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二章
過去と秘密①
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俺は世に言う愛人の子だ。
父親はどこかのお偉いさんらしい。
らしいと言うのは、名前も顔も知らないからだ。
不幸だったと聞かれればそうじゃない。
お金だってない貧しい生活で、獣人のせいで理不尽な差別もあったけど母さんがいるから幸せだった。
だけど母さんはよく寂しそうに月を見ていた。
どうしたの?と聞くといつも優しく頭を撫でるだけだったが俺は子供ながらに父親の事なんだろうと何となく分かっていた。
どうして会いにも来ない奴のことで悲しむんだと苛立つこともあった。
だけど、きっと母さんにとって父親との思い出は大切なものなのだろう。
だったら、俺がその分幸せにすればいい。
「母さんは俺が幸せにするからな!」
「ありがとう。ガイ。」
その笑顔を守れるなら何だってする。
しかし、俺は気づかなかったこの時すでに運命の歯車は動き出していた事に
その日は赤い月の日だった。
この日は、獣人にとって力が不安定になる日だ。
いつものように薬を飲み「母さん、いつもと味が違う」と言おうとした時母さんはいまにも泣きそうな顔をしていた。
「ガイ、ごめんなさい。弱い母さんを許してちょうだい。」
「どうしたの母さん。泣かないで!俺が守るから。」
母さんは俺を抱きしめながらずっとごめんごめんと謝り続けた。
何で泣くのか謝り続けるのかわからなかった。
でもその謎もすぐに解けた。
「お前が、ガイだな?」
背の高い、フードの被った男が突然部屋に入って来るなりガイのお腹を殴り気絶させた。
「やめて!乱暴はしないって約束でしょ!」
「これは、約束の金だ。これで契約は完了する。今後一切、会う事は許されない。破った場合は分かってるな。」
嘘、嘘だよね?!
母さん!
声が出ない。
体も動かない。
暗闇の中、母さんと男の話し声だけだ頭に響く。
ガイは薄れていく意識の中必死に叫んだ。
「……分かってるわ。早く連れてってちょうだい。」
夢だ。これは悪い夢だ。
目が覚めたらいつもの優しい母さんがいる。
これは夢なんだ。
ガイは完全に意識を手放した。
********
ふかふかのベットに美しい家具。
殴られて気を失ったのか…?
いや、それだけで……そうか、薬。
「はっはははははは。」
面白いことなんて何もないのにただ止まらない。
笑い声だけだこの静かな部屋に響く。
夢じゃない。
俺は捨てられたんだろう。
おそらくここは、父親の屋敷か?
「ガイアス様、おはようございます。」
俺と歳がそんなに変わらない少年が緊張した面持ちで頭を下げる。
こいつも大変だな、俺みたいな奴の世話役になるなんて。
「…ここの主人、いや、違うな。お父様とお会いしたいんだが。」
「…畏まりました。」
少年はそれだけ言うと部屋を出て行った。
30分経過した時少年が戻ってきた。
「案内させていただきます。」
ガイは無言で少年の後をついて行く。
それにいても、やたら広いな。
結構歩いたと思うんだけど、まだ着きそうにない。
「ここです。」
やっとついたらしい。
少年が大きな扉をノックする。
すると、大きなドアがゆっくりと開く。
「国王陛下、ガイアス様です。」
これは予想していなかった。
何処かの貴族だとは思っていたがまさか、国王だと誰が想像するだろうか。
「よく来たな。入れ。」
ガイが中に入るとドアが閉まる。
もう逃げれないのだと言われた気がした。
「…お呼びいただき光栄です。国王陛下。」
「ほー、この状況だけでそこまでできるか。」
男は面白そうに笑っているが隣の王妃はこちらを睨んでいる。
明らかに、恨みがこもっていると言っても過言じゃない。仕方ないだろう。
俺は言わば愛人の子なのだから。
「話が早そうだ。お前は俺達の子供としてつまり第一王子として育てる。」
話によれば、何年たっても、子供が出来ず痺れを切らし、外で作った俺を舞台の上にあげたと言うことか。
ゴミ駄目からかなりの出世だな。
「今日からお前はガイアスとして生きろ。そして、獣人だと言うことは誰にも漏らすな。これは、命令だ。」
「畏まりました。陛下。」
ガイはその後外で待っていた少年と一緒に部屋に戻る。
「何か困ったことがありましたら、遠慮なくお声掛けください。」
「名前を聞いてもいいか?」
少年は焦ったように頭を下げる。
「申し訳ございません!僕はノアと申します。」
「そうか。ノア、これからよろしく頼む。」
「はい!」
ノアは嬉しそうに笑う。
「申し訳ないが疲れたから1人にしてもらえるか?」
「そ、そうですよね。分かりました。ゆっくりお休みください。」
ガイはノアが居なくなったのをを確認すると洗面台へ駆け込んだ。
そして、吐いた。
何もかも、吐くものがなくなっても、吐き気は止まらない。
全てが気持ち悪かった。
この場所も、あの男の血がこの体に流れていることも。
名前を取られた瞬間、ガイは殺された。
この美しい部屋はまるで牢屋のようだと思った。
そしてガイの心は本人も気づかないうちに少しずつ確実に殺されていった。
父親はどこかのお偉いさんらしい。
らしいと言うのは、名前も顔も知らないからだ。
不幸だったと聞かれればそうじゃない。
お金だってない貧しい生活で、獣人のせいで理不尽な差別もあったけど母さんがいるから幸せだった。
だけど母さんはよく寂しそうに月を見ていた。
どうしたの?と聞くといつも優しく頭を撫でるだけだったが俺は子供ながらに父親の事なんだろうと何となく分かっていた。
どうして会いにも来ない奴のことで悲しむんだと苛立つこともあった。
だけど、きっと母さんにとって父親との思い出は大切なものなのだろう。
だったら、俺がその分幸せにすればいい。
「母さんは俺が幸せにするからな!」
「ありがとう。ガイ。」
その笑顔を守れるなら何だってする。
しかし、俺は気づかなかったこの時すでに運命の歯車は動き出していた事に
その日は赤い月の日だった。
この日は、獣人にとって力が不安定になる日だ。
いつものように薬を飲み「母さん、いつもと味が違う」と言おうとした時母さんはいまにも泣きそうな顔をしていた。
「ガイ、ごめんなさい。弱い母さんを許してちょうだい。」
「どうしたの母さん。泣かないで!俺が守るから。」
母さんは俺を抱きしめながらずっとごめんごめんと謝り続けた。
何で泣くのか謝り続けるのかわからなかった。
でもその謎もすぐに解けた。
「お前が、ガイだな?」
背の高い、フードの被った男が突然部屋に入って来るなりガイのお腹を殴り気絶させた。
「やめて!乱暴はしないって約束でしょ!」
「これは、約束の金だ。これで契約は完了する。今後一切、会う事は許されない。破った場合は分かってるな。」
嘘、嘘だよね?!
母さん!
声が出ない。
体も動かない。
暗闇の中、母さんと男の話し声だけだ頭に響く。
ガイは薄れていく意識の中必死に叫んだ。
「……分かってるわ。早く連れてってちょうだい。」
夢だ。これは悪い夢だ。
目が覚めたらいつもの優しい母さんがいる。
これは夢なんだ。
ガイは完全に意識を手放した。
********
ふかふかのベットに美しい家具。
殴られて気を失ったのか…?
いや、それだけで……そうか、薬。
「はっはははははは。」
面白いことなんて何もないのにただ止まらない。
笑い声だけだこの静かな部屋に響く。
夢じゃない。
俺は捨てられたんだろう。
おそらくここは、父親の屋敷か?
「ガイアス様、おはようございます。」
俺と歳がそんなに変わらない少年が緊張した面持ちで頭を下げる。
こいつも大変だな、俺みたいな奴の世話役になるなんて。
「…ここの主人、いや、違うな。お父様とお会いしたいんだが。」
「…畏まりました。」
少年はそれだけ言うと部屋を出て行った。
30分経過した時少年が戻ってきた。
「案内させていただきます。」
ガイは無言で少年の後をついて行く。
それにいても、やたら広いな。
結構歩いたと思うんだけど、まだ着きそうにない。
「ここです。」
やっとついたらしい。
少年が大きな扉をノックする。
すると、大きなドアがゆっくりと開く。
「国王陛下、ガイアス様です。」
これは予想していなかった。
何処かの貴族だとは思っていたがまさか、国王だと誰が想像するだろうか。
「よく来たな。入れ。」
ガイが中に入るとドアが閉まる。
もう逃げれないのだと言われた気がした。
「…お呼びいただき光栄です。国王陛下。」
「ほー、この状況だけでそこまでできるか。」
男は面白そうに笑っているが隣の王妃はこちらを睨んでいる。
明らかに、恨みがこもっていると言っても過言じゃない。仕方ないだろう。
俺は言わば愛人の子なのだから。
「話が早そうだ。お前は俺達の子供としてつまり第一王子として育てる。」
話によれば、何年たっても、子供が出来ず痺れを切らし、外で作った俺を舞台の上にあげたと言うことか。
ゴミ駄目からかなりの出世だな。
「今日からお前はガイアスとして生きろ。そして、獣人だと言うことは誰にも漏らすな。これは、命令だ。」
「畏まりました。陛下。」
ガイはその後外で待っていた少年と一緒に部屋に戻る。
「何か困ったことがありましたら、遠慮なくお声掛けください。」
「名前を聞いてもいいか?」
少年は焦ったように頭を下げる。
「申し訳ございません!僕はノアと申します。」
「そうか。ノア、これからよろしく頼む。」
「はい!」
ノアは嬉しそうに笑う。
「申し訳ないが疲れたから1人にしてもらえるか?」
「そ、そうですよね。分かりました。ゆっくりお休みください。」
ガイはノアが居なくなったのをを確認すると洗面台へ駆け込んだ。
そして、吐いた。
何もかも、吐くものがなくなっても、吐き気は止まらない。
全てが気持ち悪かった。
この場所も、あの男の血がこの体に流れていることも。
名前を取られた瞬間、ガイは殺された。
この美しい部屋はまるで牢屋のようだと思った。
そしてガイの心は本人も気づかないうちに少しずつ確実に殺されていった。
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