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45 ゲルダ、胸が痛いよ
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数えきれないくらい人を「沼」に沈めているくせに、私はゲルダの「初殺人」を見てドキドキしている。
ゲルダの闇色に染まった目を見て、頬が紅潮しているのが自分でも分かる。
ゲルダの子爵家四男、五男への攻撃は冷徹だった。
足が拘束された2人の手を長槍で刺しまくった。そうして2人を丸腰にすると、五男から攻めた。
「・・」
サクッ、サクッ、サクッ。
「あなた達が1年前に襲った南東の村のことを覚えてる?」
「あ?ああ、子供や女が多かった村があった・・」
サクッ。
「め、目が、あ、てめぇ!」
サクッ、サクッ、サクッ。
サクッ、サクッ、サクッ。
ドサッ。
「それ、俺のチ○コ、ぎ、ぎっ」
サクッ、ザクッ・・
「お、弟をタランガを殺しやがったな、ぶっ」
ザグッ。サクッ、サクッ。
「み、耳が、あぐっ、ぎっっ、ゆ、ゆるし・・」
サクッ、サクッ、サクッ。
「ゆ、俺の指ぃ。ひ、ひいい・・お、俺は貴族家の・・」
ガンッ!胸を鎧の上から突かれて、四男は倒れた。
「ねえ妹を犯し、子供や命乞いをする人達を殺すのは楽しかった?」
「いや・・」
サクッ。
「チ○コが、・・た、助けて・・」
ごっごっ。ごっごっ。
ゲルダは、四男の顎を赤いミスリルブーツで蹴り続けた。
「死んだね、ゲルダ」
ごっごっ。
「ゲルダ?」
ごっごっ。
ゲルダが誰を失ったか聞いてもない。最初は興味もなかったから。だから今さら聞けない。
「・・ありがとう、サーシャ」
「あ、いや、いいよ」
「この死体、さらしたまんまでいい?」
「あ、ああ。人食いサーシャはあなただから、好きに決めて」
「初めて自分で人を殺したけど、大丈夫ね。ありがとうナイト様。ごはん食べに行こう」
私の手を引っ張るゲルダの手は震えていた。
「沼」を手にして、人の命を気にしなくなった私とは根本的に違う。
殺す覚悟、殺される覚悟というやつを見た気がする。
◆
2人してブラウンのカツラをつけた。男装して、いつもの冒険者コンビになって酒場に出掛けた。
「ありがとうサーシャ。2人も殺れた。カンバイ」
「うん・・カンパイ」
「あと2人、子爵と三男のジャグロを殺すまで付き合ってね」
「ああ、そのことだけど・・」
「心配しないで。逃げたりしないから。人食いサーシャの役割はきっちり果たすから」
「そこは心配してない」
「復讐だけ果たさせてもらえば、お別れだから」
「え?ゲルダ・・」
「だってサーシャはブライトを出るでしょ。私は王都の方に向かって行って、赤い装備を着て人食いサーシャとして活動するよ」
「そうだったね。けど、それだと死ぬよ・・」
「そんな顔しないでよ。最初に会ったとき、サーシャの提案に乗ったのは私。思った以上に良くしてくれるから甘えたけど、役割は忘れてないから」
そうか、ゲルダは「人食い水溜まり」の殺人鬼である私と強引に接触した。そのときから命がけだったんだよな。
その覚悟は、自分の命と同じくらい大切な人を亡くした人間にしか分からないのだろう。
最初から1人だった私は、気付かなかったんだ。
「帰ろうか」
「そうだね。今日はゆっくり眠ろう」
◆
別に私は信念を持って行動してる訳じゃない。
ゲルダを失いたくないと思うようになったから、素直に方針変更をしたい。
「ねえ、ゲルダ・・」
「おうおう、姉ちゃんたち」
5人組のゴロツキだ。
「・・私達、男だよ」
「はっ、カツラかぶってブカブカの服着てるだけじゃねえか」
「お前ら、子爵様のとこの襲撃犯じゃねえのか?」
「当たりなら、賞金がもらえるぜ」
「全員がナイフ抜いてるね。ゲルダは下がってて」
サクッ。ばしゃっ。
「かひゅっ、ひゅっ」
ゲルダは下がらずナイフを抜いて、先頭にいた男の首を切った。顔に付いた返り血が、月光に照らされて涙のようだった。
「はあっ、はあっ。こ、こいつら、子爵の小飼いだ。だから死んでいい・・」
「・・そうだよね。でも無理しなくていいよ。あとは私が殺る」
ドカッ、ドカッ、ドガッ、ドガッ。
「2メートル沼」
ぽちょん。
「サーシャ、暗がりだとほとんど見えないけど、それが人食い水溜まりの正体?」
「うん、そうだよ」
「最後は、私も沈められるのかな・・」
「いいえ、あなたには見せるべきだと思って」
改めて覚悟を見せたゲルダの前で「沼」を出し、返り討ちの5人を沈めた。
とぷんっ。
「ほら、簡単でしょ・・」
「危ない、サーシャ!」
もう1人いた。ショボい私の探知外から弓か何か遠距離武器で攻撃してきた。
高レベルの私は自分でも驚くほど速い反応で鉄球を投げようとした。だけど・・。
ドスッ。
先に気づいたゲルダが私の前に立ち塞がって矢を受けた。
改めて鉄球を投げて狙撃者を倒した。
「ゲルダ!」
「・・大丈夫。私もそれなりの冒険者だから。うまく腕で受けたから」
上級ポーションを出して飲ませると傷は塞がったけど、血まみれの腕が痛々しかった。
胸が痛い・・。
「ゲルダ、やり方を変えよう。あなたを死なせたくない。失うのは嫌だ」
「サーシャが持ってる遺体で偽装するやつ?難しいかな。もう私の顔は詳細に知られてる」
「けど・・」
「すでに被害も大きいから、子爵家だけで処理できず、ブライト王国本体の監査も来たらしいわ。そんなだから、噂の神器持ち召喚者も呼んだらしいよ」
「・・神器持ちなら、すでに1人倒してる」
「え?すごいね。サーシャのスキル、強いどころじゃないと思ったけど」
「勝てたけど大怪我をした。真っ向から戦うべきじゃない」
「それならむしろ、神器持ちが来たときに仕掛けるべきよ。2人で別に動くの。隙を突けば、あなたの能力なら誰でも倒せると思う」
「ゲルダはどうするの」
「正面から神器持ちに向かう。隙を突いてサーシャが神器持ちを倒し、死を偽装できれば生き残れる」
「・・」
「ダメで神器持ちに殺されても死体が残るから、サーシャとの約束は果たせる。サーシャ?」
初めて人を抱きしめた。
「うふふ。なんだ、情が湧いちゃったの?何回か関係を持ったからって、捨て石にそんな気持ちを持っちゃダメね・・」
ぎゅっと、抱き返された。
ゲルダの闇色に染まった目を見て、頬が紅潮しているのが自分でも分かる。
ゲルダの子爵家四男、五男への攻撃は冷徹だった。
足が拘束された2人の手を長槍で刺しまくった。そうして2人を丸腰にすると、五男から攻めた。
「・・」
サクッ、サクッ、サクッ。
「あなた達が1年前に襲った南東の村のことを覚えてる?」
「あ?ああ、子供や女が多かった村があった・・」
サクッ。
「め、目が、あ、てめぇ!」
サクッ、サクッ、サクッ。
サクッ、サクッ、サクッ。
ドサッ。
「それ、俺のチ○コ、ぎ、ぎっ」
サクッ、ザクッ・・
「お、弟をタランガを殺しやがったな、ぶっ」
ザグッ。サクッ、サクッ。
「み、耳が、あぐっ、ぎっっ、ゆ、ゆるし・・」
サクッ、サクッ、サクッ。
「ゆ、俺の指ぃ。ひ、ひいい・・お、俺は貴族家の・・」
ガンッ!胸を鎧の上から突かれて、四男は倒れた。
「ねえ妹を犯し、子供や命乞いをする人達を殺すのは楽しかった?」
「いや・・」
サクッ。
「チ○コが、・・た、助けて・・」
ごっごっ。ごっごっ。
ゲルダは、四男の顎を赤いミスリルブーツで蹴り続けた。
「死んだね、ゲルダ」
ごっごっ。
「ゲルダ?」
ごっごっ。
ゲルダが誰を失ったか聞いてもない。最初は興味もなかったから。だから今さら聞けない。
「・・ありがとう、サーシャ」
「あ、いや、いいよ」
「この死体、さらしたまんまでいい?」
「あ、ああ。人食いサーシャはあなただから、好きに決めて」
「初めて自分で人を殺したけど、大丈夫ね。ありがとうナイト様。ごはん食べに行こう」
私の手を引っ張るゲルダの手は震えていた。
「沼」を手にして、人の命を気にしなくなった私とは根本的に違う。
殺す覚悟、殺される覚悟というやつを見た気がする。
◆
2人してブラウンのカツラをつけた。男装して、いつもの冒険者コンビになって酒場に出掛けた。
「ありがとうサーシャ。2人も殺れた。カンバイ」
「うん・・カンパイ」
「あと2人、子爵と三男のジャグロを殺すまで付き合ってね」
「ああ、そのことだけど・・」
「心配しないで。逃げたりしないから。人食いサーシャの役割はきっちり果たすから」
「そこは心配してない」
「復讐だけ果たさせてもらえば、お別れだから」
「え?ゲルダ・・」
「だってサーシャはブライトを出るでしょ。私は王都の方に向かって行って、赤い装備を着て人食いサーシャとして活動するよ」
「そうだったね。けど、それだと死ぬよ・・」
「そんな顔しないでよ。最初に会ったとき、サーシャの提案に乗ったのは私。思った以上に良くしてくれるから甘えたけど、役割は忘れてないから」
そうか、ゲルダは「人食い水溜まり」の殺人鬼である私と強引に接触した。そのときから命がけだったんだよな。
その覚悟は、自分の命と同じくらい大切な人を亡くした人間にしか分からないのだろう。
最初から1人だった私は、気付かなかったんだ。
「帰ろうか」
「そうだね。今日はゆっくり眠ろう」
◆
別に私は信念を持って行動してる訳じゃない。
ゲルダを失いたくないと思うようになったから、素直に方針変更をしたい。
「ねえ、ゲルダ・・」
「おうおう、姉ちゃんたち」
5人組のゴロツキだ。
「・・私達、男だよ」
「はっ、カツラかぶってブカブカの服着てるだけじゃねえか」
「お前ら、子爵様のとこの襲撃犯じゃねえのか?」
「当たりなら、賞金がもらえるぜ」
「全員がナイフ抜いてるね。ゲルダは下がってて」
サクッ。ばしゃっ。
「かひゅっ、ひゅっ」
ゲルダは下がらずナイフを抜いて、先頭にいた男の首を切った。顔に付いた返り血が、月光に照らされて涙のようだった。
「はあっ、はあっ。こ、こいつら、子爵の小飼いだ。だから死んでいい・・」
「・・そうだよね。でも無理しなくていいよ。あとは私が殺る」
ドカッ、ドカッ、ドガッ、ドガッ。
「2メートル沼」
ぽちょん。
「サーシャ、暗がりだとほとんど見えないけど、それが人食い水溜まりの正体?」
「うん、そうだよ」
「最後は、私も沈められるのかな・・」
「いいえ、あなたには見せるべきだと思って」
改めて覚悟を見せたゲルダの前で「沼」を出し、返り討ちの5人を沈めた。
とぷんっ。
「ほら、簡単でしょ・・」
「危ない、サーシャ!」
もう1人いた。ショボい私の探知外から弓か何か遠距離武器で攻撃してきた。
高レベルの私は自分でも驚くほど速い反応で鉄球を投げようとした。だけど・・。
ドスッ。
先に気づいたゲルダが私の前に立ち塞がって矢を受けた。
改めて鉄球を投げて狙撃者を倒した。
「ゲルダ!」
「・・大丈夫。私もそれなりの冒険者だから。うまく腕で受けたから」
上級ポーションを出して飲ませると傷は塞がったけど、血まみれの腕が痛々しかった。
胸が痛い・・。
「ゲルダ、やり方を変えよう。あなたを死なせたくない。失うのは嫌だ」
「サーシャが持ってる遺体で偽装するやつ?難しいかな。もう私の顔は詳細に知られてる」
「けど・・」
「すでに被害も大きいから、子爵家だけで処理できず、ブライト王国本体の監査も来たらしいわ。そんなだから、噂の神器持ち召喚者も呼んだらしいよ」
「・・神器持ちなら、すでに1人倒してる」
「え?すごいね。サーシャのスキル、強いどころじゃないと思ったけど」
「勝てたけど大怪我をした。真っ向から戦うべきじゃない」
「それならむしろ、神器持ちが来たときに仕掛けるべきよ。2人で別に動くの。隙を突けば、あなたの能力なら誰でも倒せると思う」
「ゲルダはどうするの」
「正面から神器持ちに向かう。隙を突いてサーシャが神器持ちを倒し、死を偽装できれば生き残れる」
「・・」
「ダメで神器持ちに殺されても死体が残るから、サーシャとの約束は果たせる。サーシャ?」
初めて人を抱きしめた。
「うふふ。なんだ、情が湧いちゃったの?何回か関係を持ったからって、捨て石にそんな気持ちを持っちゃダメね・・」
ぎゅっと、抱き返された。
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