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二章
過去と秘密②
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3年後、ガイは13歳になった。
「ガイアス殿下は優秀でいらっしゃいますね。」
「これも全て先生の教えがあってこそですよ。」
甘く微笑むだけで女は顔を赤くさせた。
どうやら、俺は器量がいいらしい。
「ねぇ、殿下。私と遊びませんこと?」
女はベタベタとガイの身体を触り胸を押し付ける。
正直気持ち悪いだけだった。
13歳に欲情する女もどうかと思うけど。
さて、どうやって断るべきか悩んでいるとノアが勢いよくドアを開け入って来た。
そして、ガイ達を見て顔を真っ赤にさせる。
明らかに、ガイが女性に馬乗りにされ、服を脱がされているのだ赤くなるのは当たり前かもしれないが、日常茶飯事なのだからいい加減慣れればいいのにと思う。
「も、申し訳ありません!」
ノアは勢いよく頭を下げる。
「先生、今日の所はお帰りください。」
女は表情を曇らせる。
はぁー、面倒だな。
ガイは仕方なく耳元で甘く囁く。
「貴女は美しい、僕が汚していい花じゃない。その真っ赤な唇もこの滑らかな肌も。」
唇も首筋と触れて行く。
「さぁ、いい子だから帰るんだよ。いいね?」
女は顔を真っ赤にさせ名残惜しそうに部屋を出て行く。
社交辞令もだいぶ板について来たと思う。
「ガイアス殿下、申し訳ありませんでした。」
ノアは本当に申し訳なさそうに謝る。
「気にしなくていいよ。それとお願いがあるんだけど、いい加減、男の先生にしてもらえるかな?」
ガイは濡れたタオルで手を拭く。
「それは…。」
分かってる。
これも 、あの女の嫌がらせの一つだ。
「冗談だよ。違う女性にしてって意味。」
これなら、ギリギリ通るだろう。
「で、ノアは急いでたんじゃないの?」
「そうでした!」
ガイはその話を思いの外冷静に聞いていた。
冷静というよりもやっぱりなという感じだ。
王妃が身ごもったということは男児なら俺はいらなくなる。
殺される。それもありかも知れないな。
10ヶ月後無事に男児が生まれ俺はお役御免になると思った。
そして、殺されるのだろうと。
しかし、何故だかあの男は俺をガイアスとして生かしている。
「何で!何で!貴方は死なないのよ!」
王妃が良く癇癪を起こして部屋に来るようになった。
悲しいとかではなく、ただ面倒だった。
「もういらないでしょ!どれだけ私を侮辱すれば気がすむの!」
「落ち着いてください。まだ体調を崩されますから。」
「汚いその手で触らないで!」
ガイの手が叩き落される。
「お前なんて生まれて来なければ、生きていなければよかったのよ!」
そう吐き捨てると王妃は部屋を出て行った。
いつもこんな感じだ。
慣れた。
それに俺は何故かあの人を恨めなかった、どうでも良かったそれもあるでもそれだけじゃなく可哀想だと思ったのだ。
どこの女に作らせたかも分からない子供を息子だとお見えという方が酷な話ではないか。
5年後、俺はあの男の意図がようやくわかった。
王妃の息子、エリックは出来がいいとは言えなかった。
体が弱く寝込むことが多かった。何よりも魔力が弱かった。
そして、俺が王にと言う声が大きくなるにつれ、王妃はどんどん狂っていった。
ガイはエリックの事を嫌いでも恨んでもなかった。
「お兄様は僕を虐めるの?僕が嫌い?」
偶然、人気の少ない庭に出ていた時、エリックに会い、そう聞かれた時何故か胸が苦しくなった。
「…、嫌いじゃない。」
気づけばそんな事を口走っていた。
「ほんと?!やった!」
エリックは心から嬉しそうに微笑む。
「ここで、俺と会ったことは誰にも秘密だ。いいね。」
「うん!」
ガイはエリックとこの場所でたまに会うようになった。
そして、外にあまり出られないエリックに話を聞かせるのが日課になっていた。
「お兄様!もっと話を聞かせて!」
「今日はこれでおしまいだ。」
「えー。」
エリックは頬を膨らませ。はぶてる。
「分かった。明日、一つ多くお話するから今日は帰りなさい。」
「約束だよ!」
「あぁ、約束だ。」
ガイはエリックの後ろ姿を見つめながら何故かこれが最後になる気がした。
そしてその晩、寝苦しさで目が覚めた。
ガイは目を開けると、馬乗りになり外の首を絞めている、王妃がいた。
「うっ…。」
なんだこの力は、ビクともしない。
普通じゃない…。
「貴女がいなければ、死んで!死ね。死ね。死ね。死ね。…。」
王妃の目を霧がかかったように淀んでいた。
駄目だ。このままじゃ、本当に死んでしまう。
死んで誰が悲しむんだ?
お前はいらない子だろう?
誰かが耳元で囁く。
はは、死んだっていいじゃないか。
そう思い力抜いた時。
「ガイアス様!」
その声と同時に手がどかされ肺いっぱいに空気が流れ込み、むせる。
「ゲホっ…ノア。」
「逃げてください!」
「邪魔するな!」
王妃は今度はノアに襲いかかる。
「大気に満ちる空気よ。凍れ。」
ガイはとっさに呪文を唱え。
王妃だけを凍らす。
しかし、氷にはピキピキとヒビが入る。
このままじゃ、2人とも死んでしまう。
『約束だよ!』と笑ったエリックに顔が頭に浮かぶ。
俺の死を悲しむ人間がいないそれでも今は死ねないと思った。
「ノア、捕まれ。」
ガイはノアの手を掴む。
成功するかなんてわからない。でも、死ぬよりはいいと思えた。
ガイは自分の指を噛み、床に陣を描く。
「 ワープ!」
そう叫んだ瞬間、2人は光に包まれ消えた。
「ガイアス殿下は優秀でいらっしゃいますね。」
「これも全て先生の教えがあってこそですよ。」
甘く微笑むだけで女は顔を赤くさせた。
どうやら、俺は器量がいいらしい。
「ねぇ、殿下。私と遊びませんこと?」
女はベタベタとガイの身体を触り胸を押し付ける。
正直気持ち悪いだけだった。
13歳に欲情する女もどうかと思うけど。
さて、どうやって断るべきか悩んでいるとノアが勢いよくドアを開け入って来た。
そして、ガイ達を見て顔を真っ赤にさせる。
明らかに、ガイが女性に馬乗りにされ、服を脱がされているのだ赤くなるのは当たり前かもしれないが、日常茶飯事なのだからいい加減慣れればいいのにと思う。
「も、申し訳ありません!」
ノアは勢いよく頭を下げる。
「先生、今日の所はお帰りください。」
女は表情を曇らせる。
はぁー、面倒だな。
ガイは仕方なく耳元で甘く囁く。
「貴女は美しい、僕が汚していい花じゃない。その真っ赤な唇もこの滑らかな肌も。」
唇も首筋と触れて行く。
「さぁ、いい子だから帰るんだよ。いいね?」
女は顔を真っ赤にさせ名残惜しそうに部屋を出て行く。
社交辞令もだいぶ板について来たと思う。
「ガイアス殿下、申し訳ありませんでした。」
ノアは本当に申し訳なさそうに謝る。
「気にしなくていいよ。それとお願いがあるんだけど、いい加減、男の先生にしてもらえるかな?」
ガイは濡れたタオルで手を拭く。
「それは…。」
分かってる。
これも 、あの女の嫌がらせの一つだ。
「冗談だよ。違う女性にしてって意味。」
これなら、ギリギリ通るだろう。
「で、ノアは急いでたんじゃないの?」
「そうでした!」
ガイはその話を思いの外冷静に聞いていた。
冷静というよりもやっぱりなという感じだ。
王妃が身ごもったということは男児なら俺はいらなくなる。
殺される。それもありかも知れないな。
10ヶ月後無事に男児が生まれ俺はお役御免になると思った。
そして、殺されるのだろうと。
しかし、何故だかあの男は俺をガイアスとして生かしている。
「何で!何で!貴方は死なないのよ!」
王妃が良く癇癪を起こして部屋に来るようになった。
悲しいとかではなく、ただ面倒だった。
「もういらないでしょ!どれだけ私を侮辱すれば気がすむの!」
「落ち着いてください。まだ体調を崩されますから。」
「汚いその手で触らないで!」
ガイの手が叩き落される。
「お前なんて生まれて来なければ、生きていなければよかったのよ!」
そう吐き捨てると王妃は部屋を出て行った。
いつもこんな感じだ。
慣れた。
それに俺は何故かあの人を恨めなかった、どうでも良かったそれもあるでもそれだけじゃなく可哀想だと思ったのだ。
どこの女に作らせたかも分からない子供を息子だとお見えという方が酷な話ではないか。
5年後、俺はあの男の意図がようやくわかった。
王妃の息子、エリックは出来がいいとは言えなかった。
体が弱く寝込むことが多かった。何よりも魔力が弱かった。
そして、俺が王にと言う声が大きくなるにつれ、王妃はどんどん狂っていった。
ガイはエリックの事を嫌いでも恨んでもなかった。
「お兄様は僕を虐めるの?僕が嫌い?」
偶然、人気の少ない庭に出ていた時、エリックに会い、そう聞かれた時何故か胸が苦しくなった。
「…、嫌いじゃない。」
気づけばそんな事を口走っていた。
「ほんと?!やった!」
エリックは心から嬉しそうに微笑む。
「ここで、俺と会ったことは誰にも秘密だ。いいね。」
「うん!」
ガイはエリックとこの場所でたまに会うようになった。
そして、外にあまり出られないエリックに話を聞かせるのが日課になっていた。
「お兄様!もっと話を聞かせて!」
「今日はこれでおしまいだ。」
「えー。」
エリックは頬を膨らませ。はぶてる。
「分かった。明日、一つ多くお話するから今日は帰りなさい。」
「約束だよ!」
「あぁ、約束だ。」
ガイはエリックの後ろ姿を見つめながら何故かこれが最後になる気がした。
そしてその晩、寝苦しさで目が覚めた。
ガイは目を開けると、馬乗りになり外の首を絞めている、王妃がいた。
「うっ…。」
なんだこの力は、ビクともしない。
普通じゃない…。
「貴女がいなければ、死んで!死ね。死ね。死ね。死ね。…。」
王妃の目を霧がかかったように淀んでいた。
駄目だ。このままじゃ、本当に死んでしまう。
死んで誰が悲しむんだ?
お前はいらない子だろう?
誰かが耳元で囁く。
はは、死んだっていいじゃないか。
そう思い力抜いた時。
「ガイアス様!」
その声と同時に手がどかされ肺いっぱいに空気が流れ込み、むせる。
「ゲホっ…ノア。」
「逃げてください!」
「邪魔するな!」
王妃は今度はノアに襲いかかる。
「大気に満ちる空気よ。凍れ。」
ガイはとっさに呪文を唱え。
王妃だけを凍らす。
しかし、氷にはピキピキとヒビが入る。
このままじゃ、2人とも死んでしまう。
『約束だよ!』と笑ったエリックに顔が頭に浮かぶ。
俺の死を悲しむ人間がいないそれでも今は死ねないと思った。
「ノア、捕まれ。」
ガイはノアの手を掴む。
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