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番外編
歌姫
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らがまふぃん投稿開始三周年記念 第一弾
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して三年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。
本編とはまったく関係のない架空の話です。
*∽*∽*∽*∽*
長い金色の髪が動く度、光の粒子を振り撒いているようにキラキラと輝き、青空のように鮮やかな青い瞳はクルクルと表情を変えていく。誰をも感嘆の息を吐かせる容姿もさることながら、その歌声は、まさに天上の歌声と言っても過言ではない。
世間を賑わせている噂の歌姫。
ディレイガルド公爵夫人アイリッシュが、その歌姫の舞台が見たいと言うので、家族で見に行くこととなった。
………
……
…
世界のディレイガルドが来ていると聞いた劇団員たちは、色めき立った。
「ベシー、キミの歌声を聞きに来たとのことだ。しっかりな」
「ええ、団長。いつも通り、問題ないわ」
公演前の声かけにも、自然みんな熱が入る。
「聞いた?!ディレイガルドよ、ディレイガルド!」
「すっごくステキな方たちなのでしょう?!特に息子!」
「どうする?!見初められちゃったら!」
キャアキャア騒ぐ団員たちに、ベシーは冷めた目で答えた。
「そんな妄想、あなたたちが主役の座に付くより現実的じゃないわね。せめて主役とまではいかなくても、目立つ役を与えられてから夢を見たら?」
フン、と鼻を鳴らして通り過ぎていくベシーに、水を差された団員たちは怒りを露わにした。
「何あれ!」
「本当に感じ悪いったら!」
「ちょっと綺麗でちょっと歌がうまいからって!」
そんな声を背中に聞いたベシーは、口の端を上げた。
「素直に羨ましいって言いなさいよね。何の取り柄もないからあんたたちは端役ばかりなのよ」
………
……
…
「アリス、今日もしっかりやるのよ」
「は、はい、ベシー様」
劇場に近い高級宿の一室に、ベシーとアリスと呼ばれた少女はいた。
劇場に向かう前に、アリスに部屋に来るよう呼びつけていた。
劇団の花形であるベシーは、他の団員より好待遇を受けている。トップクラスの者たちはみんなそうだ。名声とその待遇を夢見て、団員たちは切磋琢磨する。そのベシーの部屋に、団員ではない少女が、沈んだ顔をして佇んでいた。
「じゃあこれね」
ベシーが手渡したものは、二つの石だった。
「今日は絶対に失敗出来ないんだからね」
「何か、あるのでしょうか」
「あんたが知る必要ないわ。あんたはいつも通り役目を果たせばいいだけ。わかったわね」
ベシーはアリスを部屋に残し、鍵をかけて劇場へと向かっていった。
アリスは二つの石を見つめ、ギュッと握り締めた。
………
……
…
アイリッシュは大興奮だった。
「本当に素晴らしい歌声!まさに天上の歌声だわ!噂以上よ!」
歌姫に会いたいとアイリッシュは劇場の支配人に伝え、歌姫を待っているところだった。
しかし。
「母上、あの歌姫とやらは、本当に本人ですか」
アイリッシュはキョトンとした。夫であるライリアストを見ると、彼も難しい顔をしている。
「どういうこと?」
「イリス、楽しい気持ちに水を差してごめんね。私もエリアストに同感だ」
二人の発言に、アイリッシュは眉を顰めた。
「あの歌姫は、偽物ってこと?」
「いや、噂の歌姫は彼女で間違いないだろうね。でも、歌の部分がね、別人が歌っていると思うよ」
アイリッシュは目を見開く。
「どうやって?」
ライリアストは説明をした。
「それなら、あの素晴らしい歌声の持ち主は誰なのかしら」
「何か事情があるかもしれないね。エリアスト、そっちを頼めるかい?私は劇団を調べるよ」
エリアストが頷くと。
「お待たせいたしました」
支配人が、団長と歌姫を連れてやって来た。
「なんてステキなのかしら」
宿に戻ってきたベシーは、心ここに在らずといった感じで、フラフラとベッドに倒れ込んだ。椅子に座っていたアリスは、様子のおかしなベシーに心配そうに声をかける。
「うるさいわね。とっとと出て行きなさい。ああ、明日の公演も今日と同じ時間だから遅れるんじゃないわよ」
アリスは迷いながらもお辞儀をして部屋を後にした。
朝早くに、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰よ、こんな朝早くから」
ベッドでモソモソ動きながら悪態を吐くベシーの耳に、焦ったような団長の声が聞こえた。
「ベシー、いるんだろ?早く開けてくれ、ベシー」
極力声を潜めてはいるが、明らかに様子がおかしい。
ベシーは仕方なく起き上がり、鍵を開けると。
そこに立っていたのは、昨日心奪われた麗しの貴公子、エリアストだった。
ベシーは呆然とその美しさに見とれていると、エリアストは無言で部屋に入っていった。ベシーは慌ててその背中を追いかける。その後ろから、二人の人物も付いていった。
「え、え、エリアスト、様、このような朝早くに、どうなさったのかしら」
寝起きの顔を隠すように、その長く輝く金の髪を口元に持っていき、両手で弄ぶ。しかしエリアストは何かを探すように辺りを見回し、目的のものを見つけて手に取った。それを見て、ベシーの顔色が変わった。
「そ、そ、それはっ」
慌てて取り返そうとするベシーを止めたのは、後ろから入ってきた団長だった。
「ちょっと!」
そこまで言って、もう一人の存在に気付く。
「アリス!あんたまさか!」
「勘違いするなよ、女。貴様のやったことを証明してやる。劇場に来い」
そう言ったエリアストは、何故かアリスを抱き上げて部屋から出て行った。団長も慌ててエリアストの後を付いていく。
「ベシー、早く来るんだ」
団長の言葉が、上手く耳に入ってこなかった。
早朝の、静まり返った劇場の中。
舞台の上には四人。
セットに隠された探し物を見つけ、エリアストは団長とベシーを見た。
「共鳴石だな」
共鳴石。二つで一つの対となる石。一つが音を奏でると、もう一つが同じ音を奏でる。
この共鳴石は、音を拾い、その拾った音をもう一つから聞くことが出来る。
これで、舞台に立つ人物と歌い手が違うというエリアストたちの疑問は証明された。
舞台に立つのはベシー、歌を歌うのはアリス。からくりはこうだ。
二組の共鳴石を用意し、一組は舞台用、もう一組は歌用。舞台用と歌用二組の片割れをアリスが持ち、舞台用の片割れは、舞台全体の音を拾う場所に置く。歌用の片割れは、ベシーがペンダントに加工して身に付ける。アリスが宿で舞台の音を聞きながら、それに合わせて歌を歌う。高級宿は、防音対策もバッチリだ。共鳴石の作用する範囲も問題ない。
こうしてアリスの歌声だけを利用していた。
これを知るのは、団長とベシーのみ。
「何よ、悪い?!」
ベシーは開き直った。
「お金が必要だって言うから手伝わせてあげたんじゃない!演技が出来ないんだから、歌だけ歌わせてあげたのよ!それがお金になったのよ!何が悪いの?!」
「その行為は悪くない」
責められると思っていたベシーは間抜けな顔になった。
「悪いのは、それがアリスだったことだ」
側で腰を抱いていたアリスをさらに引き寄せた。
「アリスに罪悪感を持たせたな」
手にしていた二組の共鳴石を落とし、踏みつけた。エリアストの足元で砕けた共鳴石を見て、二人は絶望した。
「二度とアリスに関わるな。いいな」
「あ、あの、今まで、ありがとうございました。おかげで、兄も回復に向かっております。本当にあり」
「うるっさいわね!さっさと行きひぃっ!」
喉元に短剣が突きつけられる。絶対零度の視線がベシーに突き刺さる。
「誰に向かって口を利いている。一度だけは赦す。アリスの貴様らの感謝に報いるためだ。だが二度目はない」
舞台女優は声が命。僅かにでも動いたら、その短剣はベシーの喉を容赦なく裂くだろう。その証拠に、今まさに切っ先が皮膚を破っているのだから。
「何から何まで、本当にありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるアリスに、エリアストはそっとその頬に触れて顔を上げさせる。
「私は自分のためにやった。アリスが迷惑ではないならそれでいい」
「エル様」
あの後、劇団は歌姫が暴漢に襲われ公演は代役が務めることとなり、ベシーは表舞台から去る。ベシーほどではないが、代役も上々の評判となったことで、劇団は存続することが出来た。劇団が潰れることでアリスが罪悪感を覚えないよう、ディレイガルドが手を回していることは言うまでもないが、代役の評判は正当なものであるため、その内ディレイガルドが手を引いても問題ないだろう。アリスが歌っていた頃よりも収入が減ることは仕方がないことだが。
アリスの両親は流行病で亡くなり、唯一の家族である兄もまた、病魔に冒されていた。その兄の治療費が重く、とてもアリス一人の稼ぎで賄えるものではなかった。偶然アリスの声に団長が目を付けたことが、ことの始まりだった。
その兄も、今はディレイガルドの保護下に入り、手厚い看護を受けている。
「アリス、今までひとりでよく頑張った。だがこれからは私がいる。どれほど些細なことでも、全力で私を頼ってくれ。わかったな、アリス」
顔中に口づけられながら、アリスは首まで真っ赤になって頷くしか出来ない。
「いい子だ、アリス」
深く、唇が重なった。
「私の、アリス」
*おしまい*
らがまふぃん三周年記念にお付き合いくださり、ありがとうございます。
三周年記念といたしまして、
第一弾 R7.10/29 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 番外編
第二弾 R7.10/30 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛 番外編
第二弾 R7.10/31 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 番外編
第四弾 R7.11/1 新作 麗しき双子の、秘めることのない愛 ―ダリア編―
第五弾 R7.11/2 新作 麗しき双子の、秘めることのない愛 ―ノアリアスト編―
第六弾 R7.11/3 婚約破棄?思い通りにはさせなくてよ 後日談
第七弾 R7.11/4 願いの代償 番外編
以上のスケジュールでお届けです。
お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。R7.10/29
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して三年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。
本編とはまったく関係のない架空の話です。
*∽*∽*∽*∽*
長い金色の髪が動く度、光の粒子を振り撒いているようにキラキラと輝き、青空のように鮮やかな青い瞳はクルクルと表情を変えていく。誰をも感嘆の息を吐かせる容姿もさることながら、その歌声は、まさに天上の歌声と言っても過言ではない。
世間を賑わせている噂の歌姫。
ディレイガルド公爵夫人アイリッシュが、その歌姫の舞台が見たいと言うので、家族で見に行くこととなった。
………
……
…
世界のディレイガルドが来ていると聞いた劇団員たちは、色めき立った。
「ベシー、キミの歌声を聞きに来たとのことだ。しっかりな」
「ええ、団長。いつも通り、問題ないわ」
公演前の声かけにも、自然みんな熱が入る。
「聞いた?!ディレイガルドよ、ディレイガルド!」
「すっごくステキな方たちなのでしょう?!特に息子!」
「どうする?!見初められちゃったら!」
キャアキャア騒ぐ団員たちに、ベシーは冷めた目で答えた。
「そんな妄想、あなたたちが主役の座に付くより現実的じゃないわね。せめて主役とまではいかなくても、目立つ役を与えられてから夢を見たら?」
フン、と鼻を鳴らして通り過ぎていくベシーに、水を差された団員たちは怒りを露わにした。
「何あれ!」
「本当に感じ悪いったら!」
「ちょっと綺麗でちょっと歌がうまいからって!」
そんな声を背中に聞いたベシーは、口の端を上げた。
「素直に羨ましいって言いなさいよね。何の取り柄もないからあんたたちは端役ばかりなのよ」
………
……
…
「アリス、今日もしっかりやるのよ」
「は、はい、ベシー様」
劇場に近い高級宿の一室に、ベシーとアリスと呼ばれた少女はいた。
劇場に向かう前に、アリスに部屋に来るよう呼びつけていた。
劇団の花形であるベシーは、他の団員より好待遇を受けている。トップクラスの者たちはみんなそうだ。名声とその待遇を夢見て、団員たちは切磋琢磨する。そのベシーの部屋に、団員ではない少女が、沈んだ顔をして佇んでいた。
「じゃあこれね」
ベシーが手渡したものは、二つの石だった。
「今日は絶対に失敗出来ないんだからね」
「何か、あるのでしょうか」
「あんたが知る必要ないわ。あんたはいつも通り役目を果たせばいいだけ。わかったわね」
ベシーはアリスを部屋に残し、鍵をかけて劇場へと向かっていった。
アリスは二つの石を見つめ、ギュッと握り締めた。
………
……
…
アイリッシュは大興奮だった。
「本当に素晴らしい歌声!まさに天上の歌声だわ!噂以上よ!」
歌姫に会いたいとアイリッシュは劇場の支配人に伝え、歌姫を待っているところだった。
しかし。
「母上、あの歌姫とやらは、本当に本人ですか」
アイリッシュはキョトンとした。夫であるライリアストを見ると、彼も難しい顔をしている。
「どういうこと?」
「イリス、楽しい気持ちに水を差してごめんね。私もエリアストに同感だ」
二人の発言に、アイリッシュは眉を顰めた。
「あの歌姫は、偽物ってこと?」
「いや、噂の歌姫は彼女で間違いないだろうね。でも、歌の部分がね、別人が歌っていると思うよ」
アイリッシュは目を見開く。
「どうやって?」
ライリアストは説明をした。
「それなら、あの素晴らしい歌声の持ち主は誰なのかしら」
「何か事情があるかもしれないね。エリアスト、そっちを頼めるかい?私は劇団を調べるよ」
エリアストが頷くと。
「お待たせいたしました」
支配人が、団長と歌姫を連れてやって来た。
「なんてステキなのかしら」
宿に戻ってきたベシーは、心ここに在らずといった感じで、フラフラとベッドに倒れ込んだ。椅子に座っていたアリスは、様子のおかしなベシーに心配そうに声をかける。
「うるさいわね。とっとと出て行きなさい。ああ、明日の公演も今日と同じ時間だから遅れるんじゃないわよ」
アリスは迷いながらもお辞儀をして部屋を後にした。
朝早くに、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰よ、こんな朝早くから」
ベッドでモソモソ動きながら悪態を吐くベシーの耳に、焦ったような団長の声が聞こえた。
「ベシー、いるんだろ?早く開けてくれ、ベシー」
極力声を潜めてはいるが、明らかに様子がおかしい。
ベシーは仕方なく起き上がり、鍵を開けると。
そこに立っていたのは、昨日心奪われた麗しの貴公子、エリアストだった。
ベシーは呆然とその美しさに見とれていると、エリアストは無言で部屋に入っていった。ベシーは慌ててその背中を追いかける。その後ろから、二人の人物も付いていった。
「え、え、エリアスト、様、このような朝早くに、どうなさったのかしら」
寝起きの顔を隠すように、その長く輝く金の髪を口元に持っていき、両手で弄ぶ。しかしエリアストは何かを探すように辺りを見回し、目的のものを見つけて手に取った。それを見て、ベシーの顔色が変わった。
「そ、そ、それはっ」
慌てて取り返そうとするベシーを止めたのは、後ろから入ってきた団長だった。
「ちょっと!」
そこまで言って、もう一人の存在に気付く。
「アリス!あんたまさか!」
「勘違いするなよ、女。貴様のやったことを証明してやる。劇場に来い」
そう言ったエリアストは、何故かアリスを抱き上げて部屋から出て行った。団長も慌ててエリアストの後を付いていく。
「ベシー、早く来るんだ」
団長の言葉が、上手く耳に入ってこなかった。
早朝の、静まり返った劇場の中。
舞台の上には四人。
セットに隠された探し物を見つけ、エリアストは団長とベシーを見た。
「共鳴石だな」
共鳴石。二つで一つの対となる石。一つが音を奏でると、もう一つが同じ音を奏でる。
この共鳴石は、音を拾い、その拾った音をもう一つから聞くことが出来る。
これで、舞台に立つ人物と歌い手が違うというエリアストたちの疑問は証明された。
舞台に立つのはベシー、歌を歌うのはアリス。からくりはこうだ。
二組の共鳴石を用意し、一組は舞台用、もう一組は歌用。舞台用と歌用二組の片割れをアリスが持ち、舞台用の片割れは、舞台全体の音を拾う場所に置く。歌用の片割れは、ベシーがペンダントに加工して身に付ける。アリスが宿で舞台の音を聞きながら、それに合わせて歌を歌う。高級宿は、防音対策もバッチリだ。共鳴石の作用する範囲も問題ない。
こうしてアリスの歌声だけを利用していた。
これを知るのは、団長とベシーのみ。
「何よ、悪い?!」
ベシーは開き直った。
「お金が必要だって言うから手伝わせてあげたんじゃない!演技が出来ないんだから、歌だけ歌わせてあげたのよ!それがお金になったのよ!何が悪いの?!」
「その行為は悪くない」
責められると思っていたベシーは間抜けな顔になった。
「悪いのは、それがアリスだったことだ」
側で腰を抱いていたアリスをさらに引き寄せた。
「アリスに罪悪感を持たせたな」
手にしていた二組の共鳴石を落とし、踏みつけた。エリアストの足元で砕けた共鳴石を見て、二人は絶望した。
「二度とアリスに関わるな。いいな」
「あ、あの、今まで、ありがとうございました。おかげで、兄も回復に向かっております。本当にあり」
「うるっさいわね!さっさと行きひぃっ!」
喉元に短剣が突きつけられる。絶対零度の視線がベシーに突き刺さる。
「誰に向かって口を利いている。一度だけは赦す。アリスの貴様らの感謝に報いるためだ。だが二度目はない」
舞台女優は声が命。僅かにでも動いたら、その短剣はベシーの喉を容赦なく裂くだろう。その証拠に、今まさに切っ先が皮膚を破っているのだから。
「何から何まで、本当にありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるアリスに、エリアストはそっとその頬に触れて顔を上げさせる。
「私は自分のためにやった。アリスが迷惑ではないならそれでいい」
「エル様」
あの後、劇団は歌姫が暴漢に襲われ公演は代役が務めることとなり、ベシーは表舞台から去る。ベシーほどではないが、代役も上々の評判となったことで、劇団は存続することが出来た。劇団が潰れることでアリスが罪悪感を覚えないよう、ディレイガルドが手を回していることは言うまでもないが、代役の評判は正当なものであるため、その内ディレイガルドが手を引いても問題ないだろう。アリスが歌っていた頃よりも収入が減ることは仕方がないことだが。
アリスの両親は流行病で亡くなり、唯一の家族である兄もまた、病魔に冒されていた。その兄の治療費が重く、とてもアリス一人の稼ぎで賄えるものではなかった。偶然アリスの声に団長が目を付けたことが、ことの始まりだった。
その兄も、今はディレイガルドの保護下に入り、手厚い看護を受けている。
「アリス、今までひとりでよく頑張った。だがこれからは私がいる。どれほど些細なことでも、全力で私を頼ってくれ。わかったな、アリス」
顔中に口づけられながら、アリスは首まで真っ赤になって頷くしか出来ない。
「いい子だ、アリス」
深く、唇が重なった。
「私の、アリス」
*おしまい*
らがまふぃん三周年記念にお付き合いくださり、ありがとうございます。
三周年記念といたしまして、
第一弾 R7.10/29 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 番外編
第二弾 R7.10/30 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛 番外編
第二弾 R7.10/31 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 番外編
第四弾 R7.11/1 新作 麗しき双子の、秘めることのない愛 ―ダリア編―
第五弾 R7.11/2 新作 麗しき双子の、秘めることのない愛 ―ノアリアスト編―
第六弾 R7.11/3 婚約破棄?思い通りにはさせなくてよ 後日談
第七弾 R7.11/4 願いの代償 番外編
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お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
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子供達とエル様のアリス争奪戦が気になるところです😍
ゆん様、感想ありがとうございます。
3作ともお読みいただいて、とても嬉しいです!
泣いていただいた番外編は、「失えないもの」かなあと思うのですが、
これ、アリスを助ける人で迷いました。
世捨て人おばあにする前は、
ネフェル商会のティティに助けられる話で考えていましたが、
八年行方不明にすることがムリ。
となりまして、公開したものへと相成りました。
いつか子どもたちの話も書けるかなあ、と思っております。
その時にはぜひ、また遊びに来てくださいませ。
ありがとうございました。
完結表示があったので終わりかと思ったら続きが😍
嬉しいです
ぶん様、最後までお読みいただきありがとうございます!
本編が完結したら完結表示にするようにしているのですが、
予約公開設定の日付を勘違いしておりまして、
一日遅れて完結になってしまいました。
そのため、没ネタ公開後の完結表示になり、
番外編公開になるという
ちょっと変な感じのタイミングで
完結になってしまいました。
そんなわけで、番外編が数話ありますので、
もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます!
ぶん様、いつもありがとうございます。
確かにそうなんですよねえ。
ただ、ひたすらにアリス至上主義なので、
ご容赦いただけるとありがたいです。
でもでも、呆れずに今後もお付き合いいただけると嬉しいです。
率直なご意見、ありがとうございました。