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レイガード新王即位編
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この章は、エル様がアリスに人前で話をさせるのをより強く嫌がるようになるきっかけのお話しです。
*∽*∽*∽*∽*
レイガード王国は、今年の大きな行事として、王の即位式典がある。現王が退位し、王太子ディアンが王として立つ。まだ二十九になったばかりのディアン。歴史を見ても、王健在の中、これ程若くして王が交代することは稀だ。若くして王に立った者は、時の王が何らかの事情で身罷られた場合くらいではないだろうか。
レイガードの現王は病というが、まだまだ執政に問題はないはずだ。病を理由に王太子が王の代行をする国もあるが、実際交代するのは、やはり崩御してから。それ故、世界はこの交代に首を傾げてはいた。
「父王、次代のディレイガルドがどのような者か、戻られたらお聞きしたい」
シュヴァルタイン帝国皇太子ヴァイアツェルトが、父である皇帝に言った。
レイガード王国は、中小国に分類される国であったが、シュヴァルタイン帝国が、最も重きを置いている国であった。
シュヴァルタイン帝国。強大な軍事力を誇る、世界の王たる帝国。様々な国の文化を取り入れて発展し続け、威風堂々、帝王である姿を世界に見せつける。
帝国の皇族は、大国相手以外、滅多にその重い腰を上げることはない。だと言うのに、中小国に分類されるレイガード王国だけは、必ず皇族が対応をする。相手がレイガードの王、もしくはディレイガルド当主であれば、皇族の中でも、皇帝や皇太子の対応だ。筆頭とは言え、中小国の公爵家に皇族が出てくるなどありえない。それは、異例中の異例と言えた。それほど帝国は、レイガードに敬意を払っている。
「ここ数年、私もレイガードに訪れていないからな。現王は病を理由に生誕祭含め、己に関わる式典をしなくなった。ディレイガルドの当主は滅多に国外向けの催しをしない。様子を窺うにも、レイガードに行く口実がなかったからな」
ただでさえその対応が例外中の例外だというのに、さらに、となれば、大国が黙っていない。他国もレイガードに敬意を払っている。だが、帝国が過剰にレイガードを贔屓すれば、軋轢が生まれるため、無闇矢鱈と行くことも出来ない。
「実際、あの国で何が起きているのでしょうね。次代のディレイガルドがデビュタントを迎えてからですよね、王が病だと言われるようになったのは」
タイミング的に、皇帝とヴァイアツェルトは、まだエリアストに会えていない。王太子や王子の生誕祭に出向いた皇族の者から伝え聞いた情報でしか、知ることが出来ない状況だった。
現ディレイガルド当主ライリアストは、柔らかく微笑む、一見穏やかそうな紳士だ。
だが、エリアストは違う。
ヴァイアツェルトは、自分が付き合っていかなくてはならない次代のディレイガルドを知りたい。噂は噂でしかない。実際に目にしないとわからないことばかりだ。
「深くは詮索しないことだ。おまえも連れて行くことが出来れば手っ取り早いがな」
皇帝と皇太子が揃って留守にすることはない。況して今回は、新王即位の儀。皇帝自らが行かなくてはならない。今回は、第四皇子であるドゥネアツェルトを連れて行く。
「来年からは、年に一度はレイガードへ赴くチャンスはある。焦らんことだ」
ディアンの生誕祭だ。国王の祝典には、どちらかが必ず出席する。
「ことが起こったときの彼を見てみたいですね」
「馬鹿なことを、と言いたいが、危険性を認識する上ではその通りだ」
こちらが嗾けることは出来ない。そんな愚を犯すはずもない。あくまでも、誰かが自発的にやらかしてくれなくてはならない。そういう意味では、丁度その機会に恵まれることはなさそうだ。わざわざ他国の要人がいる中で、やらかすバカはいない。いたとしても、レイガード王国が気付かせるようなことはしない。
「お忍びで行ってみるくらいしか、機会には遭遇しそうもないですね」
「まあ、やらかすような国があれば、別だがな」
二人は何とも言えない笑いを零した。
実際、この十五年後にヴァイアツェルトはエリアストの危険性を目の当たりにするのだが、それはまた別の話。
*つづく*
*∽*∽*∽*∽*
レイガード王国は、今年の大きな行事として、王の即位式典がある。現王が退位し、王太子ディアンが王として立つ。まだ二十九になったばかりのディアン。歴史を見ても、王健在の中、これ程若くして王が交代することは稀だ。若くして王に立った者は、時の王が何らかの事情で身罷られた場合くらいではないだろうか。
レイガードの現王は病というが、まだまだ執政に問題はないはずだ。病を理由に王太子が王の代行をする国もあるが、実際交代するのは、やはり崩御してから。それ故、世界はこの交代に首を傾げてはいた。
「父王、次代のディレイガルドがどのような者か、戻られたらお聞きしたい」
シュヴァルタイン帝国皇太子ヴァイアツェルトが、父である皇帝に言った。
レイガード王国は、中小国に分類される国であったが、シュヴァルタイン帝国が、最も重きを置いている国であった。
シュヴァルタイン帝国。強大な軍事力を誇る、世界の王たる帝国。様々な国の文化を取り入れて発展し続け、威風堂々、帝王である姿を世界に見せつける。
帝国の皇族は、大国相手以外、滅多にその重い腰を上げることはない。だと言うのに、中小国に分類されるレイガード王国だけは、必ず皇族が対応をする。相手がレイガードの王、もしくはディレイガルド当主であれば、皇族の中でも、皇帝や皇太子の対応だ。筆頭とは言え、中小国の公爵家に皇族が出てくるなどありえない。それは、異例中の異例と言えた。それほど帝国は、レイガードに敬意を払っている。
「ここ数年、私もレイガードに訪れていないからな。現王は病を理由に生誕祭含め、己に関わる式典をしなくなった。ディレイガルドの当主は滅多に国外向けの催しをしない。様子を窺うにも、レイガードに行く口実がなかったからな」
ただでさえその対応が例外中の例外だというのに、さらに、となれば、大国が黙っていない。他国もレイガードに敬意を払っている。だが、帝国が過剰にレイガードを贔屓すれば、軋轢が生まれるため、無闇矢鱈と行くことも出来ない。
「実際、あの国で何が起きているのでしょうね。次代のディレイガルドがデビュタントを迎えてからですよね、王が病だと言われるようになったのは」
タイミング的に、皇帝とヴァイアツェルトは、まだエリアストに会えていない。王太子や王子の生誕祭に出向いた皇族の者から伝え聞いた情報でしか、知ることが出来ない状況だった。
現ディレイガルド当主ライリアストは、柔らかく微笑む、一見穏やかそうな紳士だ。
だが、エリアストは違う。
ヴァイアツェルトは、自分が付き合っていかなくてはならない次代のディレイガルドを知りたい。噂は噂でしかない。実際に目にしないとわからないことばかりだ。
「深くは詮索しないことだ。おまえも連れて行くことが出来れば手っ取り早いがな」
皇帝と皇太子が揃って留守にすることはない。況して今回は、新王即位の儀。皇帝自らが行かなくてはならない。今回は、第四皇子であるドゥネアツェルトを連れて行く。
「来年からは、年に一度はレイガードへ赴くチャンスはある。焦らんことだ」
ディアンの生誕祭だ。国王の祝典には、どちらかが必ず出席する。
「ことが起こったときの彼を見てみたいですね」
「馬鹿なことを、と言いたいが、危険性を認識する上ではその通りだ」
こちらが嗾けることは出来ない。そんな愚を犯すはずもない。あくまでも、誰かが自発的にやらかしてくれなくてはならない。そういう意味では、丁度その機会に恵まれることはなさそうだ。わざわざ他国の要人がいる中で、やらかすバカはいない。いたとしても、レイガード王国が気付かせるようなことはしない。
「お忍びで行ってみるくらいしか、機会には遭遇しそうもないですね」
「まあ、やらかすような国があれば、別だがな」
二人は何とも言えない笑いを零した。
実際、この十五年後にヴァイアツェルトはエリアストの危険性を目の当たりにするのだが、それはまた別の話。
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