ヴァンパイアと聖女様

刹那

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第10話

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「ルシファー様!起きてください!」

ルシファー様に助けていただいてから半年経ち、ここの環境にも慣れてきました。ここは、魔界といっても、外れにあるらしいのだが、何をともあれ一日中赤い月が出ているため朝なのか夜なのか分からない時があります。それをルシファー様に相談したところ、時計を作っていただきました!
そして、変わったこと言えば、なんと血を吸われるだけでなくこの屋敷でルシファー様の周りの世話役として働かせてもらえることになったのです。すっごーく、嫌な顔をされましたが、屋敷を出ないという条件でなんとか許可をいただきました。そして今ルシファー様を起こしにきているのですが…。

「ルシファー様!きゃっ!」

腕を掴まれ、気づけばルシファーに抱きしめられる。
「お離し下さい!」と腕を枝のようにして押してみるがビクともしない。
「耳元でキャンキャン騒ぐな。」と頭をつかまれ顔を胸に押し付けられる。

い、息が…。

ドンドンと強く叩けばやっと離してくれた。

「な、何をなさるのですか?!」

「…聖女様が夜這いに来たのかと思ってな。」

「よ、よ、夜這いなど!それに、今は朝です!」

「…あぁ、そうだったな。」と言いながら一向に離す気のない腕を持ち上げようと試してみるが失敗に終わる。

「ルシファー様、お仕事があるとセバスチャン様が言っておりましたよ?早く起きないとダメですよ。」

セバスチャンはこの屋敷の執事であり、ルシファーの右腕でもある。ルシファーみたく闇のように暗い髪というよりも光に当たると青みがかっている長髪をきっちり束ねている。眼鏡の奥のエメラルドの瞳は何を考えているのかわからない。

リリアナは少しセバスチャンが苦手だったそれは…。

「…ルシファー様、そろそろ仕事をしていただかなければ部下に指示ができません。それから、リリアナ様。」

「は、はいっ。」

「ルシファー様の侍女になったからにはしっかり仕事をしていただきたいですね。」

語尾にこれだから人間はと聞こえるような、双眸である。
しかし、これだけ厳しいのは自分にも厳しいからだとリリアナは分かっているため早くルシファーから離れたいのだが、全く離してくれる気配がない。

「はぁー、これだから人間は。」

はい。申し訳ありません。でも、ルシファー様にも少し責任があると思うのです。と言えたらどれだけいいか。
皆さま…ご察ししていただけたと思いますが私はセバスチャン様によく思われてしません。むしろ、嫌われています。

「リリアナ様…聞いていますか?」

「あ!はい!聞いています!」とリリアナは少し緩んだルシファーの腕から勢いよく逃れ服を急いで整える。

「ルシファー様もお早く、お願いいたします。」とセバスチャンは静かに部屋から出て行く。

セバスチャンがいなくなった瞬間リリアナは肩に力が入っていたことに気づきすぐに力を抜く。
「ルシファー様…。」とリリアナはか細い声で、ルシファーに尋ねる。

「どうした。」

「どうしたら、セバスチャン様に少しは認めていただけるでしょうか?」

「……認めてもらいたいのか?」

リリアナはどうしたらいいのか本当にわからずルシファーの声が低くなっている事に気がつかなかった

「はい。認めていただきたいです。セバっ!」と言葉を続けようとした瞬間またしてもルシファーに腕を掴まれ胸に中にすっぽりと収まってしまった。

「ルシファー様?!」

「…イライラさせたのはお前だ。」とリリアナの服を破り肩に牙を食い込ませる。その動きがいつもより荒い気がした。

「っん~!っっいっ。」

「…認められ必要はない。」と冷たく言い放ちまた強く吸う。リリアナはなんとか途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

「…っ、だっダメです。セっ!いっっっっ。」

「…名前を呼ぶな!」と乱暴にリリアナの首に牙を立てる。

でも、これだけは伝えないと。

「ルシファー様…の、大切なっ、人だから、わ、私は認めてもらいたいのです!」

ルシファーは驚いたように目を見開き牙をゆっくり抜き、下で血を綺麗に舐める。

「んっ…ぁっ。」

今度は優しく触れられ、くすぐったくなり身をよじる。

「…いいだろう。だが、俺の前でほかの名を呼ぶな不愉快だ。」

なんて理不尽なと思ったがリリアナは素直に頷いた。

「俺は仕事に行くがお前はこの部屋と自分の部屋以外はどこにも行くな。いいな?」

「…分かりました。」

ルシファーはじっとこちらを見つめてきたがすぐにそっぽを向き部屋を出て行った。
リリアナは火照った体をどうにか落ち着かせようとするが、どうもうまくできない。するとすぐにシエラが現れ新しい服を持ってきてくれ、整えてくれた。

さっきのは一体なんだったのだろうか?
いまいち、ルシファーのスイッチがわからない。

「…嫉妬ですわね。」と急に心を読んだかのようにシエラが嬉しそうに言う。

「嫉妬…あ。」

それを聞き、リリアナはパァーと満面の笑みでシエラを見る。

「なるほど、そう言うことですか!ルシファー様にも可愛らしいとこがあるんですね?」

「ふふ。そうですわね?早く自分でもお気付きになればいいですのに。」

「そうですね!あんなに私嫉妬する必要なんてありませんのに。可愛い人ですね。」とリリアナが楽しく話しているとシエラの動きが止まる。
「私ですか?」と意味にわからな質問をされリリアナは「はい。ルシファー様は親友を私に取られると思ってあんなに怒っていらしたんですね。」と微笑む。

「…お互い鈍感って、大丈夫かしら?」

「シエラさん?」と1人で何やらブツブツ言っているシエラを不思議に思い声をかける。

「なんでもありませんわ。こういったことは本人が気づくことが重要ですからね。」

「そうですよね!」

「でも…わたくしがしっかり協力しなくてはですね。」とシエラは吸血鬼ヴァンパイア  らしく妖艶に微笑むがリリアナはルシファーの新たな発見に喜びシエラの企みには気づいていなかった。
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