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二章
~悪役令嬢として~
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「カトレア様、もう休憩してください。ここは俺たちでも大丈夫ですから。」
「……分かったわ。少し馬車で仮眠をとるから、そんなに心配そうな顔しないでよ。」
本当はまだ続けていたい、だけど確かに少し疲れてきていた。
子供でも底なしに元気ではないらしい。
ガイとは初めに無茶はしないと約束した手前我儘は言えなかった。
ガイ達には最近心配を掛けっぱなしだったからな 。
主人の私がしっかりしなくてどうする。そのためにはまず睡眠が第一だ。
カトレアは早速馬車に向かおうとした時だった。
「おい!それはエマの薬だ!返せよ!」
少年の怒鳴り声で足を止めた。
あの子…。
カトレアは少年の顔に見覚えがあった。
確か、お祭りの時にいた、兄妹のお兄ちゃんの方だわ。
「うるさいガキだ。これはお前達ゴミには必要ないだろう。」
「返せ!バカ貴族!」
「誰に向かって口を聞いている!俺様は貴族だ。お前達とは住む世界が違うんだ。それによく見たらお前、泥棒まがいなことをして懲りずに捕まってるガキじゃねか。」
男は少年を殴り飛ばし嘲笑う。
今にもぽこぽこと音がしそうなお腹を揺らしその場を立ち去ろうとした時、少年が狸に殴りかかろうとしたが、狸の家来らしいこれまた狐みたいに目の鋭い男は少年を羽交い締めする。
「お前に俺たちの何が分かる。恵まれているだけのお前に!」
カトレアはどきっとした。
自分もまた恵まれているものの一人だからだ。
「そんなに早死にしたいか。お前が死んだ所でだれも悲しまないがな。」
狸は持っていた剣を振り上げる。
だ、だめ。
でも、ここからじゃ間に合わない。
またなの?私は結局だれも助けられないの?
「仕方ないですね。カトレア、私の名を呼びなさい。私の気が変わらないうちに。」
ティナ…。
あの時と同じ、知らないはずの言葉が頭に浮かんでくる。
「我が名と魂を持って契約する。ティアナール力を貸して!」
「なっ!」
黒い影が男2人を飲み込んだ瞬間動きが止まった。
カトレアは走り男の手から刃物を抜きとり、少年を自分の方へ引っ張る。
「動けん!誰か助けろ!」
狸は唾を散らす勢いで周りに怒鳴りつける。
カトレアは狸達に近づき、問いかける。
「あなた達も病気なの?それとも誰か知り合いが重病なの?」
「俺が必要だと言っているのだからだ他に何がある。ゴミがこの薬を持っていても仕方ないだろう。それよりお前、俺を助けろ。お金ならいくらでもやる。だから、助けるんだ!」
私は…私はこん事になると思って薬を作ったんじゃない。
流石に堪忍袋の緒が切れたわ。
私は、悪役令嬢なんだったわね。
カトレアは怪しく笑ってみせる。
「貴方お名前は?」
「お嬢様何を…。」
サラはカトレアを止めようと近づくが、その前にカトレアが少年を預けた事によって動けなくなってしまった。
「はっ?何言ってるんだ?!」
「レディーに話しかけるんですもの。紳士として当たり前ですわよね。」
「…お前達、ゴミ、いや虫けらに名乗る名前なんてない!」
狸は顔を真っ赤にさせ声を荒げる。
「全く、うるさい狸ですわね。仕方ありませんわ。礼儀知らずの狸のために私から名乗って差し上げるわ。」
カトレアは狸に近づき、上から見下し、微笑む。
狸達は少し頬を赤らめる。
「私、アルベルト公爵が娘。カトレア・ローズと申します。以後お見知り置きを。あ、そうそう。ティナもういいわよ。」
カトレアは優雅に美しく礼し、ティナに呪文を解くように言う。
狸達はその名を聞いた瞬間、顔を真っ青にさせ、頭を地面に叩きつける勢いで土下座する。
「コロコロ、顔色を変えて忙しい狸ね。」
「あ、貴女様は…。も、申し訳ございません!カトレアお嬢様とはつゆ知らず。失礼の数々申し訳ありません!私、ルメ・ヴィル子爵でございます。」
「そう。貴方子爵でしたの、私はてっきり王族の方かと思いましたわ。だって、子爵ごときが私の事を虫けらと言うんですもの。あ、ゴミとも言っていましたわね。」
カトレアはうふふと微笑む。
狸達は身体を震わせ、真っ青を通り越し土色になっている。
「この事は、しっかりお父様に報告させていただきますわ。」
「ど、どうか。それだけは、お許しください!」
「あら、ダメよ。」
カトレアは狸の頬に薬の瓶を当てる。
「これ、持って帰っていいわよ。でも…首洗って待ってなさい。」
「ひぃぃ!!!」と男達は勢いよく立ち上がると逃げるように何処かへ消えていった。
「カトレア様。」
「ひぃ!!」
今度はカトレアが悲鳴をあげる番だった。
「無茶はするなと言いましたが?そんなことも守れないんですか、貴女は。」
あはは、また怒らせちゃった。
「で、でも、上手くいったでしょ!」
流石、本物の悪役令嬢だ。なかなかの迫力だったと思う。
今回は、悪役令嬢でよかったと心から思う。
ドヤ顔のカトレアに反しガイはなんですかそれはと言った呆れ顔だ。
「だ、だって、ムカついたんだもん。」
「はぁー。もういいです。で、あの男達どうなさるおつもりですか?」
「あれだけ怖がらせたんだもの。もう何もしないでしょ。だから、ほっといていいわ。」
「俺に任せていただけますか。」
「構わないわよ。」
「貴女はいつも甘いんですよ。俺がゴミはちゃんと片付けなくてはね。」と言っていた言葉はカトレアには全く届いていない。
「所で、君。」
カトレアは少年を指差す。
少年はびくんと肩を震わせた。
「今すぐ、妹の所に連れて行きなさい。」
「……分かったわ。少し馬車で仮眠をとるから、そんなに心配そうな顔しないでよ。」
本当はまだ続けていたい、だけど確かに少し疲れてきていた。
子供でも底なしに元気ではないらしい。
ガイとは初めに無茶はしないと約束した手前我儘は言えなかった。
ガイ達には最近心配を掛けっぱなしだったからな 。
主人の私がしっかりしなくてどうする。そのためにはまず睡眠が第一だ。
カトレアは早速馬車に向かおうとした時だった。
「おい!それはエマの薬だ!返せよ!」
少年の怒鳴り声で足を止めた。
あの子…。
カトレアは少年の顔に見覚えがあった。
確か、お祭りの時にいた、兄妹のお兄ちゃんの方だわ。
「うるさいガキだ。これはお前達ゴミには必要ないだろう。」
「返せ!バカ貴族!」
「誰に向かって口を聞いている!俺様は貴族だ。お前達とは住む世界が違うんだ。それによく見たらお前、泥棒まがいなことをして懲りずに捕まってるガキじゃねか。」
男は少年を殴り飛ばし嘲笑う。
今にもぽこぽこと音がしそうなお腹を揺らしその場を立ち去ろうとした時、少年が狸に殴りかかろうとしたが、狸の家来らしいこれまた狐みたいに目の鋭い男は少年を羽交い締めする。
「お前に俺たちの何が分かる。恵まれているだけのお前に!」
カトレアはどきっとした。
自分もまた恵まれているものの一人だからだ。
「そんなに早死にしたいか。お前が死んだ所でだれも悲しまないがな。」
狸は持っていた剣を振り上げる。
だ、だめ。
でも、ここからじゃ間に合わない。
またなの?私は結局だれも助けられないの?
「仕方ないですね。カトレア、私の名を呼びなさい。私の気が変わらないうちに。」
ティナ…。
あの時と同じ、知らないはずの言葉が頭に浮かんでくる。
「我が名と魂を持って契約する。ティアナール力を貸して!」
「なっ!」
黒い影が男2人を飲み込んだ瞬間動きが止まった。
カトレアは走り男の手から刃物を抜きとり、少年を自分の方へ引っ張る。
「動けん!誰か助けろ!」
狸は唾を散らす勢いで周りに怒鳴りつける。
カトレアは狸達に近づき、問いかける。
「あなた達も病気なの?それとも誰か知り合いが重病なの?」
「俺が必要だと言っているのだからだ他に何がある。ゴミがこの薬を持っていても仕方ないだろう。それよりお前、俺を助けろ。お金ならいくらでもやる。だから、助けるんだ!」
私は…私はこん事になると思って薬を作ったんじゃない。
流石に堪忍袋の緒が切れたわ。
私は、悪役令嬢なんだったわね。
カトレアは怪しく笑ってみせる。
「貴方お名前は?」
「お嬢様何を…。」
サラはカトレアを止めようと近づくが、その前にカトレアが少年を預けた事によって動けなくなってしまった。
「はっ?何言ってるんだ?!」
「レディーに話しかけるんですもの。紳士として当たり前ですわよね。」
「…お前達、ゴミ、いや虫けらに名乗る名前なんてない!」
狸は顔を真っ赤にさせ声を荒げる。
「全く、うるさい狸ですわね。仕方ありませんわ。礼儀知らずの狸のために私から名乗って差し上げるわ。」
カトレアは狸に近づき、上から見下し、微笑む。
狸達は少し頬を赤らめる。
「私、アルベルト公爵が娘。カトレア・ローズと申します。以後お見知り置きを。あ、そうそう。ティナもういいわよ。」
カトレアは優雅に美しく礼し、ティナに呪文を解くように言う。
狸達はその名を聞いた瞬間、顔を真っ青にさせ、頭を地面に叩きつける勢いで土下座する。
「コロコロ、顔色を変えて忙しい狸ね。」
「あ、貴女様は…。も、申し訳ございません!カトレアお嬢様とはつゆ知らず。失礼の数々申し訳ありません!私、ルメ・ヴィル子爵でございます。」
「そう。貴方子爵でしたの、私はてっきり王族の方かと思いましたわ。だって、子爵ごときが私の事を虫けらと言うんですもの。あ、ゴミとも言っていましたわね。」
カトレアはうふふと微笑む。
狸達は身体を震わせ、真っ青を通り越し土色になっている。
「この事は、しっかりお父様に報告させていただきますわ。」
「ど、どうか。それだけは、お許しください!」
「あら、ダメよ。」
カトレアは狸の頬に薬の瓶を当てる。
「これ、持って帰っていいわよ。でも…首洗って待ってなさい。」
「ひぃぃ!!!」と男達は勢いよく立ち上がると逃げるように何処かへ消えていった。
「カトレア様。」
「ひぃ!!」
今度はカトレアが悲鳴をあげる番だった。
「無茶はするなと言いましたが?そんなことも守れないんですか、貴女は。」
あはは、また怒らせちゃった。
「で、でも、上手くいったでしょ!」
流石、本物の悪役令嬢だ。なかなかの迫力だったと思う。
今回は、悪役令嬢でよかったと心から思う。
ドヤ顔のカトレアに反しガイはなんですかそれはと言った呆れ顔だ。
「だ、だって、ムカついたんだもん。」
「はぁー。もういいです。で、あの男達どうなさるおつもりですか?」
「あれだけ怖がらせたんだもの。もう何もしないでしょ。だから、ほっといていいわ。」
「俺に任せていただけますか。」
「構わないわよ。」
「貴女はいつも甘いんですよ。俺がゴミはちゃんと片付けなくてはね。」と言っていた言葉はカトレアには全く届いていない。
「所で、君。」
カトレアは少年を指差す。
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「今すぐ、妹の所に連れて行きなさい。」
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