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78 『政』属性と『闇』の女の子

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なんだか勢いで、若い冒険者を諭してしまった。

漠然とだか根が悪人だとも思わなかったから、体も治した。あとは彼ら次第。

「治した体を使って悪に手を染めたら、責任を持ってぶちのめしに行くかな」

もうカナワのリュウの彼女には戻れない。

そう思うから、なおさらリュウにどことなく似た彼らが気になった。

もう、リュウと一緒に過ごす未来は浮かばない。

『超回復』を手にして半年を越えた。頭が悪い私にだって、分かったことがある。

私の体の秘密。

「等価交換」の材料がないと、消滅する可能性がある。だから不死ではない。

だけど「不老」だと思う。

神のシステムと呼ばれるレベルアップと、多少のパワー増加はある。

だけどレベル40なら、あって当たり前の、筋肉増加がない。

100万ゴールドも出して姿見を買った。

前の自分の姿を正確に覚えてる訳でもないが、鏡に映った自分は『超回復』を得る前のレベル8のままだ。

レベル18の14歳女子より細かった腕。
栄養を取っているのに、ふっくらとしない頬。

身体の中も完璧に維持されているだろう。

それなら、私は妊娠や出産とも無縁だ。

◆◆
安宿で2日寝た。オルシマに定着してから3週間が過ぎた。

今日からオークだらけのダンジョン32階から再挑戦。

ギルドに行くと、変なムード。

受付前はギルマス、副ギルマスが、白銀の胸当てを着けた騎士風6人と話をしている。

ジェフリーさんが私に気付き「撤退」のサインを出した。

だが、白銀騎士の紅一点、女性騎士も私に気付いた。

「ベノア様、あの女です。怪しげな回復術を使って聖女を名乗っています」

「げ!誰なの?」

「まあ構えるな、女よ」

上から目線のこいつら。北に400キロのツラカーナの街から来た、マリルート神の信徒。

私が聖魔法の使い手なら、教会本部で手厚く保護するそうだ。

「ああ宗教の勧誘か。他を当たって下さい」

教会勢力。上層、下層でくっきり別れる組織だ。

下層は孤児院を経営したり慈善事業に身を投じる、本物の聖職者で成り立っている。

だが協会を統括する上層組織は、長い歴史の中で腐っていった。

「聖」魔法より「政」治が得意な人。いわゆる「政」属性の人間が支配している。

「宗教を利用した何か」だと聞く。

ぶっちゃけ、お金が好きな人の集まりだ。

たちが悪いことに、腕がいい回復魔法の使い手を上層で抱え込んでいる。

相手を選んで回復させ、自分達の価値を高めている。

こいつらは「上層」だ。あ、いや、根拠はない。装備が煌びやかでお金持ちに見える。

「ルリイ、その女を鑑定せよ」
「はい・・ん?」

「どうした」

「レベルは41ありますが、スキルなし、魔力ゼロです・・」

「ね。私は「劣等人」。気功回復って手品しか使えないの」

「だが、聖女を騙る不届き者である。捕らえよ」

「騙ってない。なんでそうなるの!」

例の如くアルバさんが出てきてくれて、その隙にギルドから離脱した。

ところが追手はいた。

ギルドの外に控えていた小柄な黒装束が追ってきた。

スタートダッシュで勝っていたが、徐々に追い付かれ、後ろから組みつかれた。

街の門近くで人が沢山いるのに、構わず仕掛けてくる。

「くそっ。食らえっ」

見たことがない技。

肘撃ちをかわされ、足元に潜り込まれた。

両足を交差させられうつぶせに転ばされ、絡んだ足に支柱のように自分の足を入れてきた。

「なんだこれ、いでででで」

「完全に関節が極った。動くと痛いだけ。話を聴いて問題なければ、解放」

声は女の子だ。


「解け・・あ、あれ、あんた・・」

「え?あ、あれ、お姉さんは・・」

黒装束だけど、初対面じゃない?


話したいけど、関節を極められてる。

「い、いでえーー!この技解いて!」

「め、命令。ごめん・・」

「命令じゃねえ。そっちのやり方が問題だらけだろ!」

痛みに慣れた私だけど、関節をねじ曲げられる痛みはきつい。

この理不尽に、久々の怒りが沸いてきた。

話するにも、ひとまず逃げなきゃ。


「こなくそう、えげげ!」びきっ、ごきごきっ!

うつ伏せにされていたとこから、強引に半回転。腰、左足首、右膝に激痛が走る。

「やめて。怪我させたくない!」

「食らえ」

「超回復&破壊的絶対領域」ぼきっ!

訳分からんが、やってみたら大正解だ。

私の曲がった腰、足、膝が瞬時に治る。

一方、障害物と見なされた黒装束の子の、絡んだ足は、私の足が戻る方向に回された。

黒装束の子、上半身が起きたまま、下半身は私の足に強引に合わせられ瞬時に半回転した。

べきべきべきべき!
「ぎゃーーーー」

これはやりすぎた。


「よしミール、よく止めたぞ」

白銀騎士4人が追い付いて来た。2人はアルバさんが止めてくれているようだ。

「あぐぐぐ」黒装束がうめいている。

「お前ら、その女を捕縛せよ」
「はいっ」

「くうっ。あああ」

敵は2つに別れた。

私を捕まえようとするベノアという男と、それに従う2人。

そして私が下半身を破壊した黒装束と、彼女?を介抱するルリイ。

私は黒装束の子に向かった。

この光景を見て、怒りが沸かないはずがない。

「・・くそベノア」

「この女、聖騎士ベノア様を呼び捨てだと」

「そのミールって子、大怪我してるよ」

「構わん。そいつは下賤な闇スキル持ち。聖属性の上位スキル「聖騎士」を持つ、選ばれた私とは違うのだ」

「何が違うのよ」

「闇の者は醜い。黒装束のフードの下もほら、この通りだ」

ざわざわざわ。

「あ・・」

抵抗しようとしたけど、ミールは手を引っ込めた。

日頃から、どんな扱いを受けているか分かった。

フードの下のミールの素顔を見て、目を見張った。

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