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50 優しき神器持ち
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黒目黒髪の女と会うことにした。
この街で待ったのは、マツクロ子爵の情報から、移動経路を予測したそうだ。
「確かアイツの神器、杖だったよな。属性はなんだったっけ」
黒目黒髪は、意外に礼儀正しかった。少しぽっちゃりしてて切れ長の目。にこやかで、育ちが良さそうだ。
「お呼び立てしてすみません。異世界からの召喚者で佐川楓夏と申します。ほんの短時間でしたけど、お会いしましたよね。あのときは手助けできなくてすみませんでした。サーシャさん」
楓夏ちゃんはゲルダに向かって言った。
確かに、ブライトに召喚された日の私に似ているのは、今の私よりゲルダの方だ。
「フーカって名前だったんだね、あんた」
ゲルダがうまく合わせてくれた。
「で、サーシャ様と私になんに用であるか」
「そちらは噂のナイトさんですか?。男性かと思ったら男装の麗人・・。 ガールズラブかな、ぐふふ」
『お?新感覚』
一瞬だけど、沼様も反応するくらい変な空気を出した。
「こら、あんた何のために私達を呼んだのであるか」
「あ、失礼しました。ちょっとこのブライト王国に関して意見をお聞きしたくて」
「意見ね」
「もう1人の召喚者は王の意見を鵜呑みにして、魔国の魔王を悪と決めつけてるんです。どこかに行ったっきりの人もそうでした。何かおかしくありませんか」
「おかしいけど、あんたの見立ては?」
「う~ん、ベルゼ五世の独裁の匂いがします。王都は煌びやかなのに、ダンジョンのついでに隣の都市に行ったら、スラムが広がってました。貧富の差が激しすぎます」
「それならさ・・」
「待ってください!サーシャさん、さっきの男の子を感知して下さい」
「うん?あっ、ヤバい」
「なに?」
私だけ分からない。
「話の途中だけど行きましょう!」
「急ごう!」
私は緊急事態だなって思いながら、ゲルダと楓夏ちゃんを追って街の路地に入った。
◆
「か、返して・・」
「何でトーマが金貨なんて持ってたんだよ」
「没収だな。孤児院のガキが」
「触んなよ、ズボンが汚れるだろ」
ガスッ。ごぽっ。ガスッ。
楓夏ちゃんが私達への伝言を頼んだ子が、15歳くらいのチンピラ3人に「お駄賃」を取られ、蹴られるとこに出くわした。
「あなたたち、何をやって・・」
「楓夏、どいて!」
私も孤児院にいたころ、こんな奴らに必死に薬草を摘んで得た金を取られたことがある。
頭に血が昇った。
ゴキッ、ゴキッ、バキッ。
「うべえぇぇ」
3人とも一発だけ殴った。推定レベル140越えのパンチだけど。
「楓夏、ボーッとしないで。ほらポーション。早く子供を手当てしてやらないと」
「はい」
楓夏はきれいな服に子供の血と泥がつくのも構わず、子供の上半身を抱き起こすと、渡したポーションを飲ませた。
「楓夏、こういうとこの子供に金貨なんてやったんだ。ダメだよ」
「金額が大きかったんですかね」
「違うよ。隠して小出しに出来るように、銅貨とか銀貨であげないと」
「あ、ごめんなさい。私のせいで余計な怪我をさせたんですね・・」
同じ神器持ちでも山田竜都とは違い、上品だし人間性もいい。
『サーシャ、神器持ちは食いたいけど、その女は悪意が無さすぎてスパイス不足だ』
ぼそっ。
「もうちっと話を聞いてみるよ」
◆
男の子を回復させ、たくさんの銅貨、銀貨と食べ物を持たせ帰した。
「ベルゼ五世はブライト王国を神の国って言いますけど、国にはあんな子供が溢れてるんですよね」
「結局、あんた何がしたいの?」
「最終的にはまともな国に亡命したいんです」
「このまんま、逃げたらいいじゃない」
「実は一緒に召喚された男の子の1人と、召喚前から付き合ってるんです。その倉田奨太君と国を出たいんです」
「だけど、その子はこの国の独裁王の言うことを信じて、罪もない人を殺してそうね」
「幸い、殺人はしていないと思うのです。でも、力を得て王城で働く綺麗なメイド達に尽くされ浮かれています。貴族にそそのかされて悪事を働きそうです」
「あんたがいるのに色仕掛けで墜ちるような男、放っておけばいいじゃない。それに私とナイトはマツクロ子爵を倒すのが目的よ。話は聞くけど協力はしない」
「だから私はお二人に接触したのです。奨太はまだマツクロ子爵家三男の客人として残っているのです」
「なんで?」
「三男は私から見ると山賊にしか見えない大男なんですが、奨太から見たらワイルドで格好いいアニキだそうです」
「馬鹿だ。見捨てた方がいいよ」
「最後に会ったときも、アニキに「正規軍の討伐」に連れて行ってもらうって張り切ってました」
「せいき・・ぐん・・」
ゲルダの雰囲気がガラリと変わった。そこからは私が言葉を引き継いだ。
「おい楓夏聞け」
「ナイトさん?」
「一年と少し前、子爵の三男がある村の村娘に言い寄って振られた。その腹いせに子爵家の軍勢を引き連れて村を襲い、村人を皆殺しにした」
「え、あ、ま、まさか」
黙ってるけど、ゲルダの怒りが伝わって来る。私が怒りを楓夏に伝える。
「「私」の妹は犯された上に惨殺され、その子供も夫も首をはねられた」
「う、あ、あ」
「それが子爵家の「正規軍の討伐」だ。つまり、お前の彼氏が参加した部隊の本性だ」
呆然とする楓夏。
漆黒の中に青紫の光を灯した目になったゲルダが、ようやく口を開いた。
「近いうちに子爵の一族を殺しに行く。お前は彼氏と国を出ろ。それが精一杯のお前への慈悲だ。その場にいたら、どっちかが死ぬまで戦う」
「あ、あ」
「見たら、絶対に殺す・・なにがなんでも殺してやる」
この街で待ったのは、マツクロ子爵の情報から、移動経路を予測したそうだ。
「確かアイツの神器、杖だったよな。属性はなんだったっけ」
黒目黒髪は、意外に礼儀正しかった。少しぽっちゃりしてて切れ長の目。にこやかで、育ちが良さそうだ。
「お呼び立てしてすみません。異世界からの召喚者で佐川楓夏と申します。ほんの短時間でしたけど、お会いしましたよね。あのときは手助けできなくてすみませんでした。サーシャさん」
楓夏ちゃんはゲルダに向かって言った。
確かに、ブライトに召喚された日の私に似ているのは、今の私よりゲルダの方だ。
「フーカって名前だったんだね、あんた」
ゲルダがうまく合わせてくれた。
「で、サーシャ様と私になんに用であるか」
「そちらは噂のナイトさんですか?。男性かと思ったら男装の麗人・・。 ガールズラブかな、ぐふふ」
『お?新感覚』
一瞬だけど、沼様も反応するくらい変な空気を出した。
「こら、あんた何のために私達を呼んだのであるか」
「あ、失礼しました。ちょっとこのブライト王国に関して意見をお聞きしたくて」
「意見ね」
「もう1人の召喚者は王の意見を鵜呑みにして、魔国の魔王を悪と決めつけてるんです。どこかに行ったっきりの人もそうでした。何かおかしくありませんか」
「おかしいけど、あんたの見立ては?」
「う~ん、ベルゼ五世の独裁の匂いがします。王都は煌びやかなのに、ダンジョンのついでに隣の都市に行ったら、スラムが広がってました。貧富の差が激しすぎます」
「それならさ・・」
「待ってください!サーシャさん、さっきの男の子を感知して下さい」
「うん?あっ、ヤバい」
「なに?」
私だけ分からない。
「話の途中だけど行きましょう!」
「急ごう!」
私は緊急事態だなって思いながら、ゲルダと楓夏ちゃんを追って街の路地に入った。
◆
「か、返して・・」
「何でトーマが金貨なんて持ってたんだよ」
「没収だな。孤児院のガキが」
「触んなよ、ズボンが汚れるだろ」
ガスッ。ごぽっ。ガスッ。
楓夏ちゃんが私達への伝言を頼んだ子が、15歳くらいのチンピラ3人に「お駄賃」を取られ、蹴られるとこに出くわした。
「あなたたち、何をやって・・」
「楓夏、どいて!」
私も孤児院にいたころ、こんな奴らに必死に薬草を摘んで得た金を取られたことがある。
頭に血が昇った。
ゴキッ、ゴキッ、バキッ。
「うべえぇぇ」
3人とも一発だけ殴った。推定レベル140越えのパンチだけど。
「楓夏、ボーッとしないで。ほらポーション。早く子供を手当てしてやらないと」
「はい」
楓夏はきれいな服に子供の血と泥がつくのも構わず、子供の上半身を抱き起こすと、渡したポーションを飲ませた。
「楓夏、こういうとこの子供に金貨なんてやったんだ。ダメだよ」
「金額が大きかったんですかね」
「違うよ。隠して小出しに出来るように、銅貨とか銀貨であげないと」
「あ、ごめんなさい。私のせいで余計な怪我をさせたんですね・・」
同じ神器持ちでも山田竜都とは違い、上品だし人間性もいい。
『サーシャ、神器持ちは食いたいけど、その女は悪意が無さすぎてスパイス不足だ』
ぼそっ。
「もうちっと話を聞いてみるよ」
◆
男の子を回復させ、たくさんの銅貨、銀貨と食べ物を持たせ帰した。
「ベルゼ五世はブライト王国を神の国って言いますけど、国にはあんな子供が溢れてるんですよね」
「結局、あんた何がしたいの?」
「最終的にはまともな国に亡命したいんです」
「このまんま、逃げたらいいじゃない」
「実は一緒に召喚された男の子の1人と、召喚前から付き合ってるんです。その倉田奨太君と国を出たいんです」
「だけど、その子はこの国の独裁王の言うことを信じて、罪もない人を殺してそうね」
「幸い、殺人はしていないと思うのです。でも、力を得て王城で働く綺麗なメイド達に尽くされ浮かれています。貴族にそそのかされて悪事を働きそうです」
「あんたがいるのに色仕掛けで墜ちるような男、放っておけばいいじゃない。それに私とナイトはマツクロ子爵を倒すのが目的よ。話は聞くけど協力はしない」
「だから私はお二人に接触したのです。奨太はまだマツクロ子爵家三男の客人として残っているのです」
「なんで?」
「三男は私から見ると山賊にしか見えない大男なんですが、奨太から見たらワイルドで格好いいアニキだそうです」
「馬鹿だ。見捨てた方がいいよ」
「最後に会ったときも、アニキに「正規軍の討伐」に連れて行ってもらうって張り切ってました」
「せいき・・ぐん・・」
ゲルダの雰囲気がガラリと変わった。そこからは私が言葉を引き継いだ。
「おい楓夏聞け」
「ナイトさん?」
「一年と少し前、子爵の三男がある村の村娘に言い寄って振られた。その腹いせに子爵家の軍勢を引き連れて村を襲い、村人を皆殺しにした」
「え、あ、ま、まさか」
黙ってるけど、ゲルダの怒りが伝わって来る。私が怒りを楓夏に伝える。
「「私」の妹は犯された上に惨殺され、その子供も夫も首をはねられた」
「う、あ、あ」
「それが子爵家の「正規軍の討伐」だ。つまり、お前の彼氏が参加した部隊の本性だ」
呆然とする楓夏。
漆黒の中に青紫の光を灯した目になったゲルダが、ようやく口を開いた。
「近いうちに子爵の一族を殺しに行く。お前は彼氏と国を出ろ。それが精一杯のお前への慈悲だ。その場にいたら、どっちかが死ぬまで戦う」
「あ、あ」
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