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平凡透子の非凡な日常 中編
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恋愛対象として一緒にいたい。
そう言われて、正直なところ、意味がわからなかった。
自分の容姿は可もなく不可もなく、いたって普通だ。外見にこだわりはないので、動ける体さえあればいいと思っている。美醜がわからないわけではない。現に、私の何を気に入ったのか不明な四人は、綺麗だと思う。
四人は世間で言うところの、セレブと言われる上流階級の人間。それもトップクラスだ。お金に地位に容姿に恵まれた四人は、それこそ伴侶など選び放題だろう。それなのに、私を好きなのだと言う。
私は物心ついたときにはすでに両親はなく、国の育成機関で訓練を受けていた。ここで護衛を育てている。優秀な成績の者は、さらに上の機関で訓練を積む。幸い私は適性があったようで、十二の歳から任務を請け負うまでになっていた。十三でキメラ討伐のメンバーに任命され、十四では海上の護衛も出来るようになった。十六になる頃には、空も任せてもらえるようになった。その頃になると、私の認知度もだいぶ上がったように思う。
私を好きだという四人に会ったのも、この頃だ。
私の頭には、恋愛というカテゴリーがない。恋愛の意味がわからないと言うことではない。自分に当てはめることが出来ない。当てはまるとも思わない。私の日常は、死と隣り合わせ。他者の命を預かる仕事だ。自分の命を省みることもない。護衛対象の命が最優先だからだ。それ以外は、任務のために必要なことを覚える。例えば今回なら、派遣OLという立場なので、その会社の業務内容を行うための知識などが、それに該当する。
ところで今回、この火の本国でなぜ社会人の真似事をしているかというと、その理由は依頼内容にある。護衛対象に気付かれず、社内の護衛をして欲しいというもの。対象は五人。一人、数週間から数ヶ月の護衛だ。その人物の勤め先に派遣という形で潜入し、見守っている。夜間や会社の休日、次の派遣先へ移る合間に、いつも通り討伐に行く、という日々だった。
火の本国に来て一年と少し。任務最終日となる本日、あの四人がやって来た。最終日とは言え任務中。ついでに四人も護衛する羽目になったが、仕方がない。就業時間の終わりと共に任務も終了となるのだが、終了間際に不穏な空気を感じた。いつも護衛対象を狙う者と空気が違う。四人の誰か、あるいはすべてを狙う者だと判断し、迅速に処理をする。なぜこんなことをしたのか、などは私の管轄ではないので、警察にすべてお任せだ。
気配を感じた時点で動かなかった理由は、単純に護衛対象から離れるわけにいかないからだ。自分を過信してはいけない。他に気配を感じないから離れて処理をしても大丈夫だろうなどとは考えない。世の中には上には上がいる。自分が感知できない敵が潜んでいないとは限らないのだ。
人一人の制圧は、然程難しいことはない。それでも四人は、私を褒めてくれる。私が四人の周囲にいないタイプの人間だから目に止まったであろうことは、想像に難くない。それが、なぜ恋愛の方向へ進んだのかは甚だ疑問だ。好みなど人それぞれなのでとやかく言うつもりもないが、目か趣味か、どちらかは確実に悪いだろう。
自分たちの持つスペックを理解して欲しい。
そして私の生きる世界も。
私がそっちの世界で生きられるはずがないのに。
*つづく*
そう言われて、正直なところ、意味がわからなかった。
自分の容姿は可もなく不可もなく、いたって普通だ。外見にこだわりはないので、動ける体さえあればいいと思っている。美醜がわからないわけではない。現に、私の何を気に入ったのか不明な四人は、綺麗だと思う。
四人は世間で言うところの、セレブと言われる上流階級の人間。それもトップクラスだ。お金に地位に容姿に恵まれた四人は、それこそ伴侶など選び放題だろう。それなのに、私を好きなのだと言う。
私は物心ついたときにはすでに両親はなく、国の育成機関で訓練を受けていた。ここで護衛を育てている。優秀な成績の者は、さらに上の機関で訓練を積む。幸い私は適性があったようで、十二の歳から任務を請け負うまでになっていた。十三でキメラ討伐のメンバーに任命され、十四では海上の護衛も出来るようになった。十六になる頃には、空も任せてもらえるようになった。その頃になると、私の認知度もだいぶ上がったように思う。
私を好きだという四人に会ったのも、この頃だ。
私の頭には、恋愛というカテゴリーがない。恋愛の意味がわからないと言うことではない。自分に当てはめることが出来ない。当てはまるとも思わない。私の日常は、死と隣り合わせ。他者の命を預かる仕事だ。自分の命を省みることもない。護衛対象の命が最優先だからだ。それ以外は、任務のために必要なことを覚える。例えば今回なら、派遣OLという立場なので、その会社の業務内容を行うための知識などが、それに該当する。
ところで今回、この火の本国でなぜ社会人の真似事をしているかというと、その理由は依頼内容にある。護衛対象に気付かれず、社内の護衛をして欲しいというもの。対象は五人。一人、数週間から数ヶ月の護衛だ。その人物の勤め先に派遣という形で潜入し、見守っている。夜間や会社の休日、次の派遣先へ移る合間に、いつも通り討伐に行く、という日々だった。
火の本国に来て一年と少し。任務最終日となる本日、あの四人がやって来た。最終日とは言え任務中。ついでに四人も護衛する羽目になったが、仕方がない。就業時間の終わりと共に任務も終了となるのだが、終了間際に不穏な空気を感じた。いつも護衛対象を狙う者と空気が違う。四人の誰か、あるいはすべてを狙う者だと判断し、迅速に処理をする。なぜこんなことをしたのか、などは私の管轄ではないので、警察にすべてお任せだ。
気配を感じた時点で動かなかった理由は、単純に護衛対象から離れるわけにいかないからだ。自分を過信してはいけない。他に気配を感じないから離れて処理をしても大丈夫だろうなどとは考えない。世の中には上には上がいる。自分が感知できない敵が潜んでいないとは限らないのだ。
人一人の制圧は、然程難しいことはない。それでも四人は、私を褒めてくれる。私が四人の周囲にいないタイプの人間だから目に止まったであろうことは、想像に難くない。それが、なぜ恋愛の方向へ進んだのかは甚だ疑問だ。好みなど人それぞれなのでとやかく言うつもりもないが、目か趣味か、どちらかは確実に悪いだろう。
自分たちの持つスペックを理解して欲しい。
そして私の生きる世界も。
私がそっちの世界で生きられるはずがないのに。
*つづく*
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