嘘コク女だけど、アイツを捨てた元カノには負けたくない。身勝手な私です

とみっしぇる

文字の大きさ
2 / 12

2 嘘コクする女、承知で受ける男◇サクラ◇

しおりを挟む
◇サクラ◇秋庭サクラ、159センチ、Cカップ。

罰ゲームで暗い男子に告白することになった。

5月13日、学校に行ってみると、隣の席で嘘コク相手の春田リュウタローが雰囲気を変えてた。

長髪の小汚い感じから、ツーブロックの清潔な印象。ハンサムではないけど、似合ってて変な不快感もない。印象が良くなった。

「おはよう秋庭さん」
「おはよ。春田」

前からちょっと気になってた笑顔だ。

こいつ暗かったけど、同じ中学のやつ2人が他クラスからよく遊びに来てた。男と女ね。

私が話かけても最低限の返事だけなのに、そいつらとは話が弾んでた。そんで優しい目になるんだ。

来るのは男女のペアだけど、春田は丁寧に接してた。

「ごめんなー、色々と気を使わせて。俺もそろそろ元気出すよ」

そんな会話聞こえた。

ちらっと女の名前も聞こえた。フユミだな。そいつにフラれたんだね。

春田と本気で付き合う気はないけど、ちっと慰めてやりますか。


私、今はギャル。進学校に通っているけど、すでに落ちこぼれ。

兄と姉がいて、どちらも優秀。父も母も学歴至上主義で子供時代から兄姉と比較されてきた。

中学まで頑張って今の学校に入っても兄姉に比べてランクが落ちた。一応のお祝いはしてくれたけど、その後は無関心。

私の心はすさんだよ。

メグミ、アンリも似たような環境で育ってて、共感できた2人とつるんでる。

私、頭はともかく顔はいい方。だからメイクして、ちょっと遊ぶようになったら一目置かれたね。

アンリの彼に女慣れしてる男子を紹介してもらった。

去年の夏くらい、とにかくイケてなきゃってあせってたんだよね。処女喪失を目指した。

だけどいざ、ラブホに行ったら怖くなった。大泣きして、相手に引かれた。

それからあんま会わなくなって、向こうが違う女に乗り換えたとき、なんか安心した。で、さよならした。

一応は経験アリって言ってる。半端もん。

まあ、一夏の経験のフリや派手になった見た目から、もう引き返せない。

今回は3人で話して、ノリで嘘告白でも仕掛けてみようかってなった。

ネットとかに流したら、犯罪だからやらない。

◆◆

私は軽い口調で言った。

「春田、前から気になってたんだ。付き合って」
「はい秋庭さん。よろしくお願いします」

昼休みになって、春田リュウタローを呼び出して告白した。

まあ、こいつのことだから驚くだろうし・・返事は?

え、返事。もう返ってきてるよ。

「びっくりしたよ。クラスでも一番人気の秋庭さんから告白なんて。絶対に逃せないから、食いついちゃった」

「あ、ああ、OKしてくれて私も嬉しい」

考えることもなく即答されていた。

簡単に私達はスタートしてしまった。

ぴろん。メグミとアンリからLIMEが来た。

「メール鳴ったね。どうぞ」
「あ、ああ」

『ミッション。告白成功なら、一緒に下校してクレープ屋に行け』

いきなり来たな、と思った。

「あのさ、春田、今日だけど」
「ごめん、今日は外せない用事があるんだ。明日はどう」

「そうか・・じゃあ、それで」
「行きたいお店とかある」
「クレープ屋」

あ、ミッションにあったから、思わず答えてしまった。

「じゃあ、お店ピックアップしてるから、明日行こうね。これからよろしくね秋庭さん」

「・・うん」

なんだか、相手のペースだ。


教室に帰ったら、クラスの中の陽キャ側のやつが春田に近付いてきた。

そして春田の嘘ストーリーが始まった。

「春田くーん、秋庭さんとどこ行っていたのかな」

「ちょっと相談があってさ」

「え、なになに」

「俺って陰キャすぎたでしょ。脱出したくて髪切ったけど、次の手段が分からないんだよ」

「へえー」

「誰かに聞くなら、陽キャの頂点に相談ってね。思い切って秋庭さんに何していいか聞いたんだよ」

普段は喋らない春田の弾んだ会話に、何人かクラスメイトが集まってきた。

「ええー、それで秋庭さんに相談って、春田君すげえな」

「隣の席になったときに話せたし、ここがチャンスかなってね」

「秋庭さんと春田君って会話してたっけ」

「おはよう、さよならを除いて、1か月半で3回も会話したよ。だから立派な友達っしょ」

「すげえ、そのメンタル!」
「勘違いも、そこまでいけば長所だろ」

みんながどよめいたあと、私の意見をみんなが待ってた。

「春田があんまりしつこいから、たまに付き合ってあげることにしたんだ」

再び教室内がどよめいた。

「すごいね・・春田君」

「俺の情熱あふれる春田流ド・ゲ・ザのなせる技だね」

「泣きついたのかよ!」

みんなが笑った。

これで、普段から春田と話をしても不自然じゃない形が出来上がった。

嘘告なのに、なんだかこっちがペースに乗せられている。

放課後、みんなが注目してたのに、用事があった春田が急いで帰った。

で、火曜日に一緒にクレープ屋を食べに行った。

2つ離れた駅の駅前で私もちょっと聞いたことがあるお店だった。


春田のやつ、なんて言うか女慣れしてた。彼女がいたっていうけど、かなり深くつきあってたみたいだ。

ギャル歴1年の私とは違う。板に付いてた。

ま、クレープはおいしかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

処理中です...