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本編
葛藤したのに、怒られた。
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カインとオリヴィエが、何故か訪ねてきました。
応接室に通したと報告を受けて、私はエージュにも同席してもらえるように伝えてほしいと、リリーナにお願いした。カインとオリヴィエは、近いうちにシルハークへ赴く。それは、征服欲の強い新王に、ヴェルスブルクが神竜王の召喚に成功したと伝える為だ。牽制であり、挑発でもある。
だから、ローランが確かに降臨したと証せるものが欲しいのかな、と思った。疑いようのない証拠を持っていきたいんじゃないかと推察した。
エージュに同席をお願いしたのは、カインが来たからだ。エージュのターゲットはカイン。今のところはカインもエージュが好きなようだけど、オリヴィエもエージュに一目惚れしている。そのことを知ったら、カインは貴族でもあるオリヴィエに遠慮しないとは限らない。それではエージュが困る。
「アレクシア。また、誰かに会わなくてはいけない?」
子供っぽい駄々をこねて、嫌だとアピールしてくるローランに、必要なことだと言い聞かせる。ちゃんと対応しないと、何度でも訪問されるし、訪問者の格を上げてくることも目に見えているから。
「大丈夫よ。一緒にいるから」
「……アレクシアは、どうしてと訊かないのか」
「何が?」
「私が、人嫌いである理由を訊かない」
知っているからだと、言えるものなら言いたい。
古の女神ミレジーヌとは、世界の為に離れた。人が生きていく世界には、神竜達の存在は強すぎて暮らせない。だから、当時の神竜王は、人の世を守る為に、一族を率いて亜界と呼ばれる狭間の世界に移った。ミレジーヌは、自分は女神なのだから、人間を守ると言って世界に残った。
そのミレジーヌは、愛する者と離れてまで守ろうとした人間に、「神竜召喚の生贄」として殺された。これは、ローランのバッドルートでないと出ない情報だ。その時、既に転生の輪に移りかけていた神竜王の悲痛な叫びは、ゲームだと言うのに号泣させられた。
女神殺しをして神竜を召喚した者は、召喚した神竜に国ごと破滅させられた。己の一族の王が愛した女神を殺した召喚者を、神竜は許さなかった。この、人類最初の「神竜召喚」は、成功例からは伏せられている。
でも、このことはローランには言えない。彼が、ミレジーヌの対であった神竜王――デュランドの記憶を取り戻しているかわからない。そして何より、あんな哀しい叫びを、もう聞きたくない。そう思った時、私は、「思い出していないなら、人を嫌う理由がない」ということに気づいた。
「……ローラン……デュランド?」
「どちらも私だ。やはり、アレクシアは私を識っている。もしかしたら、私以上に」
その言葉に、咎める響きは皆無だったけれど――私は、顔を伏せた。……ローランは、前世の記憶を思い出している。それなら、やっぱり……ミレジーヌだったミレイを、愛するんだろう。
「……ローラン。お願いがあるの」
先に、カインとオリヴィエの相手をしていて。
人嫌いで人見知りなローランに無茶振りして、私はエージュの部屋へと駆け出した。廊下を走るなんてはしたないと、後でお小言をもらってもいい。私の親友に、私の決意を伝えなきゃ。
「アレクシア!」
置いて行かないでと泣きそうな声で呼ばれて、つい足を止めて――振り向いたら。
ローランが、本当に涙目になっていた。
「……嫌だ。あの二人は怖い」
「ローラン……?」
「私を疎ましく思う者と、私を好奇の目で見る者。神竜への敬意はなく、敵意と探究心しかない。嫌だ」
カインとオリヴィエへの評価は、相当低い。……なら、一人で相手をしてなんて、言えるはずはない。私は、ローランのところまで戻って、手を取った。
「エージュに会って、私が何を言っても、驚かないでね」
「わかった」
ひんやりと冷たい手が、私の手を握った。――いわゆる、恋人繋ぎというやつで。
無自覚なのがわかるから、私は繋いだ手をそのままに、エージュの部屋へ向かう足を速めた。
「どうしたの、アリー。応接室にという話ではなかったの?」
「エージュ。私ね」
私は、少し弾む息を整えながらエージュを真っ直ぐ見つめた。ローランは、少しも息を乱していない。足の長さが違うものね、私の駆け足なんて、ローランには歩いているのと大差ないわよ。
「ミレイとローランが幸せになるよう、協力しちゃ駄目かな」
「アリー!?」
「……私じゃ、やっぱり駄目だと思う。ローランに幸せになってほしいの。それだけ願ってたの。ミレイとローランに幸せな未来がないなら、作ればいい」
その為なら、本当の悪役令嬢にだってなってやる。ミレイと他攻略キャラの皆さんのフラグは、へし折る以前に、存在させない。
「あなた、何を言っているの!?」
「エージュとカインのことも応援する。ミレイがローランを選ぶなら、カインは独身だからゲーム的にも問題ないし」
「そんなことを言っているのではないわ!」
私の両肩を掴んで、エージュは別人のように取り乱している。
「あなたが幸せにならないと、意味がないでしょう!」
「大丈夫。私、ローランが幸せなら嬉しい。エージュも幸せなら、もっと嬉しい。だから、私も幸せだわ」
「……何があったの」
私の突然の宣言に、エージュは泣きそうな声で理由を問う。……だって、気づいたんだもの。ローランには、デュランドの記憶がある。なのに、私と恋をしてみたいと言ってくれたのは――きっと、ミレイが来ることを知らないからだ。
ミレイが来たら、ローランは彼女に惹かれる。その時は、私は指環を返すと、もう約束した。ついでに、二人の幸せな未来に協力する、それだけだ。
「リヒト殿下達に協力して、女神の召喚を阻止すればいいだけでしょう!」
「駄目よ」
「アリー!」
「だって、私はミレイじゃない。ミレイでなきゃ、ローランの傷は癒せな――」
「癒せなくていい」
初めて、ローランが口を開いた。振り返った私を、緋色に染まりつつある瞳が射抜く。
「約束は守った。驚いてはいない。黙って聞くとは、約束していない」
緋色の瞳は――怒りの色。銀の髪と白い肌の中、真紅の双眸は眩いほどに美しい。
「癒されたくなどない。私は傷ついてなどいない。私は、ローランだ。デュランドではない。デュランドの魂は、転生して、私になった」
低く告げる声は、怒りを宿しつつも、その対象である私を傷つけまいと自制している。
「デュランドが愛した者を、私が愛する義務はない」
自分の前世は受け入れつつ、現世は自分のものだと主張する。だけど、ローラン。私は、ミレイに会ったあなたが、少しずつ人を愛し、許していく様を知ってるから……あなたに必要なのはミレイだと、わかってるから。
「アレクシアがいなければ、私はここにいない。ミレイなど知らない。私を召喚し、信頼をくれたのはアレクシアだ」
「……それも、全部、私が狂わせたことだもの。本当なら、あなたはミレイの召喚を予知して、オリヴィエに」
「女神の召喚は、半年前から感じ取っている」
あっさり告げられて、私とエージュは思わず顔を見合わせた。半年前って……私が、アレクシアに転生した頃? ああ、そうか、ローランは「神竜王」――時間魔法の使い手だ。
「けれど、私は動く気はなかった。デュランドが愛した者だから、私も愛さねばならないのか? その女神も、前世でデュランドを愛したから、今生では私を愛すると? それは不実だ、真に愛したならば、転生しても転生前の相手を想い続ける」
前世からの宿命のカップルを全否定し、ローランは私を見つめた。瞳は変わらず真紅で、彼が竜であることは、虹彩が縦になっていることでわかる。――私とは、異質な存在だと、異種なのだと、はっきり示されている。
「私が恋をしたいと思ったのは、アレクシアだ。ミレイではない。その女神が来たとしても、私の気持ちは変わらない。私は、アレクシア以外は恐ろしい」
堂々と、「他の人間は怖いから嫌だ」と言い切られて、私は脱力した。へたり込みかけたところを、エージュに支えられる。
「……ローラン、それは恋じゃないわ」
「恋かどうかは私が決める。私の恋は、私のものだ」
どうすればいいの。
だって、ローランには幸せEDを迎えてほしいのに。
「そんなことを言うアレクシアは、私を好きではないからだ」
――などと、言いがかりをつけられ。
「ええ。考えなしに行動していいとは言いましたけれど、考えなしに発言されるのも困りものです」
更に、追い打ちをかけられ。
「王の姫。アレクシアは馬鹿なのか?」
「馬鹿ですわね。自分の気持ちも理解できていない馬鹿ですわ」
馬鹿だと連呼されているのに――どうして、私は嬉しいんだろう。あたたかい何かが、心を満たしてくれるんだろう。
「アリー。次に馬鹿なことを言う時は、先に相談してね。忘却の呪文をかけるから」
「王の姫。その時は私が時間を巻き戻そう。――今回は、アレクシアに「二度と馬鹿なことを言わない」と思わせる為に、このままにしておくけれど」
「まあ、神竜王陛下。お優しいこと。わたくしはね、アリー。今度あなたがそんな馬鹿なことを言ったら、わたくしの髪を綺麗に削ぐわね」
「私もそうしよう。アレクシアは、私と王の姫の髪が好きなようだから。なくせば、どんな気持ちかわかるかもしれない」
二人の会話を聞いて、私は心を決めた。これは、悪役令嬢になって、ローランをいただくと決めた初心を、忘れてはいけないという神じいさんの思し召しかもしれない。神様らしい威厳は皆無だったけど。
「……悪役令嬢でも、いいの?」
「わたくしは悪役王女だから、その親友としてはそれでいいわ」
「悪役令嬢どころか、ただのサブキャラだったんだけど、それでもいい?」
私の問いに、ローランは小さく頷いた。たぶん、意味はわかっていないんだろうけど。
「アレクシアなら、それでいい」
「本当のアレクシアじゃなくても?」
「そなたがそなたなら、構わない」
そう言われた時、私の中で、誰かがするりと解放された気がした。
その不思議な感覚に戸惑っていると、エージュが「いい加減に応接室に行かないと、失礼だわ」と、私の右手を取って応接室に向かう。空いた左手は、ローランが、指環を確かめるように、優しく指を絡め取った。
応接室に通したと報告を受けて、私はエージュにも同席してもらえるように伝えてほしいと、リリーナにお願いした。カインとオリヴィエは、近いうちにシルハークへ赴く。それは、征服欲の強い新王に、ヴェルスブルクが神竜王の召喚に成功したと伝える為だ。牽制であり、挑発でもある。
だから、ローランが確かに降臨したと証せるものが欲しいのかな、と思った。疑いようのない証拠を持っていきたいんじゃないかと推察した。
エージュに同席をお願いしたのは、カインが来たからだ。エージュのターゲットはカイン。今のところはカインもエージュが好きなようだけど、オリヴィエもエージュに一目惚れしている。そのことを知ったら、カインは貴族でもあるオリヴィエに遠慮しないとは限らない。それではエージュが困る。
「アレクシア。また、誰かに会わなくてはいけない?」
子供っぽい駄々をこねて、嫌だとアピールしてくるローランに、必要なことだと言い聞かせる。ちゃんと対応しないと、何度でも訪問されるし、訪問者の格を上げてくることも目に見えているから。
「大丈夫よ。一緒にいるから」
「……アレクシアは、どうしてと訊かないのか」
「何が?」
「私が、人嫌いである理由を訊かない」
知っているからだと、言えるものなら言いたい。
古の女神ミレジーヌとは、世界の為に離れた。人が生きていく世界には、神竜達の存在は強すぎて暮らせない。だから、当時の神竜王は、人の世を守る為に、一族を率いて亜界と呼ばれる狭間の世界に移った。ミレジーヌは、自分は女神なのだから、人間を守ると言って世界に残った。
そのミレジーヌは、愛する者と離れてまで守ろうとした人間に、「神竜召喚の生贄」として殺された。これは、ローランのバッドルートでないと出ない情報だ。その時、既に転生の輪に移りかけていた神竜王の悲痛な叫びは、ゲームだと言うのに号泣させられた。
女神殺しをして神竜を召喚した者は、召喚した神竜に国ごと破滅させられた。己の一族の王が愛した女神を殺した召喚者を、神竜は許さなかった。この、人類最初の「神竜召喚」は、成功例からは伏せられている。
でも、このことはローランには言えない。彼が、ミレジーヌの対であった神竜王――デュランドの記憶を取り戻しているかわからない。そして何より、あんな哀しい叫びを、もう聞きたくない。そう思った時、私は、「思い出していないなら、人を嫌う理由がない」ということに気づいた。
「……ローラン……デュランド?」
「どちらも私だ。やはり、アレクシアは私を識っている。もしかしたら、私以上に」
その言葉に、咎める響きは皆無だったけれど――私は、顔を伏せた。……ローランは、前世の記憶を思い出している。それなら、やっぱり……ミレジーヌだったミレイを、愛するんだろう。
「……ローラン。お願いがあるの」
先に、カインとオリヴィエの相手をしていて。
人嫌いで人見知りなローランに無茶振りして、私はエージュの部屋へと駆け出した。廊下を走るなんてはしたないと、後でお小言をもらってもいい。私の親友に、私の決意を伝えなきゃ。
「アレクシア!」
置いて行かないでと泣きそうな声で呼ばれて、つい足を止めて――振り向いたら。
ローランが、本当に涙目になっていた。
「……嫌だ。あの二人は怖い」
「ローラン……?」
「私を疎ましく思う者と、私を好奇の目で見る者。神竜への敬意はなく、敵意と探究心しかない。嫌だ」
カインとオリヴィエへの評価は、相当低い。……なら、一人で相手をしてなんて、言えるはずはない。私は、ローランのところまで戻って、手を取った。
「エージュに会って、私が何を言っても、驚かないでね」
「わかった」
ひんやりと冷たい手が、私の手を握った。――いわゆる、恋人繋ぎというやつで。
無自覚なのがわかるから、私は繋いだ手をそのままに、エージュの部屋へ向かう足を速めた。
「どうしたの、アリー。応接室にという話ではなかったの?」
「エージュ。私ね」
私は、少し弾む息を整えながらエージュを真っ直ぐ見つめた。ローランは、少しも息を乱していない。足の長さが違うものね、私の駆け足なんて、ローランには歩いているのと大差ないわよ。
「ミレイとローランが幸せになるよう、協力しちゃ駄目かな」
「アリー!?」
「……私じゃ、やっぱり駄目だと思う。ローランに幸せになってほしいの。それだけ願ってたの。ミレイとローランに幸せな未来がないなら、作ればいい」
その為なら、本当の悪役令嬢にだってなってやる。ミレイと他攻略キャラの皆さんのフラグは、へし折る以前に、存在させない。
「あなた、何を言っているの!?」
「エージュとカインのことも応援する。ミレイがローランを選ぶなら、カインは独身だからゲーム的にも問題ないし」
「そんなことを言っているのではないわ!」
私の両肩を掴んで、エージュは別人のように取り乱している。
「あなたが幸せにならないと、意味がないでしょう!」
「大丈夫。私、ローランが幸せなら嬉しい。エージュも幸せなら、もっと嬉しい。だから、私も幸せだわ」
「……何があったの」
私の突然の宣言に、エージュは泣きそうな声で理由を問う。……だって、気づいたんだもの。ローランには、デュランドの記憶がある。なのに、私と恋をしてみたいと言ってくれたのは――きっと、ミレイが来ることを知らないからだ。
ミレイが来たら、ローランは彼女に惹かれる。その時は、私は指環を返すと、もう約束した。ついでに、二人の幸せな未来に協力する、それだけだ。
「リヒト殿下達に協力して、女神の召喚を阻止すればいいだけでしょう!」
「駄目よ」
「アリー!」
「だって、私はミレイじゃない。ミレイでなきゃ、ローランの傷は癒せな――」
「癒せなくていい」
初めて、ローランが口を開いた。振り返った私を、緋色に染まりつつある瞳が射抜く。
「約束は守った。驚いてはいない。黙って聞くとは、約束していない」
緋色の瞳は――怒りの色。銀の髪と白い肌の中、真紅の双眸は眩いほどに美しい。
「癒されたくなどない。私は傷ついてなどいない。私は、ローランだ。デュランドではない。デュランドの魂は、転生して、私になった」
低く告げる声は、怒りを宿しつつも、その対象である私を傷つけまいと自制している。
「デュランドが愛した者を、私が愛する義務はない」
自分の前世は受け入れつつ、現世は自分のものだと主張する。だけど、ローラン。私は、ミレイに会ったあなたが、少しずつ人を愛し、許していく様を知ってるから……あなたに必要なのはミレイだと、わかってるから。
「アレクシアがいなければ、私はここにいない。ミレイなど知らない。私を召喚し、信頼をくれたのはアレクシアだ」
「……それも、全部、私が狂わせたことだもの。本当なら、あなたはミレイの召喚を予知して、オリヴィエに」
「女神の召喚は、半年前から感じ取っている」
あっさり告げられて、私とエージュは思わず顔を見合わせた。半年前って……私が、アレクシアに転生した頃? ああ、そうか、ローランは「神竜王」――時間魔法の使い手だ。
「けれど、私は動く気はなかった。デュランドが愛した者だから、私も愛さねばならないのか? その女神も、前世でデュランドを愛したから、今生では私を愛すると? それは不実だ、真に愛したならば、転生しても転生前の相手を想い続ける」
前世からの宿命のカップルを全否定し、ローランは私を見つめた。瞳は変わらず真紅で、彼が竜であることは、虹彩が縦になっていることでわかる。――私とは、異質な存在だと、異種なのだと、はっきり示されている。
「私が恋をしたいと思ったのは、アレクシアだ。ミレイではない。その女神が来たとしても、私の気持ちは変わらない。私は、アレクシア以外は恐ろしい」
堂々と、「他の人間は怖いから嫌だ」と言い切られて、私は脱力した。へたり込みかけたところを、エージュに支えられる。
「……ローラン、それは恋じゃないわ」
「恋かどうかは私が決める。私の恋は、私のものだ」
どうすればいいの。
だって、ローランには幸せEDを迎えてほしいのに。
「そんなことを言うアレクシアは、私を好きではないからだ」
――などと、言いがかりをつけられ。
「ええ。考えなしに行動していいとは言いましたけれど、考えなしに発言されるのも困りものです」
更に、追い打ちをかけられ。
「王の姫。アレクシアは馬鹿なのか?」
「馬鹿ですわね。自分の気持ちも理解できていない馬鹿ですわ」
馬鹿だと連呼されているのに――どうして、私は嬉しいんだろう。あたたかい何かが、心を満たしてくれるんだろう。
「アリー。次に馬鹿なことを言う時は、先に相談してね。忘却の呪文をかけるから」
「王の姫。その時は私が時間を巻き戻そう。――今回は、アレクシアに「二度と馬鹿なことを言わない」と思わせる為に、このままにしておくけれど」
「まあ、神竜王陛下。お優しいこと。わたくしはね、アリー。今度あなたがそんな馬鹿なことを言ったら、わたくしの髪を綺麗に削ぐわね」
「私もそうしよう。アレクシアは、私と王の姫の髪が好きなようだから。なくせば、どんな気持ちかわかるかもしれない」
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「……悪役令嬢でも、いいの?」
「わたくしは悪役王女だから、その親友としてはそれでいいわ」
「悪役令嬢どころか、ただのサブキャラだったんだけど、それでもいい?」
私の問いに、ローランは小さく頷いた。たぶん、意味はわかっていないんだろうけど。
「アレクシアなら、それでいい」
「本当のアレクシアじゃなくても?」
「そなたがそなたなら、構わない」
そう言われた時、私の中で、誰かがするりと解放された気がした。
その不思議な感覚に戸惑っていると、エージュが「いい加減に応接室に行かないと、失礼だわ」と、私の右手を取って応接室に向かう。空いた左手は、ローランが、指環を確かめるように、優しく指を絡め取った。
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