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81 姫の結果オーライ
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自分が瀕死なのに、私にトコブシ姫の治療を頼んできたメルカ。
だけどそこに、トコブシ姫が近付いてきた。
「サーシャ様、お慈悲を下さいませ」
「何をさせる気?王族とは関わらないって言ったよね」
トコブシは左手を斬られた。剣は恐らく毒付き。肩の下できつく縛ってあるが、手の指は緑色に変色している。
「私に関わる必要はありません。精霊様のお力で、メルカをお助け下さい」
「あんたの毒はどうすんの」
「・・ダメだよ、姫。死んじゃうよ」
「ここまでありがとう、メルカ。「あなたのスキル」のお陰で生き延びたわ」
「突拍子もない「直感」を信じてくれてたんだね・・。だったら、・・このまんま、私を死なせて。そしたら、終わるから」
メルカの目が涙で溢れた。だけどトコブシ姫は、優しく微笑んだ。
「メルカだけに負わせないわ。これが、あなたを悩ませた死神を封じる最後の仕上げよ」
トコブシは毒を受けた左手を前に伸ばした。
その腕に向かって、メルカの仲間シャルルが剣を振り下ろした。
どんっ。
「あぐっ。うぐぐぐ」
残る3人がすばやく止血を始めた。
「姫!」
「メルカ、私を侮っちゃだめよ」
「な、なんで、その腕」
「あなたのスキルを研究したのよ。そして一つだけ死亡の回避方法が見つかった。最後の最後、お膳立てが整ったあとに、私の体の一部を神に捧げるの。そして取り憑いた死神のようなものを切り離した体の一部に封印するのよ」
「ひ、姫」
「サーシャ様、メルカを、お願い・・します」
気絶した。トコブシは腕を落とし、多少の毒も体の中に回った痛みをこらえ、私に頼んできた。
そしてメルカの命も尽きようとしている。
『サーシャ』
「送っていいかな、沼様」
『今、ゲルダにも了解は取った。メルカの体とトコブシの腕、両方を送ってこい』
「沼様、メルカをお願いしていいんだね」
『いいぞ。ゲルダもそのつもりだ。4時間だが、メルカを死なない程度にはしてやるよ』
「珍しい。ボランティアだ」
『バカ言え。アタイにメリットがあるからだ。タダ働きなんぞするか。必ずメルカと姫さんの腕、同時に送ってこい』
メルカを抱え、演劇ホールの柱の影に隠れた。「沼の底」からゲルダを出してメルカとトコブシ姫の切断した腕を「沼」に沈めた。
すると、「沼」にトコブシの腕が付いた瞬間に、腕の中からモヤのようなものが出てきた。
そして、ボロをまとったゴーストのような形になった。
『おっ、やはり収穫があった。超低級だが死神だ。長い間、人間をもあそんできた悪意の塊。第三王子と一緒に食らうと、いい出汁が出るぞ』
死神は必死に「沼」から逃れようとしている。だけど無駄だ。
とぷっ、とぷっ。
影のような顔が驚いている。
超低級とはいえ、人間よりはるかに高位の存在。だけど沼様は、次元は違うが邪神の世界を管理する者。
「₨₢₡!₮₩₪₤₪!!」
『無駄だ。アタイの現世の支配領域はサーシャがスキルを発動させた範囲内とごく狭い。だがな、そこに迷い込んだ奴は、女神だって逃さんぞ』
ずり、ずり。とっぷ~~~んっ。
「死神が本当にいたんだ。沼様に目をつけられたのが運の尽きだね」
『ごちそうはあとにして、メルカを診察するか。心臓には穴が空いておらん。肺と血管の傷を塞ぐ。しばらく寝たきりだろうが、メルカは助かる』
「ありがとう沼様」
『おう。第三王子ガリキシと死神、お前はアタイの想像以上のもんを引っ張ってくるな。また頼むぞ』
◆
トコブシ姫は王立医療所に運ばれた。
第三王子ガリキシは、公衆の面前で「闇精霊」に殺された。
私はゲルダを抱え、「小沼」と「泥団子」を巧みに使ってガントシティの町外れまで脱出した。
結果として、トコブシ姫の「死亡フラグ」を乱立させていた死神を退治した。
これは間違いなく沼様しかやれない。
だからさ・・・・
「トコブシ姫の腕を捧げた「フラグ回避術」は大間違いじゃんよ!」
トコブシが何の文献で読んだか知らない。沼様によると「沼」で死神を沈めていなければ、死亡フラグは復活していたそうだ。
単なる結果オーライ。方向性は間違っていて、トコブシの思い込みと暴走でしかなかった。だけど、この判断が正解を導いてトコブシの仲間は誰も死ななかった。トコブシも片腕を失ったけど、生きながらえた。
◆
「ポンコツ姫だけど、やってみたことの大半が、みんなの幸せにつながる訳ね」
「すごく人気がある理由なのかな」
今回は宿屋を取っていて、一階の酒場でゲルダと飲んでいる。
宿屋にしたのは、4時間したらメルカを沼の中のラボから出して、ゲルダをラボに戻さなくてはならないから。
メルカはそのまま宿屋に寝かせておいて、あとで彼女の仲間に迎えに来てもらう。
「サーシャ、次はどうするの」
「「精霊」と言いながら、色んなとこで「沼」を出したからガント王国を出るよ。まだ見てないけど、メルカに今後のヒントを書いたメモをもらったよ」
「次は、どんなとこで出してくれるのかな。楽しみにしてるよ」
外を散歩して部屋に戻った。キスして、盛り上がってきたところで時間がきた。残念だ。
眠ったままのメルカをベッドに置いて、宿の人にお金を渡してトコブシ姫配下への伝言を頼んだ。
私は川を見つけた。夕日を見ながらミスリル風呂を設置し、イタス島やダバダッタの街がある西に向かった。
だけどそこに、トコブシ姫が近付いてきた。
「サーシャ様、お慈悲を下さいませ」
「何をさせる気?王族とは関わらないって言ったよね」
トコブシは左手を斬られた。剣は恐らく毒付き。肩の下できつく縛ってあるが、手の指は緑色に変色している。
「私に関わる必要はありません。精霊様のお力で、メルカをお助け下さい」
「あんたの毒はどうすんの」
「・・ダメだよ、姫。死んじゃうよ」
「ここまでありがとう、メルカ。「あなたのスキル」のお陰で生き延びたわ」
「突拍子もない「直感」を信じてくれてたんだね・・。だったら、・・このまんま、私を死なせて。そしたら、終わるから」
メルカの目が涙で溢れた。だけどトコブシ姫は、優しく微笑んだ。
「メルカだけに負わせないわ。これが、あなたを悩ませた死神を封じる最後の仕上げよ」
トコブシは毒を受けた左手を前に伸ばした。
その腕に向かって、メルカの仲間シャルルが剣を振り下ろした。
どんっ。
「あぐっ。うぐぐぐ」
残る3人がすばやく止血を始めた。
「姫!」
「メルカ、私を侮っちゃだめよ」
「な、なんで、その腕」
「あなたのスキルを研究したのよ。そして一つだけ死亡の回避方法が見つかった。最後の最後、お膳立てが整ったあとに、私の体の一部を神に捧げるの。そして取り憑いた死神のようなものを切り離した体の一部に封印するのよ」
「ひ、姫」
「サーシャ様、メルカを、お願い・・します」
気絶した。トコブシは腕を落とし、多少の毒も体の中に回った痛みをこらえ、私に頼んできた。
そしてメルカの命も尽きようとしている。
『サーシャ』
「送っていいかな、沼様」
『今、ゲルダにも了解は取った。メルカの体とトコブシの腕、両方を送ってこい』
「沼様、メルカをお願いしていいんだね」
『いいぞ。ゲルダもそのつもりだ。4時間だが、メルカを死なない程度にはしてやるよ』
「珍しい。ボランティアだ」
『バカ言え。アタイにメリットがあるからだ。タダ働きなんぞするか。必ずメルカと姫さんの腕、同時に送ってこい』
メルカを抱え、演劇ホールの柱の影に隠れた。「沼の底」からゲルダを出してメルカとトコブシ姫の切断した腕を「沼」に沈めた。
すると、「沼」にトコブシの腕が付いた瞬間に、腕の中からモヤのようなものが出てきた。
そして、ボロをまとったゴーストのような形になった。
『おっ、やはり収穫があった。超低級だが死神だ。長い間、人間をもあそんできた悪意の塊。第三王子と一緒に食らうと、いい出汁が出るぞ』
死神は必死に「沼」から逃れようとしている。だけど無駄だ。
とぷっ、とぷっ。
影のような顔が驚いている。
超低級とはいえ、人間よりはるかに高位の存在。だけど沼様は、次元は違うが邪神の世界を管理する者。
「₨₢₡!₮₩₪₤₪!!」
『無駄だ。アタイの現世の支配領域はサーシャがスキルを発動させた範囲内とごく狭い。だがな、そこに迷い込んだ奴は、女神だって逃さんぞ』
ずり、ずり。とっぷ~~~んっ。
「死神が本当にいたんだ。沼様に目をつけられたのが運の尽きだね」
『ごちそうはあとにして、メルカを診察するか。心臓には穴が空いておらん。肺と血管の傷を塞ぐ。しばらく寝たきりだろうが、メルカは助かる』
「ありがとう沼様」
『おう。第三王子ガリキシと死神、お前はアタイの想像以上のもんを引っ張ってくるな。また頼むぞ』
◆
トコブシ姫は王立医療所に運ばれた。
第三王子ガリキシは、公衆の面前で「闇精霊」に殺された。
私はゲルダを抱え、「小沼」と「泥団子」を巧みに使ってガントシティの町外れまで脱出した。
結果として、トコブシ姫の「死亡フラグ」を乱立させていた死神を退治した。
これは間違いなく沼様しかやれない。
だからさ・・・・
「トコブシ姫の腕を捧げた「フラグ回避術」は大間違いじゃんよ!」
トコブシが何の文献で読んだか知らない。沼様によると「沼」で死神を沈めていなければ、死亡フラグは復活していたそうだ。
単なる結果オーライ。方向性は間違っていて、トコブシの思い込みと暴走でしかなかった。だけど、この判断が正解を導いてトコブシの仲間は誰も死ななかった。トコブシも片腕を失ったけど、生きながらえた。
◆
「ポンコツ姫だけど、やってみたことの大半が、みんなの幸せにつながる訳ね」
「すごく人気がある理由なのかな」
今回は宿屋を取っていて、一階の酒場でゲルダと飲んでいる。
宿屋にしたのは、4時間したらメルカを沼の中のラボから出して、ゲルダをラボに戻さなくてはならないから。
メルカはそのまま宿屋に寝かせておいて、あとで彼女の仲間に迎えに来てもらう。
「サーシャ、次はどうするの」
「「精霊」と言いながら、色んなとこで「沼」を出したからガント王国を出るよ。まだ見てないけど、メルカに今後のヒントを書いたメモをもらったよ」
「次は、どんなとこで出してくれるのかな。楽しみにしてるよ」
外を散歩して部屋に戻った。キスして、盛り上がってきたところで時間がきた。残念だ。
眠ったままのメルカをベッドに置いて、宿の人にお金を渡してトコブシ姫配下への伝言を頼んだ。
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