精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

文字の大きさ
12 / 24

11.過去 前編

しおりを挟む
 物心ついた頃から、人ではないものが見えていた。それが精霊であることは、なぜか知っていた。時々フラリと遊びに来る、真っ白な髪の美しい人が、精霊の中でも高位の存在だということは、なんとなく理解していた。ファルシレア、と名前を教えてくれたが、二人きりの時以外、決して呼んではいけないと言われた。
 「じゃあなんで教えるのよ。うっかり呼んじゃうじゃない」
 ぷりぷりしながらそう言うと、二人きりの時は呼んで欲しいんだもん、と涙目になりながら怒られた。ちょっと可愛いと思った。では普段は何と呼べば良いか聞くと、何でもいいと言われたので、レアと呼ぶことにした。

 一応侯爵家に生まれたからには、いろいろなしがらみがついて回る。お勉強もその一環。でも、精霊たちが邪魔をする。いたずらばかりするから、ちっとも勉強にならない。マナーもダンスも社交も、いつもいつもイタズラに邪魔をされていた。
 「んもう!あなたたちがそういうことばかりするから、私は劣等生のレッテルを貼られるんじゃない!」
 そう怒ってみても、精霊たちからは、シーナが遊んでくれないからだ、あんなつまんないことは止めてもっと遊ぼう、と口々に反省の色まったくなしの反撃に遭う。

 要は精霊たちが原因でシーナが蔑ろにされるようになったのだが、精霊たちからしたら、精霊の使い以外は取るに足らない存在であり、侯爵家は、勉強やマナー意味のわからないことで大好きなシーナを縛り付ける忌々しい存在なのだ。そしてその忌々しい存在が、大好きなシーナを蔑ろにする。余計にシーナを忌々しい存在から引き離すべく、意味のわからないことを止めさせようとする、と負のループが出来上がっていた。激怒する精霊たちをシーナが抑えてはいたが、それでもちょいちょい地味に反撃をしてはいた。

 お風呂に入るとき、ドアに足の小指をぶつけてやったよ。
 お風呂のお湯を水にしておいた。
 お風呂の床、滑りやすくしたの。
 お風呂で、流しても流してもどこかしらに泡がついて、出られないようにしてみたよ。
 お風呂の石鹸、体につけた途端ヤバいニオイを発するようにした。

 などなど、なぜかお風呂ネタが多かった。そんな精霊たちの報告を聞く度に、シーナは悪い顔で、「お主も悪よのぅ」とニヤニヤしながら、精霊たちに美味しい焼き菓子を振る舞った。一応、悪戯で済む範囲はシーナも許容してはいた。床を滑りやすくするのは危ないけれど。
 ちなみに焼き菓子などの甘いものは、シーナに出されることはない。シーナは精霊たちと共謀して、ちゃっかり厨房からくすねていた。
 それから精霊たちは、シーナに危害を加えたときは、シーナに知られないよう危害を加えた者に報復をしていた。怪我をさせることはないが、死を連想させる出来事を起こしたり、死んだ方がマシだと思えるような悪夢を見せたり。精霊たちにとって、シーナを傷つけた者など死んで当然なのだが、シーナが止めるから我慢をしている。精霊たちにとっては温すぎる報復だが、しないより僅かに留飲は下がるから、その程度で我慢することにしていた。

 そんな精霊たちに愛されるシーナが、愛する精霊たちからの遊ぼうコールに折れるのは時間の問題だった。
 「仕方ないわね。じゃあ今日は昨日生まれたって言っていた花を見に行くわよ!私が一番乗りね!」
 そう言うと同時に部屋の窓を開け放ち、躊躇いもなく窓から庭へ降り立つ。
 今日も授業はサボり決定。ますます侯爵家の人間たちとの距離は開いていく。
 けれどシーナはそんなことお構いなし。シーナもまた、これ程までに精霊の存在に愚鈍な侯爵家になど、興味がなかったから。だからシーナは努力をする。侯爵家の人間に、早く見放されるよう愚者になる。

 シーナが愚かであればあるほど、早く見放してくれるはずだと。

 ちなみにシーナの部屋は二階だ。五歳にもならない少女が飛び降りて平然としていることがおかしい。
 まあ、なんだかんだ言っても、常に全力で精霊と遊ぶシーナは、ますます精霊たちに好かれていった。ファルシレアもよく一緒に遊んだ。

 精霊たちが、ファルシレアを女王様と呼んでいたので、女王なんだー、と思っていた。



*つづく*
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました

碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。 学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。 昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...