毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

文字の大きさ
46 / 48
四章

目覚めない貴女

しおりを挟む
「カトレア様!」

俺は一体何を守りたかったんだ。
守りたかったはずの人は今、傷だらけになって倒れているというのに。
この世で一番失いたくない人。
幸せであってほしい人。
幸せにしたい人。
それなのに、俺は。

「あら、王子様の登場?」

少女は心の底からつまらなそうに問う。

「………、か。」

「何か言ったかしら。」

少女はニコリと微笑み首をかしげる。

愛らしい姿のはずなのに、その光景はあまりにもいびつにうつる。
それはそうだ、少女の周りには血の海ができ、服と仮面は真っ赤に染まり、足元に遺体と少女2人が気を失って倒れているのだから誰が見たって、その普通ではない状況に恐怖を覚えるだろう。

しかし、ガイが覚えたのは恐怖ではなく、怒りだった。
自分に対する怒り。
そして、目の前にいる女に対する怒り。

「お前がしたのかっ!」

「ふふふ。そんなに怒らないでいいじゃない?せっかくのイケメンが台無しよ?」

少女は可笑しそうに笑う。
そして、何かに気づいたようにガイの顔をじっと見る。

「あら、あなた人獣なのね!って事はガイかしら!うーん、でも、貴方はこの女と会うのはもっと先のはずなんだけど……。それに、敵対してたと思うのだけど…。やっぱり少し違うのかしら。おかしいわね?まぁ、でもそんな事どうでもいいのよね。最後にハッピーエンドを迎えるのは私なんだから。」

この女はさっきから何を言ってるんだ。

「…黙れ!俺が聞いてるのはそんな事じゃない。お前が、カトレア様を傷つけたのかと聞いてるんだ!」

「えぇ、そうよ?だから何。」

少女は、おかしなことを聞くのね。と笑う。

「この女は、悪なのよ?だから、私がみんなを救うの。お礼なんていらないわ。だってそれが私の役目だもの!」

ガイは嬉しそうに笑っている女を横目に、この場をどうやって離れるか考えていた。
こんな時だからこそ、感情的になるのは得策ではないと頭では分かっている。
しかし、怒りで理性を失いそうになる。

『落ち着きなさい。』

ガイはハッとしカトレアを見るが目を覚ましているわけではないようだった。

「…はい。カトレア様」

ガイは深く深呼吸をする。
少しづつだが頭がクリアになっていき、五感を研ぎ澄ませる。
そして、あることに気づく。

この魔力…しかしあれは、伝説の話で現実なはずがない。
いや、今はそんなことどうでもいい。ここをどうやって切り抜けるかが重要だ。
相手の力量を測れないほど馬鹿じゃない。
二人を守りながら戦うのは正直難しい。
それでも、やらないとダメだ。

「…できれば使いたくなかったが。」

ガイが臨戦態勢に入ろうとした時、外が騒がしくなった。

「クラウド皇太子がことらに向かっています。今すぐここを離れてください。」

どこからか声が響くと、女の後ろの空間に亀裂が入る。
少女は、黙り何かを考えていたと思ったらすぐに微笑んだ。

「まだ殺さないであげる。じゃぁね。」

女は振り返りその亀裂に手をかける。

「待て!俺はお前を絶対に許さない。」

「……許さないも何も、貴方はだだのモブ、私には全く関係ない存在よ。でも、一ついいことを教えてあげる。カトレアは目覚めないわよ。それこそ奇跡でもない限りね。」

そう言い残すと、少女は亀裂の中へと姿を消した。

ガイはハッとし、カトレア達の元に走る。

「カトレア様!ファーラ様!」

「んっ、ガイ…さん?」

目を覚ましたのはファーラだけだった。
ガイは頭が真っ白になるのを感じた。

「ガイさん、しっかりしてください。カトレアは生きています!」

呼吸を確認すると確かに浅いが息をしている。
しかし、危険な状態であることに変わりはない。

それに、あの女の言葉…。

ガイはそっとカトレアを抱き上げすぐに外に向かう。

外には複数の兵士とクライド、ルイスがこちらに向かっていた。
ガイの腕の中のカトレアを見て二人は顔を真っ青にさせる。

「カトレア!ガイ、これはどういうことだ!」

「…カトレア様は瀕死の状態です。急ぎ治療をお願いします。」

そう言うと、ガイはそっとカトレアをクラウドに預ける。本当は自分自身で助けたい。しかしいまこの状況で自分にできることはない。
そんなことは分かっているが、悔しさと不甲斐なさで押し潰されそうだ。

「わかった。すぐに治療を行える様に公爵邸に連絡し、王宮の医者を待機させろ!!」

クライドが部下に命令すると、馬車に乗り込む。

「カトレア、絶対に死ぬな。」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

処理中です...