転生したら王族だった

みみっく

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第一章 - 出会いと成長

75話 相反する者

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 その言葉には、自分自身が長く悩み抜いた末にたどり着いた思考の軌跡が詰まっていた。二人も、その対極的な存在が互いに依存し合いながら成り立っているという理論に、警戒心を少し和らげたようにも見えた。

 俺が声をかけるまでもなく、二人はお互いに手を差し出し、握手を交わした。その動作はぎこちないながらも、どこか決意がこもっているように見える。しかも、握手した瞬間に二人ともほんのり照れくさそうな表情を浮かべていて、こちらが思わず目をそらしたくなるほどの微笑ましさだった。

 その様子は、まるで素直になりきれない子どもたちが、意地を張りながらも和解しようとしているようで、見ている側が思わず頬を緩めてしまう。今のところ危ういバランスではあるが、一歩前進したような気がした。

「べつに、二人とも恨みがあるわけじゃないんだよね? それに見た感じでは、敵対している様子もないし……嫌悪感ももう消えたんじゃないかな?」そう言いながら、俺は二人の顔をじっと見つめて言葉を選ぶ。二人は少し考える素振りを見せた後、静かに頷いた。その様子を見て、少しだけ安心する気持ちが胸に広がる。

 対立の緊張感が解けていくような雰囲気が漂い、ここからさらに関係を築ける可能性が感じられた。この一歩が、彼らの新しい関係性を築くきっかけになるかもしれない。

「レイニーくん、すごいね。長年お互いを避け続けてきたのに、不思議と今では嫌悪感が消えて……必要な存在なんだなぁって、改めて思ったのですよ」とアシュテリアが感慨深げに言葉を紡ぐ。その言葉に、もう一人も静かに頷きながら微笑んだ。

「うん。ですね~。これまでずっと関わることはないと思っていましたが……わたしも今、嫌悪感は消えて、必要な存在だと認識していますよ。」その言葉には迷いがなく、心からそう感じていることが伺えた。

 二人は互いに優しい笑顔で見つめ合い、これまでの隔たりが少しずつ埋まっていくような温かな空気が流れる。その様子を見ていると、自然と胸が温かくなり、心地よい安堵感に包まれるのを感じた。

「あのさ、俺もいるんだけど……仲良く二人で見つめ合っちゃってさぁ……」と、気まずさを隠せずに言葉を漏らす。二人に挟まれて座っている状況が、なんとも言えない居心地の悪さを感じさせた。

「えへへっ。レイニーくんのおかげなんだから~ちゅ♡」とルミエールが頬に軽くキスをしてくれる。その瞬間、驚きと照れが一気に押し寄せる間もなく、反対側の頬にアシュテリアもそっとキスをして、「ありがとう」とお礼を言ってきた。

 もっと険悪な状態を覚悟していた分、この和やかな展開に少し拍子抜けする。それでも、根深い問題に発展していなかったことに安堵した。魔界と聖域で離れて過ごしていたからこそ、これまで関わり合いがなく、衝突を避けられていたのだろう。

 もしかしたら二人って、力を合わせたらすごい力を発揮するのかもね? オーラが混じり合って異質なオーラを放ってたし。

 無事に解決をしてホッとした。はぁ……と、気が抜けてルミエールの肩により掛かると、肩に袖がないワンピースだったので俺の頬に、ルミエール肌が直接触れた。すべすべしてて気持ちが良い。

 ルミエールはビクッと反応しただけで、見ていたアシュテリアがむぅ……と頬を膨らませて俺に寄りかかってきた。「ずるいのですよ」アシュテリアは呟き、俺により掛かり満足したらしい。

「あら、わたしも……」と、ルミエールが向きを変えると……ふっくらとした柔らかな胸に俺の頬がむにゅっと当たり、抱きしめられた。なにこの状況は……天国じゃん。癒やされるぅ~

 アシュテリアから文句を言われると思ったけど、幸せそうに俺に寄りかかっていた。良いのかなぁ……?いいよね?たまには癒やされる時間は必要だよね。

 他の子は危険だと思い近寄ってこないだろうし、結界を張ってるから中の状況はわからないだろうしね~

「アシュテリアちゃんも、交代しますか?」とルミエールが微笑んで言った。「わっ。え?あぁ……う、うん。レイニーくんを抱きしめたいのですよ。でも……わたし、胸は自信ないのですよぉ」と、ぷにぷにと自分の胸を触っていった。いや、バレてた!?それに……じゅうぶん柔らかそうなんですがっ?

 アシュテリアが恥ずかしそうに両手を広げて俺を抱きしめると、ルミエールとは違った柔らかさといい匂いがしてきた。「大丈夫なのです?」気にした表情をしてアシュテリアが聞いてきた。なんて答えれば良いんだよ……恥ずかしいじゃん。アシュテリアの方が恥ずかしいか……

「柔らかくて、その……癒やされてるよ」ちゃんと膨らみを感じてるし……頭を撫でられて癒やされてる。

「ルミエールちゃん、ありがとうなのですよ。あのね、レイニーくんのお腹を抱きしめると、癒やされるのですよ……」と言うと、アシュテリアが言われた通りに抱きしめてきた。「わぁ……ホントなのです。癒やされますね~♪」

 争いに発展せずに、三人とも癒やされる時間を過ごした。
 
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