精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

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 「過ちを認められぬか」
 王は憐れむようにそう言うと、溜め息をいた。
 「文武に優れ、近年稀に見る傑物かと思いましたが」
 「いやいや、愚物であったな。我々も見る目がない」
 リュセスが蔑んだ目を向け、リュクスは嗤った。
 「こうなるとおまえの存在は、生きているだけで国の損害でしかない。更なる損害を国に与える気か?」
 精霊さえも否定する者。世界が精霊に支えられていることを知る者からすれば、ユーリは災いにしかならない。
 「わ、わたし、が、愚物?国の、損害?」
 唇を、全身を震わせながら、ユーリはリュクスからの到底受け入れられない言葉を口にする。
 そんなはずはない。自分は近隣に名を知らしめるほど、優れた人間だ。だからこそ、これほどの若さで現国王の側近として仕え、次期国王の側でも仕えるようにと、歴代国王の側近となることが約束されていたのだ。

 それなのに。

 「そうだろう?精霊がどれほどの恩恵を世界に与えているのかわからないから、そのような世迷い言を言うのだ。子どもでも理解出来ることが理解出来ていないなど、国を滅ぼしかねん」
 誰よりも優秀だと自負するユーリは、自分の足下が揺れ、ヒビが入っていくのを感じた。しかしリュクスは追撃の手を緩めない。
 「だから、側に置くことにしたのだ」
 ユーリの足下が、音を立てて崩れていく。
 今まで積み上げてきたものは何だったのか。然程努力をしなくても、人並み以上に熟せた。それでも努力をしたのだ。だから、他の追随を許さないほどの実力を身に付け、それが王家に認められたのではないのか。
 「私、は、わた、し、は」
 ユーリは崩れ落ち、それ以上言葉を発することが出来なくなった。


 そんな夫と息子の姿を見て、夫人は震えた。
 躾と称して、シーナを虐げてきた自覚はある。
 「あ、あの、違う、違うのです、陛下っ」
 夫人は引き攣った笑みで、自分の行いを正当化する言葉を並べ立て始めた。
 「あの子、あの子は、その、そう、嘘を!嘘をつく子だったのですっ」
 王家は何も言わない。冷たく見下ろしているだけ。
 それに気付かず夫人は、これまで如何に大変だったか、どれほどの犠牲を払ってきたかを話し続ける。

 「お黙りなさい」

 堪りかねた王妃の低い声が遮った。
 今まで黙っていた王妃だったが、夫人のことが赦せなかった。シーナが精霊と関係がなくとも、王妃は同じ子を持つ母として、夫人の行いは到底赦せるものではなかった。
 家それぞれに教育方針があることは当然だ。厳しいことも必要だ。それでも、そこには必ず愛情がなくてはならない。愛情があっても、つらいときはつらい。そのつらさを受け止めてくれる存在が不可欠。それは、必ずしも母でなくともよい。父でもいい、兄でも姉でも良かったのだ。いないことが、あり得ない。

 同じ女性として、母として、思うことがなかったことが、信じ難い。

 「これまでのことで、嘘は通じない、すべてわかっている、とわからないものか」
 国王は呆れたようにそう言うと、
 「優秀な者を好むのではなかったのか?」
 「は許されて、シーナ殿が許されない理由がわかりませんね。知性の欠片もないではありませんか」
 リュクスがわざとらしく溜め息をつき、リュセスが嗤う。
 「ち、ちがう、ちがうのです、わたくしは」
 尚も何か言い募ろうと、ヨロヨロと夫人は王家の者たちに近付いていく。

 「我らに嘘を吹き込もうなど。ああ、それ以上我らに近付くでない。汚らわしい」

 温和な王妃とは思えないほど冷たい口調と視線に、夫人は青ざめへたり込む。
 「不敬に問わないだけありがたいと思うがよい」

 もう話す価値もないと、王家は夫人を見ることはなかった。



*つづく*
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