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80 メルカの嘘
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群衆の前で顔を隠し、ガント王国第三王子捕縛の場所に来ている。
メルカの「直感」スキルに従い、予測された位置にいると、本当に襲撃者が現れた。
剣を抜き、階段上にいるトコブシに向かう襲撃者。追い付いた私は、後頭部を殴って倒した。
こっちは止めた。
メルカの方を見た。そして、驚いた。
メルカが、襲撃者を避けた。
間違いなく、敵を退けられる位置にいたメルカが左側に逃げた。
そして襲撃者はトコブシ姫に剣を振りかざした。
護衛4人が襲撃者に斬りかかったが、それより早くトコブシ姫はかざした左手を斬られた。
護衛が襲撃者を斬って、被害は抑えられた。
メルカはなぜ、トコブシを見捨てたような行動をしたのか。
それは。
メルカが私にさえも最後の真実を明かさなかったからだ。
そして死神に抵抗したんだ。
逃げたように見えたメルカは、トコブシ姫と「最後の襲撃者」の間で両手を広げた。
ドスッ。胸に矢が刺さった。
メルカが言わなかった「本命」はこれだった。
トコブシ姫に左右から斬りかかる襲撃者のビジョンが見えたと言っていた。
一方は私に止めさせた。
もう一方は、仲間に託した。
そうやってお膳立てを整え、トコブシの命が断たれる攻撃を「1点」に絞ったのだ。
最後の最後に飛んできた凶暴な矢。
「そこまでが計算の範囲。自分が攻撃を受けることで成り立つ、「トコブシ姫を救える勝利の方程式」だったのね」
階段の中程で倒れたメルカに近付こうとすると、背筋がぞわりとした。
反射的にしゃがむと、首かあったところを剣が通りすぎた。
「レベルを上げておいて良かった・・」
私が殴り倒したやつは、もちろん転がっていない。
起き上がって反撃したのだ。剣を構えている。
暗い目だ。怒りに満ちた目だ。
「こいつは・・」
『うまそうな、ただれた心の持ち主。こやつが第三王子ガリキシだな』
「だよね、沼様」
「貴様もトコブシ姫の手の者か!」
「あなたが、第三王子ガリキシね」
「そうだ」
「何で、他の王子を狙わず、継承権も低いトコブシ姫を狙ったの?」
「ボウクンペンギンといい、ことごとく切り札を潰された。全てトコブシと、その配下メルカによるものだ。トコブシだけは殺す」
ハイレベルの私の方が力はあるだろう。だけどガリキシは、強い王族しか認められない国の第三王子。
幼少時代からの鍛練により、剣技は一流だそうだ。
あらゆる武器を使えないという、致命的欠陥がある私は、剣の間合いに入っていて不利だ。
「ま、対策は考えてたけどね」
「貴様から死ね!」
「闇精霊よ」
ぼそっ。『泥団子2メートル』
剣の動きを正確に捉えきれない。だけど、上がった動体視力で手首の動きは分かった。そこに泥団子をひょい、と投げた。
反応したガリキシは泥団子を貫いて、その先50センチの位置にいる私を刺す気だった。
「泥団子展開」ぺちょっ。
とぷっ。
ガリキシは空中に展開した泥団子に勢いよく手を突っ込み、一気に肘まで「沼」の中に捕らえられた。
私は地上4メートル地点に沼の底を出し、海水を放出した。
ざばあっ。これで「沼」を目隠しできる。
「うわあっ。女を刺したばずなのに」
「ガリキシ、私に手を出したね。私を守ってくれる「闇の精霊」「水の精霊」が怒っているよ」
「くそっ。こんなとこで訳が分からないものに捕まって、終わってたまるか!」
ずぶ。
「うぷっ、いやだっ」
とっぷ~ん。
何もない場所に突然現れた水。その中に浮かぶ闇の世界の入り口から、いきなり吸い込まれたガリキシ。
みな呆気に取られているが、私は仲間に介抱されるメルカの方に向かった。
「メルカ」
「え、えへへ。運命に逆らって風穴を開けて、やり、ました」
「あなたは、誰かの代わりに死ぬの?」
「死亡フラグは折れましたが、死神がしつこかったです」
「最終的な形は?」
「本当は姫だけでなく、サーシャさんとダンジョンで出会った6人全員が死ぬはずだったんです。だけど、あなたのお陰で、姫以外の死亡フラグは消えたんです」
「けど、完全ではなかったんだ」
「そうです。最後まで残ったのが姫。だけど最後のココヤシ戦を終えたとき、「トコブシ死亡」から「6人の中の1人死亡」に、変わったんです」
「それを私に言わなかったんだね」
「迷いました。サーシャさんに相談すれば、あるいはフラグが100パーセント折れたかもしれません」
ああ、なぜ言わなかったか分かった。
「そこから運命を再び枝分かれさせることで、トコブシ姫の死亡ルート復活もあると読んだのか。それを避けたんだね。そんなに姫が大切なんだ」
「ふふ。姫はね、何の得もないのに、食えずに死にかけた私を拾ってくれたんです」
「槍の才能はあったんでしょ」
「才能なんか見いだしされてません。・・偶然です。そもそも私には・・剣の才能があるって言いましたから」
笑った。
「何かの才能があるとか言って200人も拾ったんです。大半は何にも持たなくて、けれど仕事を与えて食べさせてくれます。あの人、・・才能を見抜く眼なんて持ってません」
言葉が弱くなった。矢は心臓を避けているけど、肺か何か潰れている。
「姫が死んだら、何人もの「姉妹」が路頭に迷います。私1人で済めば、死神との勝負は勝ちなのです・・」
覚悟して、こいつなりの戦いを続けていたんだ。
「サーシャさん、質問と最後のお願いです」
「なに?」
「サーシャさんは治療スキルのようなものを持ってますよね」
「・・あるといえば、ある」
「だったら・・」
ゲルダと私が会う10日に一回、4時間だけ「沼」の中の治療施設「ラボ」が空く。教えてないのに、「直感」で何か治療方があると察知している。死にたくなくなって延命のお願いだろうか。
ゲルダを今出せば「ラボ」が使える。
「姫を助けて下さい」
「えっ」
「意地悪な死神の抵抗なのか、姫の死のビジョンが、ぼんやり見え始めています。考えてみれば、さっき姫が斬られた剣に毒でも塗られていたんでしょうね」
確かに、解毒程度なら沼様なら4時間あればやってしまうだろう。
「そこまでよメルカ。お黙りなさい」
トコブシ姫が割り込んできた。
ただし普段と目が違う。
好色の腐れ姫ではない。
高貴な、そして有無を言わせない強い眼だ。
メルカの「直感」スキルに従い、予測された位置にいると、本当に襲撃者が現れた。
剣を抜き、階段上にいるトコブシに向かう襲撃者。追い付いた私は、後頭部を殴って倒した。
こっちは止めた。
メルカの方を見た。そして、驚いた。
メルカが、襲撃者を避けた。
間違いなく、敵を退けられる位置にいたメルカが左側に逃げた。
そして襲撃者はトコブシ姫に剣を振りかざした。
護衛4人が襲撃者に斬りかかったが、それより早くトコブシ姫はかざした左手を斬られた。
護衛が襲撃者を斬って、被害は抑えられた。
メルカはなぜ、トコブシを見捨てたような行動をしたのか。
それは。
メルカが私にさえも最後の真実を明かさなかったからだ。
そして死神に抵抗したんだ。
逃げたように見えたメルカは、トコブシ姫と「最後の襲撃者」の間で両手を広げた。
ドスッ。胸に矢が刺さった。
メルカが言わなかった「本命」はこれだった。
トコブシ姫に左右から斬りかかる襲撃者のビジョンが見えたと言っていた。
一方は私に止めさせた。
もう一方は、仲間に託した。
そうやってお膳立てを整え、トコブシの命が断たれる攻撃を「1点」に絞ったのだ。
最後の最後に飛んできた凶暴な矢。
「そこまでが計算の範囲。自分が攻撃を受けることで成り立つ、「トコブシ姫を救える勝利の方程式」だったのね」
階段の中程で倒れたメルカに近付こうとすると、背筋がぞわりとした。
反射的にしゃがむと、首かあったところを剣が通りすぎた。
「レベルを上げておいて良かった・・」
私が殴り倒したやつは、もちろん転がっていない。
起き上がって反撃したのだ。剣を構えている。
暗い目だ。怒りに満ちた目だ。
「こいつは・・」
『うまそうな、ただれた心の持ち主。こやつが第三王子ガリキシだな』
「だよね、沼様」
「貴様もトコブシ姫の手の者か!」
「あなたが、第三王子ガリキシね」
「そうだ」
「何で、他の王子を狙わず、継承権も低いトコブシ姫を狙ったの?」
「ボウクンペンギンといい、ことごとく切り札を潰された。全てトコブシと、その配下メルカによるものだ。トコブシだけは殺す」
ハイレベルの私の方が力はあるだろう。だけどガリキシは、強い王族しか認められない国の第三王子。
幼少時代からの鍛練により、剣技は一流だそうだ。
あらゆる武器を使えないという、致命的欠陥がある私は、剣の間合いに入っていて不利だ。
「ま、対策は考えてたけどね」
「貴様から死ね!」
「闇精霊よ」
ぼそっ。『泥団子2メートル』
剣の動きを正確に捉えきれない。だけど、上がった動体視力で手首の動きは分かった。そこに泥団子をひょい、と投げた。
反応したガリキシは泥団子を貫いて、その先50センチの位置にいる私を刺す気だった。
「泥団子展開」ぺちょっ。
とぷっ。
ガリキシは空中に展開した泥団子に勢いよく手を突っ込み、一気に肘まで「沼」の中に捕らえられた。
私は地上4メートル地点に沼の底を出し、海水を放出した。
ざばあっ。これで「沼」を目隠しできる。
「うわあっ。女を刺したばずなのに」
「ガリキシ、私に手を出したね。私を守ってくれる「闇の精霊」「水の精霊」が怒っているよ」
「くそっ。こんなとこで訳が分からないものに捕まって、終わってたまるか!」
ずぶ。
「うぷっ、いやだっ」
とっぷ~ん。
何もない場所に突然現れた水。その中に浮かぶ闇の世界の入り口から、いきなり吸い込まれたガリキシ。
みな呆気に取られているが、私は仲間に介抱されるメルカの方に向かった。
「メルカ」
「え、えへへ。運命に逆らって風穴を開けて、やり、ました」
「あなたは、誰かの代わりに死ぬの?」
「死亡フラグは折れましたが、死神がしつこかったです」
「最終的な形は?」
「本当は姫だけでなく、サーシャさんとダンジョンで出会った6人全員が死ぬはずだったんです。だけど、あなたのお陰で、姫以外の死亡フラグは消えたんです」
「けど、完全ではなかったんだ」
「そうです。最後まで残ったのが姫。だけど最後のココヤシ戦を終えたとき、「トコブシ死亡」から「6人の中の1人死亡」に、変わったんです」
「それを私に言わなかったんだね」
「迷いました。サーシャさんに相談すれば、あるいはフラグが100パーセント折れたかもしれません」
ああ、なぜ言わなかったか分かった。
「そこから運命を再び枝分かれさせることで、トコブシ姫の死亡ルート復活もあると読んだのか。それを避けたんだね。そんなに姫が大切なんだ」
「ふふ。姫はね、何の得もないのに、食えずに死にかけた私を拾ってくれたんです」
「槍の才能はあったんでしょ」
「才能なんか見いだしされてません。・・偶然です。そもそも私には・・剣の才能があるって言いましたから」
笑った。
「何かの才能があるとか言って200人も拾ったんです。大半は何にも持たなくて、けれど仕事を与えて食べさせてくれます。あの人、・・才能を見抜く眼なんて持ってません」
言葉が弱くなった。矢は心臓を避けているけど、肺か何か潰れている。
「姫が死んだら、何人もの「姉妹」が路頭に迷います。私1人で済めば、死神との勝負は勝ちなのです・・」
覚悟して、こいつなりの戦いを続けていたんだ。
「サーシャさん、質問と最後のお願いです」
「なに?」
「サーシャさんは治療スキルのようなものを持ってますよね」
「・・あるといえば、ある」
「だったら・・」
ゲルダと私が会う10日に一回、4時間だけ「沼」の中の治療施設「ラボ」が空く。教えてないのに、「直感」で何か治療方があると察知している。死にたくなくなって延命のお願いだろうか。
ゲルダを今出せば「ラボ」が使える。
「姫を助けて下さい」
「えっ」
「意地悪な死神の抵抗なのか、姫の死のビジョンが、ぼんやり見え始めています。考えてみれば、さっき姫が斬られた剣に毒でも塗られていたんでしょうね」
確かに、解毒程度なら沼様なら4時間あればやってしまうだろう。
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