毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

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二章

~獣人変身~

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とあるいつもと変わらない朝、カトレアはいつもと違う感触に目を覚ました。

ん?
あれ?
もふもふ……じゃ、な、い?

カトレアは重たい瞼をゆっくり開けていく。 

えっ!え?!

カトレアはあまりの驚きに眠気も吹っ飛びベットからとびでる。
人は驚きすぎると声が出ないようだ。

だ、だれ?!

ベットには、美しい青年が眠っていたのだ。
年は、16、17ぐらいだろうか。

昨日はガイと寝ていたのであって決して美青年と寝ていた記憶なんてない。
そんな不埒なことしない!しないからー!

とよくわからない必死の訴えを心の中で叫ぶ。
完全にパニック状態だ。

「んっ…。どうしたんですか、こんな朝早くに。」

どうしたんですかじゃないです。貴方こそ人のベットでどうしたんですか?

しかし、カトレアは眠たそうに開かれたその瞳に目覚えがあった。

そんなはず……だって……。

ありえない考えが浮かぶが直ぐに違うと思い直す。

「だ、だれなの?!何で私の名前、どうして一緒に寝てるの!」

もう、パニックである。

「カトレア様が昨晩一緒に寝ようと言い出したんじゃありませんか。」

美青年は呆れたようにこっちを見て、ふと首をかしげると「あぁ、成る程。それで目線が…。」と何か理解したように頷く。

やめて欲しい。勝手に自己解決するのは、こっちは貴方の発言でより一層パニックを起こしているのだから。
 
「仕方ないですね…。」

ガイはそう言うとベットから降りカトレアに近づく。カトレアは後ろへと下がるがコツンと踵が壁にあたる。

「あなたは誰なの?」

「本当にわからないんですか?」

わからないから聞いてるんですが。
それよりも、無駄に色気を出すにはやめて欲しい。精神年齢がアラサーだとして、それでも恋愛経験の皆無な私にはこの状況が恥ずかしくて仕方ない。
しかも、漫画や小説だけだと思っていたのにまさか壁ドンと言うものが今、目の前で起こっている。

「…本当に?」

じーっとカトレアの目を目の前の美少年が見つめる。
頭にすぐに過ぎる姿があったが、すぐに頭から消す。何故ならそれは絶対にあり得ないことだからだ。
しかし、考えれば考えるほどその可能性を消せないでいる。
しばらく考え、カトレアはゆっくりとその名を呼ぶ。

「……ガイ、なの?」

「はい。カトレア様。」

でも、私の知ってるガイは狼だったはずだ。決して美青年ではなかった。

疑問に思ったことが顔に出ていたのかガイはカトレアの疑問に答えてくれた。

「アース国では珍しいかも知れませんが、アルテ国では獣人はそれほど珍しい種族ではありません。まぁ、人間よりは遥かに少ないとは言えますね。」

ガイはこの美青年で、美青年がガイで、つまり…あの時、お、お、お風呂に一緒に入ったのは…

「いやぁぁっぁぁぁっぁぁ!!ガイ、今直ぐ忘れて!!!無理無理無理生きて行けない。お嫁に行けない。」

いやいやと首を振ってみるがそんなことで記憶がなくなるはずもない。

「落ち着いて下さい。カトレア様。」

「じゃぁ、見てない?」

期待を込めて聞いてみる。

「あ…………、はい。」

「何その間は!見たんだ!死にたい…。」

真面目に生きて行けない。
11歳と言っても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
穴があるなら今直ぐ入りたい。掘ってしまおうか。
そして誰か埋めて。本当切実に。

変な方向に現実逃避しているとカトレアは思う。

「どうして?どうして入る前に言ってくれなかったの?!」

「それは…。」

ガンッ!

「お嬢様!大丈夫ですか?!」

ガイが気まずそうに話そうとした時ドアの開く音とサラの声でガイの声が遮断されてしまった。

サラはカトレアが無事なことを確認すると素早い動きでそれは綺麗にガイに向かって飛び蹴りを食らわせた。
ガイはとっさに防御したが、後ろに飛ばされ壁に背中を打ち付けむせている。

「ま、待って!サラ!」

トドメを刺そうと足を振り上げるサラを慌てて止める。

「お嬢様はおさがりください。」

「ダメ!傷つけないで!そこ子はガイなの。」

「…………誰であろうと関係ありません。」

サラは一瞬目を見開いたが直ぐにガイを睨み警戒態勢にはいる。

「大丈夫よ。私を信じて。」

大丈夫だと目で訴える。

「…わかりました。何かありましたら直ぐに…殺します。」

サラちゃん?
そんな事しないよね?嘘だよね?
目が本気で私は心配だよ。

「ガイ。どうして一年近くも黙ってたの?やっぱりまだ信用できない?」

責めているわけじゃない。
この感情は……淋しいのだ。

「違います!」

違うと首を振る。

「……アルテ国では俺達獣人は奴隷対象です。人間は獣人よりも遥かに弱いです。だからこそ、恐れ数を減らす為に何人も殺された。逃げないように、縛り痛めつけ、恐怖を植え付ける。それが人間だと思っていました。」

ガイの目は怒り恐怖そして悲しみに染まっていた。

「でも、カトレア様は違った。俺を怖がらなかった。だから、人間の姿になって嫌われたくなかった。カトレア様は、獣の姿が好きみたいだったし。それに多分…この姿になったのはカトレアが優しいから……………。」

ガイは何故か口を閉じてしまった。そして、気まずそうに視線をそらす。

「つまり…安心して人型になってしまった。という事ですか。」とサラが質問する。

ガイは恥ずかしそうに頷く。

つまり、ガイは信頼してくれたから狼から人になったてことよね。
だったら、とっても嬉しい。
カトレアはあることに気がつく。

「一年も私といて家族は心配してるのんじゃない?」

ガイにも家族や友達がいるにではないだろうか。私のせいで離れ離れになっているのではと不安になる。

「…いいえ。私に家族はいません。だから、気にしないでください。」

ガイの瞳には悲しみと怒りの色がみえ、カトレアはそれ以上聞くのをやめた。


「ガイ、ありがとう。それでガイが良ければなんだけど、うちにこのまま居てくれないかしら。」

「お嬢様!いけません!たとえ、知った中だとしても素性がわからない人間をそばに置くのは得策ではありません。」

サラはガイを睨みつける。
サラの言いたいこともわかる。しかし、私は自分の直感を信じたいのだ。それに。。

「ガイ、あなた強いかしら?」

ガイはそんなことを聞かれると思っていなかったのか、気が抜けたような顔をしている。

そんな顔もできるのね。

「どうなの?強いの?」

「はい。戦えるだけの技術は持っています。」

「そう。ならいいわね!」

カトレアは満面の笑みで髪とペンを取り出し、そこにスラスラと文字を書く。
書き終わると満足げにそれを眺めて「よし!」とガイに手渡す。

「これは。」

「私専属騎士の契約書よ。制式的なものはお父様に話して作成するからこれはそれまでの代わり。」

「お嬢様!!そのような勝手なことが許されるはずがありません!」

サラはダメだと制止しようとするが、カトレアはサラの手を包み込むように握る。

「サラ、もう決めたの。それにあなたが一番わかっているはずよ。私は諦めが悪いの。」

「。。。。」

「お願い。」

サラは諦めたようにため息をつくと、カトレアの手を握り返す。

「分かりました。ですが、私はこの者を完全に信用したわけではありません。それはご理解ください。」

「えぇ、ありがとう。」

カトレアはサラからガイへ向きを変える。

「ガイ。」

茫然と紙を見つめていたガイが名前を呼ばれ顔を紙からカトレアへと移す。

「貴方は、どうしたの?」

「俺は。。貴女に迷惑をかけたくありません。」

「貴方のことを迷惑だと思ったことはないわ。」

「。。俺は人間じゃないんです。」

「えぇ、モフモフして可愛いし、今の貴方は美し過ぎね。とっても素敵だわ。」

「俺は今まで正体を隠していました。」

「これから知っていく時間はたっぷりあるわね。でも、もうお風呂は無しね。」

「……でも、俺は。」

「ガイ。」

カトレアはガイの頬を包むと俯いた顔を上にあげる。

「もう、言い訳はしないで?貴方の本音を聞きたいの。」

「俺は。。」

ガイはその真っ直ぐな瞳から目を逸らすことができないかった。
だからこそ、ガイは不安だった。この瞳を曇らせるかもしれない。この人を傷つけてしまうかもしれない。そう考えるだけで、胸が張り裂けそうだ。

「いいのでしょうか?俺が貴方のそばにいて。ダメだと思います。。。」

「ガイ。」

「でも、許されるになら、貴女の側にいたい。貴女の側で貴女をカトレア様を守らせてください。」

カトレアは優しく微笑む。

ガイは膝をつきカトレアの手を取り手の甲にキスをする。

「この命に変えても貴女を守ります。」

「嫌です。」

その言葉を聞きガイは目を見開く。

何となくそんなリアクションになるんじゃないかと思った。
それが可笑しくてカトレアはつい笑ってしまった。それが気に食わなかったのかガイは眉を潜める。

「…何故でしょうか。」

「そのままの意味よ。私は貴方を犠牲に守って欲しくなんてない。自分の命を大切にしないなんて許さないわ。」

私の為に死なれるなんて嫌に決まっている。
このセリフは、2次元だからこそ良いのであって、リアルでは論外だ。

「…分かりました。でも、貴女を必ず守ります。俺はこれでもかなり強いですから。」

「ふふふ。ガイよろしく。」

ガイの事は私が守る。
今度こそ、大切なものを失いたくなんてない。

ガイは信頼してくれているというきっと全てを打ち明けられるほど信頼してくれてるわけじゃない。
誰だって、人に言いたくない事はある。だから、悲しいときや辛い時に寄り添える存在になりたい。

「ガイ、お願いなんだけど。」

「嫌です。」

「まだ、何も言ってないわ。」

「行動が物語ってます。何ですかその手は。」

カトレア手は聴く前からガイの毛へと伸びて居た。

「狼になって、モフモフさせて!」

「絶対に嫌です。人の姿になったので今後は殆ど猛獣の姿にはなりません。」

なんて事だ。ガイは私から癒しを奪うのか。

「おね……。」

「絶対に嫌です。」

これはどれだけお願いしても聞いてくれそうにない。

その後カトレアの機嫌が悪くなったのはいうまでもない。
そして、甘いものを出されて機嫌を直したのもまた言うまでもないだろう。
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