精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

文字の大きさ
13 / 24

12.過去 後編

しおりを挟む
 「これ以上貴様のようなものに煩わされるなど我慢ならん!」
 父である人物からそう言われたのは、六歳になった頃。
 自分付きになったリイザと一緒に領地に送られたときは、嬉しかった。
 やっと自分の努力が実を結んだと思った。
 口うるさい家族や煩わしい使用人たちから解放されることももちろんだが、王都には精霊が少なすぎた。王都に比べて自然豊かな領地は、精霊たちの宝庫だ。さっさと領地に行きたくて、わざと苛立たせる言動を取っていた。大丈夫、怒らない、と常々口にしていたのは、使用人たちに対してではない。精霊たちに対してのものだった。シーナにくっついてきた精霊たちも、やはり自然が多い方が嬉しいようだ。とても生き生きとしている。
 まあ、あの家の人たちをいじってイラつかせて失敗させ、精霊たちとニヤニヤするのもキライではなかったが。

 ある日、ファルシレアが言った。
 「ねぇ、シーナ。精霊界に遊びに行きましょう」
 その言葉に、シーナは目を輝かせた。
 「やっと行けるのね!今すぐ行くわよ、レア!」

 人間は、肉体がないと存在できない弱い存在だ。精神体だけで存在する精霊界には、ある程度の年齢にならないと連れて行けない。肉体と精神が一定時間離れても支障のない年齢まで待つ必要があった。その年齢は七歳。七歳を超えると、体と精神のバランスが安定する。少し前に七歳を迎えていたので、シーナは今か今かと待ち続けていたのだ。やっとお許しが出た。
 「リイザ!留守をよろしくね!」
 たった一人の侍女にそう告げると、リイザは頭を下げて、お気をつけて、とベッドに横たわる元気な主人を見送った。
 こうしてシーナは、意気揚々とファルシレアと共に精霊界へ向かうと、思いがけない出来事が待っていた。

………
……


 精霊界に着くと、なんと、先客がいた。
 「おや、キミもか。女王」
 そう声をかけてきたのは、黒髪に黒い瞳の恐ろしいほど整った顔立ちの青年だった。
 「あら、あなたも?王」
 精霊の王と女王は夫婦ではない。空を司るのが女王であり、地を司るのが王である。
 精霊が人を気に入って加護を与えることは滅多にない。王や女王が与えることは、もっとない。それがなんの偶然か。王と女王、それぞれ気に入った人間が、同時期に存在するとは。
 シーナは、王が連れていた人間と目が合った。
 肉体という枷を脱ぎ捨てているせいなのだろうか。剥き出しの魂が叫ぶ。
 二人はどちらともなく手を伸ばし、しっかりと握り合った。
 「リュシーナ」
 「ルシスティーア」

 魂は廻る。

 王女システィアの前世は、ルシスティーア。
 精霊王ケイが人であった頃。ケイに愛され、ケイを守り、命を落とした美しい少女。
 シーナの前世は、リュシーナ。ルシスティーアの親友であり、最後までルシスティーアを守った少女。
 ここで、運命の邂逅を果たす。

 こうしてシーナとシスティアは、精霊界で交流を重ねていったのだ。


*~*~*~*~*


 「水晶が光らなくても、見ていればわかるだろう?精霊と戯れていると」
 「水晶が反応できないほどの加護。とても強い加護を持っているのですよ」
 リュクスとリュセスが嗤う。
 「しかし本当にあいつの家の者は精霊たちから嫌われているな」
 面白そうな声音で精霊王は、アビアント家を見る。だが、その声とは裏腹に、その目は酷く冷たい。アビアント家はビクリと体を震わせる。
 「シーナへの扱いが酷すぎましたもの。精霊たちをシーナが抑えていなかったら、今頃どうなっていたのかしら」
 シーナが幼い頃から、大丈夫、怒らない、と笑っていたのは、精霊たちに対してだ。ワザと煽っているだけだから気にするな、の意味が大きかったが。
 「家が問題なく存続出来ていたのは、シーナがいるからに他ならないわ。シーナが嫁ぐなり精霊になるなりしたら、没落まっしぐらですわね」
 精霊たちは、シーナが困らないよう家を存続させていたに過ぎない。もし、シーナを愛情もって育てていたら、類を見ないほどの繁栄が、アビアント家には約束されていたというのに。今の王家のように。

 「ところでアビアント侯爵」
 リュクスが侯爵に声をかける。
 情報に頭が追いつかない侯爵は、肩を揺らす。

 「何故あなたが次期宰相に任命されたのか、わかるかい?」

 国王が、ゆっくりと組んでいた足を組み替えると、言った。
 「宰相補佐は三人。誰が次期宰相になってもおかしくないほどの能力だ。そうなると、プラスアルファが必要になるだろう?」
 「王家が精霊を深く尊ぶことを知っているよね」
 重要な役職に着くには、王族の承認が不可欠。王族が集まり、選定する。

 「ま、まさか」

 青ざめる侯爵に、リュクスは笑った。



*つづく*
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

魅了魔法の正しい使い方

章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のジュリエンヌは年の離れた妹を見て、自分との扱いの差に愕然とした。家族との交流も薄く、厳しい教育を課される自分。一方妹は我が儘を許され常に母の傍にいて甘やかされている。自分は愛されていないのではないか。そう不安に思うジュリエンヌ。そして、妹が溺愛されるのはもしかしたら魅了魔法が関係しているのではと思いついたジュリエンヌは筆頭魔術師に相談する。すると──。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

[完結]気付いたらザマァしてました(お姉ちゃんと遊んでた日常報告してただけなのに)

みちこ
恋愛
お姉ちゃんの婚約者と知らないお姉さんに、大好きなお姉ちゃんとの日常を報告してただけなのにザマァしてたらしいです 顔文字があるけどウザかったらすみません

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

処理中です...