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冷酷な閣下
残酷な表現あります。ご自衛ください。
お兄ちゃん、怒ってます。
*~*~*~*~*
「咲穂はね、私がずっとずっと探していた、この国、いや、世界よりも大切な子でね」
エルランジェの後見人であった一家は、ゲルトの侍従により会場で拘束されていた。
騒ぎの後に入場していた王族たちも、詳細はわからないまでも側近から事と次第を聞くと、難しい顔になっていた。
「後見人風情が、やってくれたな」
国王は苦々しくそう吐き捨てると、ヘイノたちを睨みつけた。
成人の式典どころではないが、ゲルトの動きを待つために、会場の全員がそこに留まっていた。
ヘイノたちは顔を青ざめさせながら、王族の刺すような視線と遠巻きに自分たちの話をする貴族たちの視線にさらされていた。
しばらくしてゲルトの侍従が戻ると、有無を言わさずヘイノたちを拘束し、横一列に並べて正座をさせた。
「御屋形様より沙汰があるまでこのまま待て」
そうしてしばし、ゲルトが一人現れ、先の台詞となる。
「ああ、これは陛下。ご挨拶が遅れました」
「よい。ゲルト殿の一大事のようだからな。そちらを先に済ませるといいだろう」
これから起こすことの許可をもらい、ゲルトは軽く頭を下げる。
「お気遣い、いたみいります。ええ、私の何よりも大切な子が見つかりまして。後ほど陛下にもご挨拶に伺いましょう」
たくさん泣いて、たくさん食べて。大好きな兄にも会えて、気が緩んだのだろう。サーフォニアは、ゲルトの腕の中で眠っていた。
非常に離れ難かったがユーリィに任せ、ヘイノたちを調理しに来た。
「か、か、閣下、違う、誤解なのですっ」
ヘイノが口を開くと、その口が裂けた。
痛みに叫び、拘束されながらも床を転がるヘイノを見ながら、ゲルトは用意された椅子にゆったりと座りながら言った。
「こらこら、ダメじゃないか」
ヘイノの口を裂いた侍従を窘めた。
「うるさい口は閉じさせないとな。裂いたら余計に開いてよりうるさくなるだろう?」
やることが違う、という意味で。
許可なくではあったが、口を開いただけでこの仕打ち。側にいたヘイノの子どもたちは身を震わせ、無意識の内に失禁していた。
「わ、わ、わたくしは、わたくしは、あの子に、何もしておりませんわ」
気の弱い妻は、気が弱いゆえに助かろうと必死だった。
「ああ、何もしていないことは知っている」
ゲルトの言葉で拘束を解かれた。助かった、そう安堵したのも束の間。両手足は複雑に折られ、舌を切り取られた。
「どうせ何もしないのだ。動くことも話すこともしなくて良い」
冷酷な筆頭公爵家前当主ゲルト。容赦なく、わかりやすく知らしめる。大切な、何よりも大切な人を傷つけたら、どうなるか。
「た、助け…殺さな…で」
「咲穂に、その兄に、満足に食事も与えず嗤っていたおまえたちが、それを言うか」
自慢の綺麗な顔をあらゆる液体で汚し、恐怖に歪むヘイモたちを、ゲルトは冷たく見下ろして問う。
「飢えたことはあるか」
ゲルトは、まるで経験があるかのように、飢えの苦しみを語る。
「それほどの苦しみを、私の大切な人に、よくも」
握る杖の柄が、砕けた。
凄まじい力に、皆が息をのむ。
「自身の体を喰らいたくなる気持ちを思いしれ」
ヘイノ一家がゲルトの側近たちによって連れて行かれると、ゲルトは何事もなかったように国王を向いた。
「では陛下、時間は押しましたが、予定通り式典を始めますか。ああ、今、私の大切な人を連れて参ります」
ゲルトは足取り軽く、サーフォニアを迎えに出て行った。
制裁により汚れた床を掃除するゲルトの侍従だけが、忙しなく動いていた。
*つづく*
お兄ちゃん、怒ってます。
*~*~*~*~*
「咲穂はね、私がずっとずっと探していた、この国、いや、世界よりも大切な子でね」
エルランジェの後見人であった一家は、ゲルトの侍従により会場で拘束されていた。
騒ぎの後に入場していた王族たちも、詳細はわからないまでも側近から事と次第を聞くと、難しい顔になっていた。
「後見人風情が、やってくれたな」
国王は苦々しくそう吐き捨てると、ヘイノたちを睨みつけた。
成人の式典どころではないが、ゲルトの動きを待つために、会場の全員がそこに留まっていた。
ヘイノたちは顔を青ざめさせながら、王族の刺すような視線と遠巻きに自分たちの話をする貴族たちの視線にさらされていた。
しばらくしてゲルトの侍従が戻ると、有無を言わさずヘイノたちを拘束し、横一列に並べて正座をさせた。
「御屋形様より沙汰があるまでこのまま待て」
そうしてしばし、ゲルトが一人現れ、先の台詞となる。
「ああ、これは陛下。ご挨拶が遅れました」
「よい。ゲルト殿の一大事のようだからな。そちらを先に済ませるといいだろう」
これから起こすことの許可をもらい、ゲルトは軽く頭を下げる。
「お気遣い、いたみいります。ええ、私の何よりも大切な子が見つかりまして。後ほど陛下にもご挨拶に伺いましょう」
たくさん泣いて、たくさん食べて。大好きな兄にも会えて、気が緩んだのだろう。サーフォニアは、ゲルトの腕の中で眠っていた。
非常に離れ難かったがユーリィに任せ、ヘイノたちを調理しに来た。
「か、か、閣下、違う、誤解なのですっ」
ヘイノが口を開くと、その口が裂けた。
痛みに叫び、拘束されながらも床を転がるヘイノを見ながら、ゲルトは用意された椅子にゆったりと座りながら言った。
「こらこら、ダメじゃないか」
ヘイノの口を裂いた侍従を窘めた。
「うるさい口は閉じさせないとな。裂いたら余計に開いてよりうるさくなるだろう?」
やることが違う、という意味で。
許可なくではあったが、口を開いただけでこの仕打ち。側にいたヘイノの子どもたちは身を震わせ、無意識の内に失禁していた。
「わ、わ、わたくしは、わたくしは、あの子に、何もしておりませんわ」
気の弱い妻は、気が弱いゆえに助かろうと必死だった。
「ああ、何もしていないことは知っている」
ゲルトの言葉で拘束を解かれた。助かった、そう安堵したのも束の間。両手足は複雑に折られ、舌を切り取られた。
「どうせ何もしないのだ。動くことも話すこともしなくて良い」
冷酷な筆頭公爵家前当主ゲルト。容赦なく、わかりやすく知らしめる。大切な、何よりも大切な人を傷つけたら、どうなるか。
「た、助け…殺さな…で」
「咲穂に、その兄に、満足に食事も与えず嗤っていたおまえたちが、それを言うか」
自慢の綺麗な顔をあらゆる液体で汚し、恐怖に歪むヘイモたちを、ゲルトは冷たく見下ろして問う。
「飢えたことはあるか」
ゲルトは、まるで経験があるかのように、飢えの苦しみを語る。
「それほどの苦しみを、私の大切な人に、よくも」
握る杖の柄が、砕けた。
凄まじい力に、皆が息をのむ。
「自身の体を喰らいたくなる気持ちを思いしれ」
ヘイノ一家がゲルトの側近たちによって連れて行かれると、ゲルトは何事もなかったように国王を向いた。
「では陛下、時間は押しましたが、予定通り式典を始めますか。ああ、今、私の大切な人を連れて参ります」
ゲルトは足取り軽く、サーフォニアを迎えに出て行った。
制裁により汚れた床を掃除するゲルトの侍従だけが、忙しなく動いていた。
*つづく*
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