毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

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一章

2話 ~前世の記憶~

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カタカタカタカタカタ………

静かな部屋に響く無機質なパソコンの音。

「三村君、もう帰っていいわよ。」

紅音はパソコンから目を離さず、隣に座る後輩に帰るよう促す。
しかし、後輩はその場から動こうとしなかった。

「いいえ。頑張ります。」

「…………。」

うーん。三村くんは頑張り屋なんだけど、無理しすぎるからなぁ。
私が残ってるから、気にしてるんだろうか。
はぁー、仕方ない。

「私、これ終わったら帰るから。三村君も帰りましょう?」

そう言えば三村君は「はいっ!」と返事をする。

いい返事。
やっぱり、私が帰らないから気にしていたのだろう。

本当は、一緒に帰れると思い嬉しくて返事をしただけなのだが紅音には全く届いていなかった。

会社でしないといけない資料はもうやってるし取引先にも連絡したから後は家でもできるわね。

紅音は、チラッと三村を見てすぐにパソコンを閉じる。

「終わったから帰りましょうか。」

三村君はコクリと頷く。

仕事が終わり、エレベーターに三村と乗っている何故か隣から視線を感じる。

何んだろう。
何か気になることでもあったのだろうか。それとも…

「…三村君、顔に何かついてる。」

自慢じゃないが、25歳とは思えないほど肌はボロボロだ出来ればそんなに見ないでほしい。これでも、女なのだ。

「い、いえ。なにもついていません!」

「そう…。」

そんなに否定されると何だか気を使わせたみたいだ。
実際使わせてるのか?

「じゃぁ、私はこれで……。」

「あ、あの!」

タクシーを呼ぼうとした時、後ろから名前を呼ばれ振り返る。

何か言おうと口を開き、ためらったようにまた閉じ意を決したように口を開く。

「…今日、ご飯食べに行きませんか!」

紅音静かに三村のおでこに手を当てる。

「……やっぱり。三村君、熱があるわ。顔赤いみたいだし。今日はしっかり休みなさい。」

それを聞いた三村は今にも泣き出しそうな顔でバレないように笑い「はい。」と返事をした。

紅音はそれだけ言うとちょうどいいタイミングで来たタクシーにさっさと乗り込む。

やっぱり辛かったんだろうな。最後なんか目も潤んでたし、早く治れないけど。
明日プレゼンだったかしら。新人だけど彼はかなり期待できるし頑張ってほしい。

この時、三村が一世一代の告白をしようと考えていたなんて知らない紅音は呑気にそんなことを考えていた。

コンビニに寄ってもらいつまみとビールを買う。

「ただいまぁー。」

返事は道論帰って来るこちはない。

スーツを脱ぎお風呂から出てジャージを着て頭のてっぺんでだんごにし眼鏡をかけていつものオフモードである。
年々おっさん化する自分を見ないフリするのが日課にありつつあるのが辛い。
彼氏だって6年……ふっ、頭が痛いのは仕事をしすぎたせい、きっとそうだ。
ビールを飲みつまみを食べ、そして一番の癒し、本!
色んなジャンルを見るが今ハマっているのがファンタジー系の恋愛小説[初恋の貴方]である。
そこの君!今、ファンタジー?恋愛?ふっと鼻で笑った君。
馬鹿にするのはこの本を読んでからにしていただきたい。
感動、友情、恋愛、コメディーと沢山の要素が喧嘩することなく味わえる最高の本なのだ。
おっと、いつの間にか食レポならぬ本レポになっていた。
主人公は初恋の王子様と幼い頃に離れ離れになってしまう。
母親が病で倒れ、子爵家に養子として育てられ王宮で四年に一回開かれるパーティそこで初恋の王子様と再会する。
しかし、国の問題、王子の婚約者、などいろいろな障害が立ちはだかる。
そんな、障害を乗り越えることで2人の絆はどんどん深まる。
そんな時、王子の婚約者が悪魔と契約をし主人公に呪いをかけ……そして…。

「…終わり。嘘でしょ?!」

ここにきて、終わりってでも幸いなことに続きは明日発売になっている。
しかも最終回!!!

明日、残業しないでいいように今日頑張ったのだ。いくつか家に持って帰ってきたけど。

それに明日は

「…葵の誕生日だもんね。」

今年はなにがいいかな。大きなケーキでも作ろうかな。去年は得体のしれない物体?ができちゃったけど今年こそ、うまくいくはず?……はずだ!

紅音は、暇な時料理をするが味は美味しいのになぜか見た目が大変なことになるのだ。

そんな事を思いながら、下がって来る瞼と格闘していたがついに負けてしまった。

********

紅音は息苦しさで目が覚め、重たい瞼をゆっくり開くと何故かあたりは火に囲まれていた。

嘘でしょ!

起き上がろうとしたが、体に力が入らず床に倒れこむ。

「ゴホッゴホッゴホッ…」

煙を吸ってしまい。喉が焼けるように痛い。

死ぬの私…。

まだ本の続き見てない。
葵のプレゼンだって買ってない。

何て、呆気ないんだろう。
こんな死に方するなんて、葵に怒られちゃうかも。

紅音はそんな事を考えながら意識を手放した。
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