精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

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13.

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 「さっきも言ったが、三人の能力は拮抗していた。その中で、満場一致であなたに決定したのは、シーナ殿の存在。まあ」
 リュクスは冷たく笑った。
 「能力はあったのだから、こちらも迷わずに済んだ。もし他の二人より劣っていても、あなたが選ばれた。そうなると、二人からだけではなく、周囲からも陰で言われただろうな。娘のお陰で宰相になれた、と」
 侯爵は何か言いたいが、何を言えばいいかもわからず、ただ唇を震わせる。
 「だが、シーナ殿抜きでも宰相に選ばれたかもしれないから、恥じることはないよ」
 ニッコリ笑うリュクス。

 わざとだ。
 わざと、取り繕った。

 プライドの塊の男に、そんな言葉は到底納得できない。神経を逆なでするだけ。
 自身の力でここまで来たと思っていた。他の補佐も、自分と負けず劣らずの人物たち。だからあらゆる力を使って根回しをし、輝かしい未来を盤石なものとするために心血を注いできた。

 それなのに。

 たとえ何もしなくても、シーナがいれば宰相になれた。

 暗にリュクスはそう言ったのだ。

 出来ない、なんて、わからない、なんて、プライドが許さない。
 だから、努力をした。
 どれほどの苦労をしてきただろう。どれほどの屈辱に耐えてきただろう。どれほどの辛酸を舐めてきただろう。
 そうして、宰相という、貴族の頂点の職に上り詰めた。
 すべて、自身の手で掴み取ったのだ。
 そう、思っていた。
 それらすべてが、作られたものかもしれない、なんて。
 人生をかけたものが、出来損ないと蔑んだ娘の、恩恵で成り立っていたのかもしれない、なんて。
 これから先、周囲がどれだけ自分を称賛しても、果たしてそれは、本当に自分へ評価なのだろうか。
 どれほどの努力をしても、どれだけ成果を、結果を出しても、果たしてそれは。

 あまりのことに、侯爵は膝をつき、呆然と天を仰ぐ。
 「そんな、シーナが、あり得ない」
 ブツブツと呟く侯爵の声に、国王が言った。

 「む?おまえたちは親子ではないのだろう?」

 その言葉に、侯爵は国王へ顔を向けた。アビアント家の三人も、国王を見る。
 どういう意味だ、と。
 「父と呼ぶと折檻していたではないか」
 アビアント家は大きく目を見開いた。
 「おまえだけではないがな。おまえたちは、シーナ殿が血縁を匂わせる呼び方をすることを酷く厭うておった」
 「それなら、親子ではないのでしょう?いけませんよ。精霊女王様の加護を持つ方を馴れ馴れしく名前を呼び捨てるなど」
 「シーナ殿の名を呼ぶことすら、おまえたちには許されない。どうしても呼ばなくてはならない場合は、そうだな、精霊女王様の番様、と呼べ」
 国王の言葉に続き、リュセス、リュクスは笑いながらそう言った。
 シーナの家名で呼ばせることもあり得ない。それでは、周囲からアビアント家が称賛を浴びることになってしまう。名を、家名を呼ばせない。そうすることによって、何かの拍子にシーナがアビアント家の者と知ったとき、周囲はアビアント家をどう思うだろう。
 「そんなっ、シー」
 「聞こえなかったか」
 尚も言い募ろうとする侯爵を、リュクスは遮る。
 「幼き頃より、シーナ殿の名を呼ぶこともなかったではないか。何を今更」
 皮肉げに片方の口角だけを上げると、吐き捨てるように言った。

 「シーナ殿の名を口にするな。汚らわしい」

 おとうさま。
 シーナがそう言う度に、投げつけていた言葉。
 すべて、すべて知られている。

 「あ、ああ…」
 侯爵は、自分の未来を悟り、床に伏した。


 「こんなこと、認められません、陛下」
 尊敬する父である侯爵への仕打ちに、嫡男ユーリが立ち上がった。
 「我が家には我が家の方針がある。それに則った教育を施したまで。我が家に生まれ落ちたというのにそれを全う出来なかった者に、そのように大層な加護があると思えません」
 王家は黙って聞いていた。
 「そんな不確かなことで、父の、宰相の座を貶めるとは。それが王家のすることですか」
 「不確か?」
 リュクスが問い返すと、ユーリは頷く。
 「そうでしょう?王女殿下のように誰の目にもハッキリと加護が見えるなら話は違いますが、どなたかアレの加護を見たのですか?」
 王家の、まして精霊王の加護がある者の言を疑うユーリの発言に、王家は確信した。

 彼は、目に見えるもの、自分の信じたいもののみを信じる質か。

 それは、諸刃の剣である。



*つづく*
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