精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

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15.

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ラーナへ、存在否定をする酷い言葉を使います。
苦手な方は、ラーナへのざまぁをする話だという認識だけ持って、読み飛ばしていただいても大丈夫です。


∴∽∴∽∴∽∴∽∴


 「リュクス様っ、わたくしは、知らなかったのですっ」
 王族が、精霊をとても大切にしていることを知っている。だからラーナは、少しでも自分の罪を軽くしなくてはと焦る。
 両親や兄のようになっては堪らない。このままでは、本当に婚約が解消されてしまう。きちんと謝ろう。誠心誠意謝れば、まだ、間に合うはずだ。
 リュクスの前に膝をつき、縋るように両手を組んで見上げるラーナに、リュクスは笑った。
 「ふふ。嫌だな、。そんな稚拙な言い訳、聡明なあなたに相応しくない」
 ラーナ嬢、と、少し他人行儀な呼び方ではあったが、名前を呼んでくれていたというのに。
 「シーナ殿がいたから、あなたと婚約を結んだまで」
 あまりの言葉に、ラーナはハクハクと口を開閉させるが、声が出ない。
 「シーナ殿と添い遂げたかったよ?」
 シーナは精霊の王の加護持ちだ。
 「けれど、年の差もあるから、かなって、ねえ」

 そう、王家は選べる立場ではない。
 選ぶのはシーナ。

 ラーナとでさえ五つ離れている。シーナとでは、八つ。リュクスとしてはまったく問題なかったが、シーナからすれば、どうだろう。

 ラーナは立場。
 シーナは立場。

 決めるのは王家ではない。シーナの意志が最優先。

 すべてはシーナの望みのまま。

 言外の言葉に、ラーナは打ちのめされる。
 シーナとの立場の違いが。格下、いや、論外と蔑んできた妹こそが。
 ガクリと床に膝をつく。

 「だから、シーナ殿の血縁であるあなたと婚約を結んだまでだよ」

 仕方がない。

 追い打ちをかけるようなその言葉は、ラーナを抉った。
 「そ、んな」
 大きく見開かれた目から、一筋、涙が零れた。

 数いる令嬢の中から、自分を選んでくれたのだと思っていた。
 出涸らしだと言われていた、三つ下の妹。
 栄えあるアビアント家の恥だと思っていたあの子。
 世間から隠して、いない者として扱ってきたあの子こそが、必要な存在だった。
 我が家にとって。
 国にとって。
 世界にとって。
 選ばれたのは、選ばれていたのは。
 最初から――。

 「あ、ああ」
 ラーナの両手が、力なく床につく。
 王家の。それは、人心の掌握に非常に優れているという意味だ。誰を伴侶にしても、制御できるということ。伴侶の性格、言動を分析し、上手に転がす。そのため、内面に問題を抱えていても、マナーさえ出来ていれば、然程問題はなかった。
 けれど、精霊を蔑ろにする者はダメだ。
 ラーナがシスティアの存在をもっと深く考えていたら、シーナのことにも気付けたかもしれない。
 加護なしと言われていたシスティア。実際は、とびっきりの加護持ち。ならば、とシーナの奇行と思われていた行動にまで、考えが及べば。そうしてシーナへの態度を改め、アビアント家にも一石を投じ、波紋を広げていたなら。過去の過ちを悔いて、シーナへ尽くすというのなら、このまま結婚をしても構わなかった。
 だが。
 「ああ、でも、所作や作法は申し分ないから、その辺りは本当に楽だった。そこは誇っていいよ」
 リュクスの言葉に、僅かな希望を託してラーナは顔を上げる。
 「あ、あ、わたくし、あなた様の、すべて、あなた様ために、これまで」
 そこまで言って、言葉が出なくなった。
 「すべて私のため?そう。なら」
 あまりにもリュクスの目が冷たかったから。
 「私から必要とされていないおまえが、生きている意味って何だろうね」
 ヒュッ、とラーナは息をのんだ。
 「ねえ、生きていて恥ずかしくないのかな?」
 ああ、これは。
 「本当におまえは、価値のない人間だね」
 これは、事ある毎に、自分がシーナに言っていた言葉。

 そして、悟る。

 ああ、手遅れ。

 冷たい双眸が見下ろしていた。
 第一王子に見初められた。それは、近く王太子になるお方の妻になるということ。自分が王太子妃に、ゆくゆくは王妃となり国母となるということ。
 それは、これまでの自分の努力が報われた証だった。
 そう、思っていたのに。
 幼い頃からの努力も、王族の一員になると決まってからの努力も。

 リュクスと目が合った。
 リュクスは笑った。

 「ご苦労」

 たった、その、たった一言で、すべてが、終わった。



*最終話へつづく*
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