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第九章
Ⅲ
しおりを挟む「琥珀…」
「…どうしたの」
「ちょっと付き合ってくれないか」
どこに、とは聞かない琥珀を連れて行ったのは彼女がいた調剤薬局だった。
適当に花粉症の市販薬を手にとってレジに行く。
年配の女性薬剤師が会計を進めていく。
「あの…」
「はい。」
「…以前、ここに勤めていた、源元さんという女性はどこに…」
彼女が消えた理由を探ろうと考え、まずは職場からという結論になった。
男一人で女性について聞くのは不審がられると思って琥珀を連れていったが、
「…失礼ですが、どういったご関係でしょうか。
内容によってはお答えできかねますが…」
結局不審がられた。
…しっかりとした職場だ。
どうしたものかと挙動不審になりかけたところで、
「え~あのお姉さん辞めちゃったの~?!」
急に隣の琥珀がそう言った。
「ごめんなさい、私、あの薬剤師さんに凄いお世話になってたんです~
いつも親身に話を聞いてくれて…
今回もお薬の相談しようかなって来たんですけど…
残念~」
そう続ける琥珀に、レジの女性の雰囲気が少し柔らかくなる。
「そうだったんですね。
よろしければ私がお答えしますよ。」
「ありがとうございます!
あの、この花粉症の薬って…」
二人とも俺を置いて話を進める。
ちなみに、琥珀は花粉症ではない。
我が家に花粉症の人間はいない。
「ありがとうございます!
この薬局、皆さん親切でいい薬剤師さんばかりですね」
「ありがとうございます。」
「それで…源元さんはやっぱり辞めちゃいました…?
最後にお礼言いたかったのに…」
「…薬剤師は続けているようですから、どこかで会えるかもしれないですよ。」
系列店か、他店舗か、病院か。
他にも薬剤師が働く場所があるのだろうか。
「それはどこの…」
詳しく聞こうとしたら琥珀に遮られた。
「わぁ~そうなんですか!
またお会いできたら嬉しいなぁ。
ありがとうございました。
またお薬のこと、聞きに来ていいですか?」
「もちろんです。お大事に。」
琥珀に引っ張られて店を出る。
「…あれ以上突っ込んで聞いてたらそれこそ不審者扱いだったよ。」
「…」
「はぁ~あ。
たっくんのストーカー行為の片棒担いじゃった。」
「…琥珀」
「…なに」
「ありがとう。」
「…いーえ。」
その後、近場の薬局を探して、探して…
家には誰も使わない花粉症の薬が積み重なっていった。
その数、20を越えた頃から兄さんや琥珀は周りに配り始めた。
組の奴らや琥珀の演劇仲間やスタッフに配るのにも限界が来た頃、地方公演から一時的に帰ってきた琥珀が言った。
「今日、翠さんに会った」
俺達の抗争に巻き込まれた彼女の妹が死んでから
今日でちょうど一年だった。
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