スキル『壁削り』が『壁粉砕』に変身しました。ダンジョンだらけの世界を渡り歩きます

とみっしぇる

文字の大きさ
1 / 36

1 ダンジョンに感謝、だけど・・

しおりを挟む
私の背中は、ダンジョンの壁にぴったりとくっついてる。

私?私はフラン。19歳。珍しいけど戦えないスキルを持ったEランク冒険者。

目の前にはヤバい光景しか広がっていない。正面にはダンジョンのモンスターハウスの高ランクオーク100匹。右側には、私をハメた冒険者5人。

「・・死ぬ」

足はガクガク。じんわりと漏らしながら、つぶやいた。

◆◆◆
200年前、世界各地に4000のダンジョンが発生した。人々の生活は変わった。

スキル、魔法、レベルを人が手に入れ、貴族が支配していた世界が根底から崩れた。

「数」を持ってダンジョンを支配しようとした王族、貴族が「個」の力で滅ばされ、民主主義の国か乱立した。

200年前、地図上にない「ニホン」から来た賢者がいた。世界の文明を「中世ヨーロッパ」と評したらしく、その時代から物の価値観はあまり変わっていない。

そして現代、商人の愛人の娘として生まれた私は、11歳でユニークスキルを手にした。

スキル名は「壁削り」

時代を変えると言った学者もいた。「ダンジョンの壁は壊せない」という絶対的理論を覆すとされた。

だけど、スキルを使ってみるとほんの一握りの壁が削れただけ。ダンジョンの壁を構成する希少金属を取り出せる。そう期待されたけど、スキルを10回使って鉄の玉ひとつ。削った壁も1分で元に戻った。

多くの人に笑われ続けたけれど、私だけがもらえたユニークスキル。感謝した。

12歳で実母が死んだあと、商会に引き取られ継母の息子達に散々苛められて、15歳の成人の日に家とラフレシの街を追い出された。

冒険者登録をしてコツコツと壁を削っていると、金属が出た。それを売って4年間、ダンジョンに生活させてもらった。

少しだけど、お金も貯めてる。

私には「モルト」って名前の友達がいる。向こうは友達と思っていないかも知れない。だけど、たったひとり、私を友達と言ってくれた男の子。絶対に探しに行きたい・・


たまにゴブリンを倒して私自身のレベルは10でMP100。1回の使用MP3の壁削りを8年間使い続けて、スキルレベルは「9」

1年前にスキルレベルが上がってから150回に1度は5センチのミスリル玉が出るようになった。

本当に嬉しかった。

だけど、それをシルビアで売ったのが、いけなかった。


拠点のシルビアの街から10キロのゴブ初級ダンジョンで、今日も壁を削っていた。

大陸の南海岸にあるシルビアの周りは価値あるダンジョンだらけ。南に290キロ地点にある島には、世界最高峰指定の「超級」ダンジョンまである。

ゴブダンジョンは、素材、経験値の価値が低すぎて、誰も来ない。私が独占して、1階セーフティゾーンには寝袋まで置いてある。

今日は活動限界の3階で壁を削ってミスリル玉が出た。MPに余裕はあるが、シルビアの街に向かった。

「たまにはエールでも飲もうかな」
足どり軽く5キロほど歩いた。近くには特級ダンジョンがある。

そこで林道の脇から男4人が現れた。

「・・あっ」

シルビアの冒険者でも要注意人物。実業家の三男、四男で構成された「オーガキラー」の5人のうち4人が、道に立ちふさがっている。

戦えるスキルを複数持ち、レベルは70~75。ランク付けはシルビアでも上から2番目。


「ようフラン」
こいつは確か貿易商四男のセバスティアン。あとは曖昧。
武器は抜いていないが、身長180~185センチの奴らが、明らかに私を狙っている。

私は目が大きめのブラウンヘアで160センチ。恋愛経験ゼロ。過去に実家で強いられた重労働で筋肉はある。ただし男4人相手に戦う方法がない。

回れ右しようとすると、「オーガキラー」の5人目が真後ろにいた。
「やば・・」
殴られて、あっさり意識が遠のいた。


◆◆
目が覚めた。

ズキッ。「頭いたい」

やつら「5人」に囲まれている。ここは外でもないし、通路の先にある4メートルの小部屋。
「目を覚ましたか。外は夜だぞ。ほれっ。これで壁を削れ」
愛用のピッケルを足元に投げられた。

私に「削れ」ということは、ここはダンジョンか。

「・・ここは」
「お前が入ったことがない、シェルハ特級ダンジョン1階の奥の方だ。レベル50のオークとオーガが出るぞ」
「んで、ここは昨日、俺らが見つけた隠し部屋だ」

私を拉致した目的が分かった。私に「壁削り」を使わせてお宝ゲットを狙っている。

だけど無理だ・・・

「わ、私のスキル、知ってるでしょ。鉄の玉しか出ないのよ」

「嘘言うなよ。最近はミスリルも掘れるんだろ。換金してるのを見た奴がいるんだぜ」
「それにお前の荷物入れから高純度のミスリル玉が2個出てきたぞ」

最悪だ。

「普通、隠し部屋って宝箱があるのに、ここはないんだよ。お前の進化したスキルなら財宝が出ねえかなって、話したんだよ」
私の話なんか聞いていない。

「いいから、やってみろ。お前が何か見つけるか否か、そこで賭けもしてるんだ。嫌なら、ここに置いて行くぞ」


遊びで連れてこられた。だけどこっちは、命がかかっている。

何も出てこなければ、レベル10の私がレベル50のオークが出るダンジョンに置き去りにされる。
何か価値があるものが出てきたら、とことん利用される。

MPは気絶している間に少し回復して47。MP3の「壁削り」は無理すれば15回使える。

捕まえるために、頭をぶん殴るやつらだ。拒否すればどうなるかは分かる。

がりっ。「ちっ。フラン、何も出ねえじゃねえか」
がりっ。がりっ。がりっ。「鉄以上のもんが出てくる方に10万ゴールドも賭けたんだぞ!」

逃げる方法も見つからないまんま、4回のスキルを使った。「何か出る」に賭けたと思われる3人がイライラし始めた。

がりっ。5回目。鉄の塊が出た。残り10回。

確率的に、出ても鉄1個。1時間後の自分の惨状が見えてきて、足が震え出した。


『スキル「壁削り」レベルアップしました』

「え?」

こんなときに「壁削り」が強化されたのか。

「てめえ、なんで手を休めているんだよ。何も出ねえと、俺が賭けに負けるんだよ」
「ひっ」

怒鳴られてはっとしたとき、壁と床の境界、継ぎ目にしか見えないところに小さな何かが見えた。

分かりにくいが、スイッチだ。何もない部屋じゃなかった。押すと宝箱が出てくるのか、それとも罠か。

だけど、現状よりいいはずだ。

かんっ。ピッケルでスイッチを叩いた。


ゴゴゴゴゴ。

私は運が悪いのを忘れていた。

小部屋の入り口が塞がった。逆に小部屋の奥の壁がなくなり、目の前に40メートル四方の部屋ができた。

そして反対の壁際には豚顔のオークだ。

「モンスターハウスだったの・・」

「ちっ、フランがスイッチを踏んだのかよ」
「100匹くらいいるな」
「ま、殲滅しちまおうぜ」
「終わったらフランは死刑だな」


恐怖を通り越して真っ白になった頭の中に、ファンファーレが鳴った。

『おめでとうございます。「壁削り」がレベル10になり「壁粉砕」に変身しました』

とことん運がない私たけど、死に直面したときにスキルが進化した。

頑張って立ち上がり、長い間、私を支えてくれたダンジョンの壁に寄りかかった。
「うれしいよ。だけどね・・」


ただ、生き残れる方法が思い浮かばない。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流
ファンタジー
俺、臥龍臼汰(27歳・独身)はある日自宅の裏山に突如できた洞窟を見つける。 語り掛けてきたアドバイザーとやらが言うにはそこは何とダンジョン!? で、探索の報酬としてどんな望みも叶えてくれるらしい。 ならば俺の願いは決まっている。 よくある強力無比なスキルや魔法? 使い切れぬ莫大な財産? 否! 俺が望んだのは「君の様なアドバイザーにず~~~~~っとサポートして欲しい!」という願望。 万全なサポートを受けながらダンジョン探索にのめり込む日々だったのだが…何故か元居た会社の後輩や上司が訪ねて来て… チート風味の現代ダンジョン探索記。

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

処理中です...