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154 腐ったユリナ
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5日前、ワンバーンに飛ばされた場所に戻ってきた。
進んだ距離は100キロくらい。
ノエルと2人、のんびり移動してきた。
元の場所には、大型のテントが4つあった。
イツミ伯爵家20人全員、カロ男爵家、グママ男爵家の合同部隊から各20人が残り、私達を待っていた。伯爵様もいた。
救出隊を出そうにも、範囲絞れず。
私達を掴んだワンバーンが海の方向に向かって行ったのだけ分かった。
「魔の森」と「魔の丘」の向こう側。
突破できる戦力がいまだに整わず、ここに止まっていたそうだ。
「良かったよ。無理に助けに来てくれて死人が出たら意味ないからね」
「だね。ダンジョンに入らずに、早目に帰ってきて正解」
ノエルの仲間のミリーとジュミは泣いて顔がくしゃくしゃになっていた。
ミリーとジュミがノエルに飛び付いた。
「ただいま。ユリナが命がけで救ってくれたんだよ。あのね・・」
また恥ずかしいことを言われると困る。
討伐した素材の分配の話をした。私の分があれば放棄する。
「伯爵様、それに男爵家の代表の方々、今回の素材はどう分けるの」
「困ってるのは、そこだよ。ワイバーンの素材とハーピー100匹を伯爵家とカロ男爵家、グママ男爵家で三等分って言ったけど、2家とも、もらえないって言うんだよ」
カロ男爵家、グママ男爵家で、合わせてハーピー100しか受け取れないと、言っていた。
「ワイバーンの脅威を取り除いていただいた上に貴重な素材を求めたら、主君に斬り殺されてしまいます」
ところが、イツミ伯爵家も遠慮。
ワンバーンの実質的な討伐者。つまり私やノエルの意見を求められている。
目の前で繰り広げられているのは、壮絶な譲り合いだ。
「どうすんの、ユリナ」
「私のやり方は決まってる。けど任せると、分け前がなくなるよ」
「構わないって。100年暮らせるくらいの貯金はあるから」
みんなが注目している。
その中に、最初にハーピーから助けた3人組もいる。
きれいな目だ。闇の子達のような、きれいな目だ。
私なんかのために命をかける、馬鹿な子の目だ。
やっておくことは決まった。
きれいな目をした彼らと、縁を切らねばならない。
嫌われよう。
私はフードをかぶって顔を隠した。スライムの出番だ。
私は悪になる。
伯爵様の収納指輪から、預かりとなっていたワイバーンの牙を出してもらった。
「私は権利を放棄するしかないわ」
「なっ、それでは我々も受け取れません」
「それは、おやめ下さい」
「黙っててよ。お金は欲しいのよ」
「は?」
声のトーンが変わった私に、みんなが驚いている。
ノエルだけは真っ直ぐ私を見ている。
「私は基本、貴族は助けないの。今回は、私に宿っている、名もなき神、そいつが農民を助けろってうるさかったの」
伯爵軍は、黙って見ててくれる。
男爵家2家の人間は驚いている。
「私だって、ワイバーンの素材を売ってぜいたくしたい。本来ならこれも私のものよ」
こっそり、左手にスライムを出した。
そして右手でワイバーンの牙を持って、かかげた。
ぼそっ。
「スライム変換」ぱちい。
手だけ、見えるようにした。スライム変換で、すけすけ水色で中に骨が浮いている。
ざわざわざわざわざわ。
「ほら。欲を持って金目の物をつかんだら、呪いがかかるのよ」
ワイバーンの鋭い牙を左手人差し指でつついた。
ぱしゃっ。左手のスライム膜が破れて、骨が流れ出た。
「うわあああ!」男爵家の子が声を上げた。
「今回もダメか。忌々しい」
貴重なワイバーンの牙を地面に放り投げた。
瞬間、右手にオーク肉の塊を出した。
「超回復&等価交換」ぱちい!
身長は150センチまで戻し、フードを外して素顔を見せた。
まるで、ワイバーンの牙を放したから、腕が戻ったように演出した。
「これが、強力スキルを使える代償。金になるものを手にすると、恩着せがましい、名もなき神。そいつが呪いかけるの」
エールを出してあおった。
男爵軍の数人が、私のことを嫌なものを見る目で見始めた。
この俗物め、と。
最初にハーピーから助けた3人組も、困惑している。
「まだ、神様が合格点くれない。何十回とタダ働きしてるのよ」
男爵軍の3人組が近づいてきた。
「何か欲しいの?」
「い、いえ、私達を助けてくれたのは・・」
ちょっと、悪い笑い方をしてみる。
「神様にアピールするポイント稼ぎ」
私の「偽善活動」のため、ワイバーンの素材を被害にあった近隣の村に配れと言った。
2匹目のワイバーン、帰る道中で捕獲した素材を収納指輪から出した。
「ノエル、この素材、伯爵様なら、うまく使ってくれるよね」
「あなたは?」
「私は帰る」
私はイツミ伯爵家へ続く道を歩き出した。
間違ってても、これでいい。
むやみに貴族に関わるべきじゃない。
この男爵家の子の何人かは、オルシマに来てしまう匂いがする。
オルシマでは、無属性、弱い闇の子しか受け入れる気はない。
これからも、私が心の拠り所になる子が増える。
助けが必要ない子には、まだ来てほしくない。
男爵家の3人組は、信頼し合える仲間がいる。私に余計な幻想を抱く必要はない。
もっと穏便に、いい解決策はあっただろう。
だけど、私にはこんな間抜けな方法しか思い付かない。
「今、オルシマに来てる子は、弱い「闇属性」の子だけで20人を超えたな。そのうち様子を見に行かなきゃ」
ノエルにも馬鹿だとバレた。
彼女も冷めただろう。
あきれられるのもいい。それなら・・
これ以上、ノエルを好きにならずにすむ。
進んだ距離は100キロくらい。
ノエルと2人、のんびり移動してきた。
元の場所には、大型のテントが4つあった。
イツミ伯爵家20人全員、カロ男爵家、グママ男爵家の合同部隊から各20人が残り、私達を待っていた。伯爵様もいた。
救出隊を出そうにも、範囲絞れず。
私達を掴んだワンバーンが海の方向に向かって行ったのだけ分かった。
「魔の森」と「魔の丘」の向こう側。
突破できる戦力がいまだに整わず、ここに止まっていたそうだ。
「良かったよ。無理に助けに来てくれて死人が出たら意味ないからね」
「だね。ダンジョンに入らずに、早目に帰ってきて正解」
ノエルの仲間のミリーとジュミは泣いて顔がくしゃくしゃになっていた。
ミリーとジュミがノエルに飛び付いた。
「ただいま。ユリナが命がけで救ってくれたんだよ。あのね・・」
また恥ずかしいことを言われると困る。
討伐した素材の分配の話をした。私の分があれば放棄する。
「伯爵様、それに男爵家の代表の方々、今回の素材はどう分けるの」
「困ってるのは、そこだよ。ワイバーンの素材とハーピー100匹を伯爵家とカロ男爵家、グママ男爵家で三等分って言ったけど、2家とも、もらえないって言うんだよ」
カロ男爵家、グママ男爵家で、合わせてハーピー100しか受け取れないと、言っていた。
「ワイバーンの脅威を取り除いていただいた上に貴重な素材を求めたら、主君に斬り殺されてしまいます」
ところが、イツミ伯爵家も遠慮。
ワンバーンの実質的な討伐者。つまり私やノエルの意見を求められている。
目の前で繰り広げられているのは、壮絶な譲り合いだ。
「どうすんの、ユリナ」
「私のやり方は決まってる。けど任せると、分け前がなくなるよ」
「構わないって。100年暮らせるくらいの貯金はあるから」
みんなが注目している。
その中に、最初にハーピーから助けた3人組もいる。
きれいな目だ。闇の子達のような、きれいな目だ。
私なんかのために命をかける、馬鹿な子の目だ。
やっておくことは決まった。
きれいな目をした彼らと、縁を切らねばならない。
嫌われよう。
私はフードをかぶって顔を隠した。スライムの出番だ。
私は悪になる。
伯爵様の収納指輪から、預かりとなっていたワイバーンの牙を出してもらった。
「私は権利を放棄するしかないわ」
「なっ、それでは我々も受け取れません」
「それは、おやめ下さい」
「黙っててよ。お金は欲しいのよ」
「は?」
声のトーンが変わった私に、みんなが驚いている。
ノエルだけは真っ直ぐ私を見ている。
「私は基本、貴族は助けないの。今回は、私に宿っている、名もなき神、そいつが農民を助けろってうるさかったの」
伯爵軍は、黙って見ててくれる。
男爵家2家の人間は驚いている。
「私だって、ワイバーンの素材を売ってぜいたくしたい。本来ならこれも私のものよ」
こっそり、左手にスライムを出した。
そして右手でワイバーンの牙を持って、かかげた。
ぼそっ。
「スライム変換」ぱちい。
手だけ、見えるようにした。スライム変換で、すけすけ水色で中に骨が浮いている。
ざわざわざわざわざわ。
「ほら。欲を持って金目の物をつかんだら、呪いがかかるのよ」
ワイバーンの鋭い牙を左手人差し指でつついた。
ぱしゃっ。左手のスライム膜が破れて、骨が流れ出た。
「うわあああ!」男爵家の子が声を上げた。
「今回もダメか。忌々しい」
貴重なワイバーンの牙を地面に放り投げた。
瞬間、右手にオーク肉の塊を出した。
「超回復&等価交換」ぱちい!
身長は150センチまで戻し、フードを外して素顔を見せた。
まるで、ワイバーンの牙を放したから、腕が戻ったように演出した。
「これが、強力スキルを使える代償。金になるものを手にすると、恩着せがましい、名もなき神。そいつが呪いかけるの」
エールを出してあおった。
男爵軍の数人が、私のことを嫌なものを見る目で見始めた。
この俗物め、と。
最初にハーピーから助けた3人組も、困惑している。
「まだ、神様が合格点くれない。何十回とタダ働きしてるのよ」
男爵軍の3人組が近づいてきた。
「何か欲しいの?」
「い、いえ、私達を助けてくれたのは・・」
ちょっと、悪い笑い方をしてみる。
「神様にアピールするポイント稼ぎ」
私の「偽善活動」のため、ワイバーンの素材を被害にあった近隣の村に配れと言った。
2匹目のワイバーン、帰る道中で捕獲した素材を収納指輪から出した。
「ノエル、この素材、伯爵様なら、うまく使ってくれるよね」
「あなたは?」
「私は帰る」
私はイツミ伯爵家へ続く道を歩き出した。
間違ってても、これでいい。
むやみに貴族に関わるべきじゃない。
この男爵家の子の何人かは、オルシマに来てしまう匂いがする。
オルシマでは、無属性、弱い闇の子しか受け入れる気はない。
これからも、私が心の拠り所になる子が増える。
助けが必要ない子には、まだ来てほしくない。
男爵家の3人組は、信頼し合える仲間がいる。私に余計な幻想を抱く必要はない。
もっと穏便に、いい解決策はあっただろう。
だけど、私にはこんな間抜けな方法しか思い付かない。
「今、オルシマに来てる子は、弱い「闇属性」の子だけで20人を超えたな。そのうち様子を見に行かなきゃ」
ノエルにも馬鹿だとバレた。
彼女も冷めただろう。
あきれられるのもいい。それなら・・
これ以上、ノエルを好きにならずにすむ。
応援ありがとうございます!
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