美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛

らがまふぃん

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エリアストとアリスの形編

 「無茶を言うね、エリアスト」
 「それは百も承知ですよ。それでも私より長く生きているのですから、何かしら聞いたことはないのですか」
 ディレイガルド現当主ライリアストは、息子エリアストの無理難題に苦笑いしか出ない。
 「ディレイガルドの耳目を持ってしても、母親の胎内以外で子どもを育てる方法を聞いたことはないし、男が出産出来るようにするすべも聞かないよ」
 エリアストは、座るソファの肘掛けで思案するように頬杖をつく。
 医療の一番進んだ国はもちろん、あらゆる国の医療事情を調べるが、妊娠・出産のリスクを減らすことは出来ても、無くすことは出来ない。
 「まあ、そんな風に考えた者がいない、と言う方が正しいかな。だから、そういう方向に目が向けられなかったんだろうね」
 今からその研究を行うには、あまりにも時間がなさ過ぎた。
 「デビュタントの奏上といい今回の件といい、私は何故こんなにも気付くことが出来ないのだ」
 その声は、心の底からの後悔だとわかるほどだった。
 「こればかりは、例えおまえが生まれたときから取り組んでいても、実現していないよ」
 特に男の妊娠と出産。
 「わからないではないか」
 「わかるよ」
 「やってみなくてはわからない」
 「じゃあやってみるかい?」
 アリスといる時間は確実に減るし、孤児院の件も遥かに先延ばしされる。そんな不確かなことに身を置いて、今を蔑ろにするならどうぞ。
 ライリアストの言外の言葉に、エリアストは長く息を吐いた。
 「不毛だ」
 「ああ、まったくもって不毛だね」
 エリアストは暫く黙ったままだった。
 「私の覚悟が、いつ決まるか、だな、結局は」
 ぽつりと零れた言葉に、ライリアストは眉を下げた。
 「本当に厄介だよ、ディレイガルドの血は」
 ライリアストはぬるくなったお茶に口をつける。
 「男が当主だと、仕方がないんだけどね」
 ディレイガルドは、伴侶への執着心が異常だ。エリアストの懸念は、代々男の当主は通る道。そのため、妻には一度しか妊娠させない。跡継ぎのためだ。
 けれど、女当主は違う。夫との子どもを、自分が産むのだ。遠慮はいらない。伴侶を失う恐れなどない。そうして出来上がる傍系が、影となる護衛や、世界に耳目を持つディレイガルドを作り上げてきた。
 しかしエリアストは、代々のディレイガルドより、特殊だった。
 ディレイガルドが伴侶に並々ならぬ愛情を注ぐことは知られている。この他に、何かしらの趣味嗜好がある。故に伴侶だけではなく、そちらにも伴侶ほどではないが、執着がある。
 だがエリアストの場合、趣味嗜好まで妻アリス。寝ても覚めてもすべてがアリスなのだ。
 「本当に、なぜ男が出産出来ないのか。理解出来ん」
 呻くように漏れた声に、ライリアストは臨月を迎えるエリアストを想像してしまい、何となく微妙な表情になった。



*つづく*
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