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87 目で殺される、目を殺す
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鳥ダンジョンから帰ってきた。今後のプランは2通りだ。
判断することはダチョウ208匹を「等価交換」の材料として、このまま上級ダンジョン32階以降に降りるか否か。
ダチョウを「等価交換」の材料に再び鳥ダンジョンに潜れば、ソロでも使用ダチョウ1匹に対して、捕獲ダチョウ2匹プラスターキー1匹の感触。
ダチョウ400匹くらいの収納指輪満タンから上級ダンジョン挑戦か、迷っている。
「宿取って、のみながら考えるか」
ダンジョン横の割高宿を2泊取った。
◆
例によってホテルの食堂で飲んでいる。
一応、日が傾くまで待った。
先日、ワインのうまさに驚いた私はワイン、ウイスキー、ジン、ラムという酒を注文してテーブルに並べている。
「うわあ、みんな美味しい。強さもバラバラだ」
ジンというやつをあおったらグラグラきたが、気に入ったからチビチビやっていた。
かなり酔ったころ、特に今日の屈強な冒険者オンリーの宿屋に似つかわしくない男が入ってきた。
身長は175センチあるが、35歳くらいの神経質そうな目をした細身の男。服はスーツスタイルの役人風だ。
連れは護衛3人かな。剣士2人と魔法使いか。どちらも装備と武器が高そうだ。
護衛3人に待たせ、店の奥のテーブルに座る私の前に、そいつが立った。
「相席、よろしいですか?」
「・・酒はあげないよ、自分で注文して」
私の反対側に座った。
私は自分に『超回復』をかけて酔いを飛ばした。
「オルシマのD級冒険者、ユリナで間違いないですか」
「ええ。そっちは?」
「私はエルキール。貴族等の横暴などがないか、国から派遣された監視役です。あなたがオルシマギルドで冒険者登録をされた日の出来事について聞きにきました」
私の中でアラームが響き出した。
キーワードは「国」だ。今更説明しないが、私やアリサ達が巻き込まれたトラブルは「国」のトップである国王が、不老不死にまつわる「何か」を探していたことが原因。
そして私は、その「何か」か、それに近いものを手にしてしまった。
この役人のような人が、どんな立ち位置か分からない。だけど彼は私が未知の回復スキルを使ったことを知っている。
「確かに、私もあの場にいたけど、何か罰でもあるのかしら」
「いや、我々の調査ではむしろ、あなたは被害者です、だが・・」
来た。
「不思議な術で瀕死の女性を救ったという情報もある」
「擦り傷を治せるスキルよ」
少しの沈黙のあと、彼は口を開いた。
「余計なことは報告していません。簡単に言えば、私は貴族家が与えられた権利以上のことをしないか、監視するのが仕事です」
「それなら、私と接触する必要はないでしょ」
「お願いがあるのです。治療して欲しい人間がいるのです」
「治す相手は?」
「・・妻です」
罠か本気か、分からない。所詮は私だ。
「対価は決まってるよ」
「用意しております。本当はオルシマの街で接触したかったのですが、冒険者やギルド関係者かあなたのことを教えてくれないのです」
偶然とはいえ、冒険者ギルドのギルマス、副ギルマスの身内を治療している。秘かに箝口令でも敷いてくれているのか。
対価とは何か。聞くだけ聞いてみよう。
「治療できるとして、私に何をくれるのかしら」
「とある侯爵家の人間でジュリアの情報、あなたには「火のジュリア」と言った方がいいでしょうか」
心拍数が跳ね上がる。思わず、カップに残っていたジンをあおった。
「あなた、どこまで調べて・・」
「お願いします」
・・負けた。
私は『超回復』で何人もの人間を治療した。ズルいけど優位な立場から相手を見てきた。
感謝、感動、戸惑い、安心、逆に狡猾、商機、金欲なんてものも見た。
この人の目は「覚悟」だ。
私にも分かる。貴族を監視する査察官が貴族の情報を売る。これは重罪だ。
王族、公爵の次が侯爵だ。この人は捕まれば死罪。家族も無事で済まされない。
情報の中身が嘘でも、取引したこと自体が許されないかもしれない。
「初回限定サービスで1000ゴールド」
「え?」
「対価は小銀貨1枚。それが名もなき神との契約なの」
「・・・・」
「誰だか知らないけど、貴族の情報なんて重いものを用意しすぎ。失格ね。他を当たって」
「そんな・・」
護衛3人を呼んだ。
「エルキールさんとの話は終わったわ。連れて帰って」
こいつら3人も、重要な仕事をする役人の護衛か補佐官。生まれもそれなりだろう。
睨まれている。
「よろしいのですか?エルキール様」
「私にお願いがあったそうだけど、私のスキルでは役に立たないみたい」
「嘘だわ、なにがスキルよ」
女魔法使いが、いきなり私を否定した。
食堂には20人くらいの大男がいるが、みんな多少なりとも関わった人達。臨戦態勢を取ってくれている。
女魔法使いは、私を凝視している。
あの目は知っている。聖騎士騒動のとき、私を鑑定した女騎士の瞳が、あんな風に輝いていた。
「そのユリナは、スキル発動に必要な魔力ゼロ。くくっ、劣等人です」
鑑定持ちか、嫌な女だ。
「やめなさいマリアン」
「何の話か知らないけど、劣等人の分際で生意気な態度」
「劣等人は否定しないけど、エルキールさん、馬鹿な部下の人がマナー違反してるよ」
だけど女魔法使いは鑑定を止めない。
「へえ~レベル45は大したものね。だけど魔力ゼロ。 HPも本当の最低の135。ははははっ」
今日は新たなお酒との出会いの日だったのに、台無しだ。
私には魔力がないから分からないが、魔法使いは魔力を私の中に通して私の中身を探っているんだろう。
だったら『超回復』で弾き返せないだろうか。
「人の情報を垂れ流すな、馬鹿女。『超回復』!」
ばぢ、ばぢぃ!
「ぎゃああああ!」
女魔法使いが両目を押さえて悲鳴を上げた。
指の間から血が溢れている。
一体、何が起こった?
判断することはダチョウ208匹を「等価交換」の材料として、このまま上級ダンジョン32階以降に降りるか否か。
ダチョウを「等価交換」の材料に再び鳥ダンジョンに潜れば、ソロでも使用ダチョウ1匹に対して、捕獲ダチョウ2匹プラスターキー1匹の感触。
ダチョウ400匹くらいの収納指輪満タンから上級ダンジョン挑戦か、迷っている。
「宿取って、のみながら考えるか」
ダンジョン横の割高宿を2泊取った。
◆
例によってホテルの食堂で飲んでいる。
一応、日が傾くまで待った。
先日、ワインのうまさに驚いた私はワイン、ウイスキー、ジン、ラムという酒を注文してテーブルに並べている。
「うわあ、みんな美味しい。強さもバラバラだ」
ジンというやつをあおったらグラグラきたが、気に入ったからチビチビやっていた。
かなり酔ったころ、特に今日の屈強な冒険者オンリーの宿屋に似つかわしくない男が入ってきた。
身長は175センチあるが、35歳くらいの神経質そうな目をした細身の男。服はスーツスタイルの役人風だ。
連れは護衛3人かな。剣士2人と魔法使いか。どちらも装備と武器が高そうだ。
護衛3人に待たせ、店の奥のテーブルに座る私の前に、そいつが立った。
「相席、よろしいですか?」
「・・酒はあげないよ、自分で注文して」
私の反対側に座った。
私は自分に『超回復』をかけて酔いを飛ばした。
「オルシマのD級冒険者、ユリナで間違いないですか」
「ええ。そっちは?」
「私はエルキール。貴族等の横暴などがないか、国から派遣された監視役です。あなたがオルシマギルドで冒険者登録をされた日の出来事について聞きにきました」
私の中でアラームが響き出した。
キーワードは「国」だ。今更説明しないが、私やアリサ達が巻き込まれたトラブルは「国」のトップである国王が、不老不死にまつわる「何か」を探していたことが原因。
そして私は、その「何か」か、それに近いものを手にしてしまった。
この役人のような人が、どんな立ち位置か分からない。だけど彼は私が未知の回復スキルを使ったことを知っている。
「確かに、私もあの場にいたけど、何か罰でもあるのかしら」
「いや、我々の調査ではむしろ、あなたは被害者です、だが・・」
来た。
「不思議な術で瀕死の女性を救ったという情報もある」
「擦り傷を治せるスキルよ」
少しの沈黙のあと、彼は口を開いた。
「余計なことは報告していません。簡単に言えば、私は貴族家が与えられた権利以上のことをしないか、監視するのが仕事です」
「それなら、私と接触する必要はないでしょ」
「お願いがあるのです。治療して欲しい人間がいるのです」
「治す相手は?」
「・・妻です」
罠か本気か、分からない。所詮は私だ。
「対価は決まってるよ」
「用意しております。本当はオルシマの街で接触したかったのですが、冒険者やギルド関係者かあなたのことを教えてくれないのです」
偶然とはいえ、冒険者ギルドのギルマス、副ギルマスの身内を治療している。秘かに箝口令でも敷いてくれているのか。
対価とは何か。聞くだけ聞いてみよう。
「治療できるとして、私に何をくれるのかしら」
「とある侯爵家の人間でジュリアの情報、あなたには「火のジュリア」と言った方がいいでしょうか」
心拍数が跳ね上がる。思わず、カップに残っていたジンをあおった。
「あなた、どこまで調べて・・」
「お願いします」
・・負けた。
私は『超回復』で何人もの人間を治療した。ズルいけど優位な立場から相手を見てきた。
感謝、感動、戸惑い、安心、逆に狡猾、商機、金欲なんてものも見た。
この人の目は「覚悟」だ。
私にも分かる。貴族を監視する査察官が貴族の情報を売る。これは重罪だ。
王族、公爵の次が侯爵だ。この人は捕まれば死罪。家族も無事で済まされない。
情報の中身が嘘でも、取引したこと自体が許されないかもしれない。
「初回限定サービスで1000ゴールド」
「え?」
「対価は小銀貨1枚。それが名もなき神との契約なの」
「・・・・」
「誰だか知らないけど、貴族の情報なんて重いものを用意しすぎ。失格ね。他を当たって」
「そんな・・」
護衛3人を呼んだ。
「エルキールさんとの話は終わったわ。連れて帰って」
こいつら3人も、重要な仕事をする役人の護衛か補佐官。生まれもそれなりだろう。
睨まれている。
「よろしいのですか?エルキール様」
「私にお願いがあったそうだけど、私のスキルでは役に立たないみたい」
「嘘だわ、なにがスキルよ」
女魔法使いが、いきなり私を否定した。
食堂には20人くらいの大男がいるが、みんな多少なりとも関わった人達。臨戦態勢を取ってくれている。
女魔法使いは、私を凝視している。
あの目は知っている。聖騎士騒動のとき、私を鑑定した女騎士の瞳が、あんな風に輝いていた。
「そのユリナは、スキル発動に必要な魔力ゼロ。くくっ、劣等人です」
鑑定持ちか、嫌な女だ。
「やめなさいマリアン」
「何の話か知らないけど、劣等人の分際で生意気な態度」
「劣等人は否定しないけど、エルキールさん、馬鹿な部下の人がマナー違反してるよ」
だけど女魔法使いは鑑定を止めない。
「へえ~レベル45は大したものね。だけど魔力ゼロ。 HPも本当の最低の135。ははははっ」
今日は新たなお酒との出会いの日だったのに、台無しだ。
私には魔力がないから分からないが、魔法使いは魔力を私の中に通して私の中身を探っているんだろう。
だったら『超回復』で弾き返せないだろうか。
「人の情報を垂れ流すな、馬鹿女。『超回復』!」
ばぢ、ばぢぃ!
「ぎゃああああ!」
女魔法使いが両目を押さえて悲鳴を上げた。
指の間から血が溢れている。
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