ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

文字の大きさ
95 / 188

95 超マラソン1200キロ

しおりを挟む
ノカヤ上級ダンジョンをクリアした。

ギルドの簡易出張所でクリア報告をしたら、オルットさん達8人に寄生したと思われた。

だけど、オルットさん達が私の単独クリアを報告。自分達が「寄生」をしていて、ダンジョンボス討伐未達成を正式に申告した。

3日間はダンジョン横のホテルで休んだ。エールは1日5杯までに控えた。

大仕事が待っている。

3日後の夕方。ギルド出張所でダンジョンボスを出しだ。右半身が爆発していて査定額ガタ落ちだと言われたが、構わない。

あえて人が20人いる時を狙い、私か今、ここにいることを印象付けた。ダンジョンの中で私を監視していた奴と同じ雰囲気の人間もいた。

受付さんに、わざわざ酒目当てに南に行くことを告げた。


ギルドを出た。そのとたん・・

南ではなく、北に全力で走り出した。

142日でオルシマの街とお別れをする気はない。

辺りが薄暗くなりかけたころ、4兄弟次男のサルバさんが追走していたが、1時間もしたら離れだした。

「超回復ドーピング」で走る私に1時間も付いてくるサルバさんは、すごい。

だけど待てない。彼も大切な人。私の復讐劇に誰も巻き込まない。

真夜中はより走りやすいように、身体に色を塗って裸走行。

昼はハンカチで顔を隠し、お尻が見えそうなくらい短いミスリルシャツで走った。

念のため大きな街の近くを迂回したから、恐らく33時間走った。
1200キロを走り切り、ジュリアがいるマイミ侯爵領の領都ガーザに到着した。

風のドラゴンパピー鱗を使い、旅のドラゴニュート女性に変身。

酒場で情報を仕入れに行くと、あっさりとジュリアのことが分かった。


3ヶ月前に北のジョアンヌ聖国から、ハサ侯爵家の長男が外交のために来た。

侯爵の血を引き見た目もいいジュリアが、案内兼、護衛として侯爵に指名された。

転機は隣国の侯爵長男のために行われた晩餐会。ジョアンヌ聖国から追ってきた、政敵が放った刺客5人がハサ侯爵家の長男を襲った。

万事休す。本職の護衛も役に立たなかったが、刺客の前にジュリアが立ちはだかった。


ジュリアは瞬時に刺客5人を炎の檻で包み、灰にした。刺客を1人で退けたのだ。


助けられた隣国の侯爵長男が「私を身を挺して助けてくれた、あの美しく強き女性は」と聞いた。

侯爵は母親が平民などと余計なことは言わず「我が娘、ジュリア」とだけ答えた。


そこから本人抜きで縁談が決まったそうだ。

第二婦人とはいえ、教会勢力と結び付いた大貴族。ジュリアも乗り気だという噂だ。


間に合ったという感じだ。

6日後にセレモニーがあり、街でお披露目のあとにジュリアは隣国に旅立つ。

街でパレードをやる。目立つ馬車に乗せられ戦いにくい状態で移動する。街の建物の間を馬車で通る。宗教国家に嫁ぐため、街を出る前に大聖堂で祈りを捧げる。隣国へのルートが2つあるが、どちらにも溪谷地を通る。

「なんだ、一点だけ、私でも狙えるポイントがあるよ、ジュリア」

自由な冒険者のジュリアは強かった。

だけど本当の貴族になってしまうジュリアは、制約だらけとなるだろう。

反則アリで戦う私は6日後が楽しみになった。

私はドラゴニュート女性に変身したまま、街を歩いている。

平和だ。

まあ、完全ではないが・・

次の日、街の外に出て、 素早く溪谷地を見て回った。

お目当ての人間を見つけた。


ジュリアが嫁入りするために、溪谷地を通る。ルートは2つあるが、護衛側は襲撃者に備えて警備を敷く。

今回は東西ある溪谷地の西を通るようだ。

秘密にはなっているが、同じ紋章を付けた兵士達が当日の警備員の配置などを決めている。

緩いが仕方ない。

ジュリアは美しく、強力な攻撃手段を持つマアミ侯爵家の娘。冒険者を経験を生かし、華麗な技で他国の賓客を救ったヒロインだ。一見すると、マイナスイメージがない。

だから、関係者は襲撃なんてされないと思ってる。


「けどその経歴の裏で、何をしていたか侯爵様もつかんでない訳か」


実際に、私がジュリアを殺しに来た。幸せな結婚なんてさせない。

そしてジュリアを狙うのは私だけではない。

私の移動力を生かして探すと、溪谷地のルートを入念に調べている人間がいた。

お話を聞いてみる。ターゲットは溪谷地を3キロ離れた位置から監視している2人。

私の「魔力ゼロ」はこういうとき役に立つ。

大きな木の枝に乗って、私と同じくらいの年齢の女性が溪谷を凝視している。
男性は記録している。女性は「遠見」スキル持ちか?

急接近する私の発見が遅れた。ドラゴニュート姿の私を見て逃げるだろうから、足が遅い方を捕まえよう。

だが、逃げない。

男性の方が足を引きずりながら、女性に「逃げろ」と言っている。右足から金属音がする。

「あ~。警戒しながら話を聞いて。私はジュリアに恨みを持つ者」

場合によっては姿を変えればいい私は、目的を明かした。


「あの女の・・」

目的は同じと見た。だけど相手の警戒度はマックス。当たり前だ。ジュリアの襲撃を狙っているということは、必ず騙されて死ぬ目にあっている。

あの日の私達のように。

「アリサ、モナ、ナリス・・」

油断した。女性の体がぶれたかと思うと、私の後ろに回りナイフのようなものを首筋に当てている。

優位なのは彼女に見える。だけど口を開いたのは私の方。

「無駄な戦闘はしたくない。話を聞きに来ただけだから」

「は、今はどんな状況か・・ひっ」
私は首筋に当てられたナイフに体重をかけながら、後ろを向いた。ナイフが首に潜り込んだ。

ブシュッ。『超回復』

「は・・」

「種明かしはしないけど、私もジュリアを憎んでいる。仲間を殺された」

「ヘルダ、武器を置こう。そのドラゴニュート女性、簡単に俺達を殺せそうだ」

男性はエイル、女性はヘルダ。戦士と斥候で、2年前にジュリアに騙されて命を落としかけた。

仲間2人が騙されたときに命を落としたそうだ。

やっぱり、目的は同じだった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...