毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

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二章

~選択肢~

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サラには広場に残ってもらい指揮を頼んだ。
そして、ガイとカトレアはエマの元へ向かっていた。
少年の名前は、リアムと言うらしい。
初めは警戒したようにこちらを見てきたが、妹を助ける為にカトレアを妹のいる場所へ案内する。

「ここだ。」

そこは、ベットも壁も屋根すらない、路地裏だった。
見るからに痩せ細った子供達がこちらを警戒したように伺っている。

「ここ。」

「お前達にとったら、汚いとこだけど、俺らにはここが家なんだ。」

リアムは手を握り締め下を向く。
カトレアはその手を包み込む。

「手に傷が付くわ。大丈夫だから、エマちゃんの所に案内して。」

リアムは頷くと地下へと案内してくれた。
下に降りれば降りるほど腐敗臭が濃くなる。
そして、カトレアはその現場に目を見開いた。

こんなに、こんなにも子供達が。

そこには、10人近くの子供達が地面に寝転がっていた。
皮膚には覆いつくすほどの斑点が出ており、今にも死んでしまいそうな状態だった。
そして、一つの違和感を覚える。

「大人はいないの?」

そう、何処を見ても大人の姿がない。

「親なんてもんはもういない。ここにいる奴らは皆んな、親に捨てられたか、親が殺されたかのどっちかだよ。それに、死ぬ奴らが捨てられるゴミ置場だ。誰も近づかない。」

リアムは諦めた目をしていた。

知ってる。
辛くて、苦しくて、楽になりたいと、もうどうでもいいと諦めてしまう気持ちはよく分かる。
自分もそうだったからだ。
でも…。

「リアム諦めてはダメ!必ず助ける。だから、私を信じて。」

信じる心まで捨てたらダメなんだから。

1人だったら、こんな広い場所照らせない。
だけど、今は。

「ミケ、お願い。」

「しゃないなぁ。カトレアのお願いやからなぁ、聞いたるわ。」

今は1人じゃない。だから、大丈夫。

「光よ、闇を照らせ!」

その瞬間、優しい光が闇を照らす

「お、お兄ちゃん!」

リアルの姿を見て1人の少女がかけってくる。
カトレアよりも小さいだろうか、女の子がふらふらとリアムの胸に飛び込む。

「エマ、寝てろって言っただろ!」

この子が…。

「だって、心配だったんだもん。」

「貴女が、エマちゃんね?」

「お姉ちゃん、だれ?さっき光を出してたから女神様?それともお兄ちゃんを虐めに来たの?」

エマはリアムの手をぎゅっと掴む。
こんなに怯えて、今までどれだけ理不尽なことをされてきたのだろう。

「私は、リアムもエマちゃんも虐めない。みんなを助けに来たの。」

大丈夫だと伝えるとエマは安心したのか体の力が抜けリアムに寄りかかる。

「エマ!しっかりしろ。エマ!」

リアムは焦ったようにエマの体を揺する。

「リアム、しっかりしなさい。今は時間が惜しい。貴方の力が必要なの。」

「…分かった。何をしたらいい?」

「できるだけ綺麗な水を沢山持って来て。」

リアムは頷くとエマをカトレアに預け走っていた。

「ガイ。もう少し力を貸してくれる?」

「もちろんです。」

「ありがとう。」

ガイには他の子供達の様子を見てもらい、カトレアはエマの身体を見て見る。

やっぱり、かなり進行してる。
それに、これ。

エマの身体には、打撲痕や刃物で切られた跡があった。

こんな小さな体でどれだけのものに耐えて来たのが分かる。

カトレアはエマに薬を飲ませる。
かなり進行しているため助かるか分からない。
こればかりは、エマ次第だった。

「お姉ちゃん。」

「どうしたの?」

「私が死んじゃったら。お兄ちゃんを助けたあげて。本当は泣き虫なんだよ?…で、でも…私がいるから…。お兄ちゃんは弱くなれない。助けて、お兄ちゃんを助けてください!」

ただ一点を見つけたその瞳は強くそして澄んでいた。

「!…。」

カトレアはこの小さな身体を抱きしめる。

「死なせない。貴女のお兄ちゃんも貴女も守ってみせるから。生きることを諦めないで!」

リアムが水を汲んで帰って来たので、エマのそばにいるように言い、カトレアは他の子の治療に向かう。

「リアム、ありがとう。エマちゃんのそばに居てあげて。」

地下だから今外がどうなってるか分からない。
1時間いやそれ以上たった気がする。

全員に薬を飲ませる。

「ガイ、この水を使って傷口を洗ってくれる?」

「水の精霊よ。傷を癒せ。清めよ。」

ガイが呪文を唱えればプカプカと水の粒が子供達の傷を癒いていく。

光に照らされてまるでシャンデリアだなと思いながら眺めているとガイがお終わりましたと声をかけてくれ現実に戻る。

「…ありがとう。」

「いえ。」

子供達は疲れていたのだろう眠ってしまった。

さて、この子達をどうしようかしら、勿論ここに置いていくわけにはいかない。
そうだわ!

カトレアはとある場所の存在に気がつく。

「ガイ、人を呼んできてくれる?後、馬車も五台用意して。」

「…畏まりました。」

ガイはすぐに用意してくれた。

全く、私の周りの人達は優秀過ぎて困るわね。

心の中でカッコつけてみるが急に恥ずかしくなり、…い、いいんだもん。恥ずかしくないし!誰も見てないし!と誰も見てないのに言い訳をしてみる。

そんな事をしていると、全員別荘に運んだと知らせが来た。

そして、カトレアも別荘に向かいエマとリアムに会いに行く。

ドアをノックし、入るわよ?と声をかけ中に入る。

「カトレア様…。助けていただき、ありがとう。」

リアムはかしこまったように立ち上がり頭を下げる。

「無理に敬語なんて使わなくていいのよ。」

「でも…。」

カトレアはリアムの隣に腰を下ろす。

「私が寂しいの!だからお願い、ね?」

「…分かったよ。」

カトレアは座るようにうながす。

「エマは目が覚めるよね?大丈夫だよね?」

リアムは不安そうに聞いてくる。

「分からない。でも、私はエマちゃんを信じてる。だから、信じて待ちましょ。」

カトレアはまっすぐリアムを見つめ問いかける。

「ねぇ、リアム、貴方達は本当に泥棒したの?」

リアムは肩をびくんと震えせ、静かに頷く。

「それが駄目だということは分かっているわね?」

「分かってるよ。でも、俺たちにはそれしか残されていなかった。じゃないと生きて行けなかったんだ!」

「うん。よく頑張ったね。今まで偉かったね。」

カトレアは優しくリアムの頭を撫でる。
辛いなんて思う暇もなかった。
だって、次死ぬのは自分たちかもしれないのだから。
リアムは堰を切ったように泣きじゃくる。
泣き止むと照れくさそうに微笑む。

「えへへ。カトレアお姉ちゃん。ありがとう!」

その笑顔は反則だわ。
うっかり、心臓が止まるかと思った。

「今日はゆっくり休みなさい。その後のことは一緒に考えましょう。」

カトレアは思い出していた。
あの子達が将来暗殺者になってしまう事を。
小説では、カトレアに雇われて最後には裏切るのだが、確かに、リアムとエマと言う名前だった。

変える。
こんな運命間違ってる。
お母様みたいにはさせない。
あの子達はこれから先沢山の選択肢があって当たり前なのだから。

アルベルトに話をする為カトレアは今、馬車に揺られていた。

「…この子達どうなさるおつもりですか。」

「もう考えてあるわ。……最後まで付き合ってくれるでしょ?」

カトレアはニヤリと笑ってみせる。
ガイは目を見開き、そして諦めたようにため息をつく。

「貴女って人は…。」

ガイは騎士のように自分の心臓部分に手を当てる。
この仕草は、貴女に捧げるという意味がある。

「最後までお付き合い致します。私のお嬢様。」

騎士というよりも王子様ね。
イケメンは何をしてもかっこいいからずるいと思う。

「とことん付き合っていただくわ。私のナイト。」

カトレアはガイの手を取りその上にキスをする。

ガイは目を見開き固まる。

女性からなんてはしたない事なのだろうけどこのぐらいの反撃許してね。
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