毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

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四章

~あなたが呼ぶから~

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早く、早く、1分でも1秒でも早く。
ファーラ、待ってて!
絶対助けに行くから。

カトレアは焦る気持ちを抑え馬を走らせていた。
30分ぐらい走らせたところでようやく、森を抜け指定場所が目の前に見えてきた。
カトレアは馬が止まる前に飛び降りドアに体当たりする勢いで扉を開ける。

「ファーラ!」

そこには、深くフードを被った2人と十字架のように縛り付けられているファーラがいた。

「…随分早い御付きの様だ。」

声からして男…。

カトレアはなぜかその声に違和感を感じた。

「…ちゃんと一人できたわ。今すぐファーラを返しなさい。」

「まだ立場がわかっていないようだな。いつものように言うべきか?もう少し賢いと思っていましたよ。お嬢様。」

そう言うと二人はフードをとった。
そのことにより二人の顔があらわになる。 

……、まって…この2人……ウチにいた使用人さんたちだ…。
私の専属ではなかったから、話はあんまりしていないが、間違いない…。

「あなたたちがどうして!」

しかし、帰ってきた言葉は余りにも無責任で自分勝手だった。

「どうして、おかしなことを聞く。これは女神のお告げだ。安心しろお前もこいつと一緒に女神の生贄となるのだ。」

男はさも当然の様に笑う。

「狂ってる…。人、1人の命がそんな簡単に失われていいはずがない!そんな事を幸せと思う女神がいるわないわ!あなたたちの言う女神様はただの犯罪者だわ!」

ずっと黙って男の後ろに立っていた女がカトレアに近づく。
そして、振り上げた手をカトレアの頬にふりおとす。

静まり返る部屋に甲高い音が響く。

痛い…。

それでも、カトレアは攻撃をすることはなかった。
その場合ファーラに被害が行くとわかっていたからだ。

血の味がする。

どうやら口の中を切ったらしい。

「私達の女神を侮辱するな!お前みたいな悪魔があの人を語るな!」

女は我を忘れたように、怒鳴り散らしまた手を振り上げる。

「私は間違ったことを言っていないわ。」

女はさらに顔を真っ赤に染める。

殴られ、蹴られ、痛すぎてもうどこが痛いのかわからない。
でも、意識だけは失うわけには行かない。

「……もういい。死ね!」

「おい!それは女神様の計画にはないぞ!」

男が焦ったように女にやめるように言うが女は理性が飛んでいるのか血走った目で攻撃魔法を発動させる。

カトレアは他人事のようにただその放たられた氷の矢を見ていた。

死ぬんだ。

そう、理解した時にはもう既に氷の矢は目の前に来ていた。

「…私はそんな事お願いしてないわ。」

その声と共に氷の矢が消えた。

鈴の音が鳴るような愛らしい声が教会だったこともありカトレアは本当に女神様がいたのか声のする方を見るが、すぐに違うのだと理解した。

「女神様!」

2人が女神様とその少女に近づき頭を下げていた。
真っ白な仮面をしているせいか顔は認識できないが、年は私よりも若い。気がする。

「……少し、自分勝手に動きすぎよ。」

少女の愛らしい声が、低く殺気を帯びたものに変わり、女の顔色が真っ青になる。

「も、申し訳ありません!しかし、あの女があなた様のことを侮辱する…っ。」

女が喋っている途中で胸を押さえその場に倒れこんだ。

「め…っ、うっ、女神様っ…も、申しわけっ…。」

「死になさい。」

その言葉に苦しがっていた女はスッと立ち上がり「はい」と微笑むとナイフを取り出し何のためらいもなく自分の首を切ったのだ。

血を浴びた男は、何も感じていないように静かにその光景を見ている。

「…結構、このドレス気に入ってたんだけど。汚れちゃったわね。」

「申し訳ありません。妹の不始末はお任せください。」

男は少女に真っ白なハンカチを渡し、自分の妹であるはずの女をまるで汚れたものを見るように外に投げ捨てたのだ。

あまりの光景にカトレアは呆然とその光景を見ていた。

狂ってる。

カトレアはその異様な光景に吐き気を止めることができなかった。

「こんなことで吐くなんて、カトレア様はか弱いのね?」

少女は自分の顔を拭いたそのハンカチを「はい。」とカトレアに差し出した。
カトレアはそれを受け取らず、自分の袖で靴を拭き少女に問う。

「……あまたは誰なの。なんで…、なんで、あんなことをっ!」

自分の事を思っている相手を殺して、何も感じていない。
そんなの…あまりにも。

「あら?あなたを殺そうとした子に同情しているの?ほんと、偽善者過ぎて虫唾が走るわ!」

少女はカトレアの腹を蹴り飛ばす。

「うっ…、ゴホッ!ゴホッ、ゴホッ。」

「汚いわね。血がついちゃったじゃない。」

「…………。」

カトレアは喋る気力さえなくなっていた。
ただ、苛立ちと悲しみ、どうしようもできない不甲斐なさで胸が押しつぶしそうだった。

「ふふふ。いいわ。その目、もっと!もっとよ。自分の力の無さに嘆き絶望なさい。その為に彼女を殺すのだから。」

「…………っ!」

今…なんて。

「…な、なんで……ゴッホ!」

なんで!
それなら、私を私だけを狙えばいいじゃない!

「そう!もっと悲しみ苦しめばいい!貴女は私にそれほどの事をしたの!」

分からない。
いつ、私はいつ彼女に恨まれることをしてしまったの。

「……ど…て、」

「何?聞こえないわ。」

「どうして、こんなことを…。」

「……ふふ、ふふふ。あはははは。」

何が面白いのか少女はお腹を抱え笑い始めた。

「何がおかしいのっ!」

「もちろん、貴女も殺すわよ?でも、まだよ。もっともっと苦しんで?もっともっと絶望するの!私が貴女から大切なものを全て奪った時貴女を殺してあげる♡」

まるで、幸せな夢を語るように、頬を染め話すその姿は、この状況でなければ、とても愛らしい光景だっただろ。

「…さぁ、起きる時間よ。」

少女は手を掲げるとファーラがゆっくり目を覚ます。

「…んっ、ここは…?カトレア!!!」

目を開けたファーラはカトレアの姿を見て絶句する。

「…酷い。誰が!、あなた達、カトレアに何をしたのです!今すぐカトレアから離れなさい!」

ファーラ。

「威勢のいいお嬢さんだ事。でも、少しうるさいわ。」

「ううっ。」

苦しそうに顔をしかめる。

「…やめて!ファーラに何したの!」

「ふふ、安心して今は殺さないから。今は、ね?」と愛らしく微笑む。

「ねぇ、ファーラって言ったかしら。いい事を教えてあげるわ。貴女が死ぬのはこの女のせいなのよ?可哀想にまだ若いのにね。
貴女が、嫌いなのよ?本当は。貴女みたいな、内気な人間は大っ嫌いだと心の底では思っているの。それに、貴女はこの女が男に媚びを売り裏で全てを操っているのを知ってる?知らないでしょう。王子様も騙されてるの。…私がお救いするのよ。この悪魔から。」

「…ちっ…………!」

違うと言いたいのに声が出ない。
自分に守れる力さえあれば…。
このままでは、勘違いされてしまう。

「ね?この女はこういうやつなの。ね?あなたも何か言ってあげなさい。」

「……違います。カトレアはそんな人じゃない。私は私の見てきたものを信じます。」

魔法が解かれファーラはまっすぐカトレアを見て言いきった。

「面白くないわ。」

それが気に入らなかったのか少女はファーラにカツカツとヒールの音を響かせ近づくと「飽きちゃったの。じゃぁーね。」と手にナイフを持ち大きく振り上げる。


「カトレア、どうかご自身を責めないで?」

ファーラは自分の死を悟り、カトレアに笑顔を向ける。

ダメ!
お願い、動いて。

「私、カトレアが大好き。」

ファーラはニコリと笑うと静かに目を閉じ、その目には一筋の涙が頬をつたう。

もう助けられないなんて、いや。

「……っ、やめて!」

ファーラにあと少しであたりそうだったナイフが少女の手から弾かれる。

「なっ!魔力のほとんどないお前が、なぜ…。」

少女は目を見開き固まっていた。
それをチャンスと思ったカトレアはすぐにファーラの元に向かい縄を切り抱きしめる。

「…昨日はごめんね。怒鳴ってごめん。気持ちを知るのが怖くて、今でもまだ怖い。でも、ちゃんと向き合おうと思うから、これからも親友でいて欲しいの!大好きだから!」

「もちろんです!私もカトレアの事が大好きです!」

「あぁー、萎えた。何が大好き!気持ち悪いんだけど。女の友情なんてありえないから、今度は確実に殺す。」

少女は男に命令し、ファーラに炎がカトレア達の周りを囲み、その炎はだんだんと狭くなりカトレア達に近づく。

このままでは二人とも焼き殺されてしまう。

「…っい。」

カトレアの方に火が当たり服は燃え、皮膚の燃える匂いにファーラは必死にカトレアから離れようとした。

「カトレア!離れてください!肩が。」

しかしカトレアはファーラを強く強く抱きしめる。

ダメ。このままだと二人とも死んでしまう。
それだけはだめ。私はもう、何も失いたくない。

ミケ、ティナごめんなさい。

カトレアは右目の眼帯を取る。
すると周りが光に包まれあっという間に火が消え去る。

「なっ!」

男は目を見開き、少女は何が起きたのかわからないとい言う顔だ。

「カトレアっ!」

力の抜けたカトレアに身体をファーラが支える。

「どうやって、解いたの!」

カトレアは手に力を込め、ファーラから身体を離し男達を見る。

「今すぐ、私たちへの攻撃はやめて眠りなさい。」

男は、攻撃をやめその場に倒れ込み眠りについたが、少女だけは立っているままだった。
どう言う事?!
なぜ、効かないの!

「いろいろ、誤算だったけど、まぁ、いいわ。どのみち、貴女達は殺すから。」

「なんで…。」

「あぁ、そうそう。貴女の魅力の力は使えないわよ?なぜかって?教えてあーげない。私、怒ってるの。」

少女が手を上げた瞬間、体が重なり、そして、息まで苦しくなった。
こんな、魔法知らない。
この子はなんなの。

「カ、カトレア…。」

ファーラはカトレアの名前を呼ぶと意識を失い倒れてしまった。

その時だった。
ドアが爆破音とともに吹き飛び、ずっと考えていた助けてと呼んでいた、その人物が立っていたのだ。

あぁ、やっぱりあなたはいつも助けてくれる。

カトレアも限界に達し意識を手放した。

「カトレア様!」

そんなに焦らないで、私は死なないから、そう声をかけ笑って見せたいのにそれができない。
もう、疲れてしまった。

「ガイ…。」

真っ黒な髪も私を心配そうに見るその瞳も昔と変わらない。
会いたかった。
次、目を開けた時貴方は私のそばにいてくれる?

カトレアは弱々しく微笑み意識を手放した。
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