毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

文字の大きさ
15 / 48
二章

最愛の人

しおりを挟む
「アルベルト様。もう大丈夫ですよ?」

カリーナは明るく笑ってみせる。

「君も、カトレアも素直じゃないね。僕が君たちのことを見抜けないとでも?」

「……カトレアは上手く泣けない子だから弱い部分を見せない子だから、大丈夫かしら。あの子の成長をアルベルト様と一緒に見たかった。花嫁姿はきっと素敵なんでしょうね。」

カリーナはカトレアの花嫁姿を想像して微笑む。

「何を行ってるんだ。僕が君を死なせるわけないだろ。」

アルベルトはカリーナの手を握りしめる。
消えてしまわないように強く、強く。

「自分の体のことは自分自身が一番理解していますよ。」

死んでしまう。多分、明日まで持たない。
だからこそ、あの子に弱ってる姿は見せたくない。

「最後まで親らしいことをしてあげられなかったわ。」

「君は立派な母親だったよ。」

「私は貴方と結婚して恋をして貴女を愛せて、愛していただいて心から幸せです。体が弱くて苦しくて毎日、楽になりたいと思っていた私を繋ぎとめてくれてありがとう。貴方がカトレアがいなかったら私は幸せになれなかった。あの子のことどうかよろしくお願いしますね。……貴方も他に好きな人ができたら幸せになってください。」

「カリーナ、俺は君の本心も見抜けない男じゃないよ。」

アルベルトは優しくカリーナの頬を両手で挟み自分の方を向かせる。
すると、カリーナの顔がくしゃりと歪みポロポロと大きな目からとめどなく涙が流れる。

「…怖い。死にたくない。貴方と一緒にこれからもカトレアを見守っていきたい。怖い。怖いの。貴方の隣は私がいい。他の人のものになんてなって欲しくない。でも、あの子にはまだ母親が必要よ。これ以上寂しい思いをして欲しくないの。」

情けないでしょ?と弱々しく微笑む。

「僕は君以外愛せないって君が一番よく知ってるだろ。大丈夫。僕はそばにいる。大丈夫だ。」

「アルベルト様、ありがとう。」

アルベルトは手に力を込める。少しでも痛みがないように呪文を唱える。

「汝の痛みを和らげよ。癒せ。」

それでも、痛みを弱めるだけで、治りはしないのだ。
それが悔しくて、もどかしい。

「ありがとうございます。」

カリーナは安心したように微笑む。
しかし、その手はどんどん冷たくなる。

「カリーナ。僕を選んでくれて、カトレアを残してくれてありがとう。」

離れたくない。
ずっと、年をとっても隣にいるのは君がいんだ。

そんなことを口にだしてしまえば君は困ったように笑うのだろう。
だから代わりに

「カリーナ、君を心の底から愛してる。だから僕たちのことを見守ってくれ、それで、全て終えたら会いに行くからまっててくれるか?」

最後の告白をさせてくれ。

「えぇ。待っています。ふふ。貴方の涙を見るのはカトレアが生まれたとき以来だわ。」

カリーナはアルベルトの頬を伝う涙をそっと震える手でぬぐう。

「私は………、しあわせ、でした。」

カリーナはゆっくりと目を閉じ、瞳からは一筋の涙がつたう。

「カリーナ…。」

アルベルトは優しく最愛の妻の唇にキスをおとす。

もう君を見つめることも、手をつなぐことも、抱きしめることも、話すことも、できない。
その現実が、苦しい。

「カリーナ。ありがとう。」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...