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1巻

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   ***


 琳くんとの待ち合わせ場所は、私の家から少し離れたブーランジェリーだった。琳くん曰く、コーヒーとパンがとても美味しいとのこと。……前回もだけど、琳くんは私を『美味しい食べ物に目がない』と思っているのではないだろうか。否定できないのがつらい。
 前ボタンの黒いワンピース、レースアップブーツに焦げ茶色のバッグというオーソドックスなファッションに、薄く化粧をしてブーランジェリーに行くと、既に琳くんが来ていた。カフェコーナーで人待ち顔でコーヒーを飲んでいる。
 店内の女の子たちからマダムまで、女性陣の視線を独り占め状態の彼に声をかけるのはなかなか勇気がいるなあと思いながら、私は彼の座るテーブルに近づき、声をかけた。

「琳くん」
「ごめん、先に飲んでた」

 いや、お酒の席じゃないからそれはいいんですが。

「パンはいくつか美月の好きそうなのを注文してる。テイクアウトにしたから、外で食べよう。美月、何か飲む?」
「えっと……カフェラテ。アイスで」

 店員のお姉さんにオーダーし、琳くんはこのあとの予定を話し始めた。

「プレゼン用にコワーキングスペース借りてるから、そこで話し合い。そのあと、食事って流れでいい?」

 私たちのデートは普通のデートではない。如何いかに相手に自分の要求を飲ませ、譲歩させるかのプレゼン合戦でもあるのだ。

「うん」

 私が持って来たのは、交流のある神社の娘たち(not跡取り含む)から聞き込みした不自由さだ。メリットもあるのでそれも入れた。そこは公平にしないと説得力がなくなる。
 琳くんがノートパソコンを持って来ると事前に聞いていたので、プリントアウトのほかにデータも一応USBメモリに入れてある。結構頑張って作ったけど、あちらは弁護士。弁論を以て依頼人の利益を守るプロだ。……何か勝ち目がない気がする。
 ちょっと弱気になりかけた自分を鼓舞し、アイスカフェラテを飲んで──豆にこだわっているだけでなくミルクが違うのか、すごく美味しかった──私は立ち上がった琳くんの後を追ってコワーキングスペースのあるオフィスビルに向かった。
 琳くんが借りたというコワーキングスペースは打ち合わせ用のもので、会議室のように区切られていて、防音設備も整っているらしい。エレベーターホールの近くで飲み物を買った私たちは、利用者パスをもらって指定された部屋に行く。……あとで使用料を半分払わなくちゃ。

「……どっちから始める?」
「私から」

 会議用のデスクに向かい合わせて座った琳くんの問いかけに食い気味に答えると、くすっと笑われた。笑うなら笑ってくれていい、とにかく私はあの家を継ぎたくない。

「じゃあ、どうぞ。穂積神社、穂積家を継ぐデメリットは?」
「まずこれを見てほしいの。同じ『神社の娘』たちに聞いた率直な意見」

 私はプリントアウトしておいた紙をファイルから取り出して渡した。

「神社を継ぐデメリット──恋人とクリスマスが祝えないし、クリスマスプレゼントももらえなかった。巫女舞が疲れる。正月は初詣客の対応で多忙すぎる。御弓おゆみ取りで全身が死ぬ。流鏑馬やぶさめは命懸けになりやすいが迂闊に廃止もできない……最初の答えは怨念がこもってるな……」
「普通に『クリスマス』としてケーキを食べたりする家もあるんだけど。うちはダメだから」
「ふうん……けど巫女舞が疲れるとかそういうのは俺には関係ないな。巫女じゃないし。御弓取りも流鏑馬も氏子から選ばれるんだろ?」

 ちっ。気づいたか……というか、情報収集してたんだ。私はといえば、琳くんのほうの情報収集を一切していないから不利だと今更思い知った。

「お正月が大変なのは宮司もだからね?」
「おみくじや破魔矢、お守りなんかを売る巫女もどきのバイトのほうがよっぽど大変だろ」
「な、なぜそのことを……」

 お正月は巫女舞の子たちが手伝ってくれるのだけど、販売係の巫女役は忙しすぎる上に若い女の子目当てのおじさんがいたりするので、くじ引きで強制しなくてはならないほど忌避されている。

「……プレゼン合戦なんだから、多少は相手の様子も調べとくもんじゃないか……?」

 呆れたように言うと、琳くんは続きを読み始めた。

「メリット。……利点も書いたのか」
「そこも書かなきゃ不公平じゃない」
「美月は変なところで平等精神出すなあ……氏子さんから敬われるけれど、その分言動を常に見られている閉塞感がある生活。おかげで面接や営業程度で緊張することはない。……これはメリットか?」
「琳くんは弁護士なんだから緊張しないっていうのはメリットでしょ?」

 度胸が鍛えられるというのは結構なことだと思った私に、琳くんは今度こそ本気で呆れた視線を向けてきた。

「……俺の職業はともかく、顧問契約先わかってる?」
「あ」
「顧問は親父だけど、俺も不知火組の人たちと話したりすることはあるんだ」
「……」

 確かに、そちらの方々と交渉したりしているなら、四六時中『見られている』程度で緊張感などないだろう。

「というわけで、この点は俺が婿入りする際のメリットにはならない」
「はい……」
「さっきのデメリットも、俺からしたらデメリットというほどのもんじゃない。緊張感や閉塞感のある生活っていうのはな、美月」
「うん」
「……いつ親父が『引退するから顧問契約先を全部譲る』って言い出すかわからない毎日を過ごすストレスフルな俺の生活だ」

 確かに。淡々とした口調にもかかわらず、琳くんのその言葉にはすごく説得力があった。

「俺が婿入りしたら、まあ宮司の仕事はお義父とうさんに頼むとして」
「さらっと『おとうさん』呼びしないで」
「巫女舞とかは若い女の子が必要なんだろ。この顔で、三人四人五人くらいはすぐ引っかけてきてやる」

 更にとんでもないことを言う琳くんに、戦慄した。確かにその顔なら女の子は引っかけ放題でしょうけども!

「クズがいる……! 清らかな子じゃないとダメなんですけど!」
「元クライアントに女子中高生もいるから心配するな」
「犯罪……いやロリコン……」
「守秘義務があるから詳しくは言えないが、そんな色恋にうつつを抜かす余裕なんかなかった子たちばかりだ」
「……ごめんなさい」

 反省して項垂うなだれた私に、琳くんは頷きながら続けた。

「だからその問題が解決した今はめっちゃ遊んでる。未だに俺に連絡してくる」
「ねえほんとに弁護士として恥ずかしいことはしてない? 信じていいの?」
「それに、俺なら氏子から持ち込まれる私的な相談に法に基づいた回答をしてやれる。──結構多いんだろ、そういう仲裁役を依頼されるのは」
「うん……」

 これは事実で、私たちの元には氏子総代さんを通じていろんな相談が持ち込まれる。氏子さん同士の揉め事は総代さんが何とかしてくれるんだけど、たまに『無理です、すみません』と言いたいくらいこじれた話を持ち込まれて、お父さんが頭を抱えている。
 もちろん人間だから義理や人情で納得してもらえることもあるけど、法的にどうなんだろうという場合もあるから、弁護士の琳くんがいるとありがたい……ってダメ、流されちゃダメ、私は穂積の家を継がずに嫁に行きたいんだから!

「危うくそれなら琳くんと結婚したほうが困らないと洗脳されるとこだった……」
「洗脳と言うな。俺が婿入りしたらデメリットもメリットに変えられるって話しただけだろうが」
「はいもう終わり! 次回はもっと詰めてくるから! 琳くんのプレゼンどうぞ!」

 私はやけくそになりつつ、次回はきちんと資料を作り込もうと決意して琳くんのプレゼンを促した。

「俺のプレゼンは、うちに嫁入りしたらどうしたって不知火組との関わりが深くなるし、下手したら命は狙われなくても誘拐とかの危険があるってこと。婿入りしたら俺は親父の事務所から離れるから、どっかのイソ弁から始めるにしてもいずれは事務所開けるくらいの資金はある」
「え、琳くんお金持ちなの」
「弁護士収入は平均値だけど、母方の祖母から不動産をいくつか生前贈与されてるから不労所得がある」

 この外見と代々弁護士という家庭環境と頭脳に加えてお金持ち。勝ち組は生まれた時から勝ち組なのね……

「美月」
「はい?」

 うちは神社の格は高いけど、それだけだ。他のやり手神社のように、学校や病院を経営しているような手腕はない。よって財産は、神社の敷地奥の家と、参拝客のための近くの駐車場くらいのものである。
 不動産にはそれなりの価値があるのだろうけど、先祖代々の土地だから売るわけにはいかない。お金に困ってはいないけど、セレブというほど裕福でもない……と思う。
 なので、勝ち組いいなあと思っていたら、琳くんが私を呼んだ。やわらかく響く彼の声は、私の耳に幸福感を与えてくれる。

「プレゼン合戦するより、俺は美月とデートしたい」
「……急にどうしたの?」
「今までの流れでわかった。……おまえ、プレゼンしたことないだろ」

 びくっとわかりやすく動揺した私に、琳くんははあ、と溜息を吐いた。

「そういう相手とプレゼン対決して勝ったところで俺がずるくて卑怯な男になるだけだし。それなら、最初の約束どおり、相手を惚れさせるほうに注力するほうがまだ公平だ」
「う……」

 確かに、確かに私はプレゼンなんてしたことがないけど! 仕事の企画書や提案も文書でのやり取りばかりだったし。
 だけど、いきなりデートと言われても。

「琳くん……私、その、恋に落とすためのデートなんて知らないんです……」
「俺も知らない。だから公平だろ」

 そう……なんだろうか。
 恋愛に疎い私が内心首を傾げていると、琳くんはデスクの上を片づけ始めた。

「ちょっと予定より早いけど終わろう。慣れないことさせた詫びにパンは全部譲ってやるから食事に行くか」
「慣れないこと?」
「プレゼン。……俺も上手いほうじゃないが、まさかあそこまで下手くそな初心者だとは思わなかった……」
「だって初めてだったんだもん!」
「何か誤解されそうな言い回しはやめてくれ」

 琳くんは書類やパソコンをアタッシェケースに片づけると、すっと立ち上がった。

「このあとにご飯ってデートっぽくない? まだどうやって琳くんに惚れてもらうか決めかねてるのに、いきなりそんなこと言われても私も困るというか」
「創作中華の美味い店に連れてってやる」
「行きます!」

 だってうちは和食が多いから……!
 お母さんもおばあちゃんも和食は得意だし、たまには洋食も出るけど、中華は酢豚かエビチリが限界なんだもの……!
 即答して片づけ始めた私を、琳くんは微笑ましげに見守っていた。……そんな優しい目で見られたらついときめいてしまうので、琳くんには自分の顔面偏差値をもっと自覚してもらいたい。


 琳くんが連れて行ってくれたお店は、ランチ営業もしているからなのか、ドレスコードは心配いらないみたいだった。赤い窓枠や竜が巻き付いた柱など、いかにも中華という感じのお店だ。店員さんの制服はチャイナドレスではなかったけど。
 ランチコースを二人で頼んで、大きなアワビの姿煮や油淋鶏や蟹レタス炒飯、海老饅頭と菊花茶きくはなちゃ、更に杏仁豆腐までいただいてしまった。すみません嘘です、桃饅頭も追加オーダーしました。
 美味しい美味しいと食べている私を、琳くんは微笑ましげに──見てません。彼も食べることに集中していた。ココナッツミルクプリンをオーダーしてたもの。
 追加オーダーのプリンが届いた時、私たちはやっと『話す余裕』を取り戻した。

「ねえ……ここからどうやって恋に落ちるの私たち……」

 これまでにわかったことは、二人とも完全に花より団子である。

「とりあえずお互い知らないことが多すぎるから、そこから埋めていこう。美月は、神社の仕事は何を手伝ってるのかとか」
「前にも言ったように巫女舞の継承と、あとはおみくじとかの販売。それとお祓いなんかの受付」

 巫女舞は、氏子総代さんの紹介で常に五~六人ほどいる。新しく入ってきた子に基本を教えながら、長く舞ってくれている子――といっても四年目くらいだけど――にも、装飾品やお道具を持っての舞を教えたり。
 幸い、神社の節目になるお祭りはこの先数十年はないので、取り立てて難しいことはない。

「喧嘩になったりしない? あとから入った子のほうが上手いとか」
「それはある。明らかにセンスのいい子っているから。けど、序列を飛び越えると総代さんの顔を潰すし、親も絡んでくるから、巫女舞する子はそこのところはわかってくれてる」

 本当に、その点は救われている。親から言い含められているらしい彼女たちは、中高生ながら自分たちの役割を理解してくれる。時々『ねー美月ちゃん。ここで巫女舞したら縁談の時に印象良くなるってほんと?』と聞かれても答えられないのがつらいが。

「琳くんは?」
「俺はしがないイソ弁なので。親父が振ってくる案件をこなすだけ。自己破産とか相続問題とか離婚とか」
「そっか」

 不知火組関連のことはお父さんだけが対応するらしい。

「あとは三十分の無料法律相談に出かけたり……かな。管財人の仕事とかもしてるけど、あくまで俺は一般人の法律相談しかしてないから、親父みたいな地面師じめんし相手の詐欺案件とかはやったことない」

 それは、そういう方面に不知火組さんが絡んでるからだったりしないよね……?



   3


 冬になるまでに、琳くんとは何度かデートした。そうするうちに気づいたのは、彼は弁護士という仕事に誇りがあるわけではなくて、人を助ける方法の一つとして法律知識を駆使していること。誇りがないと言うと語弊があるかな。
『いろんなことから自分と周りの人を守るために法律を勉強してたら司法試験合格しました』という、こだわりがない人だ。どんな案件を手がけてきたかは守秘義務で教えてくれないけど、何回かデートをドタキャンされた理由は、依頼人に会うことになったとか、証言をしてくれそうな人とアポが取れたとか、とにかく仕事のことばかり。
 恋愛や女性絡みでないのは、何故か確信できている。私と結婚したいと言っていたからではなくて、琳くんの性格的に、二股なんてしそうにないのだ。
 そして以前本人が言っていた『ややこしい案件は振られていない』を合わせると、琳パパさんから見たら経験を積ませるためであろう依頼を、琳くんは『どうせ経験を積むためのもの』とはせずにきちんと対応していることになる。
 真面目だなあと思ったら『俺には何回目かわからない依頼でも、依頼人にとっては人生がかってるんだから当たり前だ』と、やっぱり真面目な返答をされた。
 弁護士になったのは本意ではなかったと言いつつ真面目に務めているのに、お父さんの跡を継ぎたくないのは、本当に不知火組のこと……だけなんだろうか。
 神社が一年で一番忙しい日──お正月に備えて破魔矢やお守りの準備を手伝いながら、私は琳くんのことを考えていた。
 ──そろそろ勝負に出るべきか、と。


 白いストレートラインのコートの下には薄緑のワンピースを着て、ごつめのブーツでバランスを取る。ちょっとゴシックなブーツだけど、あまり『女の子!』という感じじゃないから、洋服が甘いフェミニンなファッションに合わせるにはちょうどいい。
 今日はクリスマスイヴ。行きう人たちはみんな楽しげで、雪がちらつく寒さも気にならないような明るさがある。
 私が待ち合わせ場所の駅前でちらりと時計を見ると、もうすぐ十八時半。弁護士さんだからか、時間どおりに動く琳くんならそろそろ来そうだ。

「美月」

 後ろから声をかけられて、びっくりして飛び上がりそうになる。

「ごめん。カフェでの待ち合わせにしたらよかったな」
「ううん、それなら自分でカフェに入って『カフェで待ってます』って言うし。……というか今日はそういうお客さんでどこも満席だと思う」

 私がそう答えると、黒のロングコートにチャコールグレーのカシミアのマフラーを巻いた琳くんが苦笑して頷いた。
 コートのあわせから覗くのは、グレーのカシミアジャケットのスーツに光沢のある黒のネクタイ。シンプルな色しか身にまとっていないのに、そこら中にいるサンタのコスプレをしている人たちよりも華やかで人目を引く。

「食事は予約してないんだけど」
「嘘でしょ!?」
「美月が言ったんだろ。『クリスマスイヴに私を食べてください』って」
「声に出さなくていいの!」

 そう。私は今日に勝負を賭けたのだ。だって二ヶ月も経過して、私たちの関係には進化も退化も変化もない。このまま、あと十ヶ月しかない期限切れを待つわけにはいかない。
 そんな私が提案したのは、今日、本当に恋人関係になれるかどうか試すこと。
 好きじゃなくてもそういう行為はできるから、行為の最中に好きと言わせたほうが勝ち。
 だから今日、その……するかしないかは、私たちの今後にかなり影響してくる。

「ホテルは私が予約してるから安心していいよ」
「まるで体だけが目的のように言われたくない……って男の台詞じゃないだろ。クリスマスくらい俺に格好つけさせてほしかった」

 私のことを好き、みたいに言っているが……これは違う。『私だってそのほうが嬉しい』とか言ったら『素直になれよ』的に流されるパターンだ。
 相手は弁護士、言いくるめるのは得意というより必須スキルだ。
 私がそう言うと、琳くんは軽く天を仰いだ。

「……どうしてそう警戒するかな。いや警戒してるならあんな誘い方はしないか。ほんと、美月って意味がわからない」
「琳くんの口の上手さには騙されない、と決めてるだけです」
「俺は別に口は上手くないけどな」
「スパイは嘘を言う時にほんの少し事実を混ぜるって何かで読んだし」
「俺はスパイじゃないだろ」
「それにお仕事で結婚詐欺師の手口を知ってるだろうから……」
「どこの世界に結婚したい女を口説くのに詐欺師を参考にする馬鹿がいるんだ」
「一息で言うあたり、怪しい」

 私の言葉に、琳くんは深々と溜息を吐く。

「……ここで言い争うことでもないか。チェックインは七時だろ。そろそろ行こう」
「あっ、誤魔化してる」
「注目されたくないだけだ」

 確かに、結構な人混みだけど。注目は集めて──ました、琳くんが目立つ。

「ほら、手」

 そう言って、ネイルを乾かすのに必死で手袋を忘れた左手を優しく掴まれ、私の手が琳くんの右手と一緒に彼のコートのポケットに納まる。上質なカシミアシルクの手触りがして、暖かい。

「あの……っ」
「寒いだろ。手袋貸してやりたいけど、これだとせっかくのコーディネートに合わない」

 男性物の黒い革手袋は、確かにこのファッションには合わないけども。

「それとも美月のコートに俺が手突っ込んであっためていいの?」
「ダメ」

 そのほうが恥ずかしいと瞬時にジャッジした私に、琳くんは『だから俺のコートでいいんだよ』と笑った。


 クリスマスの夜、このラグジュアリーホテルはお高かった。私が部屋にこだわって選んだからだけど、その……まあ、初めてなのだからできるだけ夢は捨てたくない。ディナーなしなのは、琳くん曰く『ここのレストラン全部満席だったから』。
 部屋を取る時に一緒に予約しておけばよかった。インペリアルフロアの、コーナーキングのスイート。
 お部屋代だけでお札が三十枚ふっとんだだけあって、シックに落ち着いた内装、オーシャンビューの広い窓側に置かれたシンプルなデイベッド、そしてテレビが見やすいようになのか、部屋の中心に並びのソファとテーブルがある。その奥にはダイニングルームへのドアが開けられていて、更に奥にあるベッドルームに続くドアが見えた。


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