最深部からのダンジョン攻略 此処の宝ものは、お転婆過ぎる

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第四十三話 仇討 その十一 分岐

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 二人の目の前で通路大きく二つに分かれていた。
「さてと、どちらを選びますか?」

「それはインテンジィバ・ストムがいる方に決まっているじゃないか。小鬼がつけた道が消えるわけでもない。ゴーダという輩はのうのうとしているはずさ」

「その代わり、大龍がいる場所に着くまでに道は怪しいですよ」

「だからこそ、お前が頭を使って頑張ってくれ」

「あの、なんとなく気配とか感じません?」

「どんな気配をだ?」

「いえ、こっちの方向に大龍の骨が有りそうだとか?」

「最初から分わかっていれば、私が先頭に立つよ。まだお前に任せた方がマシだよ」

 ノイの性格からして判っていれば公一を置いて走り出していただろう。

「わかりました必ず大龍インテンジィバ・ストムの元にお連れします」

 ノイは公一に頷いた。
「頼むぞ、私のために無残な最期を遂げてしまった友に、別れを告げなくてはならないのだから」

 悲しみの感情を抑え込んでの言葉だった。
 公一にはノイの悲しみが痛いほどわかった。自由を欲しながら長い間、閉ざされてた空間に留め置かれていたのだから。
 そして自由になった暁には会うことを願っていたはずだから。

「じゃあノイ様。道をこちらに取りましょう。地図で、あの地下広間に来た人間の歩いた道は大体はわかります」

「そうか、奴には感謝しないといけないな」

 二人は地図をたよりに歩き始めた。通路は意外にも手入れされていて瓦礫や壁の石組など弛んだところは見当たらなかった。

 ただ公一の持つ地図は、地図とは言えない落書きに近い代物だった。

 横道が省かれていたり、通路がまっすぐに書かれているものが実際にはカーブしていたりしていた。

 公一はその都度、足を止めて方向を判断しなくてはならない。

「さてと、実際と地図と違う場所だ。まあ、仕方ないか。本人の覚書だからな……」


 公一は通路の真ん中に腰を下ろした。

 通路は三方に別れていてその中から正しい道を選ばなくてはならなかった。
「道が長い一本橋でないだけましだな……」

 手に持っていた本を床に開いてじっくりと眺めることにした。
 地図を書いた者の意図を出来るだけ汲み取るためだ。


 公一が地図に視線を落そうとすると、ひょいと、ノイの頭が地図と公一の間に割り込んできた。

 ノイは前に垂れた髪を耳の後ろにかき分け、真剣に地図を見ながら尋ねた。
「どうだ、わかるか」
 
 公一は少しだけ苦笑して返事をした。

「今から考えるところです。この三叉路をどうして省いたか考えないといけないですね。少し横にずれてもらえますか?」

 ノイは地図から頭を上げ、ずいと、公一の目を覗き込むように顔を近づけた。

「確かに人間の描いたものは私にはわからん。お前に読み取ってほしい事は、何故ここに、インテンジィバ・ストムと人間が来たか、理由が分かれば是非とも知りたいのだ」
 
 ノイの瞳には公一自身の姿が映っている。公一は動けなかった。
 ノイの瞳に映る自分が自ら動いて、その瞳の中から消えることは逃げると同じと思えたからだ。

「おお、そうか。私の気持ちわかってくれるか」
 ノイは嬉しそうに公一の首に腕を回し抱きついた。

「ノイ様が喜んでくれるのは嬉しいのですが、このままでは地図が見えませんので……」

「おお、そうか」
 ノイは器用に身体の向きを変え、ここに居るのが当然とばかりに公一の膝の上に収まった。

「これで良いか? お前の考えを教えてもらおうじゃないか」

 ノイは床から本を拾い上げ公一が読めるように広げてくれた。

 公一はノイの肩越しに地図を読むことになったが説明のたびにノイが身体を摺り寄せ甘えた仕草をして公一を困らせた。

「えーと、ですね。たぶん、ここが今いる所だと思います」

「ふん、何を迷っている? 目の前の道が三つなら、全部を試せば良いじゃないか」

「ええ、それも考えましたが今度は少しだけ違うのです」

「どういうことだ?」

「多少の違いはありましたが、道を選ぶときや引き返した時は必ず途中まで書いてあったのですが、この場所の二つの道は試した形跡がないのです」

「余計に分からんのだが?」

「他を試す必要がなかったと思います。このうちの一つの道が大龍の眠る場所への近道になるはずです」

「じゃあ、どうやって確かめる? 二手に分かれるか?」

「いえ、少し調べたいことがあります。膝から降りてもらえますか?」

 ノイは渋々公一の膝から離れた。
「さあ、どうやって確かめる?」

「空気の流れを見てみます」
 公一は残り少ない荷物の中から火打ち石とつけ木代わりのロープのほぐしたものを取り出した。

 公一は火打ち石を打ちロープに向かって火花を飛ばしす。
 乾燥したロープは煙を立ち昇らせ始め、公一は煙の立つロープを持って各々の通路の入り口に立って空気の流れを調べた。

「真ん中は空気の流れがありません。右側は空気が流れ込んできます。左側は空気を吸い込んでいるようです」

「フン、お前の言いたいことは判った。右側が外に一番近いと言う訳か。それでどうする?」

 公一は目を閉じ深く息を吸いこんだ。
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