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55 一択

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奨太を倒して沼に沈めた。

次は楓夏だ。

どうやって足のヤケドを直したが知らないが、迅速に沼の中に送らせてもらう。

『サーシャ、今の神器持ちで沼レベルは5・76。残り時間は5分以上ある。次を「沼」にはめて、確実に仕留めろ』

「分かった。確実にやる」

『今の神器持ち、最後にお前のこと、子爵家三男、楓夏、何もかも恨んでたな。ちょっとした味付けにはなった』

「次は、大して美味しくないよ」


楓夏と向き合った。

「周りに散らばってるのが、奨太のクズが討伐したと言っていた被害者よ」

「ひ、ひどい。周りの焼けた遺体はみんな、奨太がやったんですか。それに彼、どこに行ったんですか・・」

「ゲルダもやられた。だから仕返しに彼氏を倒して、遺体は収納指輪に入れた」

「あ、ゲルダとは・・ 。サーシャさんの偽名?  ごめんなさい、奨太は子供だけでなく、ナイトさんの大切な人の命も奪ってしまったんですね」

「ああ、私がこれから一緒に生きていく人間だった」

「ごめんなさい、ごめんなさい。私が力ずくでも奨太を子爵領から連れて帰るべきでした」

大切な彼氏を殺され、神器を使って立ち向かってくるとばかり思っていた。

「私はあなたの同郷人でもあり、恋人の奨太を殺した仇だよ」

ぺちょっ。

2メートルの沼は出したまんま、80センチ泥団子を隠して用意した。

「もう気持ちは奨太から離れかけていました」

「え?」
「実は奨太と結ばれたんです。とっても嬉しかった。けれど、それで落ち着いたのも2日間だけ。奨太、変な薬を飲んだりして、おかしくなったんです。私も殴られました」

「・・」

「それでも何とかしたかったけど荒れる一方で、でも見捨てられなくて・・。気分転換に街に出たら、この前お会いしたときのような、お使いでお金を稼いでいる子供と会ったんです」

「で、違う未来が見えてきたって話だね」

「はい。その子が住んでる孤児院が教会にくっついてるんですけど、貧しくて・・。持ってる食料を出したら子供達に懐かれたんです。ふふふ」

殺伐とした現場。死体に囲まれてるけど、楓夏の目の奥は希望に満ちている。神器持ちの精神も私と同じで、かなり特殊に作り替えられている。

「病気の子供もいたから、お薬をあげたらかなり良くなって。花を摘んで待ってるから絶対にまた来ててって、手を握られたんです」

「それが見つけた希望で、人のために生きたいんだね」

「はい。力を人に向ける必要もないし、人を殺めることもしてません。それに特殊なスキルも授けられてますし、簡単には死にません」

「探知か危険回避がスキルなのかな」

「ああ、探知は得意というだけで、授けられたスキルとは別物です」


ドキン。

神器持ちのオリジナルスキルが別?

心の中で警鐘が鳴った。

『逃がすなよ』

「スキルの話はともかく、早くここを出ていこうと思います。そして前を向いて歩きたいです」

「私もゲルダとの未来を夢見ていたよ」

「あ、すみません。私に償う方法はあるんでしょうか」

「・・・・あるよ」

「なんでしょうか」

いい子だ。生かしてあげたいけど、選ぶものは決まっている。


お前じゃない。


楓夏、お前の未来と希望は意味も分からず奪われる。



とぷん、とぷん。ぺちょっ、ぽちょん、ぽちょん、ぽちょん。

「え?ナイトさ・・」

罪を犯した彼は倒された。
罪を犯してない自分は殺されない。

そう思って気を許してた。

「奪う者」。すなわち私からしたら、どうでもいい話だ。

お前はそんな理不尽が存在することも分からないくらい、恵まれた世界で育ったんだ。

「楓夏、お前のオリジナルスキルは超のつく回復系だったんだね。足のヤケドがもうなくなっている」

攻撃されても死なないと思ったから、呑気だったんだろう。

「本当のオリジナルスキルが回復であっても、「沼」の中ではお前の体は復元しない。お前が送られるのは、女神の力なんて及ばない邪神が支配する世界だよ」



足元の2つから間を置かず、泥団子から変化した「沼」も発動した。

そこからは・・ただ見ていた。

とっぷ~~~ん。

確実に沼様のとこに送らせてもらった。ごめんよ。

あっという間に、その場には私だけになった。間違いなく、同じ敷地内で騒ぎが起こってるのに、静寂なイメージが頭の中を駆け巡った。

「・・・・理不尽だよな。だけど謝らない」

ぽちょん。

『よし、2人目の神器持ちを受け取った。ぐしゃぐしゃだか沼の経験値になった。間もなく沼のレベルが上がるそ』


罪もない楓夏を私の身勝手で沼様のとこに送った。

そういえば、どうやって「沼」のレベルが上がるのか、ゲルダに言ってなかった。


どうやってレベル6に上げたかなんて、絶対に真実は打ち明けられない。



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