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一章
8話 俺の君主
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公爵家からの帰り道の馬車の中。クラウドは赤くなった頬を触り、顔を顰める。
「…随分、腫れてきましたね。」
「…今は二人だけなんだ。その話し方をやめろ。」
「いえ、私のようなものが次期国王の貴方様と同等に話すなど恐れ多良い事ですので。」
ジェンは深く頭も下げるがその言葉には棘があった。
「……、お前も怒っているのか?」
「殿下をお叱りするなんて……ただ、貴方の教育係としてなんと情けないことかと自分に怒っております。殿下の事はしっかりカトレア様が叱ってくださいましたので私が口を出す事はありません。ですが…もしも、なぜご自身が怒られたのか理解されていないのでしたら、責任持って私は田舎に引っ込もうと思っております。」
「……分かってる。」
クラウドは周りの理想どうりの王子に育った。
「威厳を持ちなさい。」「決して頭を下げてはなりません。」「この国の王になるのですよ。」「疑問を持つ事は許されません、みんなが迷ってしまいます。」と周りに言われ続けたのだ。
もともと素直なクラウドはこれを忠実に守っていた。疑問を持つことも許されていなかったため、これが国民からすればただの暴君だという事に気づくことすらなかった。疑問を持つ前に都合の良い答えを出されていたからだ。
ジェンがその事を知ったのはここ最近である。次期国王の右腕として五年前から隣の国に留学に行き、帰ってきた時にはすっかりクラウドは洗脳されていた。
何故そばにいなかったのか後悔した。
だから、カトレアの言葉はクラウドの洗脳を解くきっかけになった筈だ。
第三者の言葉だからこそ響くものがあるのだ。
「…分かるまでしっかり自分の頭で考えて下さい。どれだけ時間がかかってもこの答えだけは自分で出さなくては行けませんよ?考える事を放棄してはダメです。今までの言葉が全て嘘だとは言いません。しかし、貴方が考えを放棄したその時は国民の命が放棄されたという事です。」
クラウドは良くも悪くも素直で優しい奴だ。そして、危機的状況なときほど非凡人な考えをだすのだ。
だからこそ、俺はここにいる。
「俺は………。」
クラウドの瞳が揺れる。
自分自身の弱さに。
自分の背負っているものの大きさに改めて気づいたのだ。
「…俺が今ここにいるのは、クラウド。お前の王になる姿を見たいと思ったからだ。クラウドなら、国民をこの国を背負っていけると思ったからだ。」
クラウドの拳に力が入る。そうしていないと、目を背けてしまいそうになる。
「俺は…背負っていけるだろうか。こんなにも弱い俺が…。」
「弱さを知っている人間は誰よりも強くなれる。自分の頭で考えることのできる人間は未来を考えられる人間だ。お前は誰よりも国王に向いている。俺が保証する。だから、その為に今から変わっていけば良いんだ。」
お前はきっと導き出せる。
あの時からジェンの中でクラウドは絶対君主なのだ。
********
和解?から数週間経った今ではすっかりクラウドはカトレアの元に行くのを楽しみにしていた。
自分に意見を言う人はそういないからこそ、カトレアがクラウドの気を許せる一人になるのは自然のことだったのだ。
「……何だ?なんか付いてるか?」
「いえ、随分楽しそうだなと思いまして、そんなに、カトレア様に会えるのが嬉しんですか。」
「ち、違う。別に嬉しいなんて思っていないからな!」
ジェンはハイハイと適当に頷く。
「お前なぁー。適当だろ。」
「俺としては、このまま仲良くなって、カトレア様に王妃になって欲しんですけどね。」
カトレア様が王妃になればこの国は安泰だろうなと思うが、どうやらカトレア様には王妃になる気は一切ないように見えた。
「俺にはもう決めた人がいる。それに…カトレア嬢とはあれだ…親…友人だ!」
自分は親友とか思ってるけどカトレア様が思ってなかったら恥ずかしいから言い直したんですね。でも、安心して下さい。カトレア様が殿下のことを友人と認識しているかはとても怪しいものです。
いつも、笑顔の裏に面倒だと書いてありますよ。と伝えたら怒るか?いや、確実に凹むのは目に見えている為、言ってしまおうかと悩んでいる。
「勿論、お前が一番の親友だ。」と満面の笑顔で言う。
「……………。」
言わないでおこう。
「あ、着きましたよ。」
クラウドは目を輝かせ、馬車が止まった瞬間外に出る。
そこには、いつ見ても美しいカトレアが完璧な礼をしていた。
「いらっしゃいませ。クラウド様。週に三回も、まめですね。」
オホホホと笑っているが、その裏で明らかにめんどくさいから来るなと遠回しに言っているのだが、うちの殿下は「あぁ、カトレア嬢が暇だろうと思ってな!」と満面の笑顔で空気の読めないことを言っている。
すると今度は笑顔でこっちを見る。
「クラウド様もお忙しいでしょうが、ジェン様もお忙しい身なのですから、いいのですよ。頻繁に来られなくても。むしろ遠慮したいですわね。」
満面の笑顔ではあるが、伝わらないと思ったのか隠すのをやめストレートに伝えてきた。
クラウドはそのことに気づいた様子はない。
「私もここに来ると楽しいので全然苦ではありませんよ。それに、クラウド様はカトレア様の事を親友だと思っていらしゃるようで、どうかよろしくお願いしますね。」
「……とっても、光栄ですわ。光栄すぎて遠慮したいぐらいです。」
明らかに嫌味がこもっているが気づかないふりをする。
「遠慮する事ないからな!」
しかし、やっぱりクラウドにはカトレアの本音は読み取れないようで、満面の笑顔である。
「どうか殿下と末長くよろしくお願いしますね。カトレア様。」
クラウドには聞こえないようにカトレアの耳元で囁く。
カトレアは、一歩後ずさると耳を抑え首を思いっきりふる。
「ご、ご遠慮します!」
その後、サラとガイに睨まれたがジェンは完璧に無視である。
やっぱり、俺はカトレア様に王妃になってもらいたいですよ。
国の為にとかではなく、クラウドを支える人として柄にもなく本気でそう思う。
「…随分、腫れてきましたね。」
「…今は二人だけなんだ。その話し方をやめろ。」
「いえ、私のようなものが次期国王の貴方様と同等に話すなど恐れ多良い事ですので。」
ジェンは深く頭も下げるがその言葉には棘があった。
「……、お前も怒っているのか?」
「殿下をお叱りするなんて……ただ、貴方の教育係としてなんと情けないことかと自分に怒っております。殿下の事はしっかりカトレア様が叱ってくださいましたので私が口を出す事はありません。ですが…もしも、なぜご自身が怒られたのか理解されていないのでしたら、責任持って私は田舎に引っ込もうと思っております。」
「……分かってる。」
クラウドは周りの理想どうりの王子に育った。
「威厳を持ちなさい。」「決して頭を下げてはなりません。」「この国の王になるのですよ。」「疑問を持つ事は許されません、みんなが迷ってしまいます。」と周りに言われ続けたのだ。
もともと素直なクラウドはこれを忠実に守っていた。疑問を持つことも許されていなかったため、これが国民からすればただの暴君だという事に気づくことすらなかった。疑問を持つ前に都合の良い答えを出されていたからだ。
ジェンがその事を知ったのはここ最近である。次期国王の右腕として五年前から隣の国に留学に行き、帰ってきた時にはすっかりクラウドは洗脳されていた。
何故そばにいなかったのか後悔した。
だから、カトレアの言葉はクラウドの洗脳を解くきっかけになった筈だ。
第三者の言葉だからこそ響くものがあるのだ。
「…分かるまでしっかり自分の頭で考えて下さい。どれだけ時間がかかってもこの答えだけは自分で出さなくては行けませんよ?考える事を放棄してはダメです。今までの言葉が全て嘘だとは言いません。しかし、貴方が考えを放棄したその時は国民の命が放棄されたという事です。」
クラウドは良くも悪くも素直で優しい奴だ。そして、危機的状況なときほど非凡人な考えをだすのだ。
だからこそ、俺はここにいる。
「俺は………。」
クラウドの瞳が揺れる。
自分自身の弱さに。
自分の背負っているものの大きさに改めて気づいたのだ。
「…俺が今ここにいるのは、クラウド。お前の王になる姿を見たいと思ったからだ。クラウドなら、国民をこの国を背負っていけると思ったからだ。」
クラウドの拳に力が入る。そうしていないと、目を背けてしまいそうになる。
「俺は…背負っていけるだろうか。こんなにも弱い俺が…。」
「弱さを知っている人間は誰よりも強くなれる。自分の頭で考えることのできる人間は未来を考えられる人間だ。お前は誰よりも国王に向いている。俺が保証する。だから、その為に今から変わっていけば良いんだ。」
お前はきっと導き出せる。
あの時からジェンの中でクラウドは絶対君主なのだ。
********
和解?から数週間経った今ではすっかりクラウドはカトレアの元に行くのを楽しみにしていた。
自分に意見を言う人はそういないからこそ、カトレアがクラウドの気を許せる一人になるのは自然のことだったのだ。
「……何だ?なんか付いてるか?」
「いえ、随分楽しそうだなと思いまして、そんなに、カトレア様に会えるのが嬉しんですか。」
「ち、違う。別に嬉しいなんて思っていないからな!」
ジェンはハイハイと適当に頷く。
「お前なぁー。適当だろ。」
「俺としては、このまま仲良くなって、カトレア様に王妃になって欲しんですけどね。」
カトレア様が王妃になればこの国は安泰だろうなと思うが、どうやらカトレア様には王妃になる気は一切ないように見えた。
「俺にはもう決めた人がいる。それに…カトレア嬢とはあれだ…親…友人だ!」
自分は親友とか思ってるけどカトレア様が思ってなかったら恥ずかしいから言い直したんですね。でも、安心して下さい。カトレア様が殿下のことを友人と認識しているかはとても怪しいものです。
いつも、笑顔の裏に面倒だと書いてありますよ。と伝えたら怒るか?いや、確実に凹むのは目に見えている為、言ってしまおうかと悩んでいる。
「勿論、お前が一番の親友だ。」と満面の笑顔で言う。
「……………。」
言わないでおこう。
「あ、着きましたよ。」
クラウドは目を輝かせ、馬車が止まった瞬間外に出る。
そこには、いつ見ても美しいカトレアが完璧な礼をしていた。
「いらっしゃいませ。クラウド様。週に三回も、まめですね。」
オホホホと笑っているが、その裏で明らかにめんどくさいから来るなと遠回しに言っているのだが、うちの殿下は「あぁ、カトレア嬢が暇だろうと思ってな!」と満面の笑顔で空気の読めないことを言っている。
すると今度は笑顔でこっちを見る。
「クラウド様もお忙しいでしょうが、ジェン様もお忙しい身なのですから、いいのですよ。頻繁に来られなくても。むしろ遠慮したいですわね。」
満面の笑顔ではあるが、伝わらないと思ったのか隠すのをやめストレートに伝えてきた。
クラウドはそのことに気づいた様子はない。
「私もここに来ると楽しいので全然苦ではありませんよ。それに、クラウド様はカトレア様の事を親友だと思っていらしゃるようで、どうかよろしくお願いしますね。」
「……とっても、光栄ですわ。光栄すぎて遠慮したいぐらいです。」
明らかに嫌味がこもっているが気づかないふりをする。
「遠慮する事ないからな!」
しかし、やっぱりクラウドにはカトレアの本音は読み取れないようで、満面の笑顔である。
「どうか殿下と末長くよろしくお願いしますね。カトレア様。」
クラウドには聞こえないようにカトレアの耳元で囁く。
カトレアは、一歩後ずさると耳を抑え首を思いっきりふる。
「ご、ご遠慮します!」
その後、サラとガイに睨まれたがジェンは完璧に無視である。
やっぱり、俺はカトレア様に王妃になってもらいたいですよ。
国の為にとかではなく、クラウドを支える人として柄にもなく本気でそう思う。
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