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Ⅹ
しおりを挟むマーリンの家から自宅へと戻ったレオーネは荷物を纏めていた。
騎士団長を辞任し、チヴェッタ殿が住んでいるという町へ向かうためだ。
使いどころがなく、貯め込んでいた金は腐るほどある。足りなければ町で働けばいいだろう。
書斎で簡潔に書いた退職届を書き、魔法で国王と前騎士団長の元へ送る。簡単な旅支度を整え、騎士団の制服ではなく、シャツに黒のズボン、その上に旅人用のマントを羽織る。
自宅の管理をしている執事に今後は王太后の元につくよういい、今までの礼を述べて給金を気持ち多めに渡した。そうして国王に暇を乞うべく王城へと向かう。
騎士団長の変わりなんて山ほどいる。前騎士団長もまだまだ現役だ、復帰しても大丈夫だろう。それに俺は元々騎士団長なんて柄ではない。
母親の血筋は王家に繋がりがあったらしいが、かなり末端の末端だった。だが母が再婚し、その相手が前王だった。王の息子として、王家の一員として就かされた仕事が騎士団長という寸法だ。実力で勝ち取った地位ではないため、未練はない。
夕食時なのか多くの家や道端に並ぶ出店からいい匂いが漂ってくる。
そういえばチヴェッタ殿はかぼちゃのマフィンが好きだとアンナが言っていたな、謁見のあとかぼちゃの菓子を探して持っていこうと心に決めて石畳でできた城下の道を歩く。
城の門前につき、俺に気づいた騎士たちに敬礼をむけられたレオーネは敬礼を返し、大階段をあがっていく。
一番上の段に着き大扉の前に辿りついたが、もう二度と見れない可能性もあるなと城下の景色を目に焼き付けておきたくなり、大扉から離れた。
向かった場所は、城下を見下ろすことが出来るバルコニーで、いつもは白い城の外壁が夕焼け色に染まっていた。
そんな夕焼け色の柵に肘をつき、沈む太陽を見つめる女性がひとり、「目玉焼きだな、半熟の」と呟いた。
絶景と言われるこの景色をみて「半熟の目玉焼き」がでてくるとは、この女性は色気よりも食い気優先なのだろう。または腹が減っているか。
クツクツと笑うレオーネに気づいたらしい、女性はレオーネの姿を見つけると目を大きく見開いた。小さな声で「やべぇ」と呟いていたがレオーネには独り言を聞かれてのつぶやきだと思われたらしい。
「すまん、貴女の独り言が面白くてな。……そのローブ、城の魔法使いか? そろそろ夕食の時間だ、食堂に行くといい」
「あ、の、えっと、」
「もしかして城下で働く魔法使いか? なら城の食堂は使えないな……あまりものだが、食べるか?」
「マドレーヌなんだが」と包みを開き、魔法使いの女性にみせると一瞬目を輝かせるが、「あ、いや、大丈夫です」と柵から離れ去ろうとする。
が、「ぎゅるるるる」という音がベランダに響き、女性の顔が真っ赤に染まった。夕日と同じ色になったなとレオーネは笑い、マドレーヌを再び差し出した。
「うまいぞ?」
「……」
「バターをたっぷり使っていてな、チョコレート味もあるんだ」
「……頂きます」
そろりとマドレーヌを受け取った女性は恐る恐る口へと運び「おいしい」とへにゃり笑った。
その顔にドキリとする。何だか見たことがある気がする、だが俺はこの魔法使いを知らない筈だ。……美味しそうに食べる表情が好みなのかもしれない。
「貴女は王宮ではない所で働いている魔法使いなのだろう?」
「えっと、はい、一応町で店を」
「自立しているのか、すごいな……」
「それよりもマドレーヌ美味しいです、お店を開けるのではないですか?」
「そうか?」
「そうですよ」
「美味しいですもん」とマドレーヌを口いっぱいに頬張る魔法使いとの会話に疑問を抱く。
俺を知らない人間に菓子をやると、多くは「どこで買ったんだ?」と聞いてくる。だがこの魔法使いは俺がこのマドレーヌを作ったと知っているように話してきた。
やはりこの魔法使いに以前会ったことがあるのだろうか。菓子を食べさせたということは、ただ顔を合わせただけではないはず……。
考えるよりも聞いてしまった方が早い。と魔法使いに問おうすると、「ロート!」と聞き覚えのある声で名前を呼ばれ振り返ると、女性がひとり小走りで駆け寄ってくる。
見覚えのある姿よりも少し老けたなと口には出せない感想を抱きながら、年老いた女性の元へ。
「ロート! 来るのならもっと早く連絡しなさいと何度も言っているでしょう!」
「大変申し訳御座いません王太后様」
「んもう、他人行儀はやめて。夕食は食べて行くのでしょう?」
「いいえ、直ぐに立ちます。もしかするともう二度と帰ってこないかもしれません」
「は? それはどういうこと? きちんと説明しなさい」
「話を聞いたら王太后様は『二度と帰ってくるな』と言うと思いますよ」
「貴方は私の息子よ? 息子にそんなことを言うと思う?」
「ある女性を強姦しました」
「その女性に夜這いされたのではなく?」
「俺の記憶を封印しているので、身分と金に目がくらんだ女性ではないと思います」
「殴っていいかしら?」
「どうぞ」とレオーネが言うと、王太后は手のひらを広げ力強くレオーネの頬を叩いた。辺りに小気味のいい音が響く。
「王太后様、それは平手打ちです」
「うるさいっ! あぁもうバカ息子!! 手は痛いし!」
「俺も痛いですが」
「そのお嬢さんも痛かったはずよ!! 身体だけでなく心も!!」
「……はい」
「詳しい話は部屋で聞きます! 陛下にいらない仕事を増やすわけにはいかないわ」
「きなさい!」と王太后の勢いに押され部屋へと連行されそうになるレオーネだったが、魔法使いの存在を思い出し振り返った。
が、その場所には誰も居らず、マドレーヌの入った袋も無くなっていた。あの魔法使いの腹が少しでも満たされればいいが。
正直もう少し話したかったが、俺にその資格はない。
*
怒り心頭の王太后について行き、部屋へと通されたレオーネは床に座らせられ、仁王立ちの王太后がレオーネを見下ろす。
王太后は貴族だが身分は高くなく、城下で育った。その為だろうか、行動は時々貴族らしくはない。
詳しい話をレオーネから聞いた王太后はレオーネの頭に拳骨を落とし、「っ石頭ね!」と手を擦りつつ大きく溜息を吐き出した。
「貴方の記憶が封印されてるのならば実際何があったかはわからないわ。そのチヴェッタさんという方がマーリン様の知り合いならば事情を聞いてもらって、行動した方がいいわね」
「しかしそれでは遅いと……」
「正直チヴェッタさんはロートに会いたくないと思うわ。そうでないと記憶の封印なんてしないはずよ」
「ロートの悪い癖よ、一度落ち着きなさい」といい、侍女が淹れた紅茶を飲み始める。立ったままなのでまだ怒りは治まっていないようだが。
第一、血の繋がりはないとはいえ王の弟の醜聞を侍女にきかれると後々面倒ではないのか? と思うが、この国の王族と貴族は平和主義なので大丈夫だろう。
だが、念を入れて俺は王族から臣下に下るつもりだ。以前からそのつもりだったが機会が無かった。今回の件も踏まえて丁度いい。
「魔法使いマーリンを呼んで」と若い侍女に伝えた王太后はソファに腰掛る。
「ルーチェ・チヴェッタさんねぇ、どこかで聞いた事のあるお名前なのだけど」
「どこでかしら?」と首を傾げる王太后。そんな王太后に昔から仕えている侍女が答えた。
「スカーレット様、チヴェッタ様でしたら光の魔女という名で有名な方で御座います」
「……いやだ、光の魔女って王がずっと探している魔法使いじゃないの!」
「光の魔女、あの光の魔女ですか?」
『光の魔女』その名の由来は数年前まで続いていた魔物たちとの戦争の際、使う魔法が光属性のものが多かったのと、描く魔法陣の色が黄色味がかっていたため。
ただの魔法使いではなく、大魔法使いマーリンが光の魔女以上の弟子は育てられないから今後弟子は取らないと公言しているため、実質最後の弟子である。
さらに魔力の保有量と出力が高く、『光の魔女』が現れたお蔭で戦争を終わらせることが出来たと光の魔女を称える人も多い。
その名声と魔力を欲しているのが現国王ヘンリーであり、戦争後姿を消した光の魔女を何年も探している。
「チヴェッタ殿が、光の魔女」
「大騒ぎになる予感しかしないわ……マーリン様を待ちましょう」
「話はそこからよ」と王太后が空になったカップを置くと、同時に扉をノックする音が。侍女が扉を開き、来客を確認すると王太后に振り返る。
「スカーレット様、ロート坊ちゃま、国王陛下がお呼びだそうです」
「……嗅ぎつけるのが早いわね」
「あの人にそっくりだわ」と前国王のことを思い出しているのだろう、王太后の表情は乙女のようだ。
そんな王太后に対しレオーネは「話がこじれてきそうだな」と溜息を吐きだす。
さっさと国を出るべきだった。そうすれば国王に知られることもなく、魔法使いが国にとっての重要人物だということを知らないままで、ルーチェ・チヴェッタという人をみることができたというのに。
王を待たせるわけにはいかないと、立ち上がった王太后はレオーネと侍女一人を連れて国王の間へと向かう。
国王の間の扉の前につくと、ベランダで出逢った魔法使いをみかけ、レオーネは「あ」と声を上げた。気づいた魔法使いも「あ、騎士様」と声を出す。
「……俺が騎士だとよくわかったな」
「え、あ、いや……騎士っぽいなーって。そちらにいる方は王太后様ですね、大変失礼いたしました」
深々と頭を下げ、順番を譲る魔法使いに王太后は「貴女はどちらへ?」と聞くと「国王陛下の御前に馳せ参じるよう命を受けました」と言う。
「では共に部屋へ入りましょう。貴女が聞かれて嫌な話ならば退出すればよいでしょうし。時間の節約にもなるわ」
「し、しかし、」
「大丈夫よ。ほら、ロート。先に行きなさい」
ははおやにレオーネは、扉を三回叩く。すると中から「入れ」という返事が聞こえた。
ドアノブを握り扉を押し開くと、書類が山のように乗っている執務机の向こう側に金髪の男がひとり。
今年で三十六歳という結婚適齢期で、男にしては珍しく長い金色の髪を一つに結っている。青い瞳の目元は少し垂れさがっており優し気だが、その印象は見た目だけだと多くの者は知っている。
身分だけでなく、スラリとした体躯と美しい顔で多くの女性をものにしており、貴族や平民の女性の中で一番の人気者である。
なのにも関わらず、仕事が忙しいからという理由で結婚から逃げ回っている国王ヘンリーである。
「来たか。ロート、騎士団長の退職届なんぞ初めて見たぞ。しかも一身上の都合とはなんだ理由を短く正確に言え。あと王太后様、私結婚いたしますのでご準備を、相手はそこにいるルーチェ・チヴェッタです。その者にあうドレスを作ってやってください。以上です」
「ロート以外下がっていいぞ」と書類から目を外さないままずらずらと述べたヘンリーに、呆けたままの王太后スカーレット。そんな二人に対し、ルーチェ・チヴェッタと呼ばれた魔法使いは手をぎゅっと握りしめ、ヘンリーを睨んだ。その様子をレオーネは驚いてみていた。
「僭越ながら国王陛下。お断りします」
「ルーチェ、お前に拒否権はない。何年お前を探したと思っている? まぁ正直なところあと五年は見つからないと思っていたが、つめが甘かったな」
封印管理されていた魔王の側近であった魔物を倒したらバレると思わなかったのか? と笑うヘンリーに悔しそうに顔を歪めるチヴェッタ。
くそ国王が、私の魔力を欲しがっているのを隠そうともしねぇ。
殴ってもいいよねと思う位に腹が立つ。この部屋に国王だけしかいないなら殴ったが、残念ながら王太后様と騎士様がいるので無理だ。
というか騎士様はなんで騎士団長やめるんだよ勿体ない、制服似合っていたのに! もういやだ全力で思考を逃避行だよ!!
「魔物を倒したのは緊急事態だったからです。それに私は好きな男としか結婚したくありません」
「そうですよ陛下! 私は陛下がチヴェッタさんのことを好いているから探しているのだと思っていましたのに、その様子からみて違いますわね?」
「王太后様、私はルーチェのことを嫌いではありませんよ? むしろ好きな方です。それに魔力は強大で、国民からも『光の魔女』として慕われている。この理由から王妃に相応しいと考え結婚するといっているのです。いいですね? ルーチェもどうせ好きな男なんていないだろ、そろそろいい歳だし諦めろ」
「それに俺の顔、嫌いじゃないだろ?」とニタリ顔で言うヘンリーに「好みじゃねぇよ!」と叫べたらどんなにいいだろうかとチヴェッタは頭を抱えた。
色ボケアホ国王だけなら罵声を浴びせて自分の好みを延々と説いてやるのに、王太后様と騎士様が邪魔だ!! 特に騎士様が邪魔だ、邪魔というか関係がバレたら命が危ないし、こじれる。
「国王陛下、私からも一つお伝えしたいことがあります」
「なんだ弟よ、こんな失礼な魔法使いはやめておけという言葉は聞かないぞ」
弟、弟!? とチヴェッタはレオーネを二度見した。
え、ちょっとまって、弟? 王弟なんですか騎士様? え、まじでいってやがるんですか?
確か国王の弟は王妃の連れ子で、国王と血は繋がってはいないが仲はかなりいいと聞いたことがある。ということは私との関係がバレてしまっても死にはしないが、いやだめだもっとこじれる、かなり拗れる。
記憶は封印しままにしておこう、その方がいい。めんどくさいのは勘弁だ。
「私はこの魔法使いを凌辱しました」
「おいこらまてっなんでそうなる!?」
「なにが、どうして、そんな記憶の改ざんがされてるのっ!?」と騎士様の胸倉を掴み揺する(全く微動だにしない)と、「封印されているため全く思い出せないが、貴女が俺の記憶を封印したのは俺に望まない関係を強要されたからだろうと結論つけた。だから俺は貴女に土下座しにいく予定だった」と訳の分からないことを騎士様は言うもんだから、私の頭の中はもう滅茶苦茶である。
「違うから騎士様はそんなことしていない!」
「なら何故記憶を封印したんだ。貴女が俺に行為を覚えていて欲しくなかったから記憶を封印したのだろう?」
「あれは私も酔っぱらってたのでセーフ!!」
「酔った勢いか、やはり責任を取らなくては……陛下、この者との結婚はおやめください。もしかすると既に俺との子どもがいるかもしれません」
「人の話を聞け!!」
「かんべんしてよ!!」と半泣きで叫ぶチヴェッタに対し、真面目な顔で国王に進言するレオーネ。突然のことで話についていけていないらしい口を開けたまま呆ける国王。
年の功なのか、状況を客観的にみていた王太后は混沌としているわね、と溜息を吐き出し、今にも泣き出しそうなチヴェッタの肩を優しく撫でた。
「チヴェッタさん、とりあえずロートの記憶を戻してあげてくれないかしら。この子勘違いでもコレと決めたら突進していく猪みたいな性格なのよ。だからまずは記憶を戻して落ち着かせましょう」
「え、でも、王様に」
「大丈夫、陛下はロートや貴女に危害を加えたりしないわ。しようとしたら私が止めます。安心して」
「わ、かりました……」と涙を目に溜めたまま、チヴェッタは掴んでいたレオーネの服から手を放し、額に触れる。
魔力に反応し黄色い光で書かれた魔法陣がレオーネの額に現れた。
チヴェッタが ≪ 解除 ≫ と言うと光は拡散し、レオーネの瞳から光が消える。が、すぐに光が戻り、目尻が下がった。
「チヴェッタ殿、好きだ」
「うああああああああ王太后様っ激突してきてるんですがっ!!」
王太后に向かって叫ぶチヴェッタをレオーネは抱きあげ、チヴェッタの目元に溜まっていた涙を指でそっとぬぐう。
「なぁ、チヴェッタ殿。俺に貴女の名前を呼ぶ許可をくれないか? 何度も名前で呼んでほしいといっているのに呼んでくれないのは、寂しい」
「んああああああくそ甘いっむりむりむりです!! 呼びませんし呼ばせませんよ!?」
「何故だ? あの夜はチヴェッタ殿から誘ってきたのに。それに貴女のことだ、酔っていたとしても嫌いな奴を誘わないだろう?」
「そうだろ?」というレオーネの言葉に「うっ」と詰まるチヴェッタ。
「あら、合意なのね? ならロートの問題は一度解決したということにしておいて、次は陛下です」
「陛下」と王太后と呼ばれたヘンリーは呆けた顔を元に戻し、溜息を吐きながら眉間をおさえた。
「あー、待ってくれ。話が全く分からん」
「ロートとチヴェッタさんはお酒の勢いで関係を持ってしまい、対応に困ったチヴェッタさんがロートの記憶を封印した。そして今戻った。という感じかしら?」
「合ってる?」と王太后がレオーネとチヴェッタに向かって首を傾げる。合っていると二人が頷くと、「まじかよ」とヘンリーが再び溜息を吐き出した。
「ロート、そんな一回ヤったくらいで依存するな。女は腐るほどいる。ルーチェなんかよりもいい女はいるぞ」
「魔力の多さでみるならば話は別だが」と付け加えて話す国王ヘンリーにチヴェッタは「こいつ、殴る」と握り拳を作るが、その拳の上にレオーネは自身の手を重ね、包み込んだ。
不敬な行動は慎めということだろうかとレオーネをみたチヴェッタに、レオーネは笑いチヴェッタを抱え直し耳元で「逃げるから捕まってろ」と小さく言った。そして、国王ヘンリーに向かって言い放つ。
「何を仰るのですか国王陛下、私はチヴェッタ殿に嫌われてしまっても仕方がないことをしたというのに、私の危ない所を救ってくれました。それにチヴェッタ殿は私の作った飯を、美味しそうに食べてくれる人です。こんないい女を魔力だけをみるなんて、陛下はとても傲慢でいらっしゃる」
「……ロート、いくら弟とはいえその言葉はいただけんな。訂正しろ」
「嫌です。私の愛しい人を悪く言う方に礼儀もありませぬ。では、国王陛下、王太后様。御前失礼します」
「おいロート!!」という国王ヘンリーの声を無視し、レオーネは持っていた転移用の魔法陣を自身の足元に投げ、広がる青い光で描かれる魔法陣。
青い光に一瞬にして包まれたレオーネとチヴェッタは一瞬にして姿をくらました。
「チッ昔から人の話を聞かぬ弟だ。王太后様、ロートがいきそうな場所は?」
「女を物と勘違いしている国王陛下に教えませんわ。それと、このことは前王に報告させていただきます。いくら国の為と言えど、度が過ぎていますわ」
「ほんと国王でなければ殴ってるところよ!」と声を荒げながら部屋を出て行く王太后。
王太后を見送った国王ヘンリーはドサリと椅子に座り、机の上に足を乗せた。
「くそっ、いい女だって? そんなことは知っている」
ルーチェが大魔法使いマーリンに拾われこの国に来た時から知っている。
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だが、その瞳は力強く輝いていた。死んでたまるもんかと、目が語っていた。
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なのに、何故こんな空回りしているのだと、ヘンリーは今日何度目かの溜息を吐き出す。
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なのに、いつの間にか逃げられて、いつの間にか男の影が、しかも俺の弟ときた。どんなの悪夢だ。
それに王太后が前国王、俺の父親に報告するとかなんとか……あぁ、嫌な予感しかない。
「……おい、宰相。そこにいるだろ」
まずはロートとルーチェを探すか。とヘンリーは扉の向こうにいるであろう宰相に声をかけた。
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