美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛

らがまふぃん

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没ネタ集

レイガード新王即位編幻の11話

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 「ディレイガルドの。ここは一旦私に預けてくれ」
 エリアストの極寒の目が見据える。
 はい、わかっております。最終的に、地下のあの部屋に突っ込むんですよね。こちらが終わったら地下牢に繋いでおきますので、ご自由にお持ちください。
 そう思いながらドキドキしていると、エリアストはディアンから視線を逸らしてアリスを見た。アリスは穏やかにエリアストを見つめている。エリアストはアリスの腰を抱いて、何も言わずその場を後にした。
 ディアンはホッと息を吐くと、愚かな四人を見る。
 「おまえたちの財政状況を考えると、誰かにすがりたくなる気持ちはわからんでもない」
 新王の言葉に、四人は目を見開く。助かった、という安堵も束の間、自分たちのことを知られていることに驚愕する。
 「そのに、何故ディレイガルドを選んだ。おまえたちが縋れるほどの何があった」
 四人は俯く。ディアンは呆れた息を吐いた。
 「大方、噂と違うディレイガルドを見て判断したのだろう。愚か者め」
 「で、ですが」
 「発言を許していない。貴族としてのマナーも忘れたか。ああ、だからこのような事態になったのだな」
 口を開いた伯爵家の男を冷たく睥睨する。
 「残念だが、おまえたちはここで終わりだ」
 ディアンの言葉の意味がわからず、四人は僅かに首をかしげた。
 「へ、陛下、発言の、許可を」
 「許す」
 ディアンが許可を出すと、伯爵家の男はゴクリと唾を飲み込んだ。
 「お、おわり、とは、どういうことでしょうか」
 そう恐る恐る尋ねる。ディアンは変わらず冷たい目で答える。
 「そのままの意味だ。ディレイガルドの噂は噂ではない、と言うことだ」
 美しい。だが、残酷。冷酷。酷薄。けれど、やっぱり美しい。
 美しく、残酷で、冷酷な、公爵令息様。
 「学園での噂を知らぬか」
 馴れ馴れしくではあるが、触れただけの平民の娘が何をされたか。エリアストに絡む伯爵家の子息に懸想していた子女が、エリアストに婚約打診を袖にされた子女が、どんな扱いを受けたか。
 「あれは、誇張ではない。いや、誇張している」
 公爵家の子息がどうなったか。伯爵家の子息が、貿易商の息子が、大商家の娘が。
 「実際は、もっと残酷だ」
 そんな者たちの末路を知れば、決して己の欲のために動こうなどと思うはずがない。
 特に、アリスに手を出した者は、骨の髄まで叩き込まれる。己の愚行で引き起こされた現実を。
 「まあ、実際若奥方殿に手を出したわけではないからそこまで大変なことにはならないと思うが」
 冷たかった目に、微かな同情が混じる。
 「中途半端の方が残酷なことはままある」
 もっとやらかしていれば、一息で命を摘んでもらえたかもしれない。やらかし過ぎれば、サーフィアやタリ家の二の舞。ならば今回の件はどの程度のものになるのだろう。
 「噂を鵜呑みにすることはいただけないが」
 エリアストとアリスが去って行った方を見る。
 「為人ひととなりを見て判断が出来なかったことは、非常に残念だ」
 四人は何も言えずにいた。ディアンは構わず続ける。
 「私のこの行動が、おまえたちにとって慈悲となったのかどうかはわからん」
 その場での断罪より、少し冷静になって考えてもらえれば、過剰な制裁は加えられないかもしれない。だが、考えることによって、より重い制裁になる可能性も捨てきれない。
 「あのままディレイガルドに引き渡した方が、おまえたちの慈悲になったかもしれないな」
 何が正解かわからない。
 まだまだ始まったばかりの、ディアンとエリアストの関係。
 護衛たちに合図をすると、これから何が起こるのか、不安に顔を引き攣らせる四人を連れて去って行った。
 ディアンは、手にした国宝級の放り出された剣を見つめると、溜め息をいた。
 即位して最初の仕事が、ディレイガルドを宥めることなんて、もう泣いちゃうっ。



*最終話につづく*
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