ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

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18 最低の騎士

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オークに襲われている、貴族の馬車を見つけた。

私、オーグ、ダリアはスルーで意見一致。

剣士リュウが助けたいと言い出した。

冒険者ギルドでいずれ、教えられる。

『貴族とは、プライドだけ高い馬鹿ばかり。襲われていても、手を出すな』

これが暗黙。

けど、リュウは、自分で確かめないと納得しないタイプ。

仕方ない。

私が1人で参戦する。

リュウは、冒険者でのしあがっていける才能がある。

だけどまだ経験不足。

こんな状況で、馬車を見捨てる、その選択ができない。

だから、現実を見せてあげる。


馬車に近付くと、騎士側が輪をかけて劣勢になっていた。

無傷のオークが4匹、腰の引けた騎士が4人。

「私は冒険者です。助けは必要ですか?」

「早く助けろ!」
「遅いぞ、何をしてる。俺達を守れ!」

彼らの返答、早くも最低。

嫌な気分になり、リュウを連れてこなくて良かったと思った。

騎士とにらみ合っているオークの後ろに回った。

収納指輪から剣を出して、ふくらはぎを斬った。

「ぶもももー!」

2匹目に同じことをした。

無事なオークは残り2匹。オークの意識がこちらを向いたが、戦闘員は私も入れて5人。

さすがに形勢逆転。

あっという間に勝った。

倒れている人間が何人かいる。

特に御者が重傷だ。口から血がたれていて、生きているのかどうかすら分からない。

生きていれば『超回復』で治る。

けど、こいつらに使っても、間違いなく感謝されない。

それどころか、危険が迫ると思う。

どうすればいいか、答えも出ない。


いきなり、怒鳴り声を浴びた。

「こらあ、平民!」
「ん?」

「こちらはカスガ男爵家の時期当主、ワルダー様だぞ、頭が高い」

馬車の影から、頭の悪そうな青年が胸を張って出てきた。

戦闘のとき、きっちりお隠れになっていたようだ。

「怪我人、なんとかしたら? みんな、思い切り劣勢だったし」

「頭が高いと言っておるだろうが!」

「お前の手なぞ借りずとも、勝てていたに決まっているだろうが」

仲間の心配はあと。

プライドを繕うのが最優先。聞いていた通り、ゲスな生き物のようだ。

絶対に、こんな奴らの前で怪我人は治療できない。

方針決定。回れ右をした。

「やっぱ、時間の無駄」

そしたら、騎士の1人が、想定内の行動。

助けたはずの私の態度が気にくわない。

足音を立てて走ってくる。

助けた恩も忘れ、激昂してる。

恐らく後ろから殴られる。

殴られ損。

だけどリュウに、貴族とは、このような最低の集団だと、学んでもらえる。

あえて、一撃を受けることにした。

だけどね・・

ザグッ。「・・え、斬られた」

拳ではなく、剣を振り下ろした。

モロにミスリルタンクトップがない首筋から入った。

ここまでやるとは、計算外。

剣が首のなかばまで食い込む感触。

吹き出す血が自分で見える。

飛び出した剣先は、リュウ達にも見えてしまった。

『超回復』

バインッ。

剣は、身体の中に入った異物とみなされる。

『超回復』が働くときに押し出され、剣が横に弾かれた。

私は衝撃で倒れてしまった。

私が斬られた瞬間に「暁の光」の3人が飛び出してきた。

「てめえら、ユリナに助けられて、何てことするんだ!」
「怒り心頭!」
「ユリナさん!」

「お前ら、逆らうか」

止めなきゃ。

「リュウ、みんな、ストップ」


騎士が剣を構えたが、真ん中で倒れていた私は立ち上がった。

首の傷がどうなったか、血にまみれて見えないだろう。

敵も味方も驚いていた。

「さ、みんな、帰ってご飯にしよ」
「ユリナさん・・怪我は・・」

「ま、待て・・」

「行こう、リュウ」
「けど・・。分かった」

あれほど盛り上がっていたのに、帰りは誰も言葉を発しなかった。

ギルドには寄らず、街の入り口で解散した。

収納指輪の中身は、1日休みを置いて換金しに行く約束をした。

今日はリュウも宿まで送ってくれなかった。

別れ際の言葉が胸に突き刺さった。

「ユリナ、あんだけの回復スキルなら、怪我人に治療して血止めくらいできなかったのかな・・。ごめん、忘れてくれ」

彼の優しい人間性故の言葉。

だけど、私には効いた。

スキルを使うと血止めでは済まない。あんな連中の前では使えない。

リュウには冷たい人間に映っただろう。

帰り道は泣いた。

首を斬られた痛みも一瞬で止まったのに、胸が痛くてたまらない。

『超回復』は、傷しか治せない。


涙が止まらない。

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