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四章
~2日目(後半)、箱~
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「カトレア、すごく会いたかったです!」
ファーラは庭に出ると早速カトレアに抱きつきカトレアはそれを優しく受け止め抱きしめ返す。
「えぇ、私も会いたかったわ。」
掛のことや今回のパーティーと色々重なってしまい、ファーラにあったのは実に1ヶ月ぶりだ。
サラにお茶の準備をしてもらいながらカトレア達は椅子に座り話に花を咲かせる。
「サラの入れた紅茶は本当に美味しいです!」
「お褒めに預かり光栄にございます。」
サラはお菓子や紅茶の準備が終わるとすっとその場を離れた。
と言ってもカトレアたちが見える範囲でだが、気を使ってくれたのだろう。
「ファーラはクラウド様達と幼なじみだったのね。」
「はい。五歳ぐらいまではよく遊んでいただいてました。でも……。」
ファーラが言うにはあの事件から王宮には近づかなくなったが、カトレアのおかげで今では以前の様にとはいかないが王宮に遊びに行くことがあったらしい。
全く知らなかった。
「…そう。良かったわね。」
「はい!」
ジェンとはあまり仲良くして欲しくないわね。
ファーラは純粋だから、あのチャラ男に手を出されかけない。
「特に、ジェン様はとっても優しいのです!あの大きな手で頭を撫でてくださいますし、私のお花の話も聞いてくださいます。一緒にお花も植えてくださったんです!この前も、私の大好きなお菓子をわざわざ持ってきて下さいました。でも、はしゃぎすぎて怪我をした時は怒られてしまいました……。」
ファーラはキラキラ目を光らせ語り出したかと思ったら怒られた事を思い出し肩を下げ落ち込んでいる。
しかし、カトレアの口から出たのは慰めの言葉ではなく驚きの言葉だった。
「ちょっ!ファーラ?あなた、もしかしてジェン様が好きなの?!」
ファーラは愛らしく頬を染め隠すように手で覆いこちらをちらりと見てコクリと頷く。
なんて事だ!
もう既に、手を出されている?!
と言うか、ファーラの話しているジェンは本当にあのジェンなのだろうか。
余りにも違いすぎる。
だいたいあの男は女には優しいが利益がないこと以上のことはしない、なんでも勘違いされるのが面倒臭いそうだ。顔がいいからって調子に乗りすぎだと思う!
いけない、話が脱線しているわ。それに、怒るなど1番やりそうにないことなのに。
いや、でもそれならあの時の優しい目には納得が行く。
「ジェンとはお付き合いしているの?」
ファーラはその言葉に慌てたように首を振り先程よりも真っ赤な顔で違うと言う。
「……でも、ジェン様は私のことを妹としか思っていません。」
妹と思っているか分からないけどでも私から見たらファーラの事は特別に見える。
だからと言ってファーラになんと言ってあげたらいいのだろうか。
「…………。」
「それでも私は構わないと思っているのです。今は妹に見れれていても必ずジェン様の特別な女の子になってみせるんです!」
ファーラはいつの間にこんなに強くなったんだろうか。
カトレアはファーラのそのまっすぐな恋心に目を奪われた。
ここにある花よりも美しいとカトレアは思った。
「えぇ。応援しているわ!」
「えへへ。ありがとうございます!」
ジェンにファーラは勿体ない気もするけどファーラが幸せそうだからいっか、泣かせたらもちろん、ふふふ。楽しみね。
「カトレア様はどうなさるんですか?」
何のことかわからなかったので首を傾げる。
「…前、カトレア様は殿下とは利害の一致だとおっしゃていましたが、どうなさるんですか?」
「変わらないわよ?」
変わらない。
クラウドと主人公ちゃんのハッピーエンドを見届けたら私は静かに田舎で暮らす。
それは心からの私の願い。
「でも、できれば、結婚したくないわ。ローズ家はリアムが継いでくれるから心配無いし、のんびり一人で田舎生活もいいわね。」
リアムが16歳になったら養子に迎える予定だ。
もちろん、エマもだ。
しかし、リアムを説得するのにかなり時間がかかってしまったが今では施設の管理やお父様について仕事を覚えている。
リアムもエマもなかなか優秀でお姉ちゃん鼻が高いです!
「カトレア様はそれで良いのですか?」
「……良いも何もそれが私の夢だもの。」
転生してからずっと願っていた夢。
なのになんだろうこの違和感は。
でも、それに気づいてはいけないと本能が拒否している。
「…どうして?隠そうと、自分を騙そうとしているのですか?」
やめて。
「だってカトレア様は……。」
やめて、やめて。
今はダメなの。
「カトレア様も同じように……。」
「やめて!」
まだ気づかせないで!!!
「……ごめんなさい。」
「ち、違うの!怒鳴ってごめんなさい。私、疲れてるみたいだから今日は失礼するわね。」
違う。ファーラにこんな顔をさせたいわけじゃないのに。
今は、ここに居たらファーラを傷つけてしまう。
カトレアはサラに馬車の準備を頼みファーラから離れる。
ファーラの顔が見られなかった。
怖くて見ることが出来なかった。
「ダメね。」
自分が情けない。
こんな事で心が乱されてしまうなんて。
「……っ!」
カトレアは急に足から力が抜け芝生の上に倒れる。
今更、昨日の魔法の代償が来てしまったらしい。
本当にタイミングが悪い。
カトレアは意識が薄れる中で誰かに抱き上げられたのを感じた。
目を開けてお礼を言わなくちゃいけないのに今はどこも動かせる気がしない。
でも、何故だろう。
この体温を、感触を私は知っている。
サラが見つけてくれたのだろうか。きっとそうだ。だってそんな都合の良いことがあるはずがないのだ。
彼は今、ここにはいないのだから。
ファーラとあんな話をしたからきっと都合のいい夢を見ているのだろう。
夢だから、今だけはこの体温に触れていてもいいだろうか。
また私はこの感情に蓋をする。
今度こそ急に開かないように、念入りに。
きっと、この感情に名前を付けるのは彼が幸せになってから。それまでは、どうか大切にしまわせて。
薄れる意識の中
「貴女は俺が目を離すとすぐに無茶をする。」
そう聞こえた気がした。
その後、カトレアは自分のベットで目が覚めた。
サラにどうやって帰ってきたのか聞けばベンチの上で寝ていたのをサラが連れてきてくれたらしい。
本当に感謝しなきゃね。
それにしても今日で最後!
頑張ろう。
それが終わったらちゃんとファーラに謝りに行こう。
カトレアは早速サラ達に着替えを頼む。
そして、全ての準備が整うと馬車に乗り王宮に向かう。
今日は絶対失敗できない。
何故なら、国王と王妃との食事なのだから。
大丈夫。
だって私はあの毒薔薇姫だもの。
震えてなんていないわ!
昨日来たはずなのに怖いとか全く思っていない!
カトレアはその大きな門をくぐった。
ファーラは庭に出ると早速カトレアに抱きつきカトレアはそれを優しく受け止め抱きしめ返す。
「えぇ、私も会いたかったわ。」
掛のことや今回のパーティーと色々重なってしまい、ファーラにあったのは実に1ヶ月ぶりだ。
サラにお茶の準備をしてもらいながらカトレア達は椅子に座り話に花を咲かせる。
「サラの入れた紅茶は本当に美味しいです!」
「お褒めに預かり光栄にございます。」
サラはお菓子や紅茶の準備が終わるとすっとその場を離れた。
と言ってもカトレアたちが見える範囲でだが、気を使ってくれたのだろう。
「ファーラはクラウド様達と幼なじみだったのね。」
「はい。五歳ぐらいまではよく遊んでいただいてました。でも……。」
ファーラが言うにはあの事件から王宮には近づかなくなったが、カトレアのおかげで今では以前の様にとはいかないが王宮に遊びに行くことがあったらしい。
全く知らなかった。
「…そう。良かったわね。」
「はい!」
ジェンとはあまり仲良くして欲しくないわね。
ファーラは純粋だから、あのチャラ男に手を出されかけない。
「特に、ジェン様はとっても優しいのです!あの大きな手で頭を撫でてくださいますし、私のお花の話も聞いてくださいます。一緒にお花も植えてくださったんです!この前も、私の大好きなお菓子をわざわざ持ってきて下さいました。でも、はしゃぎすぎて怪我をした時は怒られてしまいました……。」
ファーラはキラキラ目を光らせ語り出したかと思ったら怒られた事を思い出し肩を下げ落ち込んでいる。
しかし、カトレアの口から出たのは慰めの言葉ではなく驚きの言葉だった。
「ちょっ!ファーラ?あなた、もしかしてジェン様が好きなの?!」
ファーラは愛らしく頬を染め隠すように手で覆いこちらをちらりと見てコクリと頷く。
なんて事だ!
もう既に、手を出されている?!
と言うか、ファーラの話しているジェンは本当にあのジェンなのだろうか。
余りにも違いすぎる。
だいたいあの男は女には優しいが利益がないこと以上のことはしない、なんでも勘違いされるのが面倒臭いそうだ。顔がいいからって調子に乗りすぎだと思う!
いけない、話が脱線しているわ。それに、怒るなど1番やりそうにないことなのに。
いや、でもそれならあの時の優しい目には納得が行く。
「ジェンとはお付き合いしているの?」
ファーラはその言葉に慌てたように首を振り先程よりも真っ赤な顔で違うと言う。
「……でも、ジェン様は私のことを妹としか思っていません。」
妹と思っているか分からないけどでも私から見たらファーラの事は特別に見える。
だからと言ってファーラになんと言ってあげたらいいのだろうか。
「…………。」
「それでも私は構わないと思っているのです。今は妹に見れれていても必ずジェン様の特別な女の子になってみせるんです!」
ファーラはいつの間にこんなに強くなったんだろうか。
カトレアはファーラのそのまっすぐな恋心に目を奪われた。
ここにある花よりも美しいとカトレアは思った。
「えぇ。応援しているわ!」
「えへへ。ありがとうございます!」
ジェンにファーラは勿体ない気もするけどファーラが幸せそうだからいっか、泣かせたらもちろん、ふふふ。楽しみね。
「カトレア様はどうなさるんですか?」
何のことかわからなかったので首を傾げる。
「…前、カトレア様は殿下とは利害の一致だとおっしゃていましたが、どうなさるんですか?」
「変わらないわよ?」
変わらない。
クラウドと主人公ちゃんのハッピーエンドを見届けたら私は静かに田舎で暮らす。
それは心からの私の願い。
「でも、できれば、結婚したくないわ。ローズ家はリアムが継いでくれるから心配無いし、のんびり一人で田舎生活もいいわね。」
リアムが16歳になったら養子に迎える予定だ。
もちろん、エマもだ。
しかし、リアムを説得するのにかなり時間がかかってしまったが今では施設の管理やお父様について仕事を覚えている。
リアムもエマもなかなか優秀でお姉ちゃん鼻が高いです!
「カトレア様はそれで良いのですか?」
「……良いも何もそれが私の夢だもの。」
転生してからずっと願っていた夢。
なのになんだろうこの違和感は。
でも、それに気づいてはいけないと本能が拒否している。
「…どうして?隠そうと、自分を騙そうとしているのですか?」
やめて。
「だってカトレア様は……。」
やめて、やめて。
今はダメなの。
「カトレア様も同じように……。」
「やめて!」
まだ気づかせないで!!!
「……ごめんなさい。」
「ち、違うの!怒鳴ってごめんなさい。私、疲れてるみたいだから今日は失礼するわね。」
違う。ファーラにこんな顔をさせたいわけじゃないのに。
今は、ここに居たらファーラを傷つけてしまう。
カトレアはサラに馬車の準備を頼みファーラから離れる。
ファーラの顔が見られなかった。
怖くて見ることが出来なかった。
「ダメね。」
自分が情けない。
こんな事で心が乱されてしまうなんて。
「……っ!」
カトレアは急に足から力が抜け芝生の上に倒れる。
今更、昨日の魔法の代償が来てしまったらしい。
本当にタイミングが悪い。
カトレアは意識が薄れる中で誰かに抱き上げられたのを感じた。
目を開けてお礼を言わなくちゃいけないのに今はどこも動かせる気がしない。
でも、何故だろう。
この体温を、感触を私は知っている。
サラが見つけてくれたのだろうか。きっとそうだ。だってそんな都合の良いことがあるはずがないのだ。
彼は今、ここにはいないのだから。
ファーラとあんな話をしたからきっと都合のいい夢を見ているのだろう。
夢だから、今だけはこの体温に触れていてもいいだろうか。
また私はこの感情に蓋をする。
今度こそ急に開かないように、念入りに。
きっと、この感情に名前を付けるのは彼が幸せになってから。それまでは、どうか大切にしまわせて。
薄れる意識の中
「貴女は俺が目を離すとすぐに無茶をする。」
そう聞こえた気がした。
その後、カトレアは自分のベットで目が覚めた。
サラにどうやって帰ってきたのか聞けばベンチの上で寝ていたのをサラが連れてきてくれたらしい。
本当に感謝しなきゃね。
それにしても今日で最後!
頑張ろう。
それが終わったらちゃんとファーラに謝りに行こう。
カトレアは早速サラ達に着替えを頼む。
そして、全ての準備が整うと馬車に乗り王宮に向かう。
今日は絶対失敗できない。
何故なら、国王と王妃との食事なのだから。
大丈夫。
だって私はあの毒薔薇姫だもの。
震えてなんていないわ!
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カトレアはその大きな門をくぐった。
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