スキル『壁削り』が『壁粉砕』に変身しました。ダンジョンだらけの世界を渡り歩きます

とみっしぇる

文字の大きさ
19 / 36

19 ヤバすぎて売れない

しおりを挟む
新しくセツザンの街に仮拠点を置いた。

まずは北北東に200キロの魔境地帯を見に行く。だって私は、そこにから来たことになっている。3日かけて、例によって200キロ走った。座標は12個作った。

3日目になって180キロ地点から急斜面の山の麓に入り20キロ。山を囲むように尖った5メートル巨石が地面から生えている。明らかにそこから雰囲気が変わり、おいしそうな空気が漏れている。

前方に赤い実をつけた木があるけど、根元に5メートルのライオンが寝ている。


「ダメだこりゃ。ダンジョンぽい空気だけど、野外だ。私の特殊スキルが何も使えそうにない」

すっぱりとあきらめ、2キロ走って普通のダンジョンへ。そのままセツザン近くに「壁転移」した。帰りは早い。

◆◆
「さあ、ギルマスを訪ねるか。お土産は五種のスパイスでいいかな」

サクラから北に3000キロ、国境も越えるオーロラ国セツザンでは胡椒が高い。

これもダンジョンの不思議。ダンジョン内の植物は地上を参考にしたかのように、地方色が出る。

例外は魔境地帯で、何でも生えている。

ゆえに魔境チマランマから持ってきたと言えば何でもアリだ。


ちなみに砂糖は各地のダンジョンで少しずつ採れるから、高いけど値段は安定している。


壁転移でタルオダンジョン1階に飛んで、セツザン街に入ったところで「ユキヒョウ」の4人と会った。

「フランさん、この前は絡まれて大変だったね」
「うん。そうだ、みんなが悪い奴らから庇ってくれたから、お礼にこれあげる。砂糖とカーレーブレンドのスパイスが5キロずつよ」

「えええ」

驚いたが喜んでくれた。関わっていきたいけど、早々と別れた。

この街で素材売買をすることで、騒動が起こる可能性が高い。巻き込むわけにはいかない。
 ◆
ギルドに行くと、ギルマス室に通された。

ギルマスは180センチの長髪細身でロットさん。でかい魔力を感じる。貴重な実戦型の魔法使いだろう。

「良く来てくれたフラン。少し話を聞かせてくれ」
「は、はいどうぞ」

私がダンジョンを出てから1時間が経過した。肺の中にダンジョンの空気がなくなり、弱虫フランが顔を出し始めている。

ギルマスの前に「鑑定棒」が置いてある。水晶が杖の先に付いていて、魔物の死体などにあてる。
そうすると、獲物の名前とレベルが分かる代物だ。

素材の査定に使われているし、詐欺防止にも使える。

「薄々、フランの頼みが分かるから持ってきた。仕事は魔境のハンター「カベギロチンさん」が獲った獲物の代理売却だな。過去にも例がある」
「はい。兄の壁ギロチ・・カベギロチンは、コミュ障で人前に出ません。売却金の2割が私の利益になります」

この辺のカバーストーリーは適当だ。

「この街ならチマランマ産の素材でも扱っているんですよね」
「ここは魔境から一番近い街。それに西に爬虫類系の特級ダンジョンある」
「貴重な素材は、この街起点が多いんですよね」

「そうだ。ここには有力者も手を出さない。国の軍隊でも近寄らないチマランマから来た奴に、権威なんて通じないからな」

「良かった。1つだけ普通の街では売れそうにない素材があるんです」
「種類は?」
「バミダダンジョン産のドラゴンの頭です」

「3000キロくらい南の魔境の島の?」
「はい。出します」

用意していた特大シートを広げ、収納指輪から出したクリスタルドラゴン頭を置いた。

ドクン。ギルマス室が、猛烈な「いい匂い」にあふれている。弱虫フランがいなくなった。

「ギルマス、こいつの素材って買い取ってもらえるかな」
「フラン、いきなり雰囲気が・・いや、これほどの物かあるとは・・」


「ギルマス。鑑定してよ」
「・・鑑定していいのか」
「そのために来たんだよ」

ぴっ。鑑定棒が鳴った。

「・・・」
「鑑定結果教えてよ」

「・・ドラゴンだ」
「うん。頭以外はないけどね」

クリスタルドラゴン、レベル239と、鑑定棒に表示されている。

「この西のパーロッパの中心、オフランス国のパリパにいるギルド総長「炎のジャンヌ様」に相談した方がいい。恐らく売れないぞ」

「なんで?」
「バミダ超級ダンジョンのドラゴン素材なんて、捕獲者は自分の装備の強化に使ってしまう。売るなら一部だ」

「一部?」
「超高位ポーションの材料になる血液少量とか、薬の材料だけだな」

「武器に関連するものは出さないの」
「その武器で、売った本人が狙われるからな」
「・・なるほど」

「ギルドで公開された捕獲記録は、80年のアイスドラゴン・レベル230が最高だ。売ったら、どんな騒動が起きるか分からんぞ・・」

「やっぱりか・・。討伐記録が付くように、ダンジョンを「覗いて」、ちょっと「カベギロチン」にドラゴン攻撃させてもらったんだ。そんで、剥がれた鱗を持ってるけど、それも出しにくいな」

ギルマスに真っ二つに切れた鱗を渡すと、目を白黒させている。

「お前、これを世に出したときは、トラブルを覚悟しろ。強い者が上に立つ、東のライデン国は絶対に、お前を王族の嫁にもらいに来るぞ」

「私、そこまで強くないよ。ドラゴン倒したのは「カベギロ兄さん」。私はバミダダンジョンの入口しか覗いてないし」

「島の中のバミダダンジョンは、魔境海岸を越えた魔境の丘にあっただろう。入口周辺の魔物もレベル150はざらなのは、当然知っているな」

当然、私は知らない。

「お前の技か特種スキルか分からないが、クリスタルドラゴンの鱗を2つに切れる攻撃も、俺は知らない」

要するに、バミダダンジョンを覗いただけで「ヤバい人」だった。もちろん私は「ランダム壁移動」でダンジョンのほんの一画に入っただけだ。倒したのも壁ギロチンだ。

クリスタルドラゴン頭部の売却保留。鱗から強化物質「超ケラチンZ」を抽出して扱える錬成術使いの職人をピックアップしてもらうしかない。

そしてこの周辺に「モルト」という名前の冒険者がいないか、調べてもらう。

ギルマス個人への依頼で、報酬は手のひらより大きな鱗を4枚。

二つ返事で引き受けてくれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流
ファンタジー
俺、臥龍臼汰(27歳・独身)はある日自宅の裏山に突如できた洞窟を見つける。 語り掛けてきたアドバイザーとやらが言うにはそこは何とダンジョン!? で、探索の報酬としてどんな望みも叶えてくれるらしい。 ならば俺の願いは決まっている。 よくある強力無比なスキルや魔法? 使い切れぬ莫大な財産? 否! 俺が望んだのは「君の様なアドバイザーにず~~~~~っとサポートして欲しい!」という願望。 万全なサポートを受けながらダンジョン探索にのめり込む日々だったのだが…何故か元居た会社の後輩や上司が訪ねて来て… チート風味の現代ダンジョン探索記。

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

処理中です...