涙が零れた。
数いる令嬢の中から、自分を選んでくれたのだと思っていた。
出涸らしだと言われていた、三つ下の妹。
栄えあるアビアント家の恥だと思っていたあの子。
世間から隠して、いない者として扱ってきたあの子こそが、必要な存在だった。
我が家にとって。
国にとって。
世界にとって。
選ばれたのは、選ばれていたのは。
最初から――。
「あ、ああ」
ラーナの両手が、力なく床につく。
王家の人を見る目は確か。それは、人心の掌握に非常に優れているという意味だ。誰を伴侶にしても、制御できるということ。伴侶の性格、言動を分析し、上手に転がす。そのため、内面に問題を抱えていても、マナーさえ出来ていれば、然程問題はなかった。
けれど、精霊を蔑ろにする者はダメだ。
ラーナがシスティアの存在をもっと深く考えていたら、シーナのことにも気付けたかもしれない。
加護なしと言われていたシスティア。実際は、とびっきりの加護持ち。ならば、とシーナの奇行と思われていた行動にまで、考えが及べば。そうしてシーナへの態度を改め、アビアント家にも一石を投じ、波紋を広げていたなら。過去の過ちを悔いて、シーナへ尽くすというのなら、このまま結婚をしても構わなかった。
だが。
「ああ、でも、所作や作法は申し分ないから、その辺りは本当に楽だった。そこは誇っていいよ」
リュクスの言葉に、僅かな希望を託してラーナは顔を上げる。
「あ、あ、わたくし、あなた様の、すべて、あなた様ために、これまで」
そこまで言って、言葉が出なくなった。
「すべて私のため?そう。なら」
あまりにもリュクスの目が冷たかったから。
「私から必要とされていないおまえが、生きている意味って何だろうね」
ヒュッ、とラーナは息をのんだ。
「ねえ、生きていて恥ずかしくないのかな?」
ああ、これは。
「本当におまえは、価値のない人間だね」
これは、事ある毎に、自分がシーナに言っていた言葉。
そして、悟る。
ああ、手遅れ。
冷たい双眸が見下ろしていた。
第一王子に見初められた。それは、近く王太子になるお方の妻になるということ。自分が王太子妃に、ゆくゆくは王妃となり国母となるということ。
それは、これまでの自分の努力が報われた証だった。
そう、思っていたのに。
幼い頃からの努力も、王族の一員になると決まってからの努力も。
リュクスと目が合った。
リュクスは笑った。
「ご苦労」
たった、その、たった一言で、すべてが、終わった。
*最終話へつづく*
苦手な方は、ラーナへのざまぁをする話だという認識だけ持って、読み飛ばしていただいても大丈夫です。
∴∽∴∽∴∽∴∽∴
「リュクス様っ、わたくしは、知らなかったのですっ」
王族が、精霊をとても大切にしていることを知っている。だからラーナは、少しでも自分の罪を軽くしなくてはと焦る。
両親や兄のようになっては堪らない。このままでは、本当に婚約が解消されてしまう。きちんと謝ろう。誠心誠意謝れば、まだ、間に合うはずだ。
リュクスの前に膝をつき、縋るように両手を組んで見上げるラーナに、リュクスは笑った。
「ふふ。嫌だな、アビアント嬢。そんな稚拙な言い訳、聡明なあなたに相応しくない」
ラーナ嬢、と、少し他人行儀な呼び方ではあったが、名前を呼んでくれていたというのに。
「シーナ殿がいたから、あなたと婚約を結んだまで」
あまりの言葉に、ラーナはハクハクと口を開閉させるが、声が出ない。
「もちろんシーナ殿と添い遂げたかったよ?」
シーナは精霊の王の加護持ちだ。
「けれど、年の差もあるから、選んでいただけないかなって、ねえ」
そう、王家は選べる立場ではない。
選ぶのはシーナ。
ラーナとでさえ五つ離れている。シーナとでは、八つ。リュクスとしてはまったく問題なかったが、シーナからすれば、どうだろう。
ラーナは選んでもらう立場。
シーナは選ぶ立場。
決めるのは王家ではない。シーナの意志が最優先。
すべてはシーナの望みのまま。
言外の言葉に、ラーナは打ちのめされる。
シーナとの立場の違いが。格下、いや、論外と蔑んできた妹こそが。
ガクリと床に膝をつく。
「だから仕方がない、シーナ殿の血縁であるあなたと婚約を結んだまでだよ」
仕方がない。
追い打ちをかけるようなその言葉は、ラーナを抉った。
「そ、んな」
大きく見開かれた目から、一筋、涙が零れた。
数いる令嬢の中から、自分を選んでくれたのだと思っていた。
出涸らしだと言われていた、三つ下の妹。
栄えあるアビアント家の恥だと思っていたあの子。
世間から隠して、いない者として扱ってきたあの子こそが、必要な存在だった。
我が家にとって。
国にとって。
世界にとって。
選ばれたのは、選ばれていたのは。
最初から――。
「あ、ああ」
ラーナの両手が、力なく床につく。
王家の人を見る目は確か。それは、人心の掌握に非常に優れているという意味だ。誰を伴侶にしても、制御できるということ。伴侶の性格、言動を分析し、上手に転がす。そのため、内面に問題を抱えていても、マナーさえ出来ていれば、然程問題はなかった。
けれど、精霊を蔑ろにする者はダメだ。
ラーナがシスティアの存在をもっと深く考えていたら、シーナのことにも気付けたかもしれない。
加護なしと言われていたシスティア。実際は、とびっきりの加護持ち。ならば、とシーナの奇行と思われていた行動にまで、考えが及べば。そうしてシーナへの態度を改め、アビアント家にも一石を投じ、波紋を広げていたなら。過去の過ちを悔いて、シーナへ尽くすというのなら、このまま結婚をしても構わなかった。
だが。
「ああ、でも、所作や作法は申し分ないから、その辺りは本当に楽だった。そこは誇っていいよ」
リュクスの言葉に、僅かな希望を託してラーナは顔を上げる。
「あ、あ、わたくし、あなた様の、すべて、あなた様ために、これまで」
そこまで言って、言葉が出なくなった。
「すべて私のため?そう。なら」
あまりにもリュクスの目が冷たかったから。
「私から必要とされていないおまえが、生きている意味って何だろうね」
ヒュッ、とラーナは息をのんだ。
「ねえ、生きていて恥ずかしくないのかな?」
ああ、これは。
「本当におまえは、価値のない人間だね」
これは、事ある毎に、自分がシーナに言っていた言葉。
そして、悟る。
ああ、手遅れ。
冷たい双眸が見下ろしていた。
第一王子に見初められた。それは、近く王太子になるお方の妻になるということ。自分が王太子妃に、ゆくゆくは王妃となり国母となるということ。
それは、これまでの自分の努力が報われた証だった。
そう、思っていたのに。
幼い頃からの努力も、王族の一員になると決まってからの努力も。
リュクスと目が合った。
リュクスは笑った。
「ご苦労」
たった、その、たった一言で、すべてが、終わった。
*最終話へつづく*
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