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新しい話、始めました。
神様にも見放されるほど、かなり狂った人が主人公です。
あらゆる残酷なものが苦手な人は、お戻りください。
作中、時がどんどん流れるので、同じ役職でも登場人物が違ったりしています。
わかりづらいかも知れませんが、ご容赦ください。
+∽+∽+∽+∽+
わたしは、しねない
わたし、あいを、しりたい
愛?くだらん
くだらん?
そうだ。そんなものに価値などない
あい、くだらなく、ない
わたしは、ここ、が、ぎゅぅって、なった
はじめて、だった
しりたい
わたし、あいを、しりたい
その者は、退屈だった。
ひどく、退屈であった。
アラバストロ帝国。
強大な帝国は、恐ろしいまでの軍事力を持ち、世界のすべてを飲み込んだ。すべての国は、アラバストロの友好国もしくは属国になる。
すべての国を手中に収め、ありとあらゆるモノが手に入り、すべてが思いのままだというのに、それでも帝王は満足しない。
バルトロメウス=エックハルト・アラバストロ。
アラバストロが、小さな国に過ぎなかった頃に王となり、後に世界を手にした暴虐の王。
逆らう国には容赦をせず、従順を示した国には従軍させ、血塗られた戦線を二十余年もの間、最前線で戦い続けたバルトロメウス。乾く間もない返り血は、そのまま鎧の色となる。
世界を手に入れたバルトロメウスは、各国の美姫たちとの間に、五十九人の子をもうけていた。戦をする必要がなくなり数年、上は二十七から下は乳飲み子までと、子どもたちの年齢差は親子ほどもある。
今年五十になろうというバルトロメウスは、三十手前の青年にしか見えないほど若々しかった。子どもたちと兄弟だと言っても疑わないほどに若く、そして誰よりも美しかった。
戦禍の残る国も散見されたが、概ね落ち着きを見せていたある日。
美姫に囲まれたバルトロメウスは、長椅子で膝枕をさせている美姫に、戯れに質問をした。
おまえの子は、今いくつだ、と。
その美姫は、十六の時に自国をバルトロメウスに奪われ、挙げ句バルトロメウスに手折られた。そして十七でバルトロメウスの子を産み落とす。
美姫は、慎ましやかな声で、十五になりました、と答えると、バルトロメウスは獰猛な笑みを浮かべ、その美姫の唇を己の唇で塞いだ。淫靡な音に、侍る美姫たちは頬を染めつつ見ないように扇でそれぞれ顔を隠す。やがて唇を離れたバルトロメウスが言った。
十五以上の子を呼べ、と。
バルトロメウスの子は五十九人。内、十五歳以上の子は、三十八人。
直ぐさま集められた皇子皇女たちは、父であるバルトロメウスの前にひれ伏している。声をかけられるまで顔を上げることは許されない。実の子どもであっても。だが、今回はそのことに助けられた。集められた皇子皇女の中の誰かの母親が、座るバルトロメウスに跨がり、痴態を晒しているのだから。
卑猥な音と、暴虐の王に体を揺すられながら、あまりの仕打ちにすすり泣く美姫の声。泣き止まぬ美姫に興が冷めたバルトロメウスは、美姫から己を引き抜くと、そのまま美姫を床に突き倒す。その手には、冷たく光る剣があった。
怯える美姫は、赦しを乞う。
バシャ
バケツの水が零れるような音がした。
バルトロメウスは、子どもたちに顔を上げるよう言った。
子どもたちは息をのむ。
美姫の返り血を浴びて艶然と笑う、狂った美しい王に。
バルトロメウスは、子どもたちに言った。
戦場を駆け抜けていた頃は、常に生と死が隣り合わせにあった。
敵も味方も入り乱れ、昼夜を問わずに血の雨が降る。
敵の心臓を貫いたとき
敵の体を真っ二つにしたとき
敵の臓物を引きずり出したとき
敵の頭を握り潰したとき
敵の喉笛を食い千切ったとき
俺は今、生きている、と感じられた。
バルトロメウスは剣についた血を振り払うと、一番近くにいた美姫にその剣を渡す。
戦をする必要がなくなり数年。
バルトロメウスは、酷く退屈だった。
また、バルトロメウスは、子どもたちに言った。
殺し合え
と。
いつだったか、この国を創造したという女神が顕れ、言った。
おまえはあまりに恨みを買いすぎた。
これからおまえは永い時を生きることになるだろう。
誰もが、生まれ、老い、そして死ぬ。
だがおまえは、その輪から外された。
たった一人、永劫の時を彷徨うこととなるだろう。
すべてのモノが、おまえを置いていく。
おまえは、たった一人、取り残されるのだ。
暴虐の王は、嗤った。
女神よ、創造主よ。
それは貴様がこの世界を見捨てたと同義。
俺を永久にこの世界に閉じ込めるとは、そういうことだ。
愚かな神だ。
俺は後悔などせぬ。
これからも、己の欲のまま生き続けるのだ。
女神は嗤った。
そうか、そうか。
後悔せぬか。
それも良かろう。
おまえの好きに、生きるがいい。
*つづく*
神様にも見放されるほど、かなり狂った人が主人公です。
あらゆる残酷なものが苦手な人は、お戻りください。
作中、時がどんどん流れるので、同じ役職でも登場人物が違ったりしています。
わかりづらいかも知れませんが、ご容赦ください。
+∽+∽+∽+∽+
わたしは、しねない
わたし、あいを、しりたい
愛?くだらん
くだらん?
そうだ。そんなものに価値などない
あい、くだらなく、ない
わたしは、ここ、が、ぎゅぅって、なった
はじめて、だった
しりたい
わたし、あいを、しりたい
その者は、退屈だった。
ひどく、退屈であった。
アラバストロ帝国。
強大な帝国は、恐ろしいまでの軍事力を持ち、世界のすべてを飲み込んだ。すべての国は、アラバストロの友好国もしくは属国になる。
すべての国を手中に収め、ありとあらゆるモノが手に入り、すべてが思いのままだというのに、それでも帝王は満足しない。
バルトロメウス=エックハルト・アラバストロ。
アラバストロが、小さな国に過ぎなかった頃に王となり、後に世界を手にした暴虐の王。
逆らう国には容赦をせず、従順を示した国には従軍させ、血塗られた戦線を二十余年もの間、最前線で戦い続けたバルトロメウス。乾く間もない返り血は、そのまま鎧の色となる。
世界を手に入れたバルトロメウスは、各国の美姫たちとの間に、五十九人の子をもうけていた。戦をする必要がなくなり数年、上は二十七から下は乳飲み子までと、子どもたちの年齢差は親子ほどもある。
今年五十になろうというバルトロメウスは、三十手前の青年にしか見えないほど若々しかった。子どもたちと兄弟だと言っても疑わないほどに若く、そして誰よりも美しかった。
戦禍の残る国も散見されたが、概ね落ち着きを見せていたある日。
美姫に囲まれたバルトロメウスは、長椅子で膝枕をさせている美姫に、戯れに質問をした。
おまえの子は、今いくつだ、と。
その美姫は、十六の時に自国をバルトロメウスに奪われ、挙げ句バルトロメウスに手折られた。そして十七でバルトロメウスの子を産み落とす。
美姫は、慎ましやかな声で、十五になりました、と答えると、バルトロメウスは獰猛な笑みを浮かべ、その美姫の唇を己の唇で塞いだ。淫靡な音に、侍る美姫たちは頬を染めつつ見ないように扇でそれぞれ顔を隠す。やがて唇を離れたバルトロメウスが言った。
十五以上の子を呼べ、と。
バルトロメウスの子は五十九人。内、十五歳以上の子は、三十八人。
直ぐさま集められた皇子皇女たちは、父であるバルトロメウスの前にひれ伏している。声をかけられるまで顔を上げることは許されない。実の子どもであっても。だが、今回はそのことに助けられた。集められた皇子皇女の中の誰かの母親が、座るバルトロメウスに跨がり、痴態を晒しているのだから。
卑猥な音と、暴虐の王に体を揺すられながら、あまりの仕打ちにすすり泣く美姫の声。泣き止まぬ美姫に興が冷めたバルトロメウスは、美姫から己を引き抜くと、そのまま美姫を床に突き倒す。その手には、冷たく光る剣があった。
怯える美姫は、赦しを乞う。
バシャ
バケツの水が零れるような音がした。
バルトロメウスは、子どもたちに顔を上げるよう言った。
子どもたちは息をのむ。
美姫の返り血を浴びて艶然と笑う、狂った美しい王に。
バルトロメウスは、子どもたちに言った。
戦場を駆け抜けていた頃は、常に生と死が隣り合わせにあった。
敵も味方も入り乱れ、昼夜を問わずに血の雨が降る。
敵の心臓を貫いたとき
敵の体を真っ二つにしたとき
敵の臓物を引きずり出したとき
敵の頭を握り潰したとき
敵の喉笛を食い千切ったとき
俺は今、生きている、と感じられた。
バルトロメウスは剣についた血を振り払うと、一番近くにいた美姫にその剣を渡す。
戦をする必要がなくなり数年。
バルトロメウスは、酷く退屈だった。
また、バルトロメウスは、子どもたちに言った。
殺し合え
と。
いつだったか、この国を創造したという女神が顕れ、言った。
おまえはあまりに恨みを買いすぎた。
これからおまえは永い時を生きることになるだろう。
誰もが、生まれ、老い、そして死ぬ。
だがおまえは、その輪から外された。
たった一人、永劫の時を彷徨うこととなるだろう。
すべてのモノが、おまえを置いていく。
おまえは、たった一人、取り残されるのだ。
暴虐の王は、嗤った。
女神よ、創造主よ。
それは貴様がこの世界を見捨てたと同義。
俺を永久にこの世界に閉じ込めるとは、そういうことだ。
愚かな神だ。
俺は後悔などせぬ。
これからも、己の欲のまま生き続けるのだ。
女神は嗤った。
そうか、そうか。
後悔せぬか。
それも良かろう。
おまえの好きに、生きるがいい。
*つづく*
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