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160 さよならアリサの弟君
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私、ノエルの共通の敵を追い詰めた。
イーサイド男爵家の長男ライナーに、ノエルがトドメを刺す。
私はナイフを持ち、ライナーにダッシュ。
奴は素早く反応し、ナイフを杖で受けた。
私とノエルは、恐ろしいほど呼吸が合う。
今回は私が牽制、ノエルがアタッカー。
作戦も立ててないのに、決着の付け方まで分かっている。
ただし、フランソワ夫人らは、私達の前代未聞の連携に驚くだろうが。
つばぜり合いを続ける、私とライナー。
「よっし、ノエル」
「いくよユリナ。火の眷属よ、我がために炎を吐き尽くせ!」
精霊魔法サラマンダーの炎が轟音を立てて、襲いかかる。
「うそだろ・・」
ノエルの炎は、ライナー、そして私を包み込んだ。
ライナーもまさか、ノエルが私ごと燃やすとは思わなかったのだろう。
「えぐえうわああ!」
聞く余裕はないライナーに呼びかけた。
「ライナー、あなたが憎かったけど、それでもアリサの肉親。仕掛けないなら、放っておいたよ」
身長は130センチ。
熱波に苦しみ、もがくライナー。彼の胸に手を当てた。
「さよならライナー」
ばち、ばちいいっ。
ライナーが一瞬、炎を上げて崩れ落ちた。
「・・ごめんね、アリサ」
◆
イーサイド男爵家は当主と、戦闘しか能がない次女が残っている。
家は残るだろう。ただ今回、身内が他の貴族家に害をなそうとしたし、賠償などで外から攻められる。
もう関わる気はない。
「ユリナ様、助かりました。お陰さまで全員が無傷です」
「巻き込んだのは私みたいで、こちらこそすみません」
「いえ、イーサイドとは我が家の第三夫人、三男問題で、いずれ事が起こるかと思っておりました。解決の糸口ができましたし、お礼を言わせてください」
◆◆
念のため、近くの村に一緒に一泊。
フランソワ夫人とフロマージュちゃんはカナワの街に帰った。
護衛騎士のうち2騎は、フランソワ夫人の実家イツミ伯爵家に、今回の顛末を伝えに行った。
私の役目はここまで。
今度こそ拠点のオルシマに帰る。
フロマージュちゃんに引き留められたが、再会を約束して別れた。
東に移動して、海岸に沿った細い街道を歩いている。
最近は治安が悪い。危険地帯なので、私達しかいない。
「ノエル、サポートありがとう。お陰で心置きなく戦えた」
「うん。ユリナが1人で魔法使いと勝負したいかと思ったんだ」
「さ、行こうか。等価交換の材料も減ったし、木の枝とか拾いながら歩くよ」
「ああ、有機物ってのがユリナのスキルの原動力なんだね。「有機物」「無機物」。ユリナって学者みたいな部分があるんだね」
「いや、スキルを手にして「有機物」を知っただけ。なぜ有機物なのか、説明はできないね」
「そっか。ユリナに言われるまで「歯」と「爪」は同じ物でできてると思ってたよ。学者が喜ぶスキルだね」
ノエルの風の精霊術、私の「超回復走法」をミックスすれば、オルシマまでの300~400キロも1日とかからず到着する。
だけど、無理しないでいい。ノエルも「等価交換」に使う材料集めを手伝ってくれる。
「ミールとミシェルに、ノエルをなんて紹介しようか」
「新しい友達でいいんじゃない?」
「・・そっか」
そうだ。友達でいい。
ノエルに言われなければ、私はなんと紹介していたのだろうか。
知り合い?彼氏候補?
「どうしたのユリナ。ミールちゃんが抵抗あるなら、あなた達のパーティーに入らず、ソロでもいいんだし」
「しばらくミールとミシェルの2人がいいって言われるかも。そしたら、私もぼっちかな」
「その時は、私とユリナのソロ同士で、初心者冒険者の面倒でも見ようよ」
「だね」
ノエルは、思っていたより、さらに優しい。
オルシマに帰ったあとのことまで考えてくれる。
私は、ミールを第一に考えたい。ミシェルのことを好きになってるけど、ミールへの「好き」もなぜか同じだ。
帰ったらまず、ミールの気持ちを聞いて、ミシェルともうまくやっていきたい。
再びミールとミシェルが手を繋ぐ姿を見たら、涙が出るかも知れない。
だけど、もう逃げない。
考え込んでいると、ノエルが手を繋いできた。
「・・うん、ありがと」
私の気が重くなると、ノエルが手を取ってくれるようになった。
「あれ?」
「どうしたの、ユリナ」
「・・いや。あ、あの」
なに、この感情・・
「ちょっと待って」
私は、自分のある変化に気付いた。そのとき、ノエルからストップがかかった。
盗賊が出た。
「15人か。ヤバいのはいないね」
「姉ちゃん2人か。片方は貧相だが、ハーフエルフは美形だぜ。こりゃ大収穫だ」
「うるさい!」
ノエルが吠えた。
「強がってんなよ」
「この人数が相手だぞ」
「捕まえてひんむいてやる」
ノエルの雰囲気が危なくなった。それが分からない盗賊共は、三流だ。
「私のユリナが不細工で貧相だと・・・。お前らは死ね。風の精霊!」
ひゅん、ひゅん、と、音だけが鳴り響き始めた。
「あひゅっ」
「ぐへ?」
ばばばばば! 風を切る音が何百とした。
見えないけど、風の刃が舞っている。
私達を取り囲む盗賊が、血を撒き散らし始めた。
わずかな1分足らず。討伐は終わった。
「・・え~とユリナ、カッとしてやりすぎちゃった。盗賊も有機物だよね。収納する?」
「ごめん、遠慮させて。人間の遺体は、ちょっと・・。代わりに倒れた木を回収させてもらうわ」
足早にノエルから離れたが、私は赤面していると思う。
私のノエルへの「好き」、ミールへの「好き」、ミシェルへの「好き」・・
差がない。
どういうことだろう。
イーサイド男爵家の長男ライナーに、ノエルがトドメを刺す。
私はナイフを持ち、ライナーにダッシュ。
奴は素早く反応し、ナイフを杖で受けた。
私とノエルは、恐ろしいほど呼吸が合う。
今回は私が牽制、ノエルがアタッカー。
作戦も立ててないのに、決着の付け方まで分かっている。
ただし、フランソワ夫人らは、私達の前代未聞の連携に驚くだろうが。
つばぜり合いを続ける、私とライナー。
「よっし、ノエル」
「いくよユリナ。火の眷属よ、我がために炎を吐き尽くせ!」
精霊魔法サラマンダーの炎が轟音を立てて、襲いかかる。
「うそだろ・・」
ノエルの炎は、ライナー、そして私を包み込んだ。
ライナーもまさか、ノエルが私ごと燃やすとは思わなかったのだろう。
「えぐえうわああ!」
聞く余裕はないライナーに呼びかけた。
「ライナー、あなたが憎かったけど、それでもアリサの肉親。仕掛けないなら、放っておいたよ」
身長は130センチ。
熱波に苦しみ、もがくライナー。彼の胸に手を当てた。
「さよならライナー」
ばち、ばちいいっ。
ライナーが一瞬、炎を上げて崩れ落ちた。
「・・ごめんね、アリサ」
◆
イーサイド男爵家は当主と、戦闘しか能がない次女が残っている。
家は残るだろう。ただ今回、身内が他の貴族家に害をなそうとしたし、賠償などで外から攻められる。
もう関わる気はない。
「ユリナ様、助かりました。お陰さまで全員が無傷です」
「巻き込んだのは私みたいで、こちらこそすみません」
「いえ、イーサイドとは我が家の第三夫人、三男問題で、いずれ事が起こるかと思っておりました。解決の糸口ができましたし、お礼を言わせてください」
◆◆
念のため、近くの村に一緒に一泊。
フランソワ夫人とフロマージュちゃんはカナワの街に帰った。
護衛騎士のうち2騎は、フランソワ夫人の実家イツミ伯爵家に、今回の顛末を伝えに行った。
私の役目はここまで。
今度こそ拠点のオルシマに帰る。
フロマージュちゃんに引き留められたが、再会を約束して別れた。
東に移動して、海岸に沿った細い街道を歩いている。
最近は治安が悪い。危険地帯なので、私達しかいない。
「ノエル、サポートありがとう。お陰で心置きなく戦えた」
「うん。ユリナが1人で魔法使いと勝負したいかと思ったんだ」
「さ、行こうか。等価交換の材料も減ったし、木の枝とか拾いながら歩くよ」
「ああ、有機物ってのがユリナのスキルの原動力なんだね。「有機物」「無機物」。ユリナって学者みたいな部分があるんだね」
「いや、スキルを手にして「有機物」を知っただけ。なぜ有機物なのか、説明はできないね」
「そっか。ユリナに言われるまで「歯」と「爪」は同じ物でできてると思ってたよ。学者が喜ぶスキルだね」
ノエルの風の精霊術、私の「超回復走法」をミックスすれば、オルシマまでの300~400キロも1日とかからず到着する。
だけど、無理しないでいい。ノエルも「等価交換」に使う材料集めを手伝ってくれる。
「ミールとミシェルに、ノエルをなんて紹介しようか」
「新しい友達でいいんじゃない?」
「・・そっか」
そうだ。友達でいい。
ノエルに言われなければ、私はなんと紹介していたのだろうか。
知り合い?彼氏候補?
「どうしたのユリナ。ミールちゃんが抵抗あるなら、あなた達のパーティーに入らず、ソロでもいいんだし」
「しばらくミールとミシェルの2人がいいって言われるかも。そしたら、私もぼっちかな」
「その時は、私とユリナのソロ同士で、初心者冒険者の面倒でも見ようよ」
「だね」
ノエルは、思っていたより、さらに優しい。
オルシマに帰ったあとのことまで考えてくれる。
私は、ミールを第一に考えたい。ミシェルのことを好きになってるけど、ミールへの「好き」もなぜか同じだ。
帰ったらまず、ミールの気持ちを聞いて、ミシェルともうまくやっていきたい。
再びミールとミシェルが手を繋ぐ姿を見たら、涙が出るかも知れない。
だけど、もう逃げない。
考え込んでいると、ノエルが手を繋いできた。
「・・うん、ありがと」
私の気が重くなると、ノエルが手を取ってくれるようになった。
「あれ?」
「どうしたの、ユリナ」
「・・いや。あ、あの」
なに、この感情・・
「ちょっと待って」
私は、自分のある変化に気付いた。そのとき、ノエルからストップがかかった。
盗賊が出た。
「15人か。ヤバいのはいないね」
「姉ちゃん2人か。片方は貧相だが、ハーフエルフは美形だぜ。こりゃ大収穫だ」
「うるさい!」
ノエルが吠えた。
「強がってんなよ」
「この人数が相手だぞ」
「捕まえてひんむいてやる」
ノエルの雰囲気が危なくなった。それが分からない盗賊共は、三流だ。
「私のユリナが不細工で貧相だと・・・。お前らは死ね。風の精霊!」
ひゅん、ひゅん、と、音だけが鳴り響き始めた。
「あひゅっ」
「ぐへ?」
ばばばばば! 風を切る音が何百とした。
見えないけど、風の刃が舞っている。
私達を取り囲む盗賊が、血を撒き散らし始めた。
わずかな1分足らず。討伐は終わった。
「・・え~とユリナ、カッとしてやりすぎちゃった。盗賊も有機物だよね。収納する?」
「ごめん、遠慮させて。人間の遺体は、ちょっと・・。代わりに倒れた木を回収させてもらうわ」
足早にノエルから離れたが、私は赤面していると思う。
私のノエルへの「好き」、ミールへの「好き」、ミシェルへの「好き」・・
差がない。
どういうことだろう。
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